覇王を倒せ!頼れる三元帥!
覇王が魔導覇蛇の息の根を止めようとした時、
彼を救ったのは法子だった。
私は法子。
覇王の手に魔導覇蛇は敗北した。
その命が奪われようとした時、いても経ってもいられずに飛び出したのは私だった。
そしてその私を守るのは、魔導覇蛇によって一度は敗北した八怪、二郎真君さん、ナタクだったの。
「無理だ。敵うはずない。奴等じゃ覇王には敵わない。この僕にすら敵わなかったんだ」
泣きじゃくり恐怖して脅える魔導覇蛇に、私は一言答えてあげたの。
「あの三人を舐めないでよね?」
「何を言ってるんだ、君は?」
それでも信じられない魔導覇蛇だったけれど、覇王の前に八怪と二郎真君、ナタクは戦う気満々なの。
「玄壇元帥・顕聖二郎真君」
「中壇元帥 ( ちゅうだんげんすい)・ナタク」
「天蓬元帥・八怪ら!」
名乗りをあげた三人は私を背にすると、
「オラが来たからもう安心ら!」
「油断はするなよ?八怪」
「覇王、お前を討伐する!」
現れた三人の戦士に覇王は笑みを見せる。
「この俺に臆する事なく強い魂を感じるぞ。偽りではなく真の牙を剥いて抗う者達よ!楽しもうではないか?命の駆け引き、戦いの宴を!」
覇王は剣を抜き手にすると、同時に二郎真君さんが前方から、ナタクが上方から、そして八怪が二郎真君さんの後ろから突進する。
「三尖両刃刀」
その三又の刃が突き出されると覇王は下方から弾き返し、そのまま上方のナタクの振り下ろす剣を受け止める。そして前方から殴りかかる八怪の拳を左腕で受け止めたの。まるで爆発のような三箇所の衝撃が遅れて大地を揺るがす。
「小手調べは必要ない。本気を出せ?さもなくばその命、吹き消すぞ?」
覇王の挑発に三人は雄叫びをあげる。
「うらぁあああ!」
「うぉおおおお!」
「ハァアアアア!」
誘爆するような三人の神気の高まり。
「まだまだ手緩い!」
振り払われる覇王の剣に吹き飛ばされながらも三人は足場を踏み込み堪えつつ止まると同時に再び攻撃の手を止めなかった。
その姿を見て魔導覇蛇は首を振る。
「絶対に敵うはずない。僕の力が何一つ通用しなかったんだ。結界も破壊され、仕掛けた攻撃の全てが傷一つ付けられなかったんだぞ?あんな三人がいくら足掻いても直ぐに終わっちまうよ!」
脅えて涙を流す魔導覇蛇に、
「勘違いしないで?あの三人はアンタより何十倍も凄いんだから!何せ私が認めた三人なんだからね」
「君が認めた?だから何なんだよ!奴らに何が出来ると言うんだよ!」
「まぁ、見てらっしゃい」
私の見つめる三人は本当に強いんだから。
三人の攻撃をあしらう覇王は八怪に興味を持つ。
「ナタクと二郎真君は天界でも名高い英雄神だったな?だが、お前は魔神族だな?何者だ?」
「オラは八怪、お前を破壊するら!」
「ホォ?破壊神ときたか?面白い」
八怪は漆黒の神気を込めた渾身の拳を放つと覇王は剣を鞘に収め、自らも拳で受け返す。
「うぬぅらああ!」
「確かに良い拳だ。強く重く、そして攻撃的な拳だ。だが、未熟」
覇王は受け止めた拳にさらに力を込めると、八怪の拳を押し返して弾き飛ばす。
そこに左右から二郎真君さんとナタクが回り込むと
再び鞘から剣を抜いた覇王は目を輝かす。
「次はお前達か?来るが良い!」
ナタクは全身に雷を纏い身体能力を高め、神速の動きで突進しながら抜刀する。
「カッ!」
覇王はナタクの神速の剣の抜刀に合わせるかのように剣を合わせ弾き返していく。
そして全ての攻撃を弾いた後、蹴り飛ばした。
そこに神気を高めた二郎真君さんが、
「聖獣変化唯我独尊・哮天犬」
神獣の力を纏いし神気の波動が覇王を飲み込む。
「強き魂を込めた一撃だ。だが俺に傷を負わせるほどではないな」
放たれた波動を差し出した片手で受け止め握り潰したの。
圧倒的な力の差だった。
けれど三人の闘志は止む事なく神気はさらに高まっていたの。
「ナタク、勝算は?」
「あると思うか?」
「フッ、なら勝利をこじ開けるしかない」
二郎真君さんとナタクの目は少しも戦う意思が消えてない。
その姿を見て、
「分からない。何をどうやっても勝てるはずないだろ?もう終わりだ!何もかも終わりだ!この僕が手も足も出なかったんだ。アハハ。絶望だ」
「だから何?諦めて何か変わるの?勝てる勝負じゃなきゃやらないわけ?教えてあげる。頭で無理と考えても行動一つで未来は変わるのよ!決められた運命なんてクソ喰らえなんだから!」
私も諦めない。
「皆も諦めてないのだから、私も直ぐに動けるようにしなきゃ!例え手も足も出なくても、頭突きくらいしてやるんだから!」
そんな私を見ても魔導覇蛇は理解の範疇を超え頭を抱える。
「それにしても変だ」
「何がよ?また泣き言?」
「違うよ。覇王には僕の考え得る全ての攻撃を仕掛けたはず。にも関わらず覇王には傷一つ付かなかった。精神攻撃も魔法も呪いも、核弾頭すら無力だった。なのに何故?」
「なるほどね。まだ理解してなかったのね?」
「何がだよ?」
「アンタの攻撃は全て思いがないの。魂が籠もってないのよ?素人の貴方には分からないかもしれないけど、私達の常識では魂の強さが支配するの」
「思い?」
つまり魔導覇蛇の使う能力には全て籠められた思い、魂の力なんて薄っぺらいもの。
ただ発動しただけの能力。
それはそれで恐ろしい能力なのだけどね?
もし魔導覇蛇が高難度の炎弾丸を放ったとしても、魂を強く籠められた下級の炎術の弾丸にすら貫通されてしまうのよ。思いの力は強弱に関与する。
だから見た目だけの大袈裟なだけの大術なんて恐くなんてないの。
だから八怪達も直ぐに回復したし、死ぬ事はなかった。
正直、魔導覇蛇よりも九蛇達の方が意思があった分強敵だったと思うわ。
強い念があって初めて敵の防御を打ち破り攻撃が命中する。魔導覇蛇の見た目だけの大技攻撃は覇王の防御を打ち破るほどの攻撃力は無かった。器だけの傀儡となった覇蛇や九蛇は能力や力が強くとも意思の力が失われていれば覇王を倒すなんて無理。
もし生前のまま戦っていれば、それこそ一矢報いる事も出来たかも。唯一、あの蛇神を産み出す念が籠もった蛇神城を兵器にした巨大兵は確かに覇王に多少本気を出させたようだけど。
私は三人の戦いを見守る。
八怪達の一度一度に魂の念に籠められた攻撃は覇王の防御に迫りつつあったの。
「魂の力って何だよ?特別なエネルギーか何かか?それともオーラの量?気か?それとも?」
魔導覇蛇は頭を抱える。
魂の力とは、その者が培った経験と生きて来た人生そのものが形となり、生命エネルギーとして濃縮され磨かれていくもの。
いくらチート能力で形だけで魂の許容範囲を広げても無駄なの。
根にある魂が薄ければ見た目と威力はたかが知れてるから恐くなんてないの。
だから素人の一般人が特殊な能力で手に入れた力が凄かろうと、その過程がなければ成長もなければ限界値も限られた薄っぺらい力。アニメや漫画みたいなご都合主義なんて現実世界じゃ有り得ないのよ。
え~とね?
例えるなら突然大企業の社長になって経営任されてもスキルと資質がなければ倒産しちゃうでしょ?
これ、分かりやすいかな?
社長の肩書きだけもえるからな〜
なら、タレントオーディションで有名ドラマの主役に抜擢されて、見た目だけ整形して頑張っても演技力も無く視聴率下がって打ち切りみたいな?
少し分かりやすくなったかな?
有名大学の受験を受けれるチャンスがあっても今まで勉強疎かにしていたら受験料がパ〜みたいな?
と・に・か・く!
戦いとは培って来た魂と魂のぶつかり合いと言っても過言じゃないのよ。
「それじゃあチートは?」
「あるわけないじゃないの!」
そもそも私達が戦っているのは人外とは違う神様レベルのモンスターなのよ。私達の予想を上回り理屈が通用しないの。なら戦う相手の土俵に乗らずして対抗する手段も倒す事も出来ないわ。
「うらぁああああ!」
八怪から漆黒の闘気が竜巻のように巻き起こる。
更に二郎真君さん、ナタクも同じく闘気を解放させたの。伝わって来るわ。三人の気に乗せられた強い思いが!それは生き様、これまで乗り越えて来た歴史が力となって私にも響いてくる。
「全然分からない。何もかも。それこそ漫画やラノベの精神論じゃないのか?そんな目にも見えない計測不能の数値が何になるんだ?」
魔導覇蛇の常識が通用しない状況にただ困惑し、解析出来ない数値に戸惑うばかり。
もう放っておこうかな。
「それでも覇王は桁違いの化け物だわ」
あの三人を相手に余裕綽々と遊んでいるよう。
「神速・電光石火!」
ナタクの無数の残像と雷の如き不規則な方面からの同時攻撃。
それは覇王の全包囲を塞ぐ。
「!!」
覇王は剣を振り回しながら全ての攻撃を弾き返しながら、ナタクの動きを捉える。
「くぅーーー!!」
突き出された覇王の剣がナタクの顔面に迫った時、ナタクは構わずに突っ込む。
「うぉらあああ!」
身を低くした八怪のアッパーが覇王の突き出した剣を直撃し軌道を変える。
そこにナタクが紙一重で突進しつつ渾身の雷撃を乗せて突き出したの。
「!?」
ナタクの剣を覇王は二本指を挟み止める。
が、ナタクは冷静に足裏の火炎輪の回転を倍速させて業火を放ち蹴り出す。
「ナタク、その程度か?」
覇王は挟んだ剣を力任せに動かすとナタクの上体が崩されて軌道を逸されたの。
「うぉおおお!」
そこに二郎真君さんが覇王の間合いに入り込む。
全てがコンビネーション。
「覇王!その首貰ったー!」
二郎真君さんの突き出した三尖両刃刀が覇王の顔面を捉えた。
その刃先は、ピタリと止まる?
「そんな馬鹿な?」
覇王は眼前に迫った刃を歯で噛み止めたの。
「ニャ」
同時に放たれた覇気が三人を吹き飛ばす。
何て強さなのよ?
それにしても覇王の戦い方って?
「まるで戦場を生き抜いて来た泥臭い戦術。武神の剣術といった型に嵌まらない戦い方はまるで」
二郎真君さんの見立て通り。
「戦場で生き抜くための戦術ら。オラと同じな」
八怪も自分と似た覇王の戦いの匂いを感じていたの。覇王なんて大層な相手からは想像出来ない戦い方は底辺から戦場を生き抜き、生き延びるために考えて考え、その身に擦り込むように鍛え上げ成り上がって来た者の戦い方。
「こういった輩は厄介だ。まるで隙がない」
ナタクも緊迫していたの。
異常な緊迫感がナタクに向けられていたから。
それは覇王の視線。
「かつては手も足も出なかった闘神が、今では俺の指先一つで・・・」
覇王は指を立ててナタクに突く。
一発目は躱せた。
しかし二発目はナタクの胸を貫く。
「ぐはぁ!」
そして三発目がナタクの額に向けられ貫こうとした時、
覇王の突き出した指先は割り込んで来た者の蹴りで弾き返し引き戻されたの。
「どうしたよ?ナタク!この俺様にたった一度勝って、リベンジする前に死ぬなよな?」
「お、お前は!?」
ナタクの危機を助けたのは炎を纏う少年。
その元気そうな姿を見た私と、そして戦闘中の八怪は目を輝かせたの。
「お前が覇王か?お前は俺様が倒す!」
その炎を纏い、頭上に二本のクロ角を持つ赤髪の少年の名は、私達のよく知る。
「紅孩児!!」
そして覇王は背後に迫る強い殺気に反応する。
「本当に今日は俺を飽きさせぬ」
殺気の正体は腰の刀を二本抜いて抜刀する。
同時にナタクと紅孩児君は飛び上がって躱すと、その斬撃の直撃は覇王を襲った。
その姿を見て八怪は勿論、二郎真君さん、ナタクでさえも心強くなったの。
その者は地上界の東の大地を統べる妖魔王。
そして孫悟空の義兄弟で紅孩児君のお父さん。
「平天大聖・牛角魔王!」
今、新たな心強い味方が現れたの。
そんなこんな。
次回予告
紅孩児と牛角魔王の参戦で戦いは更にヒートアップする。
打倒、覇王に勝機は?




