奪われた沙悟浄!現れし白い脅威!?
生きていた蝕王覇蛇が奪ったのは、
沙悟浄の身体だった。
蝕王覇蛇に奪われた身体は、もう。
私は法子
それは予想外の出来事だった。
二郎神君さんが倒したと思われていた蝕王覇蛇がまだ生きていたの。
しかも自分を倒した二郎神君さんの身体を奪うために追い掛けて来て、それに気付いた私達に追い込まれた末に奪った身体が・・・
「沙悟浄ー!」
沙悟浄の身体を手に入れた蝕王覇蛇はその力の無さに絶望を感じていた。
妖気は並だし腕力は弱小。
しかも全身が痛くて痛くて仕方ないの。
それもそのはず。
喰殖覇蛇を倒した功労者が沙悟浄で、その痛みは勲章のようなものだから。
「何故だ?何故出ない??」
蝕王覇蛇は沙悟浄の記憶から魔眼の力を知ったの。
喰殖覇蛇を倒したその奇跡的な力があれば、この場から逃げ出す事は勿論、戦えるかもしれないと考えたのに魔眼の力は発動しなかったの。
これでは囲まれた私達に殺られてしまう。
「なんて失態なんだぁ〜!!」
蝕王覇蛇は叫んで狼狽える。
「蝕王覇蛇よ!覚悟するのだな?もう逃げも隠れも出来んぞ!」
二郎神君さんが剣を抜いて向ける。
けれどその間に割って入ったのは鉄扇ちゃんだったの。
「河童ちゃんに手は出させないわ!」
「残念だが、蝕王覇蛇に身体を奪われた以上、もう元には戻る事は出来ん。諦めてくれ!」
「そんな事はないわ!私が喰殖覇蛇に身体を奪われても河童ちゃんは私をこうやって元に戻してくれたのだから!何か手はあるはずよ!」
二人が言い合いしている所にナタクが二郎神君さんの隣に立つ。
「今逃がせば、ソイツは新たな肉体を手に入れ再び俺達の前に現れるのだぞ?」
「だからって河童ちゃんに手は出させない!」
「やむを得ないな」
「やるつもり?」
ナタクが鉄扇ちゃんに剣を向けると鉄扇ちゃんも鉄の扇を抜いて構える。
「ちょっと仲間内で争わないでよ!」
私が間に入って二人の喧嘩を仲裁する。
「沙悟浄は私の仲間よ!勝手に殺させないわ!そんな事より沙悟浄の身体から蝕王覇蛇を出す事が先決よ!」
「それは出来ないのだ」
私の言葉に二郎神君さんが真面目な顔で説明したの。
「出来るなら俺も・・・」
それは二郎神君さんと楊善の身体を奪った蝕王覇蛇との戦いの最中、楊善さんは宝貝・黄巾力士に自らの霊体を移して自分が知り得る情報を教えてくれたらしいの。
蝕王覇蛇は自らの魂を奪った器に入った時、それは寄生するかのように元々の器の魂と同化するの。
それは喰殖覇蛇のように自らの体内に取り入れた魂を補完するのとは全く違う。
奪われた地点で魂は消されて失われてしまうのだから。
楊善さんはそれに気付いたからこそ予め黄巾力士に霊体を移していた。そして奪われた身体は自分自身の魂は失われてしまい、霊体は二郎神君さんに最期にアドバイスをしたの。
「この私を活かす事は考えないで欲しい。もう蝕王覇蛇の中に私はいません。手遅れなんです。だから必ず躊躇しないで蝕王覇蛇を倒して欲しい」
その言葉は二郎神君さんへの最期のメッセージ。
その想いを無駄にしないために、二郎神君さんは心を鬼にして戦ったの。
「彼(沙悟浄)はもういない。君達に出来ないのであれば、俺が代わりに」
それでも頭で理解しても納得出来なかった。
心が認めたく無かったの。
それは私よりも鉄扇ちゃんの方が強かった。
「彼に手を出させないわ!」
「そうか、なら君を大人しくさせるしかないな」
二郎神君さんの神気が爆発するかのようにその場で膨れ上がる。
けれど鉄扇ちゃんも妖気を高めると掌に芭蕉扇が出現する。
「アンタも私に手を貸しな!」
鉄扇ちゃんが芭蕉扇を上空へ向けて扇ぐと竜巻の中から巨大な化け物・鵺が出現したの。
「我輩扱いの荒い主人にゃ!」
鵺が二郎神君さん目掛けて雷を落とす。
「!!」
けれど鵺の雷はナタクの雷を帯びた剣によって受け止められたの。
「蛇神討伐の邪魔をするなら、容赦はせん!」
その直後、二郎神君さんとナタクは向かって来る強い殺気に気付いてその場から飛び上がったの。
凄まじい力が振り下ろされて二人のいた場所を陥没させたの。
「その娘の邪魔はさせないですわよ!」
「手伝ってくれるの?」
「もし私が同じ立場なら同じ行動を取るわ」
それは白骨乙女さんだった。
そして付き従うように生き返った錬体魔王さんが妖気を高めていたの。
ちょっと?ちょっと?ちょっと?
二郎神君さんとナタクを相手に、鉄扇ちゃんと鵺に白骨乙女さんと錬体魔王さんが相手するの?
この状況を好機と思っているのは沙悟浄の身体を手に入れた蝕王覇蛇だった。
しかし全身がズタボロで自由に動かせずに逃げる事も出来なかった。
この状況で私はどうしたら良いの?
当然、沙悟浄は救いたい。
けれど、どうしたら良いのか分からない。
けれど今にも一触即発する中で、
新たな危機が迫っていたの。
「!!」
その接近に私達は全員気付く。
それほどまでに強い蛇気が迫っている。
するとけたましい鈴の音が鳴り響いたの。
数十体の白装束の蛇神の者達に担がれた籠に乗って、とてつもない蛇気の持ち主が私達の前に現れた。
その接近に数万といた私の軍隊の皆さんは微動だに出来ずに金縛りにでもあったかのように見ているしか出来ずに道を開けていたの。
「な?何が現れたの?今度は?」
すると籠の中から女の蛇神が顔を出す。
「は、白蛇の巫女!」
蝕王覇蛇が気付き叫んだの。
白蛇の巫女とは覇王の側近。
その力は覇蛇にも匹敵していたの。
「喰殖覇蛇の魂が消滅したので来てみましたが全く情けない。口だけでしたか?蝕王覇蛇?それに何なのですか?その弱々しい姿は?」
「くっ・・・」
蝕王覇蛇は悔しがるけれど何も口答え出来ずに黙る。
「さて、この場には良き餌が揃っていますね」
白蛇の巫女の眼差しは強烈な殺気となって私達全員を怯ませたの。
なんてとてつもない殺意!
いち早く動いたのは二郎神君さんとナタクだった。
同時に白蛇の巫女へと斬り掛かる。
けれど白蛇の巫女の護衛である白装束の蛇神達に受け止められたの。
「こいつ達、かなりの腕前だぞ」
「関係ない。斬るまでだ!」
すると白装束の蛇神の一体が沙悟浄の姿をした蝕王覇蛇を抱えて連れ去る。
「させないわー!」
そこに鉄扇ちゃんと白骨乙女さんが止めに入るけれど白装束の蛇神が一体、その姿を巨大化させて殴りかかって来たの。
「私の彼女に手を出す雄は許さん!」
錬体魔王さんの姿がティラノサウルスの姿をした妖恐へと変化して受け止める。
これはもう総力戦よ!
沙悟浄の姿をした蝕王覇蛇が白蛇の巫女の前へと運ばれると、白蛇の巫女は前髪を掴み見下ろす。
「覇王様の血を頂戴して置いて本当に無様だな?蝕王覇蛇よ!すぐさまその首を斬り落としてやりたいが、お前の能力で私の身体を奪われてはたまらん」
「ゆ、許してくれ・・・巫女よ!」
もう蝕王覇蛇には逆らう力は無かった。
悔しがりながらも、今は生き残るために白蛇の巫女に助けを求めるしかなかったの。
「覇蛇として本当に情けない!」
それは沙悟浄の姿をしているから、余計に蝕王覇蛇に対して苛立ちが湧いてきていたの。
「お前の代わりになりたがっている蛇達はいるのです。不死の覇蛇だが、殺せないわけではないのだぞ!お前の能力ごと他の蛇達に与えてやろうか?」
「白蛇の巫女?お前、何を!?」
すると白蛇の巫女は印を結び蝕王覇蛇に向かって術を放ったの。
それは空間を圧縮した球状の結界術。蝕王覇蛇の身体を覆うと、中で突然悲鳴をあげたの。
「その中は魂を蝕み消滅させる結界。今の最弱のお前ならそう長くは持つまい?お前を始末した後、お前が与えられた覇王様の神聖なる血を抜き出させていただきます」
結界の中で魂を無理やり剥がされる痛みに蝕王覇蛇は泣き叫ぶ。
今の沙悟浄の身体では結界から抜け出す力なんてなかった。
「ウギャアアア!」
その状況を黙って見ていられない人がいた。
確かに見過ごせば私達を苦しめ楊善さんを殺した蝕王覇蛇は消滅させられるかもしれない。
けれど今の蝕王覇蛇は沙悟浄なのだから!
「!!」
鉄の扇が飛んで来て白蛇の巫女の寸前に突き刺さると、白蛇の巫女の乗る籠は粉々に消し飛んだの。
「させない!させない!させない!」
鉄扇ちゃんは白蛇の巫女に向かって駆け出す。
そこに白蛇の巫女を守る白装束の蛇神が道を塞ぐけれど、
「あいつ等は私と彼様に任せなさい。鉄扇!」
白骨乙女さんとティラノサウルスの妖恐と化した錬体魔王さんが白装束の蛇神を食い止める。その行為に頷いた鉄扇ちゃんは飛び上がると白蛇の巫女に向かって急降下して攻撃を繰り出したの。
「巻き起これ〜!芭蕉扇!」
神気を帯びた竜巻が白蛇の巫女に直撃する。
「下等種の分際で」
鉄扇ちゃんの竜巻は白蛇の巫女が差し出す掌から広がる蛇気の結界で阻まれたの。
「うぉおおおおお!」
それでも鉄扇ちゃんの攻撃は止まらない。
拳に妖気を高めると右腕の皮膚が黒く染まっていき、凄まじい妖気が発せられる。
「羅刹の拳!」
突如凄まじい力の圧迫が白蛇の巫女の結界をも破壊して向かって来る事に驚く。
「だから下等種が粋がるなぁ!お前達は我ら蛇に捕食される餌なのだからなー!」
白蛇の巫女もまた怒りを露わにしたの。
抜刀した白光する剣と鉄扇ちゃんの芭蕉扇が衝突して爆風が巻き起こる。
「羅刹変化唯我独尊!」
鉄扇ちゃんの全身の皮膚が黒く染まり、更に高まる妖気に白蛇の巫女の背後から発する蛇気は白い蛇を無数に出現させたの。
「お逝きなさい!」
白蛇の巫女が命じると数千数万の白蛇の群れが鉄扇ちゃんに向かって飲み込むように覆っていく。
「弾け飛べぇー!」
無数に群がる白蛇が鉄扇ちゃんを中心に吹き飛ばされ消滅していく。
それでも白蛇の大群は湧き出て来る。
「邪魔をするなぁ!邪魔をするなぁ!邪魔をするなぁー!」
鉄扇ちゃんの変化した破壊力は白蛇の群れなんて問題じゃないように思えた。
けれど、徐々に弱まっていくのが分かったの。
「あり得ないわ。鉄扇の羅刹の変化は蛟魔王の修行で数段と持続時間が長くなったはず。なのにこんな速く消耗するはずが?」
白骨乙女さんはその時気付く。
鉄扇ちゃんの全身には蛇に噛まれたような痕があり、そこから妖気が漏れ出てしまっている事に。
「まさかあの蛇は力を奪っているの?まずいわ!あのままじゃ鉄扇がもたない!」
しかし白骨乙女さんには白装束の蛇神達が攻撃を仕掛けて来て救援に向かえない状況だった。
次第に膝を付き、鉄扇ちゃんは力が抜けて視界が薄れ始めたの。
それでもその視線の先には沙悟浄の姿があった。
このまま助けられないの?
そもそももう助からないの?
あそこにいる沙悟浄はもう蝕王覇蛇なの?
絶望的な不安しかなかった。
このまま一緒に死ねたら・・・
直後、鉄扇ちゃんの全身から力が抜けて白蛇の群れに飲み込まれるように姿が見えなくなったの。
このまま私達は蛇神相手に何も出来ないまま終わってしまうと言うの?
「そんな事はさせないわー!」
私も飛び出していた。
目の前には白蛇が濁流のように私に向けて押し寄せて来る。
正直、今の私では抗う力なく跡形もなく飲み込まれて終わるかもしれない・・・
「そうよ!今の私を超えてやるわ!」
そう粋がってみたものの私は白蛇の大群に飲み込まれてしまう。
「!!」
けれど蛇達は私に気付く事なくその周りをぐるぐると探し回る。
蛇達は間近にいる私に気付いてないの。
「オン・マリシエイ・ソワカ!オン・マリシエイ・ソワカ!オン・マリシエイ・ソワカ」
私は摩利支天の真言を唱えると、その姿は陽炎の如く気配を消す。
そして一歩一歩と白蛇の巫女へと向かって歩む。
「何だ?あの人間は?」
白蛇の巫女は私の真言が通じないみたいで私の接近に気付き、凝視して私の姿を捉えたの。
「あの人間、何処かで?ハッ!」
そこで気付いたの。
「思い出したぞ!あの人間の小娘は無礼にも覇王様の前に飛び出して来た輩か!?」
そう。
「何故かあの人間の娘を見ると胸騒ぎがする?何故じゃ?以前にも見た憶えがするのは何故?」
その時、白蛇の巫女の脳裏に過ぎる。
それは一人の人間の男の姿だった。
「!!」
白蛇の巫女は身震いしたの。
そして思い出す。
その人間の男がかつて覇王にした行為を。
それは白蛇の巫女ですら予測不能の規格外の男だった。
その男は人間で有りながら崇拝する覇王をも撃退し滅びの未来を変えたの。
「何故じゃ?あの小娘を見て、あの者がチラつくのは?嫌な予感がする。覇王様にとって不安分子は早急に消さねば!」
すると白蛇の巫女は私に向けて殺意を抱いたの。
「その首をもぎり、私の足置きにしてやろうぞ」
白蛇の巫女の掌に邪悪な力が集中していく。
私は気を練って錫杖を作り出していた。
「耐えられるかな〜?私!」
白蛇の巫女の攻撃を耐え忍ぎ、私の有りったけの攻撃をぶちかましてあげるわ!
「消し去れぇー!人間!」
白蛇の巫女から凄まじい蛇気が放たれ・・・
「!!」
その時だった。
突然、戦場が揺れ出したの?
揺れの中心から白蛇の巫女を囲んでいた無数の白蛇達が盛り上がって噴き出すように消し飛んだの。
そしてその中心には?
「て、鉄扇、ちゃん?」
鉄扇ちゃんから今まで感じた事のない力が白蛇の巫女の白蛇を全て消し去ったの。
けれど同時に鉄扇ちゃんから感じたのは障気?
「死に損ないが次から次へと!私の下僕をよくも!」
白蛇の巫女が鉄扇ちゃんに向かって新たに濁流のように無数の白蛇を出現させて襲いかからせたの。
「!!」
けれど蛇達は鉄扇ちゃんに近付く事も出来ずに障気に当てられ苦しみもがき動かなくなる。そして再び動き出し鉄扇ちゃんが片手を指差すと同時に白蛇の巫女へと襲いかかったの!?
「わ、私の白蛇達が何故?」
白蛇の巫女は自分に向かって来る白蛇を蹴散らし消滅させた。
そして自分の蛇を奪われた挙句に襲わせた鉄扇ちゃんを凝視ししたの。
「何じゃ?この異質な力は?」
異質?確かに何か変だわ?
「あっ!」
私は鉄扇ちゃんの変化に気付いて驚愕する。
「えっ?どういう事?」
鉄扇ちゃんの開かれた瞳は金色に輝いていたの。
それは沙悟浄と同じ魔眼が開かれていた。
「て、鉄扇ちゃんまで魔眼を??」
そんなこんな。
次回予告
鉄扇まで金色に輝く魔眼が?
魔眼は再び奇跡を呼ぶのか?




