中壇元帥ナタク、お前達蛇神を討伐する!
楊善が死んだ?
二郎神君の前に現れた楊善は蝕王覇蛇に身体を奪われていた。
楊善は本当にこのまま?
「よ、楊善?」
二郎神君さんは蝕王覇蛇に身体を奪われた楊善さんを目の当たりにしてもなお信じられずにいたの。
私は法子。
私も顔を青くしていた。
「そんな、よ、楊善さん?嘘よ!」
蓬莱国でも私を助けてくれて、本当に強かった楊善さんが負けたなんて信じられないわ。
けれど現実は無慈悲だった。
「こ、こんな奴は俺一人で倒せる!邪魔はしないでくれよ!兄よ!」
二郎神君さんと戦っていた喰殖覇蛇が反論する。
てか、この二体の覇蛇は兄弟だったの?
「そう言うなよ!この手に入れた天界の男の身体はかなりの上玉だぞ?力がどんどん溢れてくるようだ。この力を早く試して見たくてな?私も参戦させて貰うぞ?その代わりその天界神の魂はお前にくれてやるから」
「し、仕方ねえな・・・だけど俺も奴に虚仮にされたまま黙ってはいられねぇええ!」
喰殖覇蛇は了承し二郎神君さんに襲いかかる。
強烈な蛇気を尾に籠めると振り回しながら竜巻のように向かって来たの。
「くぅうう!」
その攻撃を三尖両刃刀を盾にして受け止める二郎神君さん。
押されながらも受け止めるけれど背後には楊染覇蛇が待ち構えていたの。その手にした剣を構えて後ろ向きの二郎神君さんを背後から斬り掛かる!
「クッ!」
二郎神君さんは背後からの攻撃を後方に飛んで寸前で躱したの。
本当に紙一重だった。
そこにすかさず喰殖覇蛇と楊染覇蛇が同時に仕掛ける。
両方からの攻撃を全て受け流しつつ後退する二郎神君さんは完全に圧されていたの。
最強を誇る二体の覇蛇を同時に相手にしているのだから当然よ。
「楊善!目を覚ませ!そんな蛇神に好きにされるなんてお前らしくないぞ!楊善!」
どんなに呼び掛けても目の前の楊善さんは下卑た顔で襲い掛かって来る。
「無駄だ!無駄無駄!この身体はもう私のモノだ!それにお前の知っている男の魂は既に残ってはおらんぞ!あはははは!」
「おのれぇー!」
怒りが楊染覇蛇に向けられたその時、
「!!」
振り払われた喰殖覇蛇の尾が二郎神君さんを弾き飛ばす。
岩山に直撃し吐血しながら埋もれる二郎神君さん。
「この俺を忘れてるんじゃねぇぜ!お前の相手はこの俺だ。お前は俺の獲物だからな!」
このような状況の中でも二郎神君さんは三尖両刃刀を杖にして立ち上がって来たの。その眼はまだ戦う事を諦めてはいなかった。それどころか更に闘士をわかせる。
「俺はまだ諦めてはいない。楊善は絶対に生きているぞ!俺の声を聞けぇー!楊善!」
しかし楊染覇蛇は見下ろしたまま。
「教えてやろう。この俺に身体を奪われた者は俺の中で魂を蝕まれ、戦術の記憶を吸い出された後は俺の養分となり一部となるのだ!」
すると手にしたのは宝貝だったの。
「火竜鏢」
投げられた火竜鏢は煙を噴きながら飛んで行き、二郎神君さんの足下に突き刺さると閃光を放って爆発したの。更にその隙を見て喰殖覇蛇が間合いに入り両手が大蛇へと変化して口を広げて襲いかかる。
「はぁーー!」
咄嗟に神気で防御壁を張るけれど、大蛇の牙は結界を粉々にして二郎神君さんの肩と脇腹を抉る。
「ぐわぁあああ!」
それは確実に二郎神君さんへの致命的なダメージだった。
けれど、
「うぉおおおお!」
二郎神君さんは両方の大蛇を両腕で抑え付けると、
蹴り上げながら三尖両刃刀を飛ばしたの。
三尖両刃刀は一直線に前方の喰殖覇蛇の胸に突き刺さる。
「ぐはぁ!」
その予想だにしてなかった奇襲に蹌踉めいた所に二郎神君さんは向かって行くと、突き刺さったままの三尖両刃刀を掴んで神気を一気に流して体内から破裂させた。
粉々に飛び散る肉片に向かって神気弾を放って消滅させたの。
「ハァハァ・・・」
けれど三尖両刃刀は千だか万の命を持つ不死の蛇神。
消滅したはずの肉片が徐々に塊となって再生していく。
しかし二郎神君さんも今の攻撃は時間稼ぎだとは分かっていたの。
目的は楊染覇蛇!
飛び上がると楊染覇蛇に向かって突っ込む。
「必死だな?それにお前もこの器と同じく下等種とは思えん強さだ!私が弟に代わりお前を始末させた後は、弟の器として使ってやるからな」
攻撃を仕掛ける二郎神君さんの三尖両刃刀と楊染覇蛇の剣が衝突して火花が散る。
互いに次々と攻撃を仕掛ける中で優勢なのは二郎神君さんの方だった。
「!!」
しかし、その突き出す三尖両刃刀が楊染覇蛇の眼前で止まる!?
もしかしたら楊善さんを元に戻せるのかも?
その迷いが楊染覇蛇を攻撃する手を止めてしまったの。
やはり二郎神君さんには楊善さんを斬れないに決まってるわ!
その隙を付いて、
「甘いな?」
楊善覇蛇の剣が二郎神君さんの腹部を貫いたの。
「ぐはっ!」
吐血し地上へと落下していく二郎神君さん。
私はその光景を見て、
「ナタク!お願い!貴方なら戦えるでしょ?二郎神君さんを助けて!」
しかしナタクはそこから一歩と動く事なく無言のままだったの。
「ちょっとナタク!聞いてるの!?」
するとナタクは一言私に返す。
「煩い!気が散る」
エッ?何ですって??
この状況で何を呑気な事を言ってるの?
そもそも二郎神君さんと楊善さんは貴方の仲間じゃなかったの?
そう言えば、一緒に同行中もナタクは仲良しと言うよりは、少し面倒くさそうな態度だったわよね?
確か二郎系君さんが上司で下剋上狙ってるような事を言ってたけれど?
もしかして二郎神君さんが負ければ昇進出来るから見て見ぬふりしているんじゃないでしょうね?
「ちょっと!」
私が動こうとしたその時!
「馬鹿者!そこから動くな!」
ナタクが私に向かって怒鳴ったの??
私はビクッと怯んで座り込む。
その時、私の足下の地面を何かが貫いたの。
それは遠く離れた場所からの狙撃だった。
えっ?まさか?
私は今、蛇神達の標的にされていた。
私はそこで初めて気付く。
ナタクは助けに行かないのではなく行けないのだと。私達には先程から遠距離の狙撃されていたのを、私を庇いながらナタクが守っていたの。
しかも何処から飛んで来るか分からない狙撃に対して、意識を集中させて間合いに入ると同時に指から雷を放ち狙撃を打ち消していたの。
しかも私ですら目に追えない程の速さで!
「な、ナタク」
そして当然、ナタクも今の状況に怒りを感じていた。
楊善さんも二郎神君さんもナタクにとっては上下関係関係なく仲間を通り越した友だから。
それなら尚更、私を庇ってる場合じゃないわ!
「お願い!私の事は放って置いて二郎神君さんに加勢に向かって!楊善さんだけでなく二郎神君さんも奪われたらどうするのよ?後悔しない選択をして!」
「お前を守る事が天よりの第一優先任務だ」
「あのさ?天だか上司だか知らないけれど、死ねって命令されたら死ぬわけ?」
「当然だ!」
何て頭が固いのよ!
「だ、だったらさ?目の前でお漏らししろって命令されたらするわけ?裸で女湯覗けって言われたらするわけ?答えなさい!」
「なぁ?何て下品な娘だ!」
流石に狼狽えるナタク。
でも何か私への印象悪くなったかも?
するとナタクが背中越しに答える。
「この一帯には蛇神の伏兵が千体近くいる。そして先程から狙撃しているのが二体。俺が離れればお前は蜂の巣だぞ?」
「構わないわ!」
私はキッパリと答えたの。
そんな私にナタクは溜息をこぼす。
「やれやれ、とんだお転婆娘だ」
ナタクは瞼を綴る。
ほ、本当に放って置くつもりなの?
ナタク!
後悔するのは貴方なのよ!
その時、ナタクの身体が放電し始めたの?
「時間はかかったが、この一帯にいる全ての蛇神を捉えた!」
えっ?それって?
その時、ナタクが動いたの!
「神雷雨!」
ナタクから発する雷が上空へと放たれたの!
それは凄まじい勢いで空中で飛散し、大地に向かって降り注ぐ。
その雷は矢の如く地上に潜む蛇神の伏兵達を貫通し消滅させていった。
突然のナタクの動きに狙撃をしていた蛇神は、
「おのれ!何処へ消えた??」
ナタクの居場所を見失って混乱している背後に、
「俺を探しているのか?」
「えっ?」
それは遠く離れていたはずの場所からの瞬間移動だったの。
振り払われた剣は狙撃していた蛇神の首を両断して血が噴き出す。
ナタクは動けなかった間、私を守りつつ、この一帯にいる全ての蛇神の気を感知する事に意識を集中していたの。
そして再びナタクは消えると、次々と潜む蛇神の前に現れて一刀で斬る。
蛇神達は感電して身動き取れなかったとはいえ、中には凄腕の猛者もいたはずなのに。
やっぱりナタクは恐いくらいに強いわ!
一瞬一掃!?
そして私の目の前に現れたの。
「この一帯に残っている蛇神は上空で二郎神君と戦っている二体のみだ。よって後は好きにさせて貰う」
つまりそれは救援に向かうって事よね?
「お願い!」
私が叫ぶと同時に雷を纏ったナタクは目の前から消えたの。
私は即座に上空を見上げる。
「!!」
楊善覇蛇と喰殖覇蛇の前に傷付いた二郎神君さんを庇うようにナタクはその場に突如現れたの。
「ナタク、お前」
「他の蛇神は全て一掃した。まだ戦えるか?」
「当たり前だ!」
二郎神君さんはナタクの隣に並び立つ。
「中壇元帥ナタク、お前達蛇神を討伐する!」
今、天界最高の二人が覇蛇を相手に反撃を開始する。
そんなこんな。
次回予告
ナタクがついに戦闘開始!
その天才を通り越した神才の力量は?




