決断!延命国の平和と闇
延命国は捲簾覇蛇の統べる地上最大国家。
平和と安定が約束された国。
私は法子。
私は今、延命国城の麓にある客殿にいるの。
そう。あの時私が出した答えは・・・
「捲簾覇蛇には手を出さない」
つまりそれは私を庇ってくれた沙悟浄を見殺しにするのと同じ意味だったの。
無難な決断・・・
私は部屋の外を眺める八怪を見る。
あれから一言も喋らないの。
けれどその理由も分かるわ。
分かるけれど、世界の平和と天秤にだなんて。
今の私には決めれない。
そういえば二郎真君さんはナタク達と同じく捲簾覇蛇の護衛に就く事になったの。
私はその晩はこの延命国に滞在した。
その明朝、外が騒がしい事に気付いて目が覚めたの。
声?私と八怪は外に出て状況を見る。
「何が起きてるの?」
「何か祭りのようらよ」
私と八怪は外に出ると、国の大人達が確かに祭りの支度をしていた。
本当に祭りだったのね?
けれどそれは祭りではなく奉り。
今日は月に一度の奉納の日だと知ったの。
奉納って?まさか?
「奉納って生贄でしょ??」
そう。この延命国は一定の平和の条件として月に一度人間を生贄に捧げる事を義務付けていたの。
人間達はその条件を飲み、既に何度か生贄を捧げていたと聞いた。
無条件の平和なんてない。
それがこの延命国の闇。
成人男性なら十人。
若き処女の女性なら一人。
五歳以下の子供なら男女構わず二人。
今までは罪人を捧げたけれど、それも味気ないと要求のため、今回は若き女性が選ばれたの。
捲簾覇蛇はこの国では王であって神様扱い。
王宮へと続く中央通りに向けて長い参列が出来てその行進に観戦し手を振っていた。そこには着飾られた私と同い年くらいの女の子が神輿に乗せられて笑顔を見せて手を振り返す。
彼女はこの国の為に捧げられる生贄。
けれど私は見てしまったの。
彼女の笑顔とは別に震える肩を。
そしてその彼女を見て泣いている幼い子供を。
するとその子は大人の兵士達数人に口を押さえられ連れられたの。
「八怪!」
私は八怪と一緒に先回りして兵士達の前に出ると、その泣いている子供を差し出すように要求したの。
「貴方達?そんな幼い子供に何してるの?泣いてるじゃない?離しなさいよ!」
「何だお前達は?邪魔立てするならお前達も廊に放り込むぞ?」
「出来るかしら?ねぇ?八怪?」
「そうらな〜難しいでないらか?」
「何だ?何なんだ?お前達は?我が王に捧げる贄が無事に運ばれるように警護している我々の邪魔をするのであれば、お前達も力づくで捕らえるぞ!」
すると子供を押さえている兵士以外が次々と倒れていく。
その様子に兵士は青褪める。
「さて、力づくって私嫌いなのよね〜」
残されて兵士は「ひゃっ」と子供から手を離した瞬間当て身を受けて意識を失い倒れる。
「八怪、オッケーよ」
そして驚く子供に私はしゃがみ込み尋ねたの。
「どうしてこの恐い兵士さんに連れて行かれたの?そしてどうして泣いていたの?」
その問いに子供は泣きながら答えてくれた。
聞くに、この子と生贄に連れて行かれた娘は姉妹で、この延命国に家族で亡命に来た所を生贄に選ばれてしまったと言うの。そして邪魔をした両親は殺され、姉は連れて行かれ、運良く逃げのびれた幼い妹は次の生贄に使う為にと兵士達に手配されていたと。
そこに生贄のパレードに姉の姿を見て泣いている所を兵士に見つかってしまったと言うの。
一通り話を聞いて状況を知った私は溜息をついて後ろにいる八怪に言う。
「ねぇ?八怪?」
「なんら?」
「世界を滅ぼす覚悟ある?」
「!!」
それは唐突のない言葉。
八怪は最初ビックリしたような顔をしたけれど、直ぐに目の色を輝かせ答えたの。
「待っていたらよ!やっぱ法子はんら!」
すると八怪は目の色が妖しく光る。
「こう見えてもオラは元破壊神らよ」
八怪の発する重い言葉に私は身震いすると同時に頼もしくもなった。
同時にモヤモヤしていた決断に覚悟を決める事が出来たの。
「私達は今から世界を相手に我が儘貫くわよ」
「おぅら!」
そして私達は決断したの。
この延命国から捲簾覇蛇を追い出し、そして私達の仲間である沙悟浄を取り戻すと。
結局、この延命国の平和は力無き弱者の上に成り立った偽りの平和。
人間を家畜にしているに過ぎない。
それにもし沙悟浄なら、こんな姿みたら涙目で私に助けてあげたいと懇願してくるもん。
生贄になる女の子は祭りの際に大勢の人達に感謝とお別れの意味をもって祭壇でのお披露目を終えると、次に籠に乗せられてから厳重にロープで縛られ拘束されてしまったの。そして護衛の者達によって王宮にいる捲簾覇蛇のもとに運ばれ、食物として献上される流れだった。
そして時は来たの。
護衛によって階段を登り運ばれて行く。
その最中、護衛の隊長が突然籠を止めたの。
「もう良い。籠を下ろせ」
隊長の命令で他の護衛達が不思議と思いつつ荷を下ろすと、隊長はその手にした剣を抜いて籠に向けて投げつけたの。
「!!」
その殺気に気付いて籠の中から飛び出して脱出したのは、捕らわれた生贄の女の子ではなく錫杖で受け止めた私の姿だった。
「も〜う!危ないじゃないのよ!」
しかも私が叫んだ相手の隊長とは鉄扇ちゃんだったの。
「いつの間に生贄を逃したのよ?私にとってはお前が生贄になろうと構わないわよ?」
「あら?御免こうむるわ。私、生贄になるつもりないし」
私は生贄に選ばれた女の子が籠に入れられるより先、その前に儀式の衣を纏うより先に入れ代わっていたの。そして籠の中に入って、そのまま捲簾覇蛇の居る王室のまで運ばれるつもりだった。
「バレてしまったなら仕方ないわ?そこを退いて見逃してちょうだい?」
「それは無理よ。私は捲簾覇蛇の下で警護の隊長をしているのだから。だからもし良からぬ事をするつもりなら私が法子!あんたを殺すわよ!」
その目は本気だった。
本気で私を殺すつもりの目だった。
「私も黙って殺されるつもりはないわ。私は捲簾覇蛇を倒す覚悟を決めたのだから!だから邪魔するなら鉄扇ちゃん?貴女を倒すわ」
「出来るのかしら?あんたに?」
余裕を見せる鉄扇ちゃんに対して、私も同じく余裕を見せて答えたの。
「彼女がね!」
「エッ?」
すると籠の中から妖気が立ち込め、骨が飛び出して来て人型へと代わる。
それは白骨乙女さん!
「いつまで放置するつもりよ!法子?でも鉄扇と積年の決着付ける良いシチュエーションよ!」
「法子!アンタじゃないんか〜い!」
私は既に白骨乙女さんと落ち合って段取りをしていたの。だから一緒に籠の中に入って待機していたってわけ。まぁ〜狭いから白骨乙女さんは骨状態で分解していたから私はちょっと引いていた。
思い出しただけで「ゾゾゾ」よ。
白骨乙女さんの登場に鉄扇ちゃんも厄介そうな顔をする。
それだけ白骨乙女さんに対してお互い力を認め合っていたから。
「白骨乙女さん!足止めお願いね」
そう言うと私は先に階段を駆け上ったの。
ちょうどその時、城の反対側でも動きがあった。
「なんぴたりともオラの前を塞ぐ事は出来ねぇらよ!」
八怪の前にナタクが道を塞いでいたの。
「邪魔立てするなら俺はお前を討伐する」
ナタクは腰の鞘から剣を抜く。
こんなところで八怪とナタクが戦うの?
そして王宮の下でも延命国の兵士達と反乱軍を従えた砂塵魔王が一触即発だったの。
しかしこの状況を全て見透していた者がいたの。
それは王宮に座して水晶から私達の行動を全て見ていた捲簾覇蛇本人。
「愚かな。しかし私に対する反乱分子を全て一掃するために泳がせていたかいがある。そうは思わないか?」
その側近として仕えていたのは二郎真君さんだったの。
そして答える。
「そうですね。全てを敵に回して無謀な戦いに挑むなど愚かとしか思えない。しかし」
「しかし?」
「それでも俺には彼女達の事を責められない。俺も己の魂に従い、己の正義を貫こう!」
すると二郎真君さんは剣を鞘から抜き捲簾覇蛇に戦いを挑んだの。
「いずれお前ならそうすると思っていたよ。私も二郎真君には一度殺されかけた怨みもある。だから敢えてお前を私の下に置いて反逆しやすくお膳立てしてやったのだ!」
「今度こそお前は俺が倒す!」
「そっくりそのまま返そう」
今、再び世界の命運をかけた戦いが始まる!
けれど今度は私達が悪者になるのかな?
そんなこんな。
次回予告
世界の平和を壊すために戦う法子達。
その決断が間違ってないと信じて戦う!
そして因縁の戦いが、今!




