捲簾覇蛇の世界征服計画!
延命国とは捲簾覇蛇の統治する地上界最高の大国
法子達は延命国で何をもたらすのか?
私は法子
私は八怪と二郎真君さんと一緒に延命国に来ていたの。
その国は外界から閉ざされた世界。
あの蝕王覇蛇が沙悟浄の身体を奪い捲簾覇蛇と名乗り、新たな国として造り上げたの。
延命国は人間達をむやみやたらに襲うわけではなく、一定の生贄を捧げる事で永遠の平和をもたらし、如何なる難病も癒やされ外界からの略奪者からも守られた鎖国王国。
国民から見れば生贄さえ捧げさえすれば寿命尽きるまで平和に暮らせるのだから悪い条件でもない。
少なくとも人口は臆を超え、生贄になるのは女子供のみ。定期的に生贄の女子供を用意するのは出来ない条件でもなく、まさに家畜のように育て、捧げられる仕組みが出来上がっていた。
当然中には反乱組織も存在していたけれど、永遠の平和と生き残るために王となった捲簾覇蛇を崇拝する王国兵や国民の前に敵うはずもなかったの。
反乱組織のリーダーは白骨乙女さん。
その実力は妖恐である錬体魔王さんを従えて敵無しに思われたけれど、対する王国兵隊長こそ、女妖怪最強を謳い文句にして、私達の友達だったはずの鉄扇ちゃんなのだと知り衝撃を受ける。
そして反乱組織の隠れ家で状況を聞いていた私達のもとに王国兵が流れ込み、私の前に鉄扇ちゃんが敵として現れたの。
「こんな場所にまでしゃしゃり出て馬鹿じゃないの?けれど一度でもこの地に足を踏み入れた以上覚悟は良いわね?」
鉄扇ちゃんは扇を手に私に突き出して来たの。
「!!」
けれどその扇は八怪が拳で弾き返す。
「オラは女子には手を出したくないら!けど法子はんに手を出すなら許さないらよ?鉄扇!」
「気安く私の名を呼ぶな!男!それにお前、誰よ?ナメた口聞くとお前から始末するわよ!」
「はぁ?オラは八怪らよ?」
「・・・へッ?」
一瞬の間の後に鉄扇ちゃんは目を丸くする。
あ、そうだったわ〜
鉄扇ちゃんは今の褐色肌の魔神族姿の少年八怪ではなく黒豚姿のスケベ八戒しか知らなかったんだっけ?
同時にその潜在能力の桁違いに驚愕する。
「化けたわね?」
正直、鉄扇ちゃんは八怪とまともに戦って勝てるとは思えなかった。
「良いわ。お前達の事は捲簾覇蛇様に報告した後、その処遇を決めさせて貰うわ」
そう言うと、鉄扇ちゃんは巻き起こる竜巻の中に姿が消えてしまったの。
「はぁー!」
私は身震いしていた。
今の鉄扇ちゃんは確かに私に殺意を向けた。
どうして捲簾覇蛇なんかに従ってるの?
いえ、分かるわ!
今の捲簾覇蛇の本体は沙悟浄。
中身は違えど愛する沙悟浄を傷付ける事は出来ない。それならば、きっと、味方になる事を選んだに違いないわ。それは彼女の一途な思いの決断。
「でも間違ってるわ」
私は捲簾覇蛇から沙悟浄を取り戻すためには鉄扇ちゃんとの戦闘は避けては通れないと感じた。
私達は何とか王国兵からの襲撃から逃れ、残った反乱軍達と別の隠れ家に潜む事が出来た。
「恐らくこの隠れ家も筒抜けだろうな。この延命国は捲簾覇蛇の領地。何処に逃げても無駄だろう。なら俺達のやるべき事は」
二郎真君さんが皆を見回すと、全員頷く。
「攻め込むしかないでしょ〜!」
私が言葉にして皆を鼓舞させる。
「けど、このタイミングで法子達が来てくれた事は天の助けよ。本当に」
「我々だけではあの捲簾覇蛇には手も足も出なかった。見たところ、あんた達もかなり力を上げているな」
白骨乙女さんと錬体魔王さんが私達を見る。
私と言うより、八怪と二郎真君さんなのだけどね。
「捲簾覇蛇の他に敵は国を守る人間の兵。そこは私達にとっては相手にならない。問題は」
「鉄扇ちゃんね?」
「あの女は私が食い止めるわ!だから捲簾覇蛇の事は頼んでも良い?」
「そうなるだろうと思っていたわ」
私と白骨乙女さんの会話に二郎真君さんが呟く。
「沙悟浄君の事もあるが、あの捲簾大将の姿には俺も、そこの八怪も深い縁があるからな」
「そうらよ」
二郎真君さんと八怪の目は私が考える以上に険しくなっていたの。
「捲簾、お前が何故?」
沙悟浄と捲簾大将の因果関係は?
何故沙悟浄の魂の中に死んだはずの捲簾大将の魂が宿されていたのか?
すべて謎のまま。
その直後、この延命国の結界を抜けて何かとてつもない力を持つ存在が入り込んだの。
その気配に私達は鳥肌が立つ。
「お帰りのようね?」
それは延命国の王、捲簾覇蛇の帰還だった。
そして同じく強い力を持つ何者かが捲簾覇蛇と共に延命国に入って来た事に私達は困惑する。
「えっ?どうして?」
すると同時に私達の前に捲簾覇蛇の幻が出現したの。
「えっ!!」
やっぱり筒抜けのようね。
「ふふふ。私の留守にお客陣が私の国に入って来ていると思えば懐かしい面々ではないか?」
「!?」
捲簾覇蛇は私達を見るなり過去の戦いでの出来事が何もなかった事のように話し掛けて来たの。
「せっかく遥々来てくれたのだから多少なりともおもてなしをしようではないか?もう少ししたら使いを寄こそう。私の城に招かせて貰おう」
「なっ!?何をふざけた事を!!」
けれど私の言葉は空振りした。
既にその場から捲簾覇蛇の姿が消えていたから。
同時に延命国の兵士達が数十人、私達のいる新しい隠れ家に入り込んで来たの。
どうやって場所が分かったの?
違う。奴には全て見抜かされているんだ!
「なら逃げても隠れても仕方ないってことね」
私達は言われた通り連行される事にした。
けど連行されるのは私と八怪、二郎真君さんだけ。
白骨乙女さん達には待機して貰うようにお願いしたの。
そして国の中央にある捲簾覇蛇の城へと私達は黙って連れて行かれる。
「法子はん?良いんらか?」
「うん。それに八怪も気付いたでしょ?この延命国に入って来た気配に?」
「そうらな。腑に落ちないら」
「あの気は間違いない。しかし意味が分からない」
二郎真君さんは足早になっていた。
何故なら?
私達は延命国の城へと続く階段を登る。
「けどさ〜?いつの間にこんなお城作ったのかしら?それに国一つ造るったって何年もかかるわよ?本来なら?」
「法子君、それは宝貝のおかげだよ?」
「二郎真君さん、この国が全部宝貝なわけ?」
「そうだよ」
そもそも神様や仙人、妖怪の中でも自分の城は特殊な宝貝を使うそうなの。
使い方は簡単で、手にした宝貝に造りたい城や家をイメージして念を籠めるの。
するとあら不思議〜。
宝貝からイメージしたお城が出現するって便利グッズ。
便利だけどデメリットもあって、かなりの気を注ぎ込まないといけないらしいの。つまり立派になればなるだけ手を加えた分だけ作り手の気が消耗しちゃい、しかも定期的に気を城に吸い出されてしまうみたい。それに城の主が急激に消耗したり死んだりしたら城は形を維持出来ずに消えてしまうの。
「ならこの延命国全部を造ったってわけ?あの蛇神は?マジ半端ないわね〜。だから城壁には蛇神の結界がまんべんなく張られているのね?セキュリティ万膳で私達が簡単に入れないわけだわ」」
「どんだけ暇人なんらよ」
「これだけの国を創り上げられると言う事は、それだけで牽制にもなるからな」
二郎真君さんはその時、城から見える先に小さな庭を見つけて八怪の肩に手を置き知らせる。
「なんら?」
すると八怪はソレを見て目を見開いた。
城に庭って凝ってるわね?
かなり手入れされているようで、庭と言うより公園のような規模。
それに湖の中心に桜の木が生えていたの。
桜なんて和風ね〜?ん?
「あ、あぁあ!」
八怪はその風景を見て身体が震えた。
「そっくりら・・・捲簾とオラが住んでいた天界の家に・・・」
二郎真君さんも頷く。
そして疑問だった事が明確になったの。
「あの蛇神の捲簾の姿は間違いなく俺とお前が知るあの捲簾のもの。そして奴は捲簾の記憶と力を手に入れている事は間違いないようだな」
「く、そ、そうらな」
八怪は拳を強く握り締める。
本当なら今すぐに飛び出して行き確認したかった。
何故なら捲簾とは八怪にとって掛け替えのない恩師であり、友であったから。
けれど八怪が飛び出さなかった理由は私の警護もそうなのだけど、怖かったから。
その真実を知る事に。
あの捲簾覇蛇が八怪の知る捲簾さんなのかどうか?
それは二郎真君さんも似た感情だった。
捲簾大将さんとは二人の神友なのだから。
けれどまだ分からない事は残っている。
ソレが何故沙悟浄の魂から姿を現したのか?
まさか沙悟浄の転生前が捲簾さんとか?
確証はないのだけど・・・
そして私達は階段を登り終えて城内に入る。
本当に何処もかしこも立派なお城よね?
至る場所に装飾品やら像が飾られてる。
こんな所は沙悟浄の性格ぽいけれど。
そしてレッドカーペットみたいな通路を通り、王室間にまで着くと、そこに捲簾覇蛇はいた。
「ようやく来たな?待ち侘びたぞ?」
「何をぬけしゃあしゃあと!」
「ふふふ。そう邪険にするでない。仮にも私は王なのだからな」
「何が王よ!アンタのその沙悟浄の身体を返してちょうだい!嫌と言っても取り返すわ!八怪!二郎真君さん!」
「そおぅらぁー!」
私の合図に合わせて八怪と二郎真君さんが飛び出していた。
何とかして捲簾覇蛇を黙らせて、その後は時間をかけてでも元の沙悟浄に戻す手立てを考えるしかないのだから。
「えっ!?」
けれど八怪と二郎真君さんの前に閃光の如き雷が道を塞ぎ、更に突風が二人を押し返す。
すると捲簾覇蛇を守るように二人の人影が現れる。
今、邪魔をしたのはこの二人・・・て、何故?
「どういう事?」
私達の邪魔をしたのは私達の知る二人だったの。
「ナタクに恵岸行者さん?何故よ!」
そう。
真蛇王エキドナ討伐に出ていた二人が、どうして私達の邪魔をするの?
「まさか操られているらか?」
八怪の言った通りかもしれないわね。
「ナタク!恵岸行者殿、何故俺達の邪魔をする!」
二郎真君さんに対して二人は、
「天からの指示だ。俺達はこの捲簾覇蛇の護衛を命じられている。もし刃を向けるのであれば、お前とて容赦はしないぞ?二郎真君!」
「!?」
えっ?何を言ってるのかな?
天界が蛇神を護衛って何?
すると恵岸行者さんから説明が入ったの。
「驚くのも無理はあるまい。今や地上を騒がせていた蛇神の王である覇王は、こちらの捲簾覇蛇殿により永劫の結界に封印された。この地上からは既に蛇神の脅威は消え去ったのだ」
私達は鳩に豆鉄砲をくらった感じだった。
そう。私達の知らない所で大きな動きがあった事を知る。
この捲簾覇蛇は私達との戦場から立ち去った後、自らの中にある観音菩薩の記憶と力を読み取り己の物としたの。その後、蛇神に襲われている人間や妖怪の国や村を救っては名を広め、自ら造り上げた延命国への亡命を許した。噂は噂を呼び蛇神と言う脅威から地上を救う救世主として広まり、延命国は救世主が守る永遠の平和を約束された王国を短期間で作り出した。
その後、捲簾覇蛇は地上を統べる王として単身天界へと上がり、そこで天界の王と約束事を取り決めたと言うの。内容は現在滅びつつある妖魔王には手を出さない協定条約の撤回。
そして代わりに天界の名の下、地上権全土を自分の統治下にする条約であった。
「嘘?そんな事をいつの間に?けれど蛇神が地上の王なんて天界の神様が許すわけないじゃない?」
「当然天界もそう容易くそのような条件を飲む訳なかった。そして条件を与えたのだ!それが蛇神の王である覇王の永久封印。そして捲簾覇蛇は見事に覇王を封じたのだ」
そこにナタクが追加する。
「そして俺達は天界から命令を受けて、捲簾覇蛇の監視込みで護衛を任されたのだ」
「そんなの有るわけないわよ!きっと何か裏があるに決まってるわよ!騙されてるのよ!絶対!」
「えらい嫌われようだな?仕方あるまいとは思っている。しかし私はこの身体の中に宿る観音菩薩の記憶と知識を得て、自分にとっての利益ある選択を選んだに過ぎない」
「利益ですって?」
「そう。覇王の下で蛇神の血に従っていようと、あの覇王は戦闘狂でな?この世の支配とは関係ないところで世界が崩壊するまで暴れるだろう。しかし私は世界の破滅を望んでいるわけではない。むしろ地上権の支配を得た以上、これ以上何を望むと言うのだ?それにこの延命国では家畜と呼ばれる人間が定期的に運ばれて来る。飢えもなければ天敵もない。まさに楽園と言えるのではないか?」
「に、人間が家畜で餌ですって〜?そんなの許せるはずないじゃないの!」
「本当にそうか?この私が統治する前から地上では妖怪が蔓延り、今や蛇神があちらこちらにいるであろう?妖怪の争いに巻き込まれ、時には餌として村を襲われる恐怖に怯える世の中であったではないのか?しかしこの延命国では無駄な殺生もなければ襲われる事もない。それに病や怪我すら私の手で回復させてやっている。その例に家畜として選ばれた人間を供物として捧げるだけの話。規模で言えばこれ以上の平和の解決策はあるまい?」
「うっ!」
私は言葉に詰まる。
確かに捲簾覇蛇の言っている事にも一理ある。
私が人間だから人間を供物にする事に嫌悪感こそあるけれど、数字的に考えれば救われる人間の数は比較にならないのかもしれない。
けれどけれどけれど!
「百歩引いてそれはそれで平和の形なのかもしれないと思うわ。けど、私達の目的は目先の平和ではなくて友である沙悟浄を取り返しに来たのよ!」
私がぶつけた言葉に捲簾覇蛇は笑みを見せる。
何かしら?あの余裕?
「つまりこの私を殺すと言うのだな?この身体の元の主から私を引き離すとはそう言う事だ。それが何を意味しているか分かっているのか?」
「エッ?」
私の返答に困ったその時、ナタクが答える。
「目先の事にとらわれているのはお前の方だ!法子!この捲簾覇蛇が死ねば何が起きるか分からないのか?」
「えっ?あっ!!」
全て分かったわ。
つまり捲簾覇蛇が死ねば、これは身体を沙悟浄から引き離しても同じなのだけれど、今封印されている覇王が再び外に出てしまうって事になるの。
だから天界も捲簾覇蛇の地上権を許さざるおえないって事なのね。つまり地上の人類を覇王を使って人質に取られたって事。これでは天界も捲簾覇蛇に手を出す事は出来ないって事になるの。
全て捲簾覇蛇にとって計画通りって事なのね!
正直、ここまで練りに練って世界征服するような奴は初めてだわ。
力勝負でなんとかなるって問題じゃないのだから。
「でも、それじゃあ・・・」
沙悟浄は取り戻せないって事になるの?
「嫌よ!私は私の仲間を取り戻すわ!」
その言葉を待っていた八怪が拳を鳴らす。
しかしその前方を捲簾覇蛇を庇うようにナタクと恵岸行者さんが塞いだの。
「何のつもりよ?」
私が叫ぶとナタクは見下ろすように答える。
「俺達は天よりこの捲簾覇蛇を守るように言い付けられていると言っただろ?もしお前達がそれでも刃を向けると言うのなら、それは天への逆心。お前達を逆賊として討伐する」
その言葉は私達に対して静かに攻撃的な威圧。
しかしこの状況を一番戸惑っていたのは天界の武神である二郎真君さんだったの。
「まさか天が蛇神を守れとだと?」
本来なら天の命令は絶対だった。
けれど目の前の捲簾覇蛇は二郎真君さんにとっては楊善さんの仇であって、目の前の捲簾さんの姿を今こうやって自分の器にしている事は私情と言われても許される事ではなかった。
しかしもし捲簾覇蛇を倒せたとしたら、再び地上界に覇王が自由になってしまう事になる。
自分の行動一つで世界が滅びる可能性も?
「お、俺は・・・」
すると八怪は私に言ったの。
「オラは法子はんの言葉に従うら。もし戦えと言うのならオラは戦うら!」
八怪は本来なら今すぐにでも飛び出したかった。
それを自制していたのは覇王がどうこうなんて関係なく、私を案じての事。
もし私の身に何かあれば、それだけが一番許されない事だから。
つまり私の一言で世界の命運かかってしまうの?
私は・・・選択・・・
とりあえず今日は、そんなこんな。
次回予告
捲簾覇蛇を倒す事を禁じられた法子達は?




