逃げるが勝ち?それは生き延びるための教訓??
改伯と玄徳の前に現れたのは、蛇神の高位種、覇蛇の称号を与えられた化け物だった。
二の危機に突如現れたのは?
それは突然起きた。
改伯と玄徳の前に現れたのは蛇神の中でも高異種であり、覇王より覇蛇の称号を与えられた硬剛覇蛇であった。硬剛覇蛇を前にして二人は生き残る事を諦めかけたその時、上空より落下して来た影が硬剛覇蛇の後頭部に攻撃を与えて救ったのだった。
その黒き背中を見た二人は、
「どうしてお前がここにいる?何故来た!」
「それより訓練生達はどうした?まさか見捨てて来たのではないよな?」
二人の前に現れた黒い影の正体とは?
「そんな同時に喋るなや〜」
子供達の先導を頼まれ先に逃げたはずの黒豚妖怪八戒だった。
「それがだな〜」
八戒は少し前に起きた事を告げる。
八戒は訓練生達を連れてこの場から離れていた時、彼らの前に現れたのは天界の武神達だった。
彼らは二郎神君により連絡が入り、この訓練生施設に起きた事を聞き救援に来たと説明する。
しかしだった。
施設にはまだ改伯と玄徳が残って戦っている。
にもかかわらず彼らはそれ以上足を運ばなかった。
「これ以上先に向かえば無駄死にになる事は明白。残ってお前達を逃した二人は武神として誇りに思う。彼等の死は決して無駄ではない」
「待つらよ〜まだ死んでないらよ〜」
「我々が出来る事はここまでだ」
「ならオラが二人を助けるら!」
「勝手にすれば良い。所詮妖怪のお前がどうなろうと我らには関係ないからな」
「そうらな、妖怪のオラは天界の連中と違って自由ら!好きにさせて貰うら」
そう言って飛び出して来たのだ。
「そうか、天界から救援があったのか。やはり英雄神方は私達をお見捨てにはならなかったのだな」
「胸熱になってる所悪いらが、まだ危険は回避出来たわけじゃないらよ」
「!!」
すると頭を殴られて地面に埋もれていた硬剛覇蛇が起き上がって来たのだ。
「お、お前か?俺の頭を殴ったのは?」
「違うら!」
キッパリと嘘をつく八戒。
「この覇蛇の俺をコケにするとは命知らずな奴よ?見れば下等な妖怪ではないか?」
「ひぇえええ〜」
八戒は目の前の恐怖に怖気づく。
そんな八戒の左右に玄徳と改伯が並び立つ。
「救われた命、借りは返そう」
「全く、お前のような奴に教わるとはな」
二人から再び闘志が漲る。
その二人に八戒もまた胸が熱くなる。
「仕方ねぇらな?こうなればオラ達で不可能を可能にしてみねぇらか?」
「面白い!あの化け物を倒して生き抜こう」
「未来を掴むぞ!」
三人は硬剛覇蛇に対して戦う決意をする。
「雑魚が何を意気がる?お前達は手を出すな?この虫らは俺が直接始末するからな」
硬剛覇蛇に命じられた蛇神の兵は一斉に場所を開ける。
三人は気を高めると同時に仕掛けたのだ。
硬剛覇蛇に先制攻撃するが、三人の武器は硬剛覇蛇の皮膚に傷一つ付けられなかった。
「何て硬さだ!?」
「ビクともしないら〜」
「攻撃を止めるなー!」
三人は攻撃の手を止めずに連続攻撃を仕掛ける。
玄徳が剣に神気を籠めて振り下ろし、八戒が妖気を凝縮してぶちかます。
さらに改伯が印を結び術を放つ。
「火炎爆砕」
炎が硬剛覇蛇の身体を包み込むが効いたようには見えない。
続けて雷撃を与えるが効果がない。
「次はオラらぁああ!」
八戒は釘鈀で叩きつける。
「ん?」
八戒の釘鈀の攻撃は強固な硬剛覇蛇の皮膚に引っ掻き傷を与えたのだ。
「俺の皮膚に傷を付けるだと?だがそれが限界のようだな?がははははは!」
大笑いする硬剛覇蛇に八戒と改伯は同時に左右へと分かれると、その背後に神気を剣に籠めながら高めていた玄徳が攻撃の準備を終えていた。
その剣に籠められた力は異常に高まる。
「青龍刀!」
玄徳の持つ青龍刀もまた天界の名のある宝具だった。八戒の持つ釘鈀と同格の宝刀であり、かつて七代目天蓬元帥・大玄の愛刀。
しかも四海龍王最強の青龍王の持つ青龍刀の姉妹刀なのである。何故そのような宝刀を所持しているのか?それは青龍王の先代の父親を倒したのが、七代目の大玄だったからだ。
そして玄徳は父親より引き継いだのは青龍刀だけではなかった。
天蓬元帥のみが口伝のみで伝えられる最大奥義をも修得していた。
「今こそ食らうが良い!これが俺の必殺奥義・天蓬大幻水!」
玄徳を中心に濁流が昇っていき龍の姿になる。
それは水術と神気が融合し、更に青龍刀がその威力を高めているのだ。
暴龍と化した水龍が硬剛覇蛇に向かって牙を剥き飲み込んでいく。
「こ、こんな曲芸ぃいいいい!!」
飲み込まれた硬剛覇蛇の身体は全身に無数の傷を負いながら抗うが、次第に受け止める腕が折れ曲がり、強固な身体がヒビ割れ砕けていく。
「あがががっ!」
硬剛覇蛇はもう動きを止めていた。
そこに青龍刀を振り下ろして来た玄徳が硬剛覇蛇の眉間に斬り付けたのである。
倒れゆく硬剛覇蛇から飛び降りた玄徳は雄叫びをあげたのだ。
「見事だぞ!玄徳よ!」
「マジにやりやがったら〜あの野郎!」
改伯と八戒はその勝利に歓喜する。
しかし三人は警戒は解かない。
何故ならまだ蛇神の兵が残っているから。
油断は決してしないつもりだった。
しかし蛇神兵は硬剛覇蛇を倒されたと言うのに誰一人襲い掛かって来なかったのだ?
「不気味だ。何故襲って来ない?」
「このまま逃げても大丈夫じゃないらか?もしかしたら親玉殺られて怖気づいてると違うらか?」
「何を呑気な事を?」
この状況で考えられる事は一つだけだっ。
ま、まさか?
三人は恐る恐る振り向く。
「そんな馬鹿な!?」
倒したはずの硬剛覇蛇が再び立ち上がっていたのだ!
しかも全身の皮膚が粉々に砕け散ると、その中から傷一つない新たな肉体が露わになる。
「ふぅ〜。少し驚いたが俺の古い皮質を全て洗い流してくれたようだな?ぐふふふ」
しかも、硬剛覇蛇から発する蛇気は先程よりも強力かつ膨大になっていたのである。
「一つ教えてやろか?俺は傷付けられれば傷付けるほど肉体は脱皮し、更に強固な身体へと成長しながら無限の力を持つ。これが俺が覇王様に頂いた能力だよ!ほれ?もっともっと足掻いてみろよ?俺は更に強くなり絶望を与えてやるからな!」
三人は怯み始める。
「どうした?もう遊んでくれないなら、お前ら三匹とも餌にしてやるぞ〜」
硬剛覇蛇は再び動き出し腕を伸ばして来たのだ。
「くそぉ!だったらくたばるまで斬るまでだ!」
玄徳が青龍刀で硬剛覇蛇の腕に斬り掛かるが、傷一つ付かない。
それどころか自分の腕が衝撃に痺れる。
そんな玄徳に硬剛覇蛇の手が迫って来ていた。
「!!」
その時だった。
玄徳を押し倒して八戒が代わりに掴まれたのだ。
「うぎゃああ!」
握り潰される八戒に硬剛覇蛇は、
「何か違うのが取れたぞ?まぁ、良いか?お前は俺の頭を殴った奴だったよな?」
「いや!オラは本人のそら似ら!」
そんな言い訳を無視して硬剛覇蛇は全身の骨を砕き八戒を放り投げる。
「そんな・・・何故、俺を庇って?」
八戒が自分を助けた事、そして目の前で無惨に殺された事に動揺する玄徳に改伯は叫ぶ。
「油断するな!まだ終わってはおらんぞ!」
改伯の言葉に我に返る玄徳は再び剣を上段で構えると、振り下ろされる硬剛覇蛇の拳を受け止めたのだ。
「せぃやああ!」
そこに改伯が飛び出して硬剛覇蛇の目に剣を突き刺す。
「これならどうだぁー!?」
硬剛覇蛇は潰された目を抑えて叫びながら悶える。
「うぎゃあああ!」
例え蛇神でも目を潰されれば!
「な・ん・て・な!」
しかし覆った掌を離した硬剛覇蛇の潰されたはずの目は完全に元通りに再生していた。
「そんな馬鹿な・・・これが蛇神の再生力なのか?」
「その上、再生する度に力を増しています!」
このような化け物をどうやって倒せと言うのか?
「さて、そろそろ絶望したか?力の差を理解したか?無謀と愚かさを身を持って味わったか?」
硬剛覇蛇は完全にこの場の空気を支配していた。
そして玄徳と改伯に向かって両腕を組む。
同時に地面が盛り上がり二人は立っている事も出来ずに足下に倒れてしまう。
「砕け散ってしまえー!」
硬剛覇蛇が蛇気を籠めて二人に向かって攻撃を放とうとした時だった。
突然視界が真っ暗になったのだ?
「なぁ?なぁ?なぁ?」
何が起きたと言うのか?
すると玄徳と改伯は驚きに自身の目を疑う。
「後ろの正面〜ら〜れ~ら?」
それは死んだかに思われていた八戒が硬剛覇蛇の背後から背中に乗り目を覆い隠したのだ。
「オラは死んでねぇ〜ら!それよりオラの取って置きを食らうが良いら?」
その直後、八戒は硬剛覇蛇の顔面に特大のオナラをぶちかます。
更に、
「オラのオナラはよく燃えるらよ?」
オナラガスに着火し硬剛覇蛇の顔面が燃え上がる。
しかもオナラが目に染みて前が見えないのだ。
「うぎゃあああ〜」
更に八戒は着地と同時に地面に掌を置く。
「二人が時間稼いでくれた間にこしらえたらよ!」
すると足場が崩れて硬剛覇蛇は落とし穴に落下したのである。
「うぎゃあうぎゃあうぎゃあ!」
落ちた落とし穴は糞まみれだった。
しかも粘着が強く踏ん張りもきかないために硬剛覇蛇はやすやすとは抜け出せなかった。
八戒は玄徳と改伯に振り向くと一言。
「さて逃げるとするらか?」
「えっ??」
「逃げるが勝ちらよ!」
茫然とする二人。
逃げるが勝ち!
それは八戒が今日まで生きて来て学んだ人生の教訓だった。
次回予告
八戒の機転。
しかしそれは覚悟と比例していた。




