救世主外伝その陸~獅子と蛇神~
人間の僧侶と西の妖魔王は、
蛇神の覇王を決める闘技場で暴れていた。
俺は覇王候補の蛇神連中を相手に喧嘩をふっかけていた。
先ずは二体倒して順調なところ、この前に痛い目に合わされた蛇磨意我が次の相手だった。
俺を相手に油断している蛇磨意我に対し、大威徳明王へと変化し拳を振る舞ってやったのだ。
「グホォ!」
血反吐で床を染める。
確実に前回とは比べ物にならない俺の破壊力に信じられずにいる所、俺はオマケに蹴りを顔面に振る舞い吹っ飛ばす。闘技場の壁際に衝突し崩れ落ちる石壁に埋もれる。
「これで終わりなら楽だがな?」
埋もれた石壁の下から蛇気を噴き出しながら蛇磨意我が立ち上がると石壁が蒸発するように消滅したのだ。
「おのれぇーーー!!」
怒りに任せて俺に向かって掛けて来る蛇磨意我に対して俺は空手の構えで受けてたつ。
「久しぶりにガチの力勝負といくかぁ!」
俺は蛇磨意我の振り下ろす拳を空手の上段受けで受け流し右拳を繰り出す。だが今度は蛇磨意我は俺の攻撃に対して油断はしていなかった。巧みな防御で受け流し、俺と拳と防御の力比べとなる。
この俺を押し潰さんばかりの威圧感がのしかかってくる。だが、俺に格闘技を教えてくれた男はそれ以上に俺を苦しめたんだぜ?
「それに比べれば生温いわ!」
俺の繰り出した拳が蛇磨意我のガードを弾き飛ばし顔面に直撃し怯ませる。
「ぐぅおおお!」
その隙をついた俺は拳に覇気を籠める。
「明王の拳!」
繰り出す拳の連打が蛇磨意我の強固な身体にヒビを付けていく。
そしてフラつき前のめりになった所を、
「明王の鉄槌!」
上部から後頭部を叩きつけたのだ。
轟音を立てて床に倒れる蛇磨意我は痙攣を起こしていた。
「次はお前が相手になるか?」
俺の視線の先には蛇牙流多が残っていた。
コイツにも因縁があった。
最初に戦った蛇神だったよな?
あの時は痛み分けだったが、今の俺は負ける気がさらさらしねぇよ?
「最初に戦った時は手を抜いていたのか?」
蛇牙流多は俺に興味を抱いているようだが、どうやら蛇神ってのは芯から戦闘狂のようだな?
「お前はソソるぜ〜」
俺を見る目は完全に獲物を狙う捕食者!
すると蛇牙流多の蛇気が向上する感情に同調するかのように桁違いに大きくなっていく。
間違いない!コイツは他の二人よりも強い!桁違いにな!
「疼くぜ・・・これほど俺を楽しませてくれそうな獲物はお前が初めてだぜ」
「褒めてくれて、ありがとうな?だが勘違いするなよ?お前が相手しようとしている俺はかなり強いからな?」
「楽しませろよ!この俺をよ!」
と、そう言えば俺が連戦で戦っている最中にも俺とは別に蛇神共と戦っている奴がいたな?
この闘技場の本来の主で、西の大陸の大妖怪からの〜妖魔王・獅駝王って面倒くさい大馬鹿者が!
「俺俺、最強だぞ!お前ら俺俺の喧嘩を買ってくれるんだろ?ガチ強いなら恐れずにかかってこい!」
自信なのか?本気で強いのか?それとも蛇神以上に戦闘狂なのか?獅駝王は強気に猛る。
獅駝王の前には蛇亜流我、猛蛇王、猛虎修蛇の三体が囲んでいた。
三体の蛇神は誰が先に相手をするかで険悪なムードでいたのだ。
「この俺が相手をする。邪魔をするなら先に始末するぞ?」
「出来るものならやってみろ!どちみち皆殺しの予定だからな」
血気盛んな蛇亜流我と猛蛇王が歪み合う中、猛虎修蛇が背を向ける。
「構わん。お前達のどちらが勝とうが俺は強者と戦えれば良い事だ。無駄を短縮出来るのは結構!好きにするが良い!」
すると猛蛇王が意表を付いて先に飛び出し獅駝王に向かって攻撃を仕掛けたのだ!
「あの野郎!ならばお前の腕並みを拝見させて貰うぞ!」
蛇亜流我は猛虎修蛇と同じく腕組み待機する。
「生憎、俺の力を伺うつもりだろうが関係ねぇ!小細工でどうこう出来るようでは真の覇王とは言えないからな!」
猛蛇王が両手に蛇気を籠めると同時に足下が揺れ出し床が盛り上がっていく。
「握硬圧縮!」
盛り上がった地盤は凝縮していくと、猛蛇王は両手を振り出す。
「ウガッ!?」
獅駝王の身体に地面から圧縮して硬化した岩が飛び出して来て縄のように絡みつき身動きを止めたのだ。
猛蛇王の能力は掌から発する蛇気で覆ったモノを空間ごと圧縮する力を持っていた。
「俺俺、こんなもん引き千切ってやるぞ!ウググ」
しかし獅駝王の力を持ってしても引きちぎるどころか余計に締め付けながら四肢を左右に引き伸ばす。
「そのままバラバラにしてやろうか?」
「俺俺、まだまだだぁ!」
「無駄だ!俺が圧縮した岩石は高密度の錬金と久しい。俺の意思なく破壊する事は不可能!」
その時、獅駝王の身体から爆発的に妖気が膨れ上がっていく。その上昇率に猛蛇王は一瞬怯む。そして自分が相手している化け物は覇王となる自分にとって後々脅威となると本能的に気付いたのだ。
「ウガァアアア!」
雄叫びをあげる獅駝王に対して猛蛇王が勝利を確信したその直後、猛蛇王の拘束を粉砕したのだ。
「馬鹿な??信じられん」
猛蛇王は冷や汗を流している自分自身に対して怒りを感じる。そして改めて本気を見せる。
「どうやら小細工をしていたのは俺のようだ。今からお前に対して全力で相手してやろう!」
猛蛇王は掌で圧縮した岩を投げ付けると、それはマシンガンのように獅駝王の鍛え抜かれた筋肉を貫く。
しかし猛蛇王は身震いしたのだ。
獅駝王は交差した両腕の盾の隙間から獲物を狙う獣の目が猛蛇王を貫くように睨んでいたから。
「・・・聞いた事がある。この西の地には魔王を統べる妖魔王が統べていると聞いていたが、それがお前なのだな?たかが下等な妖怪が魔王などと意気がっていたと思っていたが、訂正する!お前はとんだ化け物だった!」
猛蛇王は自らの掌を獅駝王に向けると、
「握硬圧縮!」
獅駝王の身体を空間ごと圧縮しながら潰すつもりだった。
「そ、そんな馬鹿な??」
しかし、いち早く獅駝王は圧縮する空間から飛び出して猛蛇王の間合いに入ると、その握られる掌に合わせて握り返す!
「俺俺と力比べだぞ?」
「この俺と力比べだと?何処までもコケにしやがってぇ!」
しかし二人の動きは両手を握り合ったまま止まった状態で妖気がぶつかり合う。
そして骨が砕ける鈍い音がした直後、猛蛇王は雄叫びをあげて獅駝王の首元に噛み付いたのだ!
「このまま首を落としてやるぞぉー!」
だがしかし獅駝王は握られた左右の拳を猛蛇王の頭部を挟むようにぶん殴る。
見ると猛蛇王の両手は完全に潰れていて、頭蓋骨も完全に粉砕された。完全に白目をむき戦闘が出来る状態ではなかったのである。
「で?次の俺俺の相手はどいつだ?」
その圧倒的な強さを目の当たりにした蛇亜流我と猛虎修蛇は目の色を変えていた。それは怯むどころか強者に対して血が騒いでいたのだ。
「次は俺が相手する。俺はそこに転がってる奴とは違うから、最初からお前も本気で来るが良い」
「おぅ!楽しみだ!俺俺は全開だぞ!」
次の相手は最初に俺達が見つけた石版から現れた蛇神の蛇亜流我のようだ。
蛇亜流我の闘気が噴き出すと獅駝王に向かって攻撃を仕掛ける。蛇亜流我もまた受けてたち、拳と拳が衝突し、そこからは肉弾戦となる。
「うぎゃああ!」
その直後、獅駝王の両肩が裂けて血が噴き出す。
そして切断された両腕が落ちたのだ。
大量の血を流しつつも獅駝王は転がってる自分の腕を口で咥えて繋ぎ目を合わせると、蒸気を噴き出しながら再生が始まっていく。そしてもう片方の落ちてる腕を拾い上げると同じく繋ぎ目に合わせる。
血蒸気が噴き出しながら見る見る再生していく速さは異常であった。
「大した再生力だ。再生力まで化け物とはな?蛇神の十八番を奪われた気分だ。しかし今のは序の口。次はお前の頭を落としてやろう」
獅駝王は馬鹿ながら再生していく腕が動くのを確認しつつ、蛇亜流我の仕掛けた攻撃について考えていた。蛇亜流我は先に闇一族の隠れ里にてカナルが攻撃したと同時に見えない攻撃で倒していた。それは目で捉えられない速さの攻撃かと思われていたが、獅駝王は受けたダメージから本能的に何かを感じ取っていた。
「お前はこの俺に触れる事はもちろん近付く事なく、何をされたか分からないまま死んでいるだろう」
蛇亜流我は両手を前に出しながら無防備に近付く。
「!!」
瞬間、獅駝王の野生の本能が身体を動かしていた。
その場から飛び上がり躱すと同時に、その場が抉られるかのように消滅したのだ。それは速さとかの問題ではない。蛇亜流我は目に見えない攻撃をしているのだ!しかし獅駝王は野生の本能で反応する。
「ビビビと気付いたぞ?なんかヤバいのがくるってよ!お前、何かしてるのか?」
「・・・俺の攻撃から逃れた奴は初めてだ。だが、今度はそうはいかん!」
すると獅駝王は全身に痺れを感じ動きが鈍る。
「奪った能力は案外使えるな」
蛇亜流我の足下から伸びた影が獅駝王の影と同化して動きを縛る能力。間違いなく影一族が持つ特殊な能力だった。しかし何故影一族の能力を使えるのか?
「この俺は喰らった妖怪の能力を我が身に宿わせる能力があるのだ。」
つまり影一族の連中を喰らって力を手に入れたのか?すると見えない攻撃も何かの能力か?
蛇亜流我は自分が倒して喰らったカメレオンの妖怪の能力を使い、自らの身体の一部を風景に溶け込ませながら攻撃を仕掛けていたのだ。
「そうか?なら俺俺も今まで倒した強い連中を喰らって、そいつらを倒したと事を糧として俺俺の身に宿して来たのだぞ!」
獅駝王の身体が帯電し妖気が更に高まっていく。
「俺俺は強い奴を見ると腹が鳴るんだ!俺俺はお前を倒して喰らってやるぞ!」
「面白い、ならば試してみよう。この俺の飢餓とお前の飢餓と競い合わせようでないか」
互いに牙と爪を光らせ、その目は妖しく光る。
獅駝王は蛇亜流我の繰り出す見えない攻撃を雷を帯びた素早い動きで躱して鋭い爪を立てて攻撃を仕掛けるが、蛇亜流我もまた予測を上回る動きで躱している。
すると獅駝王の身体は雷を帯びながら鎧へと変わっていく。
それは獅子と大虎の融合した鎧。
かつて倒された獅子と大虎の融合した最強を誇る大魔王の魂は今は獅駝王の魂に宿り聖獣となった。
それは形となって雷を纏う鎧と化したのだ。
「俺俺は今、楽しくて楽しくて仕方ないぞぉー!」
その直後、見えない攻撃が獅駝王に直撃する。
「うぐぅおおお!」
その強い衝撃を受けた獅駝王は足下を踏ん張り受け止めたのだ。
「ば、馬鹿な!?」
受け止めたのは透明の、尾?
蛇亜流我の尾だったのだ!
「邪魔だぁー!」
獅駝王は透明の尾を受け止めた状態で爪を突き刺し、そして抉るように引き裂いたのだ!
「うぎゃああああ!」
堪らずに悲鳴をあげる蛇亜流我に、獅駝王は引きちぎった尾に噛み付き喰らう。
「お、俺の尾を・・・喰うなぁー!」
堪らず怒り任せに襲いかかる蛇亜流我に、
「もうお前に興味なくなったぞ!」
獅駝王は振り回す拳で力任せに蛇亜流我の腹部をぶん殴ると、嗚咽しながら蛇亜流我の身体は真っ二つに吹き飛ぶ。
「そんで本命が残ってたよな?」
脅威的な強さを見せる獅駝王の視線の先には最後の猛虎修蛇が睨んでいた。
「面白いものを見せて貰った。だが俺は容易くはないぞ?」
「楽しみにして良いのか?」
対峙する化け物二体。
うむ、
この戦いもまた長引きそうだな。
そんな俺達の戦いを見ていたのは闘技場で俺達の様子を見ていた鈎蛇王と白蛇王だった。
すると白蛇王が鈎蛇王に話を持ちかけていたのだ。
「それは本当なのか?それを何故お前が知っておるのだ?」
「ふふふ。私はこの覇王生誕祭の真実を知る者。全て古の予言により知らされていたのです」
白蛇王は鈎蛇王に何かを伝えていた。
それは覇王生誕祭の真実に関わる内容。
「お前、俺を謀るつもりではなかろうな?」
「私を信じられなければ構いません。しかし貴方は覇王生誕祭が何のために行われているのか知っていられますか?」
「そ、それは・・・」
狼狽える鈎蛇王は確かに覇王生誕祭の事を何も知らないでいた。そもそも何故、この時に生誕祭がこの場所で行われるのか?それすらも聞いたわけでも知らされていたわけでもない。ただ蛇神の本能が魂に呼び掛けられるがままに来たに過ぎないのだ。それは恐らく他の蛇神候補者達も同様であろう。
ソレを白蛇王は知っていると言うのか?
「聞いてやるのは構わん。万が一俺を謀るならその場でお前を斬るまでだ」
俺達の戦いの最中に何か別の動きがあるみたいだけど、これは放置出来る内容なのか?
そして二人は闘技場の中へと消えていく。
そして地下へと続く通路を歩きながら、
「このような隠し通路があったとはな。この先に何があると言うのだ?」
「来れば分かります」
白蛇王が連れて来た場所は闘技場の隠し通路の先にあった王の間であった。
「この俺を王の間へと連れて来て、俺を覇王として認めたと解釈して良いのか?」
それは確かめるように尋ねる。
だが、その腕は鞘に置かれていた。
返答次第では斬るつもりで。
「この王の間に入れば分かりますわ」
そして足を踏み込んだその時、鈎蛇王は本能的に剣を抜き構えたのだ!
そして警戒するように中を見る。
「!!」
王の間に入った瞬間、とてつもなく巨大な気を感じ取り、その奥に数人の影を見てとる。
「お前ら、何者だ?」
その者達は間違いなく闘技場で戦っている覇王候補の者達と同様?いや、それ以上に感じられた。
「無粋な。剣を置きたまえ?」
「ふふふ。剣に手を置いてないと恐ろしくて不安なのではないかしら?」
その者達の中に見覚えがある者もいた。
「候補者の中にお前程のものをがどうして入っていなかったと思えば、やはりいたのだな?」
鈎蛇王は中央に見える者に向かって叫ぶ。
「蛇帝・魔蛇無に王蛇・斑」
その二人の蛇神は千年前に暴れていた蛇神の中でも同族から名を知らぬ者はいない猛者であった。
恐らく自分含めて、上で戦っている者達が少なくとも千年前には手も足も出せなかった化け物だった。
「そういう事か?お前らが真の覇王に名乗りを挙げたと言うのであれば、俺達はお払い箱って事か?」
鈎蛇王は場合によっては単身、恐らく五体はいるであろう巨大な力を持つ連中と戦う事になると覚悟を決める。だが間違いなく生き残れまい。
「剣をおさめよ!」
その者は皇蛇と呼ばれる蛇神の伝説的化け物だった。
その威圧に鈎蛇王は鞘に剣を収める。
目の前の存在に対して本能的に勝てないと察したのだ。
恐らく今の自分では敵わなずに殺されるだろうと。
「そう言う事だったか、皇蛇殿」
鈎蛇王は察したのだ。
この覇王生誕祭などと言う祭りは全て茶番で、自分の目の前に現れた皇蛇こそ、真の覇王なのだと。
皇蛇こそ、かつて千年前に蛇神達を率いて天界と地上界、龍神界に戦争を起こした蛇神の王であり、鈎蛇王もまた皇蛇の配下であったのだ。
そして気付く。
覇王になれると勘違いして集められた自分達は、とんだ大馬鹿の集まりだったと。
「つまり覇王であるアンタに従えば良し、そうでない者はこの場で始末するために集められたと言う事か?手の込んだ真似をしやがって!」
鈎蛇王は己より格上の力を持つ皇蛇に対して腹をくくる。この状況で他の蛇神達を同時に相手するよりも頭である皇蛇に一矢報いる事が出来れば多少なりともこの逃げ場のない状況を一転出来るかもと踏んだのだ。しかし、鈎蛇王は皇蛇の次の言葉にやる気を削がれてしまったのだ。
「この私が覇王だと?畏れ多い事を。私には身分不相応だ」
「何だと?」
なら、この場にいる他の誰かが覇王なのか?
誰そこに全てを知る白蛇王が言葉を入れる。
「覇王様はまだ眠りについたまま」
「何だと?どう言う意味だ?ソレは?」
察するにこの場にいる強力な力を持った蛇神達が賛同して覇王へと祭り上げる者が存在するという事。
いったい何者なのだ?それほどの者が存在すると言うのか?
そして何のために鈎蛇王は誘われたのか?
すると白蛇王は妖しく笑みを見せて話し出す。
「教えて差し上げましょう。語り継がれる覇王の真相。我々蛇神から真の覇王が誕生する意味をね」
「!!」
それが蛇神だけでなく妖怪誕生の旧世紀秘話!
次回予告
蛇神誕生、覇王とは?
旧世紀神話の秘密が語られる。




