救世主外伝その参~覇王の玉子~
男に降りかかる厄災
それは回をます事に大きくなっいく。
ここからは俺が語ろう。
俺は旅の途中で月兎一族の内乱に巻き込まれた後に、更に影一族の抱えた厄介事に巻き込まれた。
俺って巻き込まれ体質だったけか?
俺は影一族のカナルの案内で隠れ里へと向かっていた。そして同行するのは月兎一族から千兎と白兎が付き従う。無理に同行は必要ないと告げたが、恩を返すのが一族の慣わしらしく着いてきたのだ。
そして数日間移動に費やした後、俺達は影一族の隠れ里に到着した。
カナルは俺達を待たせた後、単独中へと入り込む。影の中を移動する能力があるからバレずに偵察するのは打ってつけだった。
そして戻って来たカナルは内部で起きている内容を俺達に告げた。中にはカナルの仲間が数人いたので情報収集は案外早く終わり戻って来た。
「でっ?」
「それが・・・」
カナルは中で聞いた事を説明する。
中にいた魔物達の二体は既に里を出たらしく、中には魔物は一体しかいないとか?話を聞くに魔物達は何かを探しているらしい事。そのために影一族の情報収集を使う為に殺さずに生かしている事。
魔物の二体は影一族の数人を連れて既に隠れ里を出て行ったとか。
で、残った魔物は何故残ってるのか?
「それが・・・」
カナルは躊躇いがちになる。
「どうしたよ?何か理由があるなら聞かせろ!」
カナルは俺達に告げた。
それは?
「中にいる魔物は俺達が連れて来た助っ人を始末するために残ったらしいのです」
「はあ〜?」
残った魔物は戦闘狂らしく、強い力を持った者を還付無きまでに叩きのめし殺す事を娯楽にしていると言うのだ。だからこそカナル達が情報収集に出たと見せかけ、助っ人を連れて帰る事を待っていたと言うのだ。
「よほどの自信家だな?石板に封じられている間に好奇心旺盛になったか?身の程知らずが!」
俺は「面白い」と拳を握り鳴らす。
「この俺に喧嘩を売るからには命はいらないと思えよ?石板の魔物さんよ!」
その殺気にカナル他、千兎達も身震いする。
石板の魔物と魔王狩りの人間。
どちらも敵に回せば脅威であるのは間違いないと。
そして俺達は表門から堂々と中へと入る。
招かれたなら隠れていても仕方ないしな。
隠れ里には影一族の者達の姿は誰一人いなかった。
「お前の一族の連中は?」
カナルは暗い顔で答える。
「全員捕らえられています」
「なるほど。なら俺が魔物の相手をしている間に中の連中を救ってやれ?」
「は、はぁ・・・」
カナルはまだ俺の力を信じていなかったのだ。
石板の魔物の力は人間の俺なんかでは太刀打ち出来ないと諦めていたのである。
そして俺達は隠れ里の奥にある祭壇の前に出る。
祭壇は日が当たらない暗い場所にあった。
影の一族だから陽が当たるのが嫌いなのか?
少しは太陽浴びないと健康になれんぞ?
植物を見習えよな?
「!!」
と、冗談を思っていると強烈な殺気が俺に対して向けられたのだ。
「どうやら石板の魔物のお出迎えのようだな?」
俺達の視線の先には祭壇の上に一人の魔物が立っていた。見るからに人間のような姿だが、感じる力は妖怪なのは間違いなかった。
「カナル!お前が連れて来た助っ人連中はそいつらか?他の奴等が連れて来た助っ人は全員大した事がなかったぞ!」
「うっ!」
カナルは辛そうな顔をする。
なるほどな〜
どうやらカナル含めて影の一族は必要な情報収集とは別に石板の魔物の満足する強者を連れて来る事を命じられていたらしいな。
つまりカナルは俺達を嵌めたのだ。
「お前、裏切ったのか!」
「皆さん、すみません」
千兎に怒鳴られるとカナルは謝罪する。
「しかし我々が生き残るためには仕方なかったのだ!あの石板の魔物には誰も敵わない!俺達は生きるために従わなければならなかったんだ!」
「時に妻と娘の話は本当か?」
俺が尋ねると、
「だから、従わなければならなかった・・・」
妻と娘が人質にされているのだな。
「なら、構わん」
「えっ?」
まさかの返答にカナルは驚いた顔をしていた。俺はカナルを許したのだ。
「俺も妻と娘がいたからな」
「えっ?」
そう呟くと、俺は祭壇に向かって行く。
無謀にも向かって来る人間の俺に魔物は訝しげに感じていた。
「何かと思えば人間だと?つまらん!俺は強者を連れて来いと命じたはずだぞ?」
魔物は思っていた以上に人間臭かった。
「俺も他の連中と同じく旅立たねばならないからな。最後の余興に期待して待ち構えていたが拍子抜けだ。せめてマシな妖怪とか連れて来いよな!」
「よく喋る魔物だ。うるせぇわ!」
俺が怒鳴ると魔物は虫けら程度にしか思っていない俺に苛立ちを感じる。
「直ぐに終わらすつもりだったが気が変わった。人間よ?先ずはお前の両腕両足をもぎ取ってやろう。いつまで生きていられるか楽しみだ!泣き叫ぶ姿を見て気晴らしにするか」
魔物はそう言うと、俺の視界から消えたのだ!?
「何?消えただと?」
その時、殺気が真正面から俺の間合いに感じると、俺は本能的に後方へと瞬時に移動する。
「ぐはぁ!」
俺の胸元が切り裂かれて血が垂れる。
まさか今の一瞬でヤられたのか?
どうやら並みの化け物とは違うようだ。
「お前、何なんだぁ?おもしれえぇ〜」
魔物は俺を確実に掴まえたかと思っていたのに躱された事に興味を持ち始める。
「ただの人間じゃないのか?お前?まさか、ここに来て嬉しい玩具が来たじゃねぇかよ〜」
「チッ!」
俺は少し面倒くさく感じた。
この魔物はかなり強いと気付いたから。
恐らく俺が倒して来た妖怪や魔王なんかよりも数段強いと思われる。
「俺もお前に興味持った。お前は何だ?聞くに石板から出現したと聞いたが?」
「誰に物を聞いている?俺を楽しませてくれるのは良いが、調子に乗るな?万が一でもこの俺に傷を負わせられれば教えてやっても構わんぞ?人間!」
「そうか、なら手っ取り早く行くか!」
俺は飛び出すと、拳を振るう!
その直後、魔物と俺が衝突して拳と蹴りがぶつかり合ったのだ。その度に激しい気のぶつかりが祭壇を破壊し、その戦いを見ていた千兎やカナル達は見ていられずに後退する。
「何なんだ?あの気のぶつかり合いは?魔物と人間が互角に渡り合えるなんて」
驚くカナルに千兎と白兎は答える。
「あの方の本気はまだまだだよ」
「えっ?」
すると魔物の顔面に俺の拳がヒットして殴り飛ばしたのだ!
「ぐはぁ!」
魔物は頬を押さえながら驚く。
「この俺の顔に傷だと?この人間は本物だ!面白い!こいつは間違いなく強者だ!」
魔物から邪悪な妖気が立ち込める?
ソレは俺が知る霊気や妖気とも違った。
するとカナルが叫んだのだ。
「その魔物は蛇神です!蛇神なんです!」
「蛇神だと?」
俺は蛇神の予備知識がなかった。
が、その名を聞いて月兎一族の千兎と月兎が怯え始めたのを見るとマジに厄介な化け物だと分かる。
妖怪に恐れられる化け物が蛇神なんだと。
「おい?人間よ!俺の名前は蛇牙流多!この世界の覇王になる者だ!」
「はっ?覇王だと?」
蛇牙流多は全身の皮膚に蛇の鱗が現れ、更に強力な蛇気が高まっていく。
その凄まじさに、この俺の皮膚にビリビリと伝わるのは、久々に感じる恐怖に近いものだった。
「この俺が恐怖だと?ふふふ。この俺が今さら恐怖など感じる事があるものかぁ!」
そう。俺はもう恐いモノはない。
そんなものは全て捨て去った!
俺は地獄から舞い戻って来たのだからな!
俺は印を結び真言を唱える。
「明王変化唯我独尊」
俺の姿が神々しく光り輝くと、その姿が異形の魔神の姿へと変わっていく。
「オン・バザラ・ヤキシャ・ウン」
俺の姿は金剛夜叉明王と呼ばれる魔神へと変化する。その姿を見た蛇牙流多は、
「お前は本当に何なんだ?人間かと思えば魔神へと姿を変えやがった?」
その問いに俺は答える。
「俺はお前を地獄に落とす者だ!」
そう言うと、再び俺は蛇牙流多と激しい衝突を繰り返す。いや、先程とは比べ物にはならない激しさに大地が揺れ始める。
「うおぉおおおお!」
俺の動きは戦う事に加速していき、激しさが増すと蛇牙流多も笑みを見せる。この蛇牙流多も戦闘狂であり、俺との死の駆け引きを楽しんでいた。
「おい?人間!今から俺の取って置きを見せてやるぜ!死ななかったら土産をやろう」
蛇牙流多の手に剣が出現し、蛇気が高まる。
「蛇苦散征!(ジャクサンセイ)」
蛇牙流多から振り下ろされた剣から無数の蛇が飛び出して来て俺に襲いかかって来る。
「いつまでも楽しませて置くのはしゃくだな!」
俺は掌に力を集中させると雷が全身から発生し、その中心に光り輝く金剛杵が出現する。
「どのような障害をも貫く聖なる力!金剛夜叉・ヴァジュラ!!」
すると俺の金剛杵から強烈な雷が蛇牙流多に向かって放たれたのだ。
無数の蛇と雷が衝突して俺と蛇牙流多は互いの攻撃を受けて吹き飛んだ。
「ぐはぁ!」
俺は全身から血を流し起き上がる。
まだ終わってねぇ!
しかし蛇牙流多は俺に攻撃を仕掛けて来なかった?
「どうした?俺に怖気づいたか?」
すると蛇牙流多は答える。
「時間が来たようだ。この戦いの続きは西の大陸にある遺跡でやろうぜ?俺はお前を覇王の供物にすると決めたぜ!お前との決着はそこでつける!必ず来いよ?さもなくば手始めに西の大陸を壊滅させてやる。そして、じわじわと侵略してお前はどちみち逃げ場を失うとしれ!あははは!」
それだけ告げると俺達の前から消えたのだ。
俺は残され、
「どうやら痛み分けのようだな」
俺はその場に倒れ、千兎達が駆けつける。
そして消え去った蛇牙流多も、
「まさか俺に手傷を負わす人間がいるとは、まだこの世界も捨てちゃいねぇな!」
蛇牙流多は大蛇の頭に乗って移動していた。
「だが、他の二人に覇王の卵を奪われちまったら洒落にならねぇ。楽しみはそれからだ!」
覇王の卵?
それからどれだけ経ったろうか?
俺は目覚めた。
心配する白兎が俺の看病をしてくれていたみたいだな?そして目覚めた俺にカナルと千兎が駆け寄る。
「お身体は?」
俺は傷を見ると完全に塞がっていた。
「これは?」
「白兎様の魔眼の力です。白兎様の魔眼で貴方の体力を回復させて自然治癒力を高めたのです。それにしても人間とは思えない回復力です」
「世話かけたな」
俺は起き上がると、先ずは酒と肉を用意させ食した後、一息つく。
「でっ?」
俺はカナルに蛇牙流多が最後に言い残した覇王の卵について尋ねた。そもそも蛇神とはなんだ?
蛇神とは妖怪だけでなく神すらも恐れる天敵なんだと。言い伝えでは旧世界の神とも言われ現在の世界の神と妖怪を滅ぼすために現れたとか。
そこに現れるのが蛇神の王・覇王の存在だった。
覇王が出現すれば世界は闇に落ちると言い伝えられて星そのものが消滅するとか。
しかし覇王誕生には必要な三種のアイテムがあるらしく、それが覇王の剣、覇王の玉子、覇王の器。
覇王の器とは蛇神族の強者の事であり、その者が覇王の玉子を手に入れる事で覇王が誕生する。
覇王が誕生すれば、その手には必ず覇王の剣が握られているとか。
「とんだ厄介事に巻き込まれたようだ」
俺は煙草に火を点けると一服した。
つまり覇王の玉子てのが西の大陸にあって、そこには器に成りうる蛇神が三体いて、現在遺跡とやらに向かっていると言う事か?
で、放置すると世界が面倒になる。
無視すると付き纏われる。
逃げ出すと俺の責任ぽく思われる。
「どの選択も面倒くせぇ〜」
俺は仕方なく煙草の火を消すと、
「行ってくるわ〜」と告げた。
そんな俺に千兎達は目を丸くしていた。
「どうして貴方が?せっかく命拾いしたと言うのに、今度こそ命を落とすかもしれませんよ!」
「心配ない。俺の手相は長生きする」
「そ、それに見たでしょ?あんな化け物が他にも二体いるのですよ!」
「心配ない。俺、強いから」
止める千兎に俺は強情に答えると何も言い返せなくなったみたいで諦めたようだ。
「ならば俺が案内します」
カナルが俺に志願する。
「遺跡には影一族が数人連れられて行ったらしく、俺の妻と娘もそちらに連れ去られたと」
「お前、また裏切るつもりではないのか?」
千兎が睨むと、
「心配するな。例え俺一人でも向かうからな」
カナルは妻子のために死を覚悟していた。
「なら道案内頼む」
「はい!」
「なら及ばずながら我々も!」
千兎と月兎も志願したのだ。
しかし今から追い掛けて間に合うのか?
すると白兎が提案する。
「私に考えがあります!」
考え?
俺達は西の大陸へと向かっていた。
「で、此処には何があるのだ?」
「行けば分かりますよ」
俺達が着いた場所は、森のような場所だった。
「此処には、かつて我々月兎一族、影一族、青鬼一族ともう一つ暗殺一族の中でも最強を誇ったけれど三百年前に滅びた暗殺一族の隠れ里があるのです。滅びたと言っても数十人生き残りがいて、今もある物を守っているとか」
「それは何だ?」
すると森から褐色の肌をした筋肉の鎧を纏った戦士が姿を現す。
「お前達か?書状を送ったのは?」
「はい。私は月兎一族の長の白兎と申します」
「長自ら出向いたとは」
そこに老戦士が出て来たのだ。
「私はこの剛理羅一族の長をしております翁力と申します」
「この度は急な事で申し訳ありませんが、貴方達の転移装置を使わせて頂きたく参りました」
転移装置だと?
そんな物があるのか?此処には?
聞くに三百年も昔、この一族から三人の魔王が現れたとの事だった。
腕力魔王、怪力魔王、そして長の剛力魔王。
その強さは歴代最強を誇っていたのだが、妖怪軍の天界戦争勃発にて戦死したとか。
そこで天界より生き残り戻って来た他の魔王が褒美と感謝を含めて転移装置を譲渡したと言う。
そのおかげで一族は滅びる事なく今も僅かながら生き延びられたとか。
「蛇神が現れたとか?蛇神は全ての妖怪の敵でも有ります。我々の転移装置で良ければお使いください。白兎殿」
翁力はそう言って装置へと案内してくれた。
「話がスムーズ過ぎないか?」
「はい。それには理由が・・・」
白兎が言うには翁力率いる一族は数が少ないために直接力を貸す事は出来ない。その代わり転移装置を貸す事で多少なりとも貢献した事にして欲しいと言う条件なのだ。と言うのも蛇神が出現した際は全ての妖怪達はお互い手を組み討伐しなければならないと言う暗黙の条約があったから。本来なら一族からも戦士を出さねばならない所を転移装置を貸すと言う事で免れたと言う。
「蛇神を相手にするとなると命の保障はないですからね」
そう言う白兎も千兎も覚悟をしていた。
そして転移装置の前に俺達は並ぶ。
「これで瞬間移動出来るのか?」
「恐らく西の遺跡の近くにある村に出ましょう」
「村?」
「はい。人間の住む村です」
すると白兎と千兎の姿が人間の顔に変わる。
「おっ?」
「人間の村ではこの方が動きやすいので」
二人とも兎顔では見比べ出来なかったが、こう見ると美男美女だな?
「では御武運を!」
翁力が転移装置を作動させると俺達の視界が光の中に消えて、次に視界に映ったのは確かに人間の村であった。
「此処が西の大陸か?本当に一瞬だな?」
すると、突然姿を現した俺に向かって女の声が?
「あんた達は何者だい?突然姿を現して、アヤカシかい?」
「あっ・・・」
俺達は村の人間の女に見られたのだ。
まさか、こんな所でひと悶着起きるのか?
次回予告
男の前に現れた人間の女は、あの?




