ナタク苦戦!?覚醒する喰殖覇蛇!
二体の覇蛇を相手に絶対絶命の二郎神君。
そこにナタクが参戦する。
私は法子。
二郎神君さんの危機に、蛇神の伏兵を一瞬で全て一掃したナタクが今、覇蛇との戦いに参戦したの。
「中壇元帥ナタク、お前達蛇神を討伐する!」
並び立つ二郎神君さんとナタクは阿吽の呼吸で飛び出すと、楊染覇蛇には二郎神君さんが剣を交差させながら押し込みつつ移動する。
そしてナタクは喰殖覇蛇と対峙していたの。
「何だぁ〜?今度の俺の相手はガキか?ふざけるな!あの武神は俺の獲物だぞ!」
するとナタクは嘲笑する。
「相手の力を見抜けないとは案の定、覇蛇とは大した連中ではないのだな?」
「な、何だと?小童!お前なぁあがっ!」
しかし次の瞬間、喰殖覇蛇は言葉が出なかった。
間合いに入ったナタクが剣を喰殖覇蛇の開いた口に突き刺していたから。
「俺は奴と違って甘くはないぞ?」
その瞳は殺す事に躊躇なく冷酷に見えた。
闘神ナタク
天界でその名を知らない者はいない。
天界を統べる四天の托塔李天王の三男であり、幼くしてその才能を開花させた。
けれどその出生から今に至る経緯は簡単なものではなかった。
天界の一部ではナタクは既に死んでいるとか、今のナタクは甦った悪魔とも噂されていた。
そう思わせるほどの討伐率。
二郎神君さんの次点ではあるけれど、二郎神君さんは英雄として讃えられているにも関わらず、ナタクは天界でも畏怖されていた。
その美しき美貌の裏にある姿は無慈悲な殺戮者と。
「げほっ!げほっ!ゆ、油断したわ」
頚椎を切断されたにも関わらず甦る喰殖覇蛇。
そしてナタクに向かって襲い掛かったの。
その動きにナタクは、
「お前の戦いはさんざん見させて貰った」
振り上げた剣が喰殖覇蛇の突き出した大蛇の腕を切断し、そのまま振り下ろした剣は胸を斬り裂く。
「既に見切った!」
さらに斬られた胸に雷を放ったの。
体内から雷を浴びせられた喰殖覇蛇は黒焦げになりながらも再び再生していく。
本当に不死なの?
「お前を倒すには甦る度に殺せば良い。数千でも数万でもお前の命が尽きるまで付き合ってやるぞ」
本当に殺戮者と言わせるほどの威圧感があった。
「そ、そんな馬鹿な??この俺が下級種に歯が立たないなんて・・・そんな馬鹿なぁー!」
直後、首が落ちたの。
見るとナタクは喰殖覇蛇の怒鳴り声を無視して斬撃を振るっていた。
「お、俺の、く、首は?あ、そこか!」
喰殖覇蛇は落ちた首を腕の大蛇に喰わせると失った頭部が再生していく。
「喋る暇があるならもう少し手応えを見せろ?」
「な、この俺をナメるなぁー!!」
喰殖覇蛇の蛇気が急激に上昇していく。
大地が震え、地上で見ていた私はその圧迫に耐えるのも辛かった。
まだあんな力を隠し持っていたの?
けれどナタクは何事もないように剣を向ける。
「その程度か?」
「何だとぉ?強がりはよせ!」
その時、ナタクは閃光の如き斬撃を放つ。
光が喰殖覇蛇の身体を無数に貫き、何も出来ないまま喰殖覇蛇は全身を斬り裂かれて肉片となったの。
「無意味だ。そんな力をダダ漏れにした状態では俺の研ぎ澄ませた剣技を受け止める防御力も散漫するだけ。斬ってくれと言ってるようなものだ!」
まさに瞬殺。
いくら再生力がずば抜けていようと、こんなにアッサリ倒されていけば、命の貯蔵庫も尽きるのも時間の問題だわ!本当にナタク、凄いわ!
「かぁ〜」
喰殖覇蛇は両手が人間の手に変わると自分の顔を覆う。
「無様だ!惨めだ!救いようがねぇよ!うがあぁあああ!」
その時、喰殖覇蛇は自責の念に苦しみ始める。
「無様だな?お前は俺には勝てん!借り物の力に頼り強くなったつもりになっているようだが、それはお前の力ではないのだからな!それに」
「それに?」
「お前は既に二郎神君に敗北している。そんな奴に俺が負けるはずがない!」
「お、俺は負けちゃ〜いねぇー!」
「己の敗北に目を逸らすか?お前はどんなに強がっていようが二郎神君に勝てる見込みはなかった。お前の仲間が割り込まなければ今と同様に時間の問題だった。その敗北者のレッテルが貼られた時に既にお前は敗北者だ!」
「がぁーーん!!」
その衝撃的な己の敗北宣言に喰殖覇蛇はショックを受ける。
それにしても初めてだわ!「ガァーン」なんて口に出して落ち込む所を見たのは。
「さぁ?後、何回殺せば終わる?直ぐに片付けてやるぞ」
ナタクが喰殖覇蛇に迫って来た時、喰殖覇蛇はショックで蹲ったまま微動だにしなかったの。
もう諦めてしまったの?
「!!」
その直後、咄嗟にナタクは後方へとの飛び退いたの。
それは本能的に危険を察知したから。
「何か感じが変わった?」
ナタクは気付く。
喰殖覇蛇は見た目も蛇気の強さも変化なかった。
けれど今まで戦っていた者とは別人に感じられたの。
それは顔をあげた喰殖覇蛇の顔付きでも分かった。
「ようやくもう一人の俺が消えてくれたよ。お前のお陰か?頭がスッキリする」
喰殖覇蛇は立っているだけで全く隙がなかった。
「お前も俺の変化に気付いたようだな?そう。今の俺は先程まで存在していた俺とは別人格だ」
「別人格だと?」
「そうだ!冥土の土産に教えてやろう。俺達覇蛇はコンプレックスを持ってる奴ばかりでな?しかしそのコンプレックスが個性となって俺達の能力開花に繋がってもいるのだ。痛みに弱かった奴が肉体強化に特化したり、兄貴のように自分に自身がなかった事で相手の身体を奪ったり、そして俺は他者の持つ能力を妬み羨ましくてな?その能力を手に入れる力を得たのだよ」
「何が言いたい?」
「そのせいか能力と共に人格をも吸収してしまっていたんだ。そのせいか別の人格が表に出てしまう事があるのだ。けれど強い衝撃を受けたみたいで本当の俺が漸く目覚めたぜ?今は頭がスッキリしている」
「つまり今のお前が本体って事で良いのだな?」
「仕切り直らせて貰うぞ?天界神よ!」
直後、同時に飛び出して中央で数度と衝突する。
喰殖覇蛇の両手が大蛇に変化し、更に尾が槍のように自在に突き出して来る。
対してナタクは剣を閃光の如く振るい受け止め、攻撃を放つ。
互いに引けを取らない互角の戦い。
けれど喰殖覇蛇の振り払った尾がナタクの目の前で枝分かれして両腕と両足に絡みつき身動きを止める。
「カァアア!」
喰殖覇蛇の口から火を吹くと業火となってナタクを覆う。
「このまま燃え尽きるか?」
しかし業火の中から雷が放電して身動きを止めていた尾を貫通して焼き切ると、そのまま全身を焼く業火をも雷が爆発して消し去ったの。
「どうやら、俺も楽しめそうだ」
業火の中から脱出したナタクも喰殖覇蛇に対して無表情に本気になったの。
「さっきまでは能力にかまけて使いこなせなかったが、今の俺なら喰らった千体の能力を全て同時に使う事が出来る。お前を相手に俺は自分の限界を試してみたくなったぞ」
突然落ち着いただけでなく、自身の能力をフルに使うだけで先程まで手も足も出なかったナタクを相手に有利に戦い始めたの。
「先ずはこれからだ!」
両手から熔岩が噴き出してナタクを飲み込もうとする。
降りかかる熔岩を躱しながらナタクは抜刀した剣から神気の刃を放ったの。
しかし神気の刃は喰殖覇蛇の前に出現した氷結の壁に止められる。
その上、上空から氷柱が降って来たの。
「抜刀、閃光斬!」
ナタクは咄嗟に降りかかる氷柱を粉砕する。
「見事な剣術だな?しかし長くは持たないぞ」
喰殖覇蛇は雷を纏いナタクの間合いに入ると、右手が大蛇から掌へと変わりナタクの突き出された剣を掴んで受け止めたの。
「!!」
直後、ナタクは自分の剣を手放す。
喰殖覇蛇に掴まれたナタクの剣はドロドロと熔けていく。
「見事な判断力だな。そのまま掴んでいてくれればお前の両手はこの剣と同じく熔けていたのにな」
「ふん!」
特殊能力のオンパレードにナタクも無謀に攻撃が仕掛けられなくなる。
無闇に攻撃をしたもんなら下手をすれば取り返しもつかない。
「そこまでか?なら受けてみろ!」
「!!」
喰殖覇蛇の口から閃光の破壊光線が放たれたの。
その攻撃はナタクも躱しきれなかった。
「仕方あるまい」
するとナタクは指先を宙に魔法陣を描いたの。
「無効化の盾!」
それは防御結界なのだと思うけれど魔法陣に近いわね。
宙に魔法陣を描いて防御壁を発動させる。
ナタクの前に現れた光の魔法陣は喰殖覇蛇から放たれた閃光の破壊光線を打ち消していく。
しかしそれは喰殖覇蛇の策だった。
今のナタクは魔法陣発動のために両掌を翳しているため無防備に近かったの。
そこにナタクに絡み付くモノが?それは気を極限にまで細くした見えない糸だった。
見えない糸はナタクの身体を拘束する。
「どうだ?観念したか?」
完全に喰殖覇蛇のペースだった。
それでもナタクは冷静だったの。
ナタクは戦っている最中は完全に感情を消し去っていた。
そして戦いにおいて万全の策を選ぶ。
「!!」
ナタクの身体から両腕と両足が外れる?
そして残された身体は宙に浮くと、魔法陣から蓮の花が降って来たの。
蓮の花はナタクの身体に貼り付くと、失ったはずの腕と足が再生する。
なっ?何?今のは手品か何かなの?
「そうか、お前は宝貝人間か?」
宝貝人間?
それは黄巾力士とは違うの?
つまり黄巾力士に魂を宿した宝貝人間、じゃなくて宝貝神様って事なのね。
喰殖覇蛇はナタクの秘密を知り、
「なるほどな。お前を簡単に倒す手段が閃いてしまったぞ。ふふふ」
喰殖覇蛇は印を結ぶと特殊な陣形を造りだす。
その陣を見た時に、ナタクの顔が初めて青褪めたの。
それは幼き過去に、自分を宝貝人間として生き返らせた者からの忠告だった。
ナタクは幼き日に一度命を落とし、
その後に仏神によって蓮と宝貝を使った新たな肉体を与えられて復活した。
「動停宝貝陣」
その陣はナタクの四方から壁が出現してピラミッド状に閉じ込めたの。
閉じ込められたナタクは急激に全身から力が抜けていく。
本来、この術は危険な宝貝を無効化して封じる陣であったのだけれど、宝貝人間であるナタクには戦闘力を削ぎ落として完全無効化させる効果がある。これ以上ない致命的な封印術になってしまうの。
「憐れだな?思っていたより呆気なかった」
本当にナタクは負けてしまったと言うの?
「えっ!?」
その時、上空を見上げ茫然としていた私の腕が突然背後から引っ張られたの。
まさか蛇神の生き残りがいたと言うの?
全く気配を感じなかった。
違う。周りに溢れる強い気が散漫していたから、その弱い気に気付く事が出来なかったの。
私は腕を引っ張った者を見て声を出して驚いたの。
「さ、沙悟浄!?」
それは私が孫悟空達と引き離されてから単独離れた場所から隠れて追って来てくれていた沙悟浄だった。そしてこの状況下で、私を救えるチャンスと飛び出して来たの。
「法子さん!今のうちです〜!」
その頼りなくも一生懸命な姿に私はウルッとくる。
しかし今逃げて良いの?私?
楊善さんが身体を奪われ、二郎神君さんも危機的状況。
更に目の前でナタクが負けてしまった。
私に出来る事は・・・ないかな?
この場にいる事が足を引っ張るくらいなら逃げるのは私に出来る唯一の策よね!
私は自分に言い聞かせると沙悟浄と一緒にこの場から離脱する事に決めたの。
私と沙悟浄は駆け出していた。
とにかく離れなきゃ!
沙悟浄だって決死の覚悟で戦場に足を踏み込んで来たのよ。
正直、私達には次元の違う戦場。
今は逃げるが勝ちなの!
その時、前方にまた強い力を感じる。
しかも凄い勢いでこちらに向かって来ている?
更に背後から、
「そう言えばもう一体オマケがいたようだが、逃してやるとは言ってないぞ?」
嘘ぉ〜??
背後から喰殖覇蛇が私と沙悟浄に気付いて追って来たの。
「前方と後方で逃げ場ないじゃないのよ〜」
「あわわ〜」
沙悟浄も青褪めて冷や汗が滝のように流れてる。
うん。本当に沙悟浄のヘタレっぷりは通常運転である意味安心よ。
けれど今はそんな状況じゃないわ〜
「法子さん!」
沙悟浄が叫ぶと、前方の者が駆け足で向かって来たの。
は、速いわ!
「えっ!?」
その者は私と沙悟浄をすり抜け、後方の喰殖覇蛇に向かって拳を当てたの!
「ウグッ!?今日は豊作だな?また力ある妖怪が現れたぞ?ん?この匂い何処かで?」
「忘れたとは言わせないよ!」
「そうか、以前取り逃がした妖怪が仕返しに来たのか?それとも敵討ちか?」
「その両方ですわ!」
その声に聞き覚えがあった。
その者は女妖怪で、私は旅の道中で知り合ってた。
「は、白骨乙女さん!」
私より先に沙悟浄が叫んでいたの。
そう!彼女は白骨乙女さん!
この戦場に新たに白骨乙女さんが参戦?
またまた波乱の予感だわ。
そんなこんな。
次回予告
二郎神君と楊善。
身体を奪われた楊善を二郎神君は救えるのか?




