王の器の勝利!龍蛇大戦終幕!
玉龍と浦島。
そして暴走した蛟魔王。
さらに狂気の輝皇覇蛇の三つ巴の戦いの行方は?
玉龍と浦島、
二人を中心に前方からは狂戦士と化した輝皇覇蛇、そして後方からは豹変して向かって来る蛟魔王。
「さて、どうすっかな〜?あ〜なった乙姫さんに以前、殺されちまったからな〜俺」
「えっ?」
それは冗談ではなかった。
暴走した乙姫、蛟魔王は見境なく目の前に存在する者を殺すだけの化け物となると言う。
「前方の狼、後方の虎ってわけか?あはは」
「笑ってる余裕ありませんよ」
浦島は大槍を構えると叫ぶ。
「少年!来るぞ!」
「えっ?は、はい!」
すると二人は見上げたのだ。
それは後方の蛟魔王が先に迫り、寸前で上空へと飛び上がったからである。
蛟魔王は頭を押さえながら苦しそうな顔をしていた。
その様子に浦島は気付く。
「乙姫さん、あの状態で自我があるのか?なんて精神力だよ!本当に!あはは」
そして玉龍も状況が分からないまま見ていた。
「一体、蛟魔王様はどうなってしまったんだ」
蛟魔王は二人を避けて輝皇覇蛇に襲いかかる。
浦島は二人の戦いから目を離さないように戸惑う玉龍に説明を始める。
「乙姫さんの、あの能力こそ龍神族がひた隠しにしている三種の宝器の一つ、龍神の勾玉さ!と言っても、その正体は神を殺す魔眼だよ」
「えっ!?」
その力は八百万以上の訓練された神族が数こそ劣る龍神界に手を出せなかった秘密がある。
ただ龍神族が戦闘民族なだけではない。
龍神達がひた隠しに守り続けて来た三種の宝具の存在があったから。
剣と盾、そしてこの呪われた魔眼。
蛟魔王はかつて、天界から宝具を手に入れる為に忍び込んだ腕の立つ武神から宝具を守るために、この魔眼に手を出してしまった。
勾玉は蛟魔王の左目に侵蝕し、宿主として認めたのだ。
神々はこの魔眼の所有者をこう呼ぶ。
「忌眼体蝕者」と。
蛟魔王は魔眼の暴走から同族を守るために追われる身のレッテルを貼られながらも龍神界から地上界へと逃亡し、魔王として生きた。
だからその秘密を知る者は限られていた。
この浦島もその一人。
「あの魔眼が目覚めたなら乙姫さんは自我を失い暴走する。だから今まで俺が乙姫さんの中(魂)から力を抑え込み封じていたのだけどな〜、うん。あの出血が理由なんだろうな」
「出血?それと何か理由が?」
「今に分かる。それに気付かないか?少年」
「えっ?うっ!!」
玉龍は吐き気を感じる。
それは蛟魔王の血の匂いが原因だった。
しかも身体中が無意識に震え始める。
「こ、これは?」
すると浦島も二人の戦いを見ながら全身から冷や汗をかいている事に気付く。
蛟魔王は向かって来た狂乱する輝皇覇蛇と衝突していた。
限り無く力が膨れ上がる力を発揮する輝皇覇蛇に対し、蛟魔王は、
「お、お前なら、力を抑える、必要なさそうだ。」
そう言って魔眼を解放させたのだ。
同時に理性が飛び、本能の思うがまま攻撃をする。
「うがああああああああああ」
輝皇覇蛇から繰り出される槍のような鋭い手刀をその身に受け血を噴き出す。
「蛟魔王様ぁー!」
助けに出ようとする玉龍を浦島は静止させると、
「アレでは死なないよ。それより血を流させた事で、始まるぞ!神喰の魔眼の血の宴が!」
「!!」
傷付いた蛟魔王の身体から流れる血が床に溜まると、その血が生き物のように動き始める。そして生き物の如く伸びて来て、鋭い槍のように輝皇覇蛇に向かっていく。
「!!」
輝皇覇蛇はその血の槍を本能的に躱した。
あの血に触れる事を本能が危険だと嫌がったのだ。
「ぐぅルルル!」
その血から発する障気?
輝皇覇蛇の蛇神の血もまた全ての神妖魔を降す魔性の力を有するが、その真蛇の血と反撥したのである。
同じ呪われし血。
互いの血が混じり合うと蒸発するように消滅した。
「反撥しているのか?」
相反する血の力に互いの能力は打ち消され、その身体能力のみの戦いが繰り広げられる。
しかし浦島と玉龍は二人から発する血の障気に当てられて意識が飛びそうになった。
「恐いです。僕は輝皇覇蛇よりも蛟魔王様の方が」
その率直な意見に浦島は答える。
「確かに怖いよな。乙姫さんはよ。けど、それでも俺は乙姫さんを守るって決めたんだわ。うん。オナゴは多少強くて逞しい方が惚れちまうんだな。その乙女さんが苦しんでいるなら、俺は命を捧げてでも助けたい。これは俺の願望なんだわ」
浦島は二人の戦いに目を離さずに見ていた。
その手には大槍は掴んだまま。
タイミングを見て参戦するつもりなのだ。
それで万が一、巻き込まれ、助けるべき蛟魔王の手によって殺されても本望。
あわよくば敵の隙を作れるなら結果的に自分がいる意味があると。
その決意に玉龍もまた覚悟を決める。
「おいおい?少年?お前まで死ぬ子とないだろ?」
「僕は死にませんよ?蛟魔王さんも、そして貴方も殺させません!その為に僕は僕の力を奮います」
「あはは!見た目の大人しい雰囲気とは違って強欲だな?少年は?」
「僕なんてまだまだですよ。僕の知る、憧れる皆さんは一度口にして信じたら最後、必ず未来を掴み取れる欲深い方々ですから!」
「ほぉ〜?それは頼もしいな。そっか、なら俺も不幸な結末よりも幸運な結末を〜」
浦島は気合いを込めて叫ぶ。
「掴み取ろう!」
「はい!」
輝皇覇蛇も蛟魔王の戦いは獣同士の荒々しい戦いが繰り広げられていた。
互いの血は拮抗する猛毒のようなモノ。
受ける痛みも衝撃も防御を無視した殺し合い。
お互い多量の出血を流しながら息の根を止めるための見境のない戦いだった。
「あの蛇神は王様である事に強い拘りを持っていたようだが、そりゃ〜失格だわ。本当の王様ってのは慕われてこその王様なんだよ。それに比べ俺の恋しい乙姫さんは王様に相応しいと思ってる。その証拠にこの戦いの勝敗が物語るんだわ」
浦島は手にした釣竿を振り回す。
その先端には武器である大槍が釣り針の代わりに付けられていた。
「ウォおおおお!」
そして蛟魔王と輝皇覇蛇とのバトルの中に向かって釣り竿を投げ付けたのだ。
「浦島流・投槍」
ソレは大振りだが渾身の強力な一投。
浦島の投げた大槍は空気の壁を貫き音速から閃光の如く速さで向かって行く。
蛟魔王と輝皇覇蛇は大槍の接近に本能的に気付く。
が、目の前の敵の攻撃も迫っていた。
もし大槍を躱せば敵の攻撃に対応出来ない。
かと言って、大槍を無視すれば二人纏めて貫かれてしまう
。なら、どうするか?
大槍の攻撃では不死力のある輝皇覇蛇は死ぬ事はない。
が、目の前の敵の血の能力は己を殺すと本能が告げていた。
なら?当然、大槍は放置する。
蛟魔王もまた本能的に目の前の敵にのみ集中する。
二人の攻撃が眼前にまで迫り、同時に浦島の大槍が直撃するその時!
「うわりゃあー!」
この戦場にてもう一人の戦士の存在。
玉龍が浦島が投げた大槍と同時に駆け出し、その大槍に追い付いたのだ。
そして大槍に向かって蹴り飛ばす。
玉龍の蹴りは大槍の軌道を僅かに反らした。
蛟魔王の背後から紙一重で大槍は逸れてその先の輝皇覇蛇の顔面半分を吹き飛ばしたのだ。
同時に蛟魔王の血に染まった拳が動きの止まった輝皇覇蛇の胸に突き刺さったのである。
「うぎゃああああ!」
全身に蛟魔王の神殺しの血が流れ広がっていくと輝皇覇蛇は苦しみもがきながら後退し、
「な、なんれ・・・だ」
その結末を見た浦島は呟く。
「本当の王様には命がけで信頼に値する俺たちみたいのが集まるんだ。一人では王様にはなれないんだよ。それが器ってもんだ。俺が言うのも何だけどな〜あはは」
輝皇覇蛇は天を見上げながら塵も残さず粉々になって消滅した。
この時をもって、覇蛇最強であった輝皇覇蛇を倒し、
龍神族と蛇神族の大戦が終わっ・・・
が、終わらない。
「さてと一難去ってまた一難だな、やっぱ」
浦島の視線の先には、暴走した蛟魔王が戦うべき的を失い、視線をこちらに向けたのだ。
「こ、蛟魔王、様?」
玉龍は蛟魔王の手が自分に迫って来ている事に身動きが出来ずにいた。
まるで蛇に睨まれた蛙のように青褪め冷や汗が止まらなかった。
「!!」
そこに浦島が玉龍を庇うように蛟魔王の前に出る。
「二度、いや?三度目かな?乙姫さんに殺されるのは?あはは!けど、愛する人に殺されるなら本望か?俺てば一途に健気」
フザケているようだが、その目は真面目だった。
「どうするつもりなのですか?」
玉龍の問いに浦島は答える。
「俺の命を乙姫さんに送り、魂から暴走を抑えつける。昔はそれで何とかした。でも、もし失敗したら少年は逃げろよな?」
「そんな・・・」
「一か八か、やるぞー!」
浦島は武器を手放して地面に落とす。
そして無防備な状態でゆっくりと蛟魔王に近づいて行く。
「さぁ〜鎮まって!大丈夫、大丈夫。俺は乙姫さんの味方だ!」
浦島は自らが殺されたと同時に命を蛟魔王に注ぎ込み、荒ぶる魂を抑えようとしていた。
その身を犠牲にした覚悟と決意。
「あっ」
その時、浦島は気付いてしまった。
蛟魔王の目から血の涙が溢れている事に。
それは再び浦島を殺してしまう自分自身を許せなかった。
愛した男を殺してしまった行為がトラウマになっていたから。
もう二度と、もう二度と。
血の涙の先の熱い視線は告げた。
「わ、私を、殺しておくれ?今度はお前の、手で、なぁ?浦島よ・・・」
それは蛟魔王から浦島への願いだった。
「そぅかぁ・・・嫌だよな、自分の好きな相手を手にかけるなんてな。それでも俺さ、乙姫さんには生きて、生きて笑っていて欲しいんだわ」
二人の思いは互いに相手を生かせたい。
しかし生き残るのは一人だけ。
しかし考えている暇はなかった。
血の涙を流しつつも、その身体の自由は無く、目の前に立つ浦島に向けて神殺しの血に染まった手刀を振り上げていたのだ。
「俺は乙姫さんに!」
しかし残酷にも手刀は浦島の心臓に向けて振り下ろされてしまったのだ。
「!!」
目を見開く浦島は、その視線の先に光り輝く塊に驚愕していた。
「こ、コレは蛟の盾!?」
蛟の盾は龍神族が誇る最強硬度の盾。
この盾は輝皇覇蛇との戦いの最中に蛟魔王の手から外れて吹き飛ばされてしまっていたはず?
なのに浦島の窮地に出現して身を守ったのだ。
でも、何故?
すると蛟の盾に亀裂が入っていく。
神殺しの血の前に蛟の盾も脆く破壊されてしまったのだと思われた。しかし、蛟の盾は輝き散らばった盾の破片の亀裂の入った中より更に神々しい盾が出現したのである。その盾は蛟魔王の突き出した手刀に絡み付き、勝手に装着される。
「う、うぐぅううう!」
すると蛟魔王が苦しみ出して全身の血が引いていくではないか?
「お、乙姫さーん!」
慌てふためく浦島に、
「心配する事はないぞ。乙姫は無事じゃ」
「えっ?」
声のしたそこには霊体が立っていた。
その霊体を見た玉龍は涙を流して呼びかける。
「お、応龍様ぁ!」
応龍とは蛟魔王と白龍王の実父であり、この龍神界の英雄。
そして先の覇王との戦いにて戦死した。
「儂に出来る父親として最後の餞別じゃよ」
直後、蛟の盾の紋章が代わり応龍の紋章が写し出される。そして蛟魔王の全身に応龍の鎧が装着すると神殺しの血の呪いが収まっていき瞳の色が元の緑色の瞳に変わる。
「ち、父上・・・」
すると笑みを見せ応龍の魂は消えて逝った。
「父上が私達を救ってくれたのだな」
蛟魔王は涙を流していた。
戦闘中に失った蛟の盾は吹き飛んだ後、応龍の亡骸の懐に入り込んだ。そこで応龍の血を吸った蛟の盾は進化し応龍の盾として復活したのだ。
そして消えかけていた応龍の残留思念により蛟魔王の危機を救った。
「乙姫さーん」
浦島は駆け寄ると蛟魔王を抱きしめる。
「ベタベタするな」
嫌がる素振りを見せつつ涙を流しつつ笑みを見せた。
そんな二人を見て玉龍も涙を流していた。
すると蛟魔王が二人に告げる。
「これから私は龍神族の誇りにかけて覇王を追う!恐らく生きて帰れる保証はないな。お前たちはどうする?」
すると浦島と玉龍は頷き答える。
「何を今更?俺は乙姫さんを守るために存在するんだからな。当然さ」
「僕も行きます!きっと法子さん達も戦っているはずですから!僕も少しでも力になりたい!」
二人の決心に蛟魔王は背中を向けて答えた。
「心強いよ、本当」
そして崩壊した龍神界を後にした。
そしてその先の上空に覇王はこの結末を知る。
「面白い。この地上界にも俺を疼かせる猛者がまだ存在するのだな」
しかもその手には?
あの龍神族が守り次いで来た宝剣が握られていた!!
次回予告
再び物語は法子のいる戦場へ
そこには魔導覇蛇が謀反を起こし神城を手に入れていた。




