蛇神伝承編! 継承されし運命
巫女様と螺旋、その命運は?
私は法子。
私は螺旋と巫女様の経緯を見ていたの。
二人は崖から落下し身動きしない。
無事なの?大丈夫なの?生きてるの?
そこに螺旋は眠っていた。
全身打撲で額を切り出血はしていたけれど、巫女様の着ていた衣の破いた布で応急処置がされたいた。
「うっ、ううぅ」
螺旋は意識を取り戻すと同時に辺りを見回す。
全身が痛むけれど、それ以上に心配なのは巫女様の姿が見えなかった事。
「あの女、まさか?」
巫女様は螺旋を治療した後、単独でヤマタノオロチのいる場所へと向かっていたの。
何のために?
ヤマタノオロチは巫女様を生贄にすれば村には手を出さないと言っていた。
巫女様の血を捧げよと。
このまま逃げれば巫女様は助かるけれど村は全滅。
下手をしたら怒ったヤマタノオロチが近隣の全ての村や国を滅ぼすに違いない。
「やはり私は生きていたら駄目だったのね。誰かの犠牲の下に私は生きていこうと思えないわ」
巫女様は自分を捧げる覚悟をしたの。
そして先を行った巫女様を追い、螺旋もまたヤマタノオロチの居場所へと向かっていたの。
「もう逃げたりはしない。俺がヤマタノオロチを仕留めてやる!」
それは相棒であった香梁の仇でもある。
そして何より巫女様を死なせたくなかったから。
巫女様は今、ヤマタノオロチと対峙していたの。
そして叫ぶ。
「逃げてしまってごめんなさい!私は此処にいます!だから村を滅ぼさないで!」
既に村の大半がヤマタノオロチの襲撃に半壊状態だったの。
逃げ延びた村人達は中央の祠へと避難し、今この場には戻って来た巫女様しかいない。
「もう逃げも隠れもしないわ!私が欲しければ生贄にでも何でもするが良いわ!ただし二度とこの地には来ないと約束して!」
するとヤマタノオロチは巫女に問う。
「人間の娘よ」
「!!」
巫女様はヤマタノオロチが人語を語るとは思わなかった。
この化け物は知能が高く、それでいて魔物と片付けるには強大過ぎている。
「お前は喋れるのですか?私の言葉を理解出来ると言うのですか?」
巫女様の問いにヤマタノオロチは答える。
「この俺は天界の武神だった者。しかし堕天して蛇神となった。しかし今の俺は力を覚醒出来ずに永きに渡り眠りついていた。そこにお前の魂の波長を感じここまで来た」
「私が目的?」
「この俺の復活にはお前の魂を生贄にする必要がある。そして復活した後は俺を地上に落とした天界を含め、この蛇神の力を持って世界を壊し尽くす!」
「!!」
それは世界を震わす災厄。
もし自分が蛇神の生贄になれば、目の前の蛇神は力を手に入れ覚醒していまう。
そうなれば世界はこの蛇神に滅ぼされてしまう。
その時、巫女様の胸が熱くなる。
諦めれば簡単。
他の人間の事など考えなければ楽。
身を任せてしまえば?
自分を生贄にした人間達もだけでなく自分を含めた人間種の絶滅。
「私には出来ないのかもしれない」
巫女様は決意したの。
「見捨てる事なんて!」
この絶望的なヤマタノオロチに対して戦う事を!
しかし何が出来ると言うの?
それは自分の命と引き換えにした自爆行為。
ヤマタノオロチに飲み込まれた時、その内部から浄化の力を解放して自爆するつもりだったの。
けれどヤマタノオロチを仕留める程の力は持ち合わせていない。けれど動けるくらいになるまでの足止めはしてみせる。ここに来る前に村の者達に説得して回った。村を放棄してでも生き延びるようにと。
しかし目論見は外れた。
村人達は鍬や武器を手に取り集まって来たの。
何故?どうして?
この村の民は村は放棄出来ても巫女様を見殺しには出来なかった。
命を落と覚悟で未子様を守るために恐怖を乗り越えヤマタノオロチの前に現れたの。
「皆さん!お願い、逃げてぇー!」
巫女様の言葉虚しく、ヤマタノオロチは非力で無力な村人に障気を吹きかけると、その猛毒に村人達は次々と塵となって消えていく。
しかし本望だった。
人として、巫女様と心中する覚悟だったから。
その姿に巫女様は涙する。
「私なんかのために」
これ以上の被害は避けなければならない。
巫女様は手にした勾玉に気を込めると叫んだの。
「お前の目的は私でしょ?私を好きにしなさい!」
するとヤマタノオロチは念力で巫女様を宙に浮かばせると、口を開きその中に落とし飲み込む。
巫女様がヤマタノオロチの中に消えようとしたその瞬間、口が完全に閉ざされると同時に何かが飛び込んで来たの。
「うぉおおおおおおお!」
それは巫女様を追う螺旋の姿だった。
巫女様は閉じていく光に照らされた螺旋の姿に気付くと、身体を締め付けるように抱き締められ、共にヤマタノオロチの体内へと落下していく。
「どうして貴方が?螺旋!」
「どうしてだと?言ったろ巫女さん?俺がお前を救ってやるとな?」
「けれど私はこの蛇神諸共自爆しなくてはなりません!それが私が此処に来た意味。予言にて見た決められた宿命なのです!」
「宿命か?ならその予言を俺が変えてみせる!」
しかし二人はヤマタノオロチの中。
もう抗う事なんて出来るわけないわ!
しかしヤマタノオロチの様子が何か変?
急に動きを止めたかと思うと、震えだしたの?
何が起きていると言うの?
すると腹部が光る?
それは刀の先端のように見える。
すると斬り裂くように動き内部から人影が抜け出て来たの。
「うっうぉおおおお!」
それは巫女様を抱き抱えた螺旋の姿だった。
胃袋に達する前に内部から刀を突き付け、巫女様を抱え、血に塗れながら斬り裂き、ついに外側へと抜け出る事に成功したの。
しかし。
「ら、螺旋!螺旋!」
泣き叫ぶ巫女様の前に大量の障気と猛毒の血を浴びた螺旋が意識朦朧と横たわっていた。
「どうだい?巫女様、約束は守っただろ?」
「螺旋、どうして貴方が私のためにそこまで?」
もう螺旋は助からないと思う。
すると螺旋の身体が痙攣しながら震え出す?
「!!」
見ると螺旋の皮膚が蛇のように変色しているの?
まさか人間が蛇神化していると言うの?
「なぁ、巫女様よ?そう言えばまだ報酬を貰ってなかったな?」
「そんな事より螺旋!貴方の身体が!」
「あぁ。このままだと俺は人間でなくなる。だからその前に俺を人として終わらせてはくれよ?」
「そ、そんな!私にはそんな事」
「出来るさ。何せ巫女様はこの世界に必要とされているからな。この俺がいなくなった後も、強く生きていかなければならないからな」
螺旋は最後の力をふり絞り腰の短刀を巫女様に手渡すと、瞼を綴じたの。
「螺旋。私は貴方の事は決して忘れません。ありがとう」
手にした短刀を押し込み螺旋の心臓を止めた。
そして喉が涸れるほど泣き叫んだの。
けれどこれで巫女様は助かったのね。
助かって?
「そんな馬鹿な事って!?」
巫女様の前にヤマタノオロチが見下ろすように立ち上がっていたの。
けれど巫女様は恐怖する事なく見上げ睨み付ける。
何て勇ましいの!?
「私はお前を許さない!必ずお前を倒す!例え私が駄目でも、その子供が、その子孫が必ずお前を滅します!」
その言葉にヤマタノオロチの姿が人型へと変わっていく。
鎧を纏い剣を持った蛇神として。
そして大剣を巫女様の眼前に向ける。
「人間の分際でこの俺に啖呵をきるとは良い度胸だ。今殺すには惜しくなった。良いだろう。楽しみにしているぞ?人間の女よ」
「えぇ。必ず!」
すると巫女様は名乗ったの。
「この私、卑弥呼が!」
その名を聞きヤマタノオロチだった者も名乗る。
「俺の名は那我羅!この名を忘れるでないぞ?次に相見える時、その首を頂こう」
すると那我羅の姿が歪む空間の中へと消えたの。
けれど話はそこでは終わらなかった。
今から起きた出来事に私の魂が揺さぶられたの。
取り残それた卑弥呼様の前に突如、
新たな強き力を持つ神々しい存在が閃光を放ち降臨したの!
「あ、アナタは何者なのですか?」
「オマエの強き魂に導かれ現れてみた。卑弥呼、オマエを私の後継者として認めよう」
「えっ!?」
光の存在は卑弥呼様の身体に融け込むようにきえると、卑弥呼様の瞳が金色に光り輝く。
この時、この星を世界を魔の手から人々を救済する救世主が誕生した。
「螺旋。私は貴方に誓うわ!もう二度と諦めたりしない。
未来永劫続く卑弥呼一族の始まり。
そして覇王となる那我羅との深い因縁。
私は目が覚めた後も茫然としていた。
何故って?
軍駝覇蛇の前世の記憶は私にも切っても切れない因縁があったから。
私には分かるの。
あの卑弥呼様は後に世界を魔物の脅威から守るために組織を造ったんだわ。
魔物に対抗する退魔の組織である総本山の礎。
そして言葉通り卑弥呼様の救世主の力は子孫へと引き継がれながら未来永劫へと続かれた。
何故、そんな事まで知っているかって?
だって私も他人事じゃないの。
私の母の名前は卑弥呼。
それは先祖代々引き継がれた名前。
けれど私は母は私に名を継承する前に命を落としてしまったから、
その名を継承出来ずにいる。
本来なら私は継承するはずだったの。
運命と伝統に由緒ある代々引き継がれて来た卑弥呼の名を!
あはは。
どうして私がこの世界に来てしまったのか?
何故こんな世界で孫悟空達と一緒に世界の命運をかけた戦いに巻き込まれたのか?
状況の流れに身を任せ考えてなかったけれど、意味あったのね?
何か私、もう絶対に引き返せない所まで来てしまったのかも。
そんなこんな。
次回予告
法子と軍駝覇蛇、その脱出劇はまだ終わっていない。




