青龍王の高潔な意思!
黒龍王の戦死。
しかし大嵐六尾を倒した事で戦局は龍神族に傾くかに思われた。
輝皇覇蛇の前には四海龍王であり最強無敗を誇る龍神界の英雄・青龍王が膝を付かされていた。
その姿に傷付き倒れている赤龍王も目を疑る。
「あの青龍王がそんな馬鹿な」
しかし理由が分からないわけでもなかった。
自分自身も輝皇覇蛇に触れられた時に突如力が抜けるような感覚を覚えたから。
それは自分が戦った炎灼六尾の能力である炎属性の炎を奪う炎喰にもにていたが、青龍王とは属性も異なる。しかも力を吸収されるとは何か違う違和感。それが理由で青龍王も苦戦しているのだろうと気付く。
その能力が何なのか?
「力が消されてるわけでは無いな。これは俺の力が無意識に抑え込まれているのか?」
青龍王は己の身に起きている違和感に気付く。
「まさかお前、龍狩人か?ソレも高異種の龍の血を授かった?」
龍狩人?龍狩人とは龍を殺せる力を持った人間の事である。
それは過去、龍神同士で争いがあった時に誕生した龍の血を受け特殊な能力を得た人間。
龍神は龍神同士で殺し合うのではなく、自らの能力を授けた人間に殺し合いをさせた。
龍の血を持った人間は龍をも殺せるほどの強靭な肉体と特殊な能力を持った兵器に違いなかった。
しかし龍の血を受けた人間は短命。
五年生存率が良い所であった。
しかし生存していた。
それは子孫へと血を残す事で。
龍狩人の血を持った赤子は半人半龍の龍人と呼ばれるようになる。
龍人は人と同じ寿命ではあるが龍を殺せる能力を持っていた。
龍人は天界からも龍神からも疎まれ討伐される対象になっていた。
今より三百年も昔にも発見された龍人達の討伐命令が下された事があった。
龍人達をかくまっていたのは万聖龍王(魔王)と呼ばれる半人半龍の戦士だった。
しかし天界の暗殺部隊に全滅させられたのだ。
龍人の血は途絶えたと思われていた。
しかし目の前に現れた輝皇覇蛇は間違いなく龍狩人の子孫に間違いなかった。
しかも蛇神化した化け物として龍神族に牙を剥けて来たのだ。
「ふふふ。確かに俺は龍の血を持つ龍狩人の末裔だ。いや、だっただけの事。今の俺は龍神の血だけでなく覇王様の蛇神の血をも持つ選ばれし者!この世界を掴む者だ」
輝皇覇蛇から発する覇気は青龍王を退かせる。
「くっ!だが、それだけではない!お前の中に流れる龍の血は、その高貴な血は、まさか?」
青龍王の目の当たりにする輝皇覇蛇の身体から発する蛇気とは別に発する気は金色に輝く高貴な龍気。
そんな気を発する者は龍神界では唯一無二の者のみ。
「なるほど。ようやく分かった。無意識に俺がお前に対して本気になれなかった理由。お前、その身に流れる血は我らが龍神族の王!黄龍様の神聖な血だな?」
その問いに輝皇覇蛇は青龍王を見下ろしながら答えたのである。
「冥土の土産に聞かせてやろう」
それは一国の皇子として軍を率いて蛇神討伐に出た時の話。
当然、人間が武器を手にしようが、どれだけ集まろうが蛇神を相手に出来るはずはない。
それでも剣を手に皇子は戦った。
皇子の一族、王族は神聖な血を受け継いでいた。
それは遥か昔、この王族の祖先が龍の血を得た龍狩人であったから。
しかも龍神族最高神である黄龍の血を受けた最強の龍狩人。
過去、龍同士の戦いの終結を黄龍が急いだために自らの神聖な血を人間の王族に与えたのだ。
当然、龍狩人は覚醒すれば五年しか生き長らえない。だから構わなかった。
しかし予想外の問題が発生していた。
それは人間の繁殖、血の継承。
親から子に、更にその子に血は受け継がれたのだ。
血の継承は薄まり、その力を覚醒させられる者は永く現れなかった。
しかし才のあった皇子は龍の血を覚醒させたのだ。
人間には決して到達出来ぬ動き、漲る覇気。
まさに龍神の如き強さで蛇神と戦った。
しかし戦っていた蛇神もまた並の蛇神ではなく古の血を引く血統だったのだ。
仲間である人間達は二人の戦いの巻き添えに吹き飛ばされ、弾かれ、圧し潰され、虫が潰されるように赤い血を噴き出しながら死んでいく。
死んでいく仲間達の血を全身に浴びながら皇子は蛇神と戦う事に悦を感じていた。
それは戦闘に狂いし龍の血に導かれるかのように。
そして蛇神の開いた口へと皇子が飲み込まれると、皇子は胎内から剣を突き出して斬り裂るき出て来た。
絶叫する蛇神の血を浴びた皇子の身体は既に呪われていた。皮膚が変色し鱗が、その姿は蛇神と化していたのだ。龍の血を覚醒したら最後、短命で命を終わるはずが、蛇神の不死の血で死を恐れる事は無くなったのである。今、ここに龍神と蛇神の血と力を両方持つ最強の戦士が誕生した。
「この俺は選ばれし蛇龍の王!輝皇覇蛇だ!」
その出生を聞いた青龍王は無言で立ち上がる。
「問題無い。所詮は借り物の力!本当の龍神の力を見せてやろう!」
青龍王は青龍刀を構えると龍気を高める。
「うぉおおおおおお!」
大地が揺れ動き青龍王を覆うように龍の姿をしたオーラが立ち込める。
「龍神族最強と名高い青龍の伝説も、この俺の前に屈して終わらせてやろう」
その向ける掌から金色の龍が飛び出して青龍王におそいかかる。
その牙と爪が迫る中、
「青龍斬刀断!」
青龍王は振り下ろした青龍刀で一刀両断にした。
振り払う青龍刀を再び構えると、
「いざ参る!」
飛び出すと同時に斬りかかる。
「!!」
その気迫に輝皇覇蛇は咄嗟に剣を抜き受け止める。
「この俺に剣を抜かせるとはな」
互いの剣が衝突する中、激しさを増す剣は幾度となく交差しぶつかり合う。
覇気と覇気の衝突は龍神界を震撼させながら。
「このまま龍神界を破壊してやろうか?」
「そうは、させん!」
青龍王は間合いを取ると両手を交差させながら上下に移動させながら龍気を高める。
天を統べる天龍と、大地を統べる地龍。
青龍王の持つ最強の奥義!
「天地滅龍!」
大地から地の龍が!
空から天龍が!
この二匹の龍がクロスした時、その相手は龍の顎で全身を砕かれたかのように敗れさる。
天から降りる龍と大地を這う巨大な龍が迫る。
その天地両挟み撃ちの攻撃に逃げ場は存在しない。
例えるなら鋏?
その中心の的はただ死と消滅を待つのみ。
「小賢しい!」
輝皇覇蛇は上下同時の攻撃を受け止める。
「この程度か?この程度で俺を倒せると思うなら片腹痛い!俺は選ばれし者!」
しかし青龍王は口元に笑みを見せて答える。
「だろうな?だから俺はお前を倒す事に出し惜しみはせん!これが俺の全力だ!」
すると青龍王の左右から新たな龍が出現する。
「左右龍武!」
それは上下左右からの全包囲最大攻撃。
新たに加わる左右からの龍の攻撃が輝皇覇蛇の受け止める防御を破壊して、直撃したのだ!
「ば、馬鹿な!?この俺の防御を破壊するなんて?
だが、俺は負けんぞ!!」
しかし青龍王は更に力を増す。
「逆鱗・三枚!」
それは限界を超える逆鱗の解放。
「くっ、ぐぅわああああ!」
龍の咆哮が輝皇覇蛇を飲み込んだのだった。
「終わったのか?」
一部始終を見ていた赤龍王は戦場に静けさが残った後に輝皇覇蛇の気配を探る。
輝皇覇蛇の気配は完全に消えていた。
が、赤龍王は気付く。
青龍王が身動き出来ずに警戒を解いてない事に。
その視線の先に見えるモノは、皮?
まるで脱皮したかのような皮が残っていたのだ。
間違いなかった!
輝皇覇蛇は脱皮して青龍王の攻撃から免れ、更に強大な力を増して生き残ったのである。
その居場所は、
「上かぁー!」
まるで太陽と被るように輝皇覇蛇は上空に浮いて自分達を見下ろしていたのである。
「多少は驚かされたが、この俺を倒すまでには及ばなかったな?次は俺の番だ!」
すると上空に点々と無数に光るモノが出現しながら増えていく。
ソレは蛇の姿をした光の矢!
光の矢が今にも龍神界全土に振り下ろされようとしていた。
「くっ!間に合わん!」
赤龍王は降り注ぐ光の矢に向かって炎を放とうとするが、その数は龍神界を囲うほどであった。
全てが降り注がれれば、龍神界にいる全ての生きとし生ける者全てが矢に貫かれ、更に大地を貫き、この龍神界が塵と消えるだろう。
輝皇覇蛇は一人でも容易に龍神界を一瞬で消し去るほどの力を持ち合わせていたのだ。
「滅びよ!龍よ!」
上空が閃光に覆われ光の矢が降りて来る。
龍神界に残っていた民は上空を見上げるしかなかった。
もう駄目だ、助からない。
誰もがそう思った。
しかし光の矢の進行は龍神界を覆う程の巨大な何かによって遮られたのだ。
「ほぉ?愚かな選択をしたな?青龍」
輝皇覇蛇は上空より見下ろしながら、その遮った正体に対して呟いた。
輝皇覇蛇の放った龍神界に降り注ぐ光の矢を遮ったのは巨大な蒼き龍神だった。
その正体は青龍。
青龍王は巨大な龍の姿へと変化し、全身に無数の矢を受けながら龍神界を守ったのだ。
「己の身を呈して国を守った事は褒めてやろう?しかしお前が死ねば、この俺から誰が国を守ると言うのだ?俺は容赦なくお前の守る国を滅ぼすのだからな!」
新たに無数の光の矢が出現して青龍王に向けて放たれると、全身を貫きながら傷付いていく。
その高潔な意思は龍の民を生かすために我が身を盾にしたのである。
「止めろぉー!!」
そこに飛び出したのは赤龍王だった。
「これ以上は俺が許さん!」
「許さんだと?誰が誰にモノを言っている!ゲス者がぁー!」
輝皇覇蛇の振り払った掌から光の矢が赤龍王に向かって放たれたのだ。
「うぉおおおおお!」
全身から灼熱の炎を噴き出させ光の矢を消滅させる。
炎を纏う赤龍王の目は覚悟していた。
青龍王が身を呈して守った龍神界を、今度は自分が守らないといけないのだと。
だが、その時背後から肩に手を置かれた。
「!!」
気配はなかった。
完全に隙をつかれた。
しかしその正体を目にした時、赤龍王は目を見開き驚きを隠せなかった。その場にいたのは?
「お、応龍様ぁ!」
年老いた老人の龍神がそこにいた。
しかし、その者こそ天界の最高神ですら脅威を抱く龍神界最強の龍王なのだから。
「どうして応龍様が?ここは私が!」
「迫る脅威にいても経っても居られずにな?それにこれ以上、龍神界を好きにはさせられん」
「確かに輝皇覇蛇は強敵です。しかし応龍様が自ら戦場に出るなど」
「そうではない。儂が相手する者は」
「?」
そこに輝皇覇蛇が会話に割って入る。
「応龍自ら俺の相手をしてくれるのは光栄だ!そこの赤龍では俺の相手には不相応なんでな」
「なんだとー!」
その直後、輝皇覇蛇は全身に鳥肌が立つ。
それは応龍から放たれた殺気に本能が怯んだのだ。しかし、その殺気は自分に向けられたモノではなかったのである。同時にその向けられた殺気の相手の存在に気付いた時、輝皇覇蛇は全身を硬直させた。
「ば、馬鹿な?どうして貴方が此処に?」
その視線の先に現れたのは、
「覇王!」
まさか龍神と蛇神の戦いに、覇王自らが戦場に現れたのである。
応龍も覇王の存在に身を震わせていた。
「久しく感じていなかった武者震いじゃ。まだ儂にも残っておったのじゃな?強者との立合いに漲る戦闘本能がのぉ」
蛇神族の覇王と龍神族最高峰・応龍。
今、お互いの種族の存続をかけた戦いが始まる。
次回予告
まさかの覇王の出現に、龍神界を背負う応龍は勝利出来るのか?




