軍駝覇蛇の決死の戦い!金吒の覚悟!
孫悟空達が真蛇王テューポーンを倒した。
けれど蛇神の脅威は終わらない。
物語は動き出していた。
此処は覇王の居城。
そこに今、祭壇に拘束具を嵌められて宙吊りにされている者がいた。
しかしその者は蛇神であり、覇蛇の称号を持つ者であった。
しかし裏切り者として今、処刑を待つ所だったのだ。
「軍駝覇蛇、馬鹿な男ですね。しかしお前程度の力で覇王様に逆らおうとする事が愚かな過ち」
それは白蛇法師を連れた白蛇の巫女であった。
「本当にお前は失敗作でした。お前の肉体を祭壇の炎で消滅させ覇蛇の血を取り出させて貰います。そして新たな従順な蛇神に血を与え新たな覇蛇に致します。お前の蛇神殺しの能力は失うのは惜しかったですがね」
宙吊り状態の軍駝覇蛇は黙っていた。
死を覚悟したと言うのか?
しかし今、この覇王の居城には白蛇の巫女だけでなく牛帝覇蛇、そして覇王が座していた。
この場から逃げる事は不可能。
と言って戦う事は死を意味していた。
「ふっ」
「何がおかしい?」
しかし男はこの状況に余裕を見せた。
まるでこの状況を待っていたかのように。
すると覇王は男に問う。
「そろそろ遊ぶとするか?」
その言葉の意味を理解出来ずにいたのは白蛇の巫女であった。
しかし直ぐに理解する。
「そんな馬鹿な事が!?」
突如空間が歪んだかと思えば祭壇が崩れ落ちて、軍駝覇蛇を拘束していた拘束具が粉々になったのだ。
そして着地した軍駝覇蛇が野放しになる。
「休養は取れた。いつでも良いぜ?我が主君、覇王様よ!」
その口の聞き方に白蛇の巫女は怒りと共に蛇気を噴出させる。
「俺は覇王様と話をしているんだぜ?割り込むとはマナーがなってないな?」
「ふざけるな!この私が覇王様に代わりお前を極刑にしてやるわ!」
しかし覇王が白蛇の巫女を制する。
「不粋な真似はよせ!その軍駝覇蛇はこの俺が最初に相手すると決めていた。今までもこの俺に向けて隠しもしない殺気。俺に従うような行動を取りつつこの日を待ち構えていたな?」
「見え見え過ぎましたか?覇王」
そのやり取りに牛帝覇蛇は鞘に置く手を外す。
「この俺に倒されたふりをしていた理由が今分かった。あの男は真の力を隠し、そして覇王様のいるこの祭壇にまで俺に運ばせたと言う事か?あははは!上手く使われたわ!」
「何を悠長な!」
「あの男に我らが覇王様が敗北するとでも?」
「それは決して有りません!」
「ならば見物するとしようじゃないか」
「くっ!」
軍駝覇蛇は自由になった身で覇王と相対する。
「ようやくこの日が来たようだ。覚えているか?覇王、いや!ヤマタノオロチよ!かつて受けた仇をお前の死を持って返させて貰うぞ!」
それは前世の記憶。
軍駝覇蛇は前世で人間だった。
しかし覇王により滅ぼされた島国の巫女を守るために勇敢に戦い命を落とした戦士。
そして現世にて覇王の配下として蛇神として新たな生を受けて蘇ったのだ。
「根に持つタイプとは思ってはいなかったぞ?この俺への怨恨か?どちらでも構わん。この俺を楽しませてくれるか?」
「フフフ。その余裕面を二度と見せられなくしてやろう!」
直後、軍駝覇蛇は飛び出し覇王の間合いに入っていた。
同時に蛇気が蛇神の鎧と化して武装し抜いた蛇剣を覇王の心臓に向けて突き出す。
「!!」
しかし覇王も腰の鞘から覇王の剣を抜刀して受け止める。お互い衝突と同時に万の抜刀を繰り出していた。斬撃が床を斬り裂きながら牛帝覇蛇と白蛇の巫女に迫っていく。
「ふんー!」
牛帝覇蛇も身を守るために抜刀と同時に斬撃を打ち消した。
そして覇王と軍駝覇蛇の一騎討ちを見て白蛇の巫女は驚愕していた。
「どうして奴は覇王様と互角に渡り合えるのだ?そんな馬鹿な事あるはず?」
その問いに牛帝覇蛇は答える。
「あの軍駝覇蛇の能力は「蛇神殺し」だったな?奴は同種を殺す為にその腕をみがき上げて来た。つまりこの日、覇王様と戦い殺すためだけに養われたの力」
確かに軍駝覇蛇は覇王に比べて桁違いの力量に差はある。
しかし軍駝覇蛇には上級の蛇神が下級の蛇神を従属させる覇蛇の力が効きにくい上、
軍駝覇蛇の持つ蛇神殺しの血は覇王にさえ傷を負わせられる能力だった。
互いの振り下ろす剣が交差し衝突した。
「この俺を滾らせてみよ!」
「そのまま殺してやるよぉー!」
しかし長期戦ともなると無限の力を持つ覇王に敵うはずない。
だからこそ短期戦を決めていた。
その為の策も考えていたのだ。
「奥義・弧空斬刀!」
抜刀から振り払われた斬撃。
たかがそれだけの剣筋のはずなのに覇王の身体に傷を負わせたのだ。
斬られた箇所から血が噴き出す。
「ヌッ!?」
覇王もまた理解出来なかった。
斬撃は全て受け止めたはずなのに何故傷を負ったのか謎であったから。
「どうだ?覇王!俺の血は染みるだろ?」
軍駝覇蛇の血は蛇神を殺す。
その血は覇王にすら傷を負わせたのだ。
流れる血が止まらない。
しかしそれより何故攻撃が当たったのかが謎である。
覇王は剣技に関しても一級戦士。
確かに覇王は軍駝覇蛇の剣技を見切り、先も振り下ろす刀を防御したはずだった。
「俺に血を流させるとは予想以上だぞ?受け止めた衝撃も感じた?にも関わらず俺は斬られた。何かカラクリがあるのか?」
「俺の剣技は防御不可能」
覇王は胸から垂れる自分の血を舐めると、再び剣を構えて呼吸を吐く。
「今度は確実に仕留める!」
軍駝覇蛇は刀を傾けると一気に間合いを詰めて斬撃を繰り出す。
その一撃は再び覇王の肩を斬る。
しかし覇王も受け止めるのではなく躱す事で致命傷は避けていた。
「!!」
しかし次の軍駝覇蛇の一撃は早くも受け止められたのだ。
「チッ、もう見切られたか?思った以上に早かったな?片腕一本くらい取って起きたかった」
覇王は刀を弾き返して答える。
「剣技と術を融合させた手品はもう終わりか?」
軍駝覇蛇の剣技は確かに覇王の言葉通り、剣技と術を両方合わせた奥義だった。
振り払う刀に残像を生み出す。
本来残像とは本物と偽物が存在する。
しかし此処から先は哲学的な思考が発生するのだ。
本来なら剣技の際に本物の刃を受け止め、偽物は見過ごすだろう。
しかしこの本物と偽物の判別を入れ変える事が出来たとしたら?
これは軍駝覇蛇の強い意思(思い込み)を空間転移の術と絡み合わせる事で本物偽物のパラドックスが発生する。簡単に言えば受け止められた刀と斬る刀との本物と偽物を都合良い方に入れ変えるって事。
しかしこの太刀もカラクリが分かれば破るのも容易い。
本物偽物の攻撃を両方受け止めるか躱せれば良いだけなのだから。
「次の手品は用意しているのか?」
余裕を見せる覇王に対して軍駝覇蛇は冷静だった。
余裕がある分けではない。
最初から力の差は理解していた。
だから戦うと決めた時からジタバタしても仕方ない。
冷静でいる事で一太刀でも与えられればそれで良かった。
「思っていた以上に落ち着いているな俺は」
軍駝覇蛇は法子と出会った時から、この覇王との一騎討ちまでの流れは決めていた。
覇王を倒す?
そんな事は当初から考えてはいなかった。
軍駝覇蛇の目的、それは?
覇王の足止め!
「覇王!お前の腕一本、土産に貰おうか!」
覇王を倒すのは法子達だと感じていた。
しかしそれはまだ力不足。
だからこそ時間稼ぎが必要だった。
軍駝覇蛇の覚悟は出し惜しみなく覇王に向かって斬りかかる。
「お前は見込みがあった。最初から俺に対して臆することのない殺意。そして強い意志。嫌いじゃなかったぞ?」
覇王は戦士として他の覇蛇を差し置いて、この軍駝覇蛇の事を高く買っていたのだ。
「クッ、ウウウ」
互いの斬撃戦、徐々に覇王の手数が勝り、軍駝覇蛇の身体に斬られ傷が増えていく。
大量に流れる血溜まりの中でも軍駝覇蛇は決して退かずに、決して止める事なく刀を振り続ける。
「終わりにしてやろう。やはりお前では俺には敵わなかったようだ」
覇王の剣が真っ直ぐと軍駝覇蛇の胸を貫き、そして抜くと同時に上段から振り下ろされる。
軍駝覇蛇の胸が裂かれて噴き出す出血。
そして光となって散って消えたのだった。
最期に覇王はニヤリと笑う。
「どうやら手品は残っていたようだな?」
すると頭上に気配がして覇王は斬撃を放つ。
しかし斬撃は四方八方から放たれた光線によって打ち消されると、何者かの声が響いた?
「この私を殺したのですから、もう少し抗って貰わないと死に損ですよ。蛇神の君?目的があるなら最後まで果たそうぞ!その為に私の力を欲したのだろ?」
すると頭上に天界の武神であり、軍駝覇蛇によって殺され死んだはずの金吒の姿があった。
同時に姿が光に包まれ再び軍駝覇蛇に変わる。
「まさかお前に背中を押されるとは思わなかった。お前の命、無駄にはせん!」
すると今度は軍駝覇蛇の周りに幾つもの光の玉が浮かび上がり、覇王目掛けて光線を放つ。
この技は紛れもなく金吒の光術であった。
それでも覇王には敵わない。
その時、軍駝覇蛇は金吒との邂逅を思い出す。
それはエキドナ戦の中での一瞬の出来事。
軍駝覇蛇は金吒を殺す前に魂の同化を試みた。
そして語った。
この世界の理と真実。
そして自分と金吒との関係について。
「お前は何者だ?」
「俺の名は軍駝覇蛇だ。俺とお前は二つの異なる世界に割かれし魂。覇王を討つためには俺とお前の魂を再び一つとならねばならない」
「突然何言ってるか分からないのだけど?」
「ならば見せてやろう!」
すると軍駝覇蛇と金吒の魂が共有し記憶の映像が流れるように入って来ると、金吒は青褪めた顔で信じられないと呟く。
「もしそれが真実なのだとしたら、私の目的の解答と繋がる。世界は本当に釈迦様のお告げ通りになっていたというのか!」
かつて天界を統べていた釈迦如来。
釈迦神の弟子には金吒と金禅子がいた。
そして兄弟子の金吒には釈迦如来により極秘の任務が与えられていたのだ。
その任務のための調査中、金吒は何者かの企てにより天界の反逆者として追われる身になり、地上に降りた所を時の結界に閉じ込められたのだ。
「真実を知った以上、私はこの証拠を持って天界の民に真実を告げる必要がある」
「そんな暇はない。お前は今すぐに俺と同化し一つとなるのだ!さもなくばお前の知り合いの法子なる者が生贄に使われてしまうのでな」
「何だと!?お前、彼女とどういう関係なのだ!そもそも蛇神のお前が何故覇王を討とうとする?」
「それは俺と一つになれば分かる」
「なら何故強制的に実行しない?おそらく私はお前に抗おうと実力的に敵わないだろうからな」
「俺とお前の融合には同意が必要なのだ」
融合に同意すれば金吒は存在を失う。
もしこれが軍駝覇蛇の罠だとしたら?
先程のビジョンも幻術では?
しかし見たのは間違いなく記憶だった。
全て真実を告げた上での交渉。
この世界の真実を知った上で誰にも知らせるすべなく神(人)生を終わる事が許されるのか?
しかし断れば法子の身が確実に終わると。
金吒は法子を思い出していた。
ほんの僅かの出逢いにすぎなかったが、
彼女の数々の奇跡。
人間でありながら神々の心をも動かす存在感。
「!!」
その時、金吒は師である釈迦如来により幾度となく告げられていた伝説を思い出したのだ。
「彼女が神を導きし救世主なのだな・・・
我が師、釈迦様の跡継ぎとなりし運命の子!」
もしそれが本当であるなら、己が命を差し出してでも守る必要がある。
この世界の真実て天秤にかけても。
証拠や確信なんてものは無かった。しかし一度彼女を目の当たりにしたならば、その不思議な感覚を覚える。魂が惹き込まれるような感覚に。
「フッ。いずれ真実は解き明かされよう。それよりも私がやるべき事は今救える命を守る事。しかもそれが彼女であるなら本望と言うべきか」
すると金吒は軍駝覇蛇に自分を刺すように示す。
「天界の武神よ!俺と共に」
軍駝覇蛇は金吒を刺すと、その魂と同化した。
しかし今、覇王の前に散ろうとしていた。
「法子は逃した。後はアイツの仲間達と覇王を討って貰う。だが、俺と共に戦う俺と魂を一つとするあの天界の武神が無駄死ににならないように、せめてもう一撃与えてやる!」
覚悟を決める軍駝覇蛇が蛇気を高める。しかしその気には神気が融合され、さらに上昇していきながら旋風を起こす。そして握られた剣は軍駝覇蛇の血を吸い取り刀身が伸びていく。
「覇王ぉおおお!」
飛び出し、間合いに入ると同時に振り下ろされた刀は覇王を完全に捉えた。
避ける事も受け止める事も不可能な全身全霊の一撃だった。
しかし覇王はこの一撃に対して迎え討つ。
「魂の籠もった良い一撃だ。この俺も本気で挑ませて貰おう!」
その覇蛇の剣に籠められた闘気は間違いなく「本気」の気迫が乗せられ、抜刀された。
「抜刀・握撃滅覇斬!」
その一撃は破滅の覇気!
軍駝覇蛇の振り降ろした刀は先端から塵と化しながら掴む腕から身体を侵蝕しながら消滅させた。
その結末を見て、白蛇の巫女は確信する。
「覇王様に限って何も心配する事もなかったと言うことね。流石は覇王様」
しかし白蛇の巫女は隣で覇王の死合を見ていた牛帝覇蛇の顔が曇っている事に気付く。
「どうした?覇王様の力に開いた口も閉じないのか?」
「アレを見ろ!ふふふ。あの軍駝覇蛇って奴はどうやら本物の曲者だったようだ。奴は間違いなく俺と同じ・・・いや、もっと別の始祖の蛇神だ!」
「何ですって!?」
白蛇の巫女は恐る恐る見た軍駝覇蛇の消滅した場所から、遥かに強大かつ信じられない程の蛇神の力を感じたのである。
「転生変化唯我独尊・・・」
その変化は転生以前の最も力を持つ自分の魂を現世に呼び起こす変化だった。
そして軍駝覇蛇であった者は凶悪な姿をした始祖の蛇神王へと姿を変えていたのである。
「ふふふ、ふはははは!まさか俺の予想と期待を大きく上回ったぞ!やはりお前は最高だぁー!」
しかし覇王は目の前の蛇神の王の前に吹き飛ばされたのである。
「ぐぅわあああ!」
油断も警戒もといてはいなかった。
しかし直接見えない攻撃を当てられたのだ。
「あの応龍をも上回る力をお前から感じるぞ?そろそろ良いだろ?お前は何者だ?教えろ!」
すると新たな真相の蛇神は答えた。
「俺の名は軍駝利明王。かつて世界を滅ぼした覇王だった者だ」
覇王だった者?
今、覇王と覇王の戦いが始まろうとしていた。
次回予告
軍駝覇蛇が軍荼利明王?
これは何が起きているのか?
※すみません。誤って完結になっていました。
まだまだ続きます。
本当に申し訳ございませんでした。




