私はただの絶世の美形です!
法子と楊善は謎の結解の中に閉じ込められていた。
そこは同じ時を幾度と繰り返す世界だった。
さてと、どう致しますかね?
私は楊善。
蓬莱国の王宮に侵入出来たのは良いのですけど、
私は法子さんと結界に閉ざされ時の止まった蓬莱国に迷い込んでしまいました。
この結界の中では同じ日を数百年と繰り返しているのです。しかも結界から抜け出す手段も見当たらない。そこで蓬莱国の王宮に何か秘密があると考え、侵入作戦を行ったのですよ。
その手段は王宮で行われている皇子のお后候補に成り済まし侵入する手筈だったのですが、私は持ち前の美貌で難無く通過したのですが、どうも法子さんは落ちてしまったようですね?
仕方なく私だけでも王宮へ侵入する事にしたのです。
それにしても・・・
他にお后候補に選ばれた女性達が私をジロジロ見ていた。
私は不思議に思い声をかける。
「私に何か?」
「い、いえいえ!」
赤面する女性達は私から逃げるように走って行く。
恐らく同性、あっ、私は女装しているのですが、その美貌に目を奪われていたのでしょう。
天界でも天女の方々にいつまでも付き纏われていたので、地上でも同じなのですね。
ふぅ〜美しさは罪ですね。
そして私達后候補は連れられて王座の間に運ばれる。
そこには蓬莱国の武官や文官が列をつくり左右に並び、その中央に王様が・・・?
そこにはまだ若い世子(セジャ:王位継承者)が玉座に座っていた。
そして私達を物色する。
「中々の美貌ある娘達だ。特にそこのお前!」
私を見ていた。
その後の説明で蓬莱国の王様は流行りの病で亡くなられ、
その跡を継ぐ条件として世子が王后を迎えて王座につく事になっているそうです。
なるほど〜そう言う訳ですか?
それにしても庶民から后を取るなんて・・・
まぁ、確かに今の現状、蓬莱国の外から后を取る事は不可能な事なのですけどね。
顔合わせを済ませた後、私達は個別の部屋を用意された。
「さてと、どうしますかね〜」
先ずは王宮内の探索。
恐らくこの王宮の何処かに結界から抜け出す手段があるはずだから。
と、思うのも、この王宮の何処からか異様な気配を感じていた。
そ・の・ま・え・に?
「そこのアナタ?私の部屋に何用ですか?」
先程から気付いてはいたのですが、私が用意された部屋に何者かの気配がしていた。
すると部屋の隅から若い女性が顔を出す。
「あら?バレてしまったのですね」
その女性は歳で17前後くらいですかね?
可愛いらしい顔付きに気品ある格好。
「貴女は何者ですか?この部屋は私が用意されたとお聞きしましたが、同部屋でしたか?」
「いいえ、貴女に興味があって来ました。私は蓬莱国の第二子、幸楽公主」
「公主様?すると蓬莱国のお姫様ですか?」
私は膝を付いて挨拶をし直す。
「良いのよ?もし貴女が兄上様と一緒になれば立場は逆転してしまいますもの」
私は立ち上がると、
「それで私に何用ですか?」
幸楽公主は私の全身を見回した後、
「貴女、本当に綺麗ね?」
「知ってます」
「ふふふ。正直ね?」
すると幸楽公主の口から予想していなかった言葉を聞く事になる。
「けれど残念ね?貴女が兄上様のお后になる事は絶対に来ないのよ」
「それは私が選ばれないって事でしょうか?」
「明日になれば分かる。いえ?分からないわね。明日なんて来ないのだから」
「それって!?」
それはこの蓬莱国の秘密をしている事を知っていなければ出ない言葉だった。
「もしかして幸楽公主様はご存知で?」
恐らく幸楽公主は私にカマをかけている。
「やっぱり貴女も気付いてる側なのね!」
幸楽公主は驚きながら嬉しそうに私の手を握る。
「私、味方になってくれる人を探していたのよ!」
「味方ですか?」
幸楽公主は私に語り出す。
この蓬莱国に起きた出来事を。
今から百年以上前に蓬莱国の上空で白い光と黒い光が幾度と衝突していた。まるで星がぶつかり合っているのではないかと思うくらい綺麗で幸楽公主は見惚れて兄の世子と上空を見上げていた。
その直後、さらに上空から閃光が降ちて来て蓬莱国をも覆ったと言う。
恐らく何者かが張った結界が作動したのか?
その後、蓬莱国は時に封じ込められたのだそうだ。
ある時をもって時が動き始める。
それは一日から三日程度を不規則に繰り返していた。
しかも記憶をそのつど失って。
「私がこの違和感に気付けたのは、この蓬莱国には大魔導師様がいらっしゃるからなのよ」
「大魔導師様ですか?」
大魔導師とは蓬莱国を古くから守っていて、王様の側近かつ国の行方を占っていたとか。さらに妖怪襲撃が合った時も、その魔導の力で撃退したとか。
そして結界にて蓬莱国が消える事も予言していたと言う。
そこで王族には時の止まった世界で記憶を維持出来るための霊薬を持たせたのだそうです。
その理由は結界を守るために?
「王族でしか魔道師様の作った薬が効かなかったのよ。そこで私と兄上、それに父上と母上」
「少し待って下さい。ご両親は既に亡くなられたと聞きましたが?」
「はい。問題が起きたのです」
「問題とは?」
幸楽公主は辛そうな顔で思い出しながら語る。
「この結界の中で王族以外に意識を保ち、何やら不審な動きをしている者が現れたの」
「その目的は?」
「その者は蓬莱国に封じられた魔物を蘇らせ、その力を我が物にしようとしているのです。その者が私の父上と母上を殺めたの!」
「時が戻れば何事もなく蘇るのでは?」
「大魔導様が言うには何か特別な武器を使う事で結界の中の民を殺せるとの事らしいの」
「特別な武器?」
「その武器で殺された者の魂は封印されている魔物へと送られているの。魔物が力を回復すれば結界を破壊し蓬莱国は元の世界へ戻れるのだと言うのだけど・・・その為に蓬莱国の民の命を捧げるなんて間違いよ!」
「けれど元の世界へ戻る手段はそれだけなのですよね?」
「いいえ、他にも手段はあります。魔物の力を手に入れようとしている者よりも先に弱っている魔物を退治すればよいのです。そうすれば結解は役目を失い消滅すると。その為に貴女の力を貸して欲しいの」
私は一通り話を聞いた後、内容を整理する。
この世界から抜け出す手段は二つ。
一つは、封印されている魔物に力を与えて目覚めさせ結界を破壊させる。
二つは、封印されている魔物を先に始末する。
そうなれば結界は役目を失い消える。
「大体の話は分かりました。なんなりと」
「有難う」
「どちらにしろ封印された魔物との戦いは避けられませんね」
問題は他にある。
それは封印されている魔物を復活させようとしている別の目的を持った者の正体。
それからもう一つ重大な事を言ってました。
「大魔導師様の予言では、今、この蓬莱国で意識を持ちながら結界の影響を受けてない者は七人いるみたいなの。その中に蓬莱国を蘇らす運命を持った女性が現れる予言をくれたのよ!それが貴女なのよ!」
「あ、は、はい」
「その為にわざわざお兄様の王后候補を庶民の中から選考なんかして貴女を見つけ出したのだから」
「あはは。そういう事でしたか」
まんまと計画に乗せられてしまった訳ですね。
けれど〜
実は私、男なんですけどね〜
今は黙って置きましょ〜
でもこれで貴重な情報は手に入れましたね。
この蓬莱国で意識を保ち動いている者は僅か七人。
この私と法子さん。
それに蓬莱国の世子と、その妹の幸楽公主。
これで四人は決まり。
それから会ってはいないけれど大魔導師って方ですかね?
何やら今件について詳しいみたいだけど。
後は残り二人をどう探すかですかね。
一人一人蓬莱国の国民全員から聞き回るなんて不可能だし合理的でないね。
それだから世子と幸楽公主も后候補を募ってまでして探していたのだから。
「きゃあああああ!」
その時、外から悲鳴が聞こえる?
何事??
私は部屋から出ようとすると鍵が閉められていた。
「鍵かけてくれるのは嬉しいけれど中から出してくれないのは気分悪いですね」
私は懐から袋を出して、中から貝殻を手に取る。
「宝貝・鍵空」
それは鍵を開ける道具。
私は宝貝と呼ばれる天界の宝具や武器を造る専門家なんですよ。
だから鍵を開けるなんて容易い。
「何が有りましたか!?」
私が悲鳴のあった場所へと着くと、そこには兵士を連れた幸楽公主が青白い顔で部屋の中を見ていた。
「何があったのです?」
「あ、あぁぁ」
幸楽公主は言葉にならないようで私は部屋を覗く。
この部屋は私同様、世子の后候補として呼ばれた娘の寝室だった。
そして私が目の当たりにしたのは見るに耐えない状況だった。
「なんて惨たらしい」
そこには眼球を抉り取られて心臓を串刺しにされた娘が息絶えていたのです。
「一体、何が?誰がこんな事を!?」
その時だった。
突然、空間が歪み始める?
視界に見える物全てが闇に吸い込まれるようにして、自分も穴から落下するような感覚に陥る。
「ハッ!!」
気付くと、目の前に法子さんがいた。
「よ、楊善さん??」
法子さんも驚いた顔で私を見ていた。
つまり、そういう事だ。
時が戻ったのである。
そこは最初に宿泊した宿だった。
どうやら私と法子さんが最初に来た時より少し後のようですね?
つまり時が少しずつ進んでいるって事は間違いないようです。
「とりあえず話を合わせてみますか?法子さん?」
「そ、そうね」
そこで私達は調べた情報を話す。
「なるほどね〜」
法子さんは頷きながら、今度は自分が体験した事や知り得た情報を語り始める。
そこには武闘寺院の張角、それに蓬莱山の孫徳と呼ばれる道士の名前が出て来た。
「お姫様の話が本当なら、これで七人の登場人物が揃ったわけね?」
「そのようですね」
法子さんに私、世子に幸楽公主、大魔導師。
それから法子さんが会った張角と孫徳。
この七人の中に結界の魔物を解き放とうとしている者がいるって事になる。
気になる点は三点。
それから法子さんが遭遇した兵士を握り潰した光る手の事件、私が遭遇した眼球を抉り取られた女性の事件。それに孫徳は張角を信じるなとも。
しかし私も天界で仙界の者達の情報は色々と耳にはしていたが、蓬莱軒の孫徳と名乗る仙人は聞いた事がない。それに全てを予言していたと言う結界の事に一番詳しい大魔導師も恐らくは仙人か妖怪、または神族の可能性もある。
「とりあえず私達以外の五人をもう一度調べてみましょ?」
「そうしましょう」
この後は王后候補や武人募集。また同じ一日が始まるかと思えばそうではなかった。
朝方、兵士が数人宿屋の前に待ち構えていて、私と法子さんを王宮へと招き入れたのです。
新しい一日には后候補も武人選抜も無くなっていた。そうなると、その日に起きた事自体が無かった事になっていた。
「お待ちしておりました」
私を待っていたのは幸楽公主でした。
「后候補は貴女を見付ける為の手段でしたから」
そして新たな情報が提供されたのです。
あの時、私が遭遇した事件。
私と共に呼ばれ、眼球を奪われ惨殺された娘は一人ではなく、他にも三人の被害者がいた事。
そして惨殺された娘は時が戻っても生きて戻らなかった事に驚く。つまりその事件で殺された理由は封じ込めた魔物を蘇らすための生贄に使われたと言う事が分かったのです。
「そこで貴女を含めて他の三人の女性達は私の方で身柄を守らせて頂きたく思います」
「そうでしたか。有難うございます」
そこで暗殺をした者を突き止める為に私は志願する。
「そこで提案なのですが、私、囮になりますよ」
「えっ?」
「暗殺者をおびき寄せるには私が一番好都合だと思うのです」
「そんな危険な真似はさせられません」
仕方なく私は幸楽公主に近付くと、軽く抱き締める。
「えっ?何を?貴女は・・・えっ!?」
その時、幸楽公主は私に抱き締められた事で女性と違う身体付きを衣服越しに気付く。
「あ、あ、あっ?楊善、貴女?もしかして??」
「ハイ。男ですよ」
私はニコリと答える。
私の正体を知り赤面して気を失い倒れるところを私は軽々と抱きかかえる。
「えっ?あ、嫌、嘘」
「これほどの美貌だと信じるには時間かかるかもしれませんね?ふふふ」
私に抱きかかえられ照れる幸楽公主は頷く。
何かさほど嫌じゃないみたいですね?
既に私の虜になっていた。
まぁ、あるあるですね?
「では私がその暗殺者を見事捕らえさせてもらいます」
「あ、はぁい!宜しくお願い致します。楊善様!」
そう答えた幸楽公主は私の胸に顔を埋めて来た。
あらら〜参りましたね〜あはは。
そして私の暗殺者捕獲作戦が始まる。
「それにしても困りましたわ」
「何がですか?」
「いえ、楊善様が殿方だと分かった事は私個人としては良かったのですが・・・」
「えっ?」
「その〜。お兄様が楊善様をお気に召してまして、今晩の夜伽を所望なさっているのです」
「へっ?夜伽ですか?」
た、確かに私の美貌に心揺れないはずはない。
それは男性も女性も関係ありません。
「あは、あははは。仕方ありませんね?これも私の美貌が招いた失態かもしれませんね」
「待ってください!あの、お兄様には私の口から説明させてもらいます!お兄様も理由を説明すれば分かって貰えると思いますの」
「そうですか?その方が良いかもしれませんね」
そして世子の夜伽の件は幸楽公主から一緒に断って貰う事なったのです。
「期待を裏切ってすみませんですね」
「楊善様がお美しくとも、流石に性別の壁はどうしようもありませんわ。うふふ」
「ん?何かな?」
色目を使ってくる幸楽公主に私は困惑する。
私は幸楽公主に連れられて世子の部屋へと向かう。
そう言えば最初に一度面会した程度でそれから顔を合わせていなかったですね。
確かに次期王様なのだから滅多に会えないのは分かりますが、聞くに幸楽公主と同じく大魔導師の助言で結界に封じ込められている魔物の力を手に入れようとしている者から結解を守っているとか。
とりあえず何か情報を少しでも聞くとしましょう。
「楊善様、ここがお兄様の部屋ですわ。あら?」
「どうしたのです?」
「いえ、お兄様の部屋の見張りの兵がいないのですけど、おかしいですわ?」
「!!」
その時、何か異様な空気を感じた。
「まさかぁ!」
私と幸楽公主は部屋の扉を開けて中へと入り込む。
「何が起きてるの!?」
世子の部屋の壁や床には鮮血が飛び散り、生臭い異様な臭いが漂っていた。
「まさかお兄様が何者かに?」
「まだ分かりません」
私達は部屋の中を警戒しながら足を進ませ寝室へと足を運んだ。
この血の量は異常だった。
間違いなく数十人は被害者がいるはず。
すると寝室から声が聞こえて来た。
「あれはお兄様のお声ですわ」
そこには一人の若者がベッドの上に立っていた。
間違いなく世子だった。
けれどその異常さに私達は驚愕する。
「お、お兄様?な、何をなさっているのですか?」
幸楽公主が恐る恐る問い質す。
「あ〜?幸楽公主か?どうして此処にいるのだい?私の部屋には入って来てはいけないと忠告していただろ?本当に悪い子だよ」
「お兄様!何をなさっているのです!」
強い口調で叫ぶ幸楽公主に、世子は答えた。
「あ〜コレかい?」
世子の手に掴まれていたのは身柄を守られせていたはずの女性の髪だった。その髪を上げると女の顔の眼球は抉り取られていた。
「何て事を・・・お兄様?お狂いになられたのですか?本当にどうなさってしまったのですか!」
世子は掴んだいた女の髪を手離すと、
「狂ってなんかいないよ?私はただ、朕への供物である宝石(女性の眼球)を手に取り眺めていたに過ぎない。ほら?綺麗だろ?まるで黒真珠のようだよ」
それは猟奇殺人だった。
「本当なら妹であるお前は最後にする予定でいたが、少し早めようとするか?それに隣には今日の楽しみに残していた上物(楊善の事)が運ばれて来たようだしね」
その直後、世子の姿が視界から消えていた?
「なぁ!?」
それは異常な動きだった。
世子は一瞬で私の足下へと移動し、手にした剣を振り上げて来たのだ。
「オット!」
私は辛うじて躱すと後退しながら幸楽公主を背にして守って見せる。
「私の後ろにいなさい?良いですね?」
「は、はい・・・」
幸楽公主は恐怖で腰が抜けて座り込む。
「まさか朕の剣を躱すなんて只者ではないな?さっきも小娘如きに朕の抜いた剣を受けられたばかりだと言うに。本当に今宵は腹が立つ。お前は何者だ?何処ぞの間者か?」
「私ですか?私はただの絶世の美形です」
そう言った私は感じていた。
目の前の世子からは人ならざる異様な力を?
さてさて、これはどうなるのでしょうか。
次回予告
楊善の前に世子が襲いかかる。
世子は一体?




