少年二郎真君と二人のナタク??
何とか二体の九蛇を倒す事が出来た。
しかし他の九蛇も恐るべき能力を持っていた。
私は法子。
蛇神城に先に侵入したはずの八怪が倒れている?
その目の前には遊女九蛇が笑って見下している。
まさか彼女に負けたって言うの?
嘘でしょ?ねぇ?八怪!
話は少し遡る。
八怪は蛇神城へ突入したと同時に一目散に向かった場所は、
「・・・」
八怪は目の前に並べられたモノに対して無言で目を綴じて両掌を合わせて呟く。
「いただきますら〜」
えっ?
そこにはテーブルに置かれた御馳走が並べられ、八怪は感謝するように口の中に放り込む。
って、黒豚じゃなくなったのに食い意地は変わってないのね?
てか、私の価値は食べ物以下かい!
「さてと、そろそろ向かうらか」
八怪は立ち上がると先程から食事をとっていた自分を見下ろしていた蛇神の女を睨んだ。
「例えオナゴでも蛇神には手を抜けないらよ?オラは今、力有り余っているらからな」
蛇神の女の名前は遊女九蛇。
「私の主、魔導覇蛇様のために昨晩から愛情を込めて私が作った手料理になんて事なの!お前、許さないわ!許してなるものですかぁー!」
すると八怪を中心に部屋の風景が変わる?
まるで花畑のようだった。
「なぁ?転移らか?違うな」
別の空間に飛ばされたかと思われたけれど、部屋中に残っている食事の残り香が移動されたのではないと気付かせてくれたの。
「んぬ??」
突然の目眩?視界がボヤける?
コレは幻覚のはずの花の花粉から匂う臭いに何やら薬が混ぜられているようだったの。
「こんの!」
八怪は自分の額を壁に叩きつけて幻覚を解こうと試みる。
額が割れて血が流れ落ちる。
「オホホ!そんなで私の幻術は解けなくてよ」
すると地面から骸骨の頭をした蛇神の兵士が何体も出現したの。
「邪魔するなやー!」
八怪は拳で骸骨兵を一撃で粉砕した。
「ぐはぁ!」
何故か八怪の方が吐血し腹部から血がふきだしたの??
な、何?どうなってるの?
「オホホホ!その蛇骸兵に手を出せば、その攻撃は全部アンタに戻って来るのよ」
ソレって?攻撃出来ないって事なの?
蛇骸兵が二体、三体と出現する。
「ウォらああ!」
それでも八怪は裏拳で迫る蛇骸兵を粉砕する。
「うっ」
当然、その衝撃は激痛となって全身に広がった。
「やむを得ないら」
八怪は見上げた先の遊女九蛇を見定めると、
群がる蛇骸兵を押し退けて遊女九蛇の間合いに入り拳を奮ったの。
「術者のお前さんを倒せば、操り人形も止まるらろうなや!」
八怪の拳は遊女九蛇の腹部に直撃した。
が、しかし?
遊女九蛇はニヤリと微笑むと八怪の方が腹部をおさえて膝を付き、遊女九蛇はその八怪の前髪を掴み顔を上げさせる。
「あら?お前も割りとイケるイケメンね?けど魔導覇蛇様の方が数十、数百倍イケメンだわ!だから剥製にして置物にしてあ・げ・る」
まさか本体にも攻撃出来ないの?
そんな〜
その少し離れた蛇神城の内部にナタクが向かって来ていた。
そして一際広い場所に出ると、四方から蛇神兵が襲いかかる。
「ふん!」
その抜刀は閃光の如く。
一刀の振りは蛇神兵を一撃で粉砕したの。
二手に分かれる通路から迷うことなく右側を選ぶと直進していく。
抜けた場所は闇に包まれた空間だったの。広さも間隔も分からない。
そしてその先から感じる殺気?
「九蛇だな?」
ナタクの問いに闇の中より人影が薄ぼんやり現れたの。
その九蛇は眼帯で両眼を隠している以外、特に強い力を感じなかった。
「ハズレだったか?多少腕の立つ者を望んで来てみたが、残念だ」
ナタクは溜息をつく。
「ふふふ。確かに私本体は貴方に敵いません。見なくとも分かりますよ?貴方の力量。その美しい容姿からは不釣り合いなほど感じる神力と洗練された武神としての資質。どれをとっても上級。今の私では手も足も出せないでしょうね」
「なら道を開けるか?」
「いえいえ私も九蛇として通させるわけにもいきません。それに私は貴方が欲しいのです」
「?」
「寧ろ私は貴方になりたい!」
不気味な事を言う九蛇は眼帯を外すと、その眼が輝きナタクを包み込む。
「キサマ!!」
ナタクの正面には今、なっ?なっ?
ナタクがもう一人いる??
「そう言えばまだ名乗っていなかったな?俺の名前はナタクだ!ナタク九蛇と呼べ」
ナタク九蛇の能力は眼帯の下に隠していた魔眼。
魔眼の能力は目の前の者の容姿だけでなく、その能力を奪う能力だったの。
「俺に化けるとは洒落にもならんな」
ナタクの閃光の如き抜刀が抜かれた。
が、その剣は同じく閃光の如き抜刀と衝突し止められたの。
「言ったろ?お前に出来る事は全て俺にも出来る。だからお前を殺せば俺が真のナタクになるのだ」
ちょっと?ちょっと!
けれど今、一番危機的状況なのは間違いなく二郎真君少年なのよね。
その身体は幼く、これまで培って来た強靭な肉体も技術も神力も失っていたの。
それでも戦う事を止めなかった。
哮天犬の背に乗り、相手の攻撃を躱す。
けれど勝てるはずないわ!
だって攻撃したら、それだけ歳を奪われちゃうのよ?
倒す事なんて出来ない。
本当に無理ゲーよ!
「逃げてばかりいても奴は倒せない。しかし手立てが浮かばない。何か攻略があるはず!」
双像九蛇の能力は恐らく呪術。
自分の命と引き換えに、相手から歳を奪う。
「そろそろ飽きて来たな〜。もう終わらせようかな?後一度僕を殺してくれたら、食べ頃なんだけどな〜。う〜ヨダレ出て来た」
すると二郎真君少年に向かって攻撃を仕掛ける。
双像九蛇の目的は攻撃を仕掛ける事で二郎真君少年に攻撃を仕向ける。そして攻撃されれば歳を奪い、赤子にまでなって無抵抗になったところを生きたまま丸飲みするのこと。
正直、二郎真君少年には打つ手が無かった。
呪術師との戦いのセオリーは二つ。
術者を倒す事なのに、術者に手を出す事で発動するこの呪いは厄介なの。
もう一つは術者を封じ込める手段なのだけど、並の結界では上級蛇神には通用しない。
大掛かりな発動を要するため、準備が必要。
更に今の少年の身体では術を発動するための神力が余りにも足りな過ぎるの。
その直後!
「は〜い!もう我慢出来ないからいただきマス」
突如背後に出現した双像九蛇の身体がムクムクと巨大化して上半身より下が大蛇へと変わっていく。
そして大口を開き、前方を飛び回る二郎真君少年と哮天犬を背後から飲み込んだの。
口の中で暴れる二郎真君少年。
しかし傷付けられる度にその姿はどんどん歳を奪われ抗う力も失っていく。
そして暴れていた動きが静まり大人しくなってしまったの。
「ご馳走さまでした〜」
えっ?二郎真君さん?
食べられたなんて嘘よね?
嘘と言ってよ?
そして再び八怪の戦いにも異変が起きていたの。
「くぅ〜はぁ、はぁ」
八怪は自らの攻撃の衝撃を受けていた。
「うらぁー!」
八怪は自分の前髪を掴む遊女覇蛇に手刀を放ち手を離れさせた。
「あら?まだ元気なのね?そうか、さっきの私への攻撃は手加減したわね?」
「ふん!蛇神らろうが、女子に本気は出せないら」
「あら?見かけによらず紳士ね?あなた?」
すると八怪の傷付いた身体が再生していく。
そう。八怪も蛇神に劣らないくらいの不死体。
どんだけ傷を負っても再生するの。
「そうなのね。けれどいつまでもつかしら?」
八怪の周りに蛇骨兵が集まって来る。
遊女九蛇だけでなく、この蛇骨兵にもまた攻撃すれば全て自分自身に返って来てしまうの。
そんな相手に勝てるはずないわ!
けれど八怪は構わずに蛇骨兵を粉砕し暴れ回る。
同時に自らの身体にも衝撃を受けるけれど、それでも攻撃の手を止めなかった。
全身血だらけの中でも戦い続ける八怪を見ていた遊女九蛇は次第に不気味さを感じ始める。
「何なの?狂戦士なの?」
本来なら一体倒す事で十分死に至る。
それを既に百体前後は破壊しているのだから。
「どうやら拉致があかないわ。意識を断った後に首を落として、二度と目覚めないように眠らせた方が良いのかしら?それとも異空間に閉じ込めておこうかしら?」
不死の八怪に対して攻略方を見出した遊女九蛇は戦っている八怪に向かって妖術を繰り出したの。
部屋中に花ビラが舞い散り、強い香りが増していく。それは精神を操り、心を途切れ指す。
八怪は一瞬目眩がして視界がまた変わる。
それは過去の自身のトラウマが廻らされる。
かつて救えなかった二人の師。
転生前の師である捲簾。
八戒の時の師、三蔵。
目の前で自らの力が及ばなかった事で助けられなかったそれが師への贖罪。
自己否定。
それがトラウマだったの。
「うがぁああああ!」
確かに八怪は計り知れない強さを持ったかもしれない。けれど心のトラウマは乗り切ったと思っていても、やはり引きずってしまうのは心の弱さ。
じゃないわ!
優し過ぎるのよ。
しかし精神への攻撃は八怪の戦意を失わせていく。
比例するかのように再生力が鈍くなり、ついに血だらけの状態で倒れてしまったの。
「うふふ。思った通りだわ。魂の方は脆かったようね?クスクス。さて、また動き出す前に解体して別々に封じちゃいましょ」
すると遊女九蛇は自分に向けて刺すような視線を感じて動きを止めたの。
「あら?侵入者は三人って聞いていたのに変だわ?アナタは誰?どうやって入って来たの?」
えっ?他にも誰か来ていたの?
そこには紅い蛇神の鎧を纏った女がいた。
「あら?お前、蛇神よね?だったら邪魔しないでくれる?直ぐに終わるから」
すると強烈な蛇気が鞭のように足下を粉砕して遊女九蛇の行く手を阻んだの。
遊女九蛇は楽しみを邪魔され苛立ち殺気立つ。
「どう言うつもり?格下の蛇が私のような美しく格上に歯向かって生きていられると思うの?」
すると紅色の蛇神は答える。
「彼は強いです。心も肉体も。ただ優し過ぎるからお前のような醜い化け物でも、本気で手を出せないの!八戒さんは女性には決して手を出さないから!」
その姿を見た時、私は涙ぐむ。
もしかして、貴女?
る、瑠美ちゃんなの?
そんなこんな。
次回予告
瑠美?
彼女の話は160話からと201話から読み直すと登場してます。




