修蛇六尾と牛角魔王!?
修蛇六尾と熔毒覇蛇を相手になすすべもなかった紅孩児。
その危機に現れたのは、父親である牛角魔王であった。
ついに孫悟空の義兄弟・牛角魔王が戦場に立つ!
そこは東の地。
東の地を統べる牛角魔王は今、修蛇六尾を相手に死闘を繰り広げていた。
修蛇六尾から繰り出される攻撃は躱す事が出来ない必殺の拳。
牛角魔王もその攻撃に翻弄され苦戦をしていた。
牛角魔王もまた黒き牛角帝の鎧を纏っている。
それでも攻撃が当たれば肉体に直接衝撃を受けてダメージを受けていた。
そこで考えた戦略は、
「抜刀奥義・二刀返三角刑」
二刀の剣から繰り出される斬撃を休む暇なく繰り出す事。
「躱せないなら、お前に攻撃さえさせなければ良い話だ!うぉおおお!」
しかし修蛇六尾もまた防御も達人であった。
牛角魔王の繰り出す嵐のような斬撃の中を恐る事なく躱しているのだから。
そして隙を突いては拳が繰り出される。
「うがっ!」
牛角魔王の顎に直撃してひっくり返る。
「イタタ。なかなかの腕前だ」
「拍子抜けだ。これが今の地上界を統べる妖魔王と呼ばれる者の力か?少なくとも俺が戦場を駆け巡っていた頃の千年前の魔王はもう少し手応えがあったぞ?この俺は数千年の間、戦場を渡り歩き続け、己を磨き上げたのだからな!」
「そう言うな。俺も久々の戦場で鈍っていた身体と感覚を慣らしながら戦っているのだ。だがスロースターターの俺もそろそろ熱くなって来たぞ?」
「その言葉が嘘でなければ俺の攻撃をどう凌ぐか受けてみせよ!」
修蛇六尾が構えると、その直後見えない攻撃が牛角魔王を襲う。
牛角魔王は攻撃を両腕を交差して受けながらこの必ず命中する攻撃を分析していた。
例えば透明とか目に見えない攻撃?
否!
それとも何かを飛ばしている?
否!
しかも光速を超える速さの攻撃?
否!
もしかしたら、気のせい?
かな!?
それは予想をひっくり返すような答えだった。
「気のせい」とは勘違いって意味ではない。
「お前の攻撃のカラクリが見えて来たぞ?なるほどな。どうりで・・・」
その直後、修蛇六尾の放った躱せないはずの攻撃が牛角魔王の振り下ろした剣に命中して弾かれる。
それは偶然ではなく二度三度とも攻撃を剣で受け止め凌いだのだ。
「ば、馬鹿な!?」
「お前の奥義の秘密を暴いてやったぞ」
牛角魔王は確信を持って説明してみせる。
「お前の奥義の秘密。それはお互いの念の同調が形となる能力。それは思い込みによる暗示のなせる技だな?」
本来、格闘家の勝敗を左右するのは強い思いである事を前提とする。それには自信と不安であり、例えば戦う相手が格下で必ず勝てる自信がある場合、余計な力が抜けて本来の力を最大限に使えたりしないだろうか?逆に不安がある場合、萎縮して本来の力が出しきれなかったりするだろう。
これ即ち「思い」である。
更に敵を前にして絶対に勝ちたい!負けるものか!と勇む思いが本来以上の力を発揮したりしないだろうか?更に恐れや不安が重なり余計な怪我を負ったりしないだろうか?
修蛇六尾が絶対に躱せない絶対に命中して敵を倒す思いという強い思い。
逆に敵は必ずダメージを受けるという強い思いが相互の強い念となってリアルな現象として物理的な攻撃のダメージを与えていたのだ。
「何故最初から不意討ちをしなかったのか?自分の奥義をわざわざ語り警戒させる必要が何処にあったのか不思議であってな?自信からなのか?それともそれは出来なかったのではないかと答えを導いてみたのだ。だから最初に直接攻撃を仕掛けて実際のお前の攻撃の威力を擦り込む必要があった。違うか?」
「・・・・・・」
無言と沈黙。
すると修蛇六尾は両手をあげて答える。
「正解だ。見事に俺の手品を暴いたな」
修蛇六尾は意外とさっぱりしていた。
「地団駄を踏み悔しがるかと楽しみにしていれば余裕ではないか?それとも強がりか?」
「馬鹿め。最強を目指す俺がこの程度の事で怯むと思うな?俺が目指すは覇王の道!我らの覇王様は今の俺の遥か先にいらっしゃる。この俺はその高みを目指しているのだ!そしてお前は小手先の攻撃が通じない猛者だと理解した。よって俺は今から自分自身の限界を超えてお前を仕留めてやろう」
「どうやら他にも何か秘策が他にもあるようだな?良いだろう。この俺にお前の限界を見せてみろ!」
すると修蛇六尾は懐から小壷を手に取り、一気に一息するとその小壷の蓋を外して中身を飲みこむ。
「何だ?その中身は?何か力を活性化させる霊薬か何かか?」
その時、気付く。
修蛇六尾に起きている異変に。
全身から大量の汗を流して全身の血管が浮かび上がる。そして全身の血が沸騰するかのように身体の皮膚から血が噴き出し始めたのだ。
「ハァーー!」
気合いを発した後、落ち着き始めた修蛇六尾が答える。
「今、俺が飲んだのは覇王様より頂きし、覇王の血よ!この血を飲み、その荒ぶる苦しみを耐え凌いだ者は見事、覇蛇と呼ばれるのだ!」
それは儀式に近かった。
覇王の血は確かに強力な力を持つ霊薬とも言える。
しかしその血は猛毒でもあったのだ。
現在覇蛇と呼ばれる者は全てその血に認められた者達のみ。
かつて以前にも候補に成り得る力の有る数体の蛇神がいたが全て血の力に飲まれて跡形もなく消滅した。
覇王の血は限界を超えられる者のみ適合する。
だからこそ覇蛇候補の猛者達は力と引き換えに覚悟を示さなければならなかった。
現在、適合者は八体の覇蛇に白蛇の巫女。
そしてマダラとマダムと呼ばれる二体の蛇神のみであった。
そこに今、修蛇六尾が新たな覇蛇として覇王の血の適合者として存在出来たのである。
「ふぅー!俺は血の力に認められたのだ!これより俺は新たな覇蛇。修蛇覇蛇と名乗ろう!ふははははは!」
「も〜ういいかい?」
歓喜に酔い痴れる修蛇覇蛇に対して冷めた顔の牛角魔王が尋ねる。
「昇格したばかりで喜ぶのは分かる。だがお前が相手をしているのが、この牛角魔王だと言うことを忘れたのか?昇格祝いのお前にはこの俺から直々早々と引導を与えられるのだからな!」
「出来るのか?この覇蛇の俺に!」
修蛇覇蛇から発する蛇気は重圧となって牛角魔王押し潰し足下が陥没していく。
「とりゃーあ!」
牛角魔王は重圧の中を一歩一歩踏み出しながら前進して行く。
しかし修蛇六尾は更に唱えたのだ。
「覇蛇鎧武変化唯我独尊!」
修蛇覇蛇の姿が蛇神の鎧を身に纏う。
「覇王様に与えられし鎧。この鎧を纏った今、俺に負ける事はありえぬ!」
修蛇覇蛇の繰り出した拳は見えないといった攻撃ではなかったが、剣を交差し受け止めた牛角魔王はその威力に弾き飛ばされる。
「うごぉおおお!」
吹き飛ばされながらも転げ様に立ち上がった牛角魔王は自分の手にしていた剣が砕け散っている事に気付き青褪める。
「お?俺の愛刀がぁああ??」
大事にしていた剣が使い物にならなくなって溜息を付いた後、鞘に言葉をかける。
「後で供養してやるからな?」
そして相対する修蛇覇蛇を睨むと、
「桁違いだ。手品よりずっと驚異だぞ!」
「その割には怯えてないようだが?正直、今の俺は自分の全開が分からぬ。力の加減は出来ぬため次はお前を跡形もなく消し去るだろう。覚悟は良いな?」
「面白い。かかってこい!」
牛角魔王は懐から宝貝を取り出すと、中から新たな剣が二本出現する。
「牛双の黒刀」
両手に構えた刀で受け手立つ。
直後、修蛇覇蛇が繰り出した手刀が牛角魔王を襲う。避けたにも関わらず、その破壊力は牛角魔王の纏った牛角帝の鎧を粉砕したのだ。
「確かにとんでもない。純粋なる極限にまで磨き上げた拳か。牛角帝の鎧がなければ砕け散ったのは俺の身体の方だったな?しかし防戦一方ではいずれ捕まる!ならば俺もまた攻撃をもって相手をしよう。攻撃こそ最大の防御!」
牛角魔王は両刀を構えると、修蛇覇蛇の攻撃に合わせるように構える。
「そうか、牛角魔王よ!ならば悔いの残らぬように全開でかかって来い!それがお前の最期の攻撃になるだろう」
互いに次の攻撃に全精力をかけていた。
蛇気と妖気が高まりながら衝突し合い、二人を中心に乱気流が巻き起こる。
「いざ!参る!」
二人は同時に動いていた。
修蛇覇蛇の突き出した手刀は蛇のように伸びて一直線に牛角魔王の顔面を捉える。
「見切った!」
牛角魔王は突き出された手刀を紙一重で上体を下げて躱すと滑り込むように回転しながら刀を振るった。その剣先が修蛇覇蛇の身体に食い込む。
「馬鹿な!?」
牛角魔王の剣は覇蛇となった修蛇覇蛇の生身の肉体に傷こそ付けど、斬り裂くまで至らずに血管の浮き出し真っ赤に染まり強化した細筋で止められてしまったのだ。
「ウヌっ?刀が抜けん!?ふん!ふん!」
「無駄だ!どうやら決着が付いたようだな。牛角魔王よ?お前は俺の手で跡形もなく消滅するだろう」
修蛇覇蛇が身動きの出来ない至近距離の牛角魔王に向かって蛇気が揺らめく手刀を突く!
「仕方あるまい!」
牛角魔王は寸前で自らの刀を手離して手刀を躱し、そのまま飛び上がりながら距離を取る。
「剣士が自らの武器を放り出すとは思わなかったぞ?そこまで生に執着するとは見苦しい。これが噂に聞く牛角魔王とは俺も過大評価していたようだ」
牛角魔王は言い返す言葉もなく、
「その刀返してくれんか?値打ち物だからそう手に入らないのだけれど〜」
「本当に呆れた奴だ!」
修蛇覇蛇は自分に突き刺さったままの牛角魔王の剣を抜くと、牛角魔王の目の前で圧し折った。
「ああぁ〜俺の刀が〜」
本当に見苦しい。
これが最強と呼ばれた大魔王なのか?
「もうお前に興味は失せた。消し去る!」
その狂気の目付きは我を失っていた。
対して牛角魔王は呟く。
「まさかこんな所で奥の手を見せる事になるとは思わなかった。やはり蛇神とは並々ならぬと言ったところか?」
すると牛角魔王は両手を交差させて唱える。
「悪あがきはもう止めるが良い!お前はもう跡形も残さずに消し去るのだぁー!」
それは渾身の一撃だった。
放たれた攻撃は大地を削り、地響きをあげながら牛角魔王に迫る。この一撃は牛角帝の鎧も、攻撃の刀も失ったままの無防備な状態の牛角魔王では間違いなく跡形もなく消滅するのは確実だった。
その時、修蛇覇蛇の視線が泳ぐ?
「ななな?」
牛角魔王の背後に巨大な山が出現する?
今の今まで、あのような山が存在していたのか?
否、その山は突然視界に入り現れたように思えた。
すると、その不可思議な山から響くような声が発せられたのだ。
『ようやく儂を呼んだようじゃのう?牛角よ!』
それは動き出す山。
否!山ではない!
その姿は巨大な大亀のようであった。
「久しぶりだな?力を借りるぜ?霊亀よ!」
霊亀?
霊亀とは四霊と呼ばれる聖獣。
背中の甲羅の上に「蓬莱山」と呼ばれる山を背負った巨大な亀の姿をしており、
しかも孫悟空の朱雀、白虎、玄武と言った四聖獣よりも格上の存在。
また紅孩児の聖獣鳳凰もまた四霊と呼ばれていた。
そして牛角魔王は霊亀を従えていたのだ。
唱えるのは聖獣変化。
『四霊変化唯我独尊・霊亀!』
直後、修蛇覇蛇の放った波動が直撃した。
「馬鹿なぁ!!」
修蛇覇蛇の波動は牛角魔王の持つ盾によって分散して消えていく。
「驚いたか?霊亀の盾は現存する最高硬度を誇る。お前の攻撃は俺には効かんぞ!」
至高の盾と呼ばれる神器が存在する。
龍神族の誇る蛟の盾。
更にその上には伝説の応龍の盾がある。
その応龍の盾と同等の力を持つのが四聖獣の玄武が所持する玄武の盾。
そして最後に玄武の盾以上の盾が存在した。
それが霊亀の盾と言われている。
つまり現存する史上最高の盾なのだ。
「フゥーー!!」
そして今、牛角魔王は霊亀の鎧を身に纏っていた。
「史上最高の盾だと?面白い!その盾をこの修蛇覇蛇が砕いてみせよう!」
今、最強の攻撃力を持つ修蛇覇蛇と、最強の盾を備えた牛角魔王の最後の一騎討ちが始まる。
次回予告
霊亀を手に入れていた牛角魔王。
その試練は楽ではなかった。




