紅鱗大蟒の怨み!?
法子一行と龍王達は、
蛇神を相手に苦戦しつつも応戦する!
反撃開始なるか?
私は法子
私達は蛇神の城に突入後、蛇神製造工場へと入り込んだの。そこでは蛇神を産み出す作業を事務的に行われていて、工場長だとか部長とか課長とか主任とか意味分からない蛇神達が下級の蛇神を使って働かせていたの。
私達は嶺黄風国や他の国から攫われた人々を救出に向かったけれど、それは全て手遅れだった。
そんな私達とは別に龍神界からも四海龍王の赤龍王さん、白龍王さん、黒龍王さんが侵入していたの。
私達を先に行かせて戦う彼等の強さは圧倒的で龍の血を得た強力な蛇神をも一掃した。
「後は覇王と呼ばれる蛇神の頭を潰すだけだな」
赤龍王さんは蛇神工場長を倒した後、先を急ごうとした時だった。
当然何かが投げ飛ばされて転がったの。
「お、お前たち?」
赤龍王さんの足下には傷だらけの状態で白龍王さんと黒龍王さんが倒れていた。死んではいないようだけど、龍王である二人がこんな姿になるなんて?
「赤龍王の兄者、や、奴はヤバイ、気をつけろ」
黒龍王さんは全身の痛みを耐えながら叫ぶ。
「どうやら奴がお前達をこのような目にしたようだな?」
赤龍王さんは怒りを籠めた視線の先には?
「お前達龍の血は殺さずに血を抜いた方が喜ばれるの。けれど暴れるもんだけら少々動けなくさせて貰いました」
それは女の蛇神だった。
けれど発する存在感は今まで現れたどの蛇神とも別格にて別物だったの。紅色の鎧を纏い、妖しい美しさを持つ女の蛇神。
「お前が覇王か?」
そう思わせるほどの覇気が発せられ、赤龍王さんですら平常心を保ってはいても余裕がなかったの。
「私か覇王様ですって?何を戯れた事を?私はこの工場と城の管理を任されている紅鱗大蟒と言います」
「そうか、なるほどな」
赤龍王さんは目の前にいる蛇神よりも更に強力な蛇神が存在する事を意味したの。
「さて、私の要件は散らかされた工場の立て直しと、新たな獲物の調達です。だから無駄な抵抗はしないで黙って従って貰えれば痛い目には合いません。はい、痛くしないように・・・」
「!!」
瞬間、その視界から紅鱗大蟒の姿が消えて首元に冷たい感触が伝わる?
「セィヤア!」
咄嗟に全身を捻り廻し蹴りを自分の後頭部があった位置に繰り出したの。すると陽炎の如く殺気は消えて紅鱗大蟒が姿を現す。
「ハァハァ・・・」
正直危なかった。
もしワンテンポ遅れていれば背後から迫っていた紅鱗大蟒に首を掴まれて、もぎ取られていたに違いなかったから。決して油断をしていたわけでないのに背後を取られた事に冷や汗を流す。
「白龍王と黒龍王では荷が重いようだな。良いだろう!お前は俺が始末してやろう!」
「貴方でもお相手になるか疑問ですわ」
二人から強烈な覇気が発せられぶつかり合うと二人を中心に工場全体が震え上がる。
そんな状況で私達は塞がれた通路の前にいたの。
「う〜ん」
私はようやく目が覚めたの。
あれ?確か?
私は記憶を遡る。
私は思い出したの。
阿修羅に気を失わされてしまった事。
私が自ら血を染めるべき時に阿修羅が引き受けた事に私は涙を流す。
そして立ち上がると心配していた沙悟浄と玉龍君に(あれ?砂塵魔王いたっけ?)に伝える。
「救出作戦は失敗よ!これから私達は孫悟空と八戒と合流して、蛇神の王って奴をぶっ倒すわ!」
二人は頷く。
「先ずはこの塞がった道を何とかしないとな」
砂塵魔王が掌を翳すと、目の前を塞ぐ岩が崩れるように砂になって崩れていく。
「本当に便利な能力よね?」
「う、うむ」
照れる砂塵魔王は友達の役に立てて満更でもないようだった。
そして徐々に通路が開かれていく。
この先では赤龍王さん達が戦っているはず。
そして私達が見た光景は!
「えっ?う、嘘?」
新たに現れた蛇神を相手に赤龍王さんが柱に串刺しにされていたの。
あの赤龍王さんが負けてるなんて?
更に傷付いた白龍王さんと黒龍王さんが倒れている。
私達は駆け寄り抱き起こす。
「き、君達は戻って来たのか?」
「タイミング悪い所に来たな?お嬢ちゃんよ!」
二人は再び立ち上がろうとするけれど、足に力が入らないようだったの。
「な、何があったの?貴方達がこんな目に合わされるなんて、そんなにヤバイ相手なの?」
三人を苦しめた蛇神は紅色の鎧を纏った女戦士だった。確かに他の蛇神とは比べ物にならない力を感じるけれど、彼等が負けるほど圧倒的に強いとも思えなかったの。
「あの蛇神の能力が厄介なんだ!」
「えっ?能力?」
白龍王さんと黒龍王さんの説明では、
その時、赤龍王さんが肩を串刺しにしている槍を抜いて、全身から炎を噴出させる。
「ヌゥオオオ!炎の散弾龍!」
炎の龍が油断していた蛇神女の四肢に噛み付き身動きを止めると、速攻で蛇神女の身体に向かって炎の拳を放つ!確実にヒットしたわ!
「見てよ!逆転したわよ?赤龍王さん!」
けれど白龍王さんは渋い顔をして、
「見ていろ!これからがあの蛇神の能力だ!」
「えっ?」
すると攻撃を仕掛けたはずの赤龍王さんの方が口から血を吐いて崩れるように倒れる!?
な、何が起きたの?今??
「ふふふ。馬鹿な男ね?何度も同じ事を繰り返して愚かなの?私には攻撃は効かないと言ってるでしょ?」
攻撃が効かないって?
あの蛇神女の恐るべき能力とは、
「受けた攻撃がそのまま戻って来るのだ!」
「えっ?」
白龍王さんと黒龍王さんも、あの蛇神女と戦い敗北したと言うの。あの蛇神女には赤龍王さんの炎の攻撃も白龍王さんの疾風の刃も黒龍王さんの黒雷まで跳ね返され、命中したダメージが自分自身にも戻り同じ痛みを感じて倒されたと言うの。
「そんな奴、どうやって倒せと言うのよ?」
「それが分からぬから苦戦しているのだ!」
「まぁ、そうよね?」
すると蛇神女は現れた私達に気付いたの。
「お前達は!!」
その顔は私達の事を知っているような顔付きだった?
「私達を知っているの?確かに有名だけど?」
蛇神女は一息した後、こちらに近付いて来る。
警戒しながら私は勇む。
「私達を敵にしたら痛い目にあうわよ?」
蛇神女は立ち止まり余裕を見せて答えたの。
「まさかお前達が来ているとは思わなかった。けれどお前達には何も出来ないわ。その通路から来たなら見たでしょ?お前達は何も出来ない!何も変えられない!何も救えないのよ!」
「!!」
私達は救出に来たはずなのに一人も救えなかった事に胸を痛める。
確かに私達は何も出来なかった。
けれど、何?この蛇神様?私達を前から知っているような口ぶり?
「貴女、私達を知っているの?」
すると黙り、次に口にしたのは?
「嘘つき」
えっ?
嘘つき?私が?
ま、まさか?
「もしかして貴女、嶺黄風国の人?なの?」
蛇神のほとんどが人間や妖怪を連れさらい、蛇神として生まれ返されている。私達を知っているなら過去に私達が助けた人達の誰かって事かも?
「約束したわよね?お姉ちゃん!必ず戻って来てくれるって言ったのに・・・信じてた。必ず助けてくれるって。本当に、死ぬ間際まで・・・」
「えっ?」
お、お姉ちゃん?私が?
私は、私は、とても想像したくない予想をしてしまったの。
そんな私の耳に沙悟浄が呟く。
「もしかして、君は?」
沙悟浄は涙を流していた。
そして私も涙が頬を流れたの。
彼女はもしかして!
「る、瑠美ちゃん、なの?」
その名は嶺黄風国の女の子。
まだ幼く、私達に凄く懐いてくれた女の子。黄風魔王の半妖計画から逃げて私達に助けを求めに来た所で出会った。大切な姉を亡くして孤独になった彼女を残して私達は旅立った。
私達は救いたかった。守りたかった。間に合わなかった。
けれど間に合わなかった・・・
すると蛇神女は私を見下ろして答えたの。
「今の私の名は紅鱗大蟒よ!」
最初見て分かるはずもなかった。
蛇神として生まれ変わった彼女は私よりも成長して大人の女性の姿だったから。
「教えてあげるわ!あの日、お前達がいなかった時に何が起きたのかを!」
それは私達が干支十二宮殿にいた時の話。
沙悟浄も玉龍君も、意識のなかった孫悟空と阿修羅まで看病に付き添っていた瑠美ちゃんの目の前から消えてしまったの。心配する瑠美ちゃんだったが、必ず戻って来るって約束を信じて待っていたの。
そこにタイミング悪く蛇神兵が嶺黄風国へと攻め込んで来たと言うの。
蛇神兵達は、先に黄風魔王の一派で私達が黄風魔王を倒した事で分裂し国を出た半妖の戦士達を先に襲っていたの。そこで半人半妖の人間の素材がレアだと分かると嶺黄風国へと人狩りのために侵攻して来たの。
恐怖する瑠美ちゃんや力の無い者は宮殿の最上階へと身を潜め、黄袍怪さんが残して来た暗殺集団の配下達と、残った嶺黄風国の戦士達は果敢に蛇神達と戦ったの。
しかし蛇神達の数は勿論、その強さは並の妖怪達では歯が立たなかった。
そして捕らわれた瑠美ちゃんや嶺黄風国の人達はこの工場へと運ばれたの。
そして間もなく選定された。
瑠美ちゃんは最初、餌に選ばれたそうなの。
まだ半人半妖になる前だった彼女に価値はなかったから。そして蛇神の餌として運ばれた瑠美ちゃんは神に縋るように両手を合わせ、最後の最期まで願ったのは、こんな状況でも必ず私達が助けてくれるって希望だった。けれど恐ろしい蛇神の口の中に放り込まれ、転がるように飲み込まれ、全身が蛇の体内で爛れていく。火傷のような痛みが全身を襲った時に全てを理解した。
自分はもう助からない。
誰も救ってなんかくれない。
希望なんてないのだと!
視界が闇に消えた後、
全て終わったと思った。
しかし異変が起きたの!
蛇神の身体が内部から引き裂かれて、中から新たな蛇神が出現したの。それは瑠美ちゃんの蛇神化した姿だった。本来なら雌であった蛇神は玉子を産み落とす道具にされるはずが、彼女は他の雄の蛇神を遥かに上回る力を持っていたの。
それは瑠美ちゃん本人も知らなかった自らの力が影響していたの。
彼女は特殊体だった!
特殊体とは稀に現れる特殊な異種能力を持って産まれた人間の事を言うの。それは霊力や法術とは異なった魔法に近い能力って聞いた事がある。
瑠美ちゃんはその能力を持っていたがために特殊な能力を持った蛇神として覚醒してしまったと言うの。
私は話しを聞いてもなお信じられないでいた。
まさか瑠美ちゃんが蛇神になって私達の敵として現れるなんて・・・
「法子お姉ちゃん?」
彼女が私に笑顔を見せたの?
そうだわ!例え蛇神へ姿は変わろうとも瑠美ちゃんは瑠美ちゃんだわ!
私は瑠美ちゃんに近付いたその時!
「えっ?」
私の頬を掠った刃が背後の岩に突き刺さる。
私の頬から血が垂れた時、私の間合いに入った彼女は私の頬を伝う血を舐めたの!?
咄嗟に私は反射的に廻し蹴りをしたが空回りし、彼女は余裕で躱して私に言う。
「うふふ。突然蹴るなんて酷いわ?けど本当に美味しい。法子お姉ちゃん?もっと欲しくなっちゃう」
瑠美ちゃんの声で私に話しかける彼女からは獲物を狙う殺気が感じられたの。
もう瑠美ちゃんじゃないの?
本当に身も心も蛇神になってしまったの?
「瑠美ちゃん。ごめんなさい」
「今更謝って何のつもり?」
「私が謝ったのは、今から私が貴女を倒す事によ!」
「気にしないで?私は最初からそのつもりよ!」
私は龍の籠手から数珠を取り出すと、霊気を籠めて瑠美ちゃん、違うわ!蛇神・紅鱗大蟒に向かって弾いたの!数珠は弾丸のように飛んでいく。けれど
紅鱗大蟒は無防備な状態で受け止めたの?
「えっ!?」
直後、私は強いショックを受けてふっ飛ばされたの!?
何が起きたの?攻撃されたの?今?
けど何も見えなかったわ?もしかして見えない攻撃を受けたの私?
けれど私が受けた攻撃は間違いなく私自身が弾いた数珠の攻撃と同じ威力だった。しかも紅鱗大蟒に命中し当たった場所まで同じだったの?
もしかして紅鱗大蟒の特殊な能力って?
「受けたダメージを返す能力なの?」
しかも跳ね返すとかではなく、ダメージそのモノを相手の身体に与える能力って?そんな相手にどうやって戦えば良いのよ?
私はそれで納得する。
いくら紅鱗大蟒が強い蛇神だろうと龍王である白龍王さんや黒龍王さん、それに赤龍王さんを倒すなんて想像付かなかった。けれどこの能力なら、攻撃力が強いほど受けるダメージは大きく消耗されるだけ。しかも紅鱗大蟒自身は自らの再生力を優先的に使っていれば後は勝手に自滅してくれるの。
例え赤龍王さんが自分が助かるギリギリの攻撃を仕掛けたとしても紅鱗大蟒の再生力が上回れば跳ね返って来るダメージを全て受けてしまうのに対して、紅鱗大蟒は驚異的な再生力で蘇ってくる。万が一倒すなら命を落とすつもりで相討ち覚悟で攻撃しなきゃ駄目なの。
私は全身の痛みに耐えながら体勢を整える。
「法子お姉ちゃん?貴女は私がいただくわ。そして私と同じになるのよ?そうすればいつも一緒にいられるわ!もう離れる必要もなければ一人恐怖で怯える事もないの」
「瑠美ちゃん・・・」
「それに覇王様が世界を制すれば何も恐れる者はないわ!何せ誰一人逆らえない真の神様なんですもの。ふふふ。私、蛇神になれて本当に嬉しいのよ?もう何も苦しまなくて良いのだから!飢えも弾圧も無ければ大切な者を奪われずにすむ。これからは奪う側に私はなるのよ!アハハハ!」
「それは違うわ!」
私の訴えに彼女は何も感じてくれない。
「安心して?直ぐに済むから」
殺意をむき出しにして私へと近付いて来たの。
けれど私は先程のダメージで立つことも出来ずに身動きが取れないでいた。
そこに?
「くっ!見誤ったか」
すると倒れていた赤龍王さんが貫く炎の槍を抜いて立ち上がろうとする。
けれど既に満身創痍だった。あの赤龍王さんがこんな苦しめられるなんて本当に信じられないわ。
「本当に厄介な能力だ。しかし龍族の誇りとして負けるわけにはいかん!」
再び龍気を全身に纏い戦おうとする。
けれど無茶よ!
既に限界に近い状態で攻撃を受けたら、しかも自分自身の攻撃なんか受けたらたまったもんじゃない。
そこに同じく白龍王さんと黒龍王さんが並び立つ。
「私達もまだ負けたまま終わらせられません」
「この俺はまだやれるぜ!赤龍王兄者!」
三龍王の龍気はこの蛇神の工場を震撼させる。
けど打開策がなきゃ無駄死にになるわ!
三龍王は同時に仕掛けると、連携の取れた攻撃で紅鱗大蟒に仕掛ける。
けど与えた攻撃と同じダメージが自分自身に戻って来て跪く。
「アハハハ!龍王が三人も揃って全然相手にならないわね?」
悔しくも誇りを傷付けられる三人。
圧倒的だわ!
その時、私に駆け寄る沙悟浄と玉龍君が治癒術を施してくれたの。
「大丈夫よ。ありがとう?私もまだ戦えるわ」
そんな私に沙悟浄が気付いた事を私に告げたの。
「えっ?それって?」
沙悟浄は瑠美ちゃんが蛇神になった事を嘆きつつも私達に起きた現象に対して一つの仮説をとなえたの。それは紅鱗大蟒の能力。受けた攻撃が放った相手に同じ痛みを追わせる能力について。
「砂塵魔王さんなら彼女の能力が通じないかもしれません」
えっ?
砂塵魔王は意味も分からずに頷く。
「とにかく砂塵魔王!紅鱗大蟒を止めて!」
「よくは分からぬが承知した!」
すると砂塵魔王は三龍王が戦っている間に割って入り、紅鱗大蟒に攻撃を仕掛けたの!
「何?今度はお前が相手?知らない顔ね?」
「俺は砂塵魔王!彼等の友達だ!」
「友達ねぇ?」
すると砂塵魔王は紅鱗大蟒に対して攻撃を仕掛け掌に砂を集めた槍と盾を創り上げる。
そして紅鱗大蟒の腹部に向かって突きつけたの!
貫く槍に紅鱗大蟒が顔を歪めるけど直ぐに笑みを見せたの。受けた攻撃はそのまま返す能力が砂塵魔王の腹部をふっ飛ばしたのだから!
「はて?これがどうしたのか?」
「えっ!?」
紅鱗大蟒は驚く。何せ腹部がふっ飛ばされたと言うのに砂塵魔王は痛みを感じないでいたから。
沙悟浄は私に紅鱗大蟒の能力についての仮説を聞いたの。
対策は二つもあったけれど、もう片方の手段は一か八かだった。
けれどもう片方は相性であり、運の良い事に私達には手駒があったの。
砂塵魔王。
彼は他の妖怪とは少々異なる種。
鉱石妖怪と言うらしいの。
砂塵魔王は永年砂に妖気が染みつき意思を持つ事で妖怪として誕生するらしいの。一種の付喪神に近いのかな?物に魂が宿る妖怪。
だから基本痛みは感じないの!
更に言えば今の姿は実体であって実体じゃないらしいの。核があって砂が寄り集まり今の姿を作ってるんだって。だから攻撃が跳ね返って来たとしても寄り集まった砂が飛び散るだけなの。
えっ?それって無敵じゃないかって?
別に不死なわけじゃないわよ?
さっきも説明したけど核の妖気が全て尽きたら終わり。だから妖気量の限界値を過ぎたら消耗もすれば動けなくなるし、死ぬ事もあるの。
そんな砂塵魔王は紅鱗大蟒にとっての天敵なのよ!
紅鱗大蟒相手に砂塵魔王が翻弄する。
「何なんだぁー!こいつは!!」
紅鱗大蟒は焦っていた。
赤龍王さんが戦線を離脱して私に話しかける。
「まさかこんな伏兵がいたとはな?情けない事だが助かったと礼を言わせて貰おう」
「けど、いつまでもつか分からないわ」
「何だと?」
私は限界値の事を説明する。
そして沙悟浄が気付いた紅鱗大蟒の能力について説明したの。
「あの能力の正体は・・・」
赤龍王さんはそれを聞いて驚いたの。
それは能力の正体に気付いた沙悟浄になの。
この観察眼は今後役に立つと。
(一番役に立たないと思っていたのだが、やはり応龍様の予言は間違いではなかったと言う事か)
予言が何なのか分からないけど、私達に何かをさせたいって事なのね?
そんな中で紅鱗大蟒は戦い方を変えたの。
「なら直接私の手で殺してやるわ!」
紅鱗大蟒は殺気の籠もった鋭い攻撃で砂塵魔王に襲い掛かる。手刀や蹴りといった肉弾戦なのに受け流す事も躱す事も出来ずに砂塵魔王は受け身一方で身体を粉々にされる度に再生を繰り返しながら応戦する。
「体術?いや、アレは単純に速い!そして鋭いのだ!」
赤龍王さんも紅鱗大蟒の攻撃に苦戦した事を説明する。
そして恐れていたの。
「あの雌の蛇神は誕生して間も無いと聞いた。あのような化け物が短期間に増殖し攻め込まれたならば地上全土の者達に勝ち目はなかろう」
それに自分達竜神の血を持つ蛇神が生み出された事も。
赤龍王さんは龍神界から地上に降りて来た理由を説明したの。それは捕らわれた龍神族の件から、その血を使い強力かつ凶悪な新たな蛇神が誕生してしまったなら、それは世界を震撼させるに違いない。そのキッカケが今の世まで龍の血を外に出す事を極力避ける為に龍神界に留まっていたはずの龍神族の汚点になるからだと。
「法子さん!そろそろ!」
「えっ?あ、うん!」
沙悟浄に言われて私も準備する。
沙悟浄は観察しながら限界に近い砂塵魔王のタイミングを教えてくれたの。
このまま戦わせていたら妖力が尽きて死に至るから瀬戸際だった。
そして砂塵魔王を一人戦わせていたのは時間稼ぎだったの。
そう!紅鱗大蟒を倒すための時間をね?
もう一つの彼女の能力の弱点をつくのよ!
その時、ついに砂塵魔王が吹き飛ばされて壁に直撃して粉々になる。もう限界に近く再生が間に合わない状態だったの。
「限界が近いようね?そろそろ終わりにさせて貰うわ?お前は食べても美味しくなさそうだからね」
「うぬぬ、ここまでか」
しかしそこに、
「何?またお前が私の相手をしてくれるの?それにしても何のつもり?」
この私が再び戦いに参戦したの。
しかも、目隠しをしながら?
「この私を甘く見ないでちょうだい?知っているでしょ?私は出来る娘なんだから!」
そんな無謀な戦いに赤龍王さんが沙悟浄に尋ねる。
「本当に大丈夫なのか?あの娘は?」
「恐らく多分絶対に!」
「どっちだよ!だが、奇策としか思えぬ」
私は沙悟浄の観察眼を信じたの。
「さぁ!かかって来なさい!」
私が叫ぶと同時に紅鱗大蟒は間合いに入り私の喉元目掛けて指先を突き付ける。
「!!」
その直後、私は拳に全力の霊気を籠めて目の前にいると思われる紅鱗大蟒に正拳突きをしたの!
私の目隠しに油断していた紅鱗大蟒は私の正拳突きを胸に直撃し血を吐いたの!?
「ふふふ馬鹿なの?こんな真似をしたらお前もただでは済まない・・・そんな馬鹿な!?」
私は紅鱗大蟒の能力がかからずに平気だったの。
どうして?何故かって?分らないの?
紅鱗大蟒の能力の正体について沙悟浄が気付いたのは、あの能力の正体は「強力な暗示」なんじゃないかと。それは私が最初に放った数珠の連弾が紅鱗大蟒に命中して私にも攻撃の衝撃を受けたのだけど、私は紅鱗大蟒と同じ箇所に怪我を負ったの。しかし沙悟浄が言うには私が気付いてなかったのだけど、
紅鱗大蟒には私の攻撃が四箇所に当たっていたのに対して私は三箇所しかダメージが無かったの。命中した箇所は私が外したと思っていたのがたまたま当たったみたいで、ほんの少し付いた掠り傷。それがどうしても気になっていたみたいなの。
与えたダメージが全て自分自身に戻るわけじゃない?なら受けたダメージと受けなかった違いは何だったのか?それは私自身が気付いたか気付いてなかったかの違いだったの。
ここまで来ると考えられるのは強力な暗示じゃないかと思ったらしいの。強力な暗示は思い込みが強すぎると肉体へと影響する。それは過去に百眼魔王と戦った時に受けた精神ダメージが肉体へ影響した事が似ていたから。私と沙悟浄は身を持って味わったからなんとなく分かる。
次に!
能力のタネと仕掛けが分かったとしてもどうやって攻撃すれば良いのかよね?自覚しなければダメージを受けないようにする。でも相手を倒す意思なく攻撃をするような器用な真似をどうやってすれば良いか?
ここで私達は砂塵魔王が時間を稼いでくれてる間に話し合いをしたの。
「何か良い考えがあれば挙手して」
私と沙悟浄に玉龍君は頭を使って考えたの。
そして導かれたこたえが!
「偶然」「無の境地」「思わない」
この三つ。
偶然で倒すって結構難しくない?
どうしても計算が入るわよ?
当然「無の境地」で倒すなんてカッコイイ戦い方なんて出来たら、私は漫画の主人公レベルよ!
最後に「思わない」って何?
「つまり、攻撃をしなきゃ良いのです!ただ法子さんは正面に正拳突きをするだけ!」
「するだけってあんたさ〜」
「当たるも八卦、当たらぬも八卦ですよ!」
「それ使い方間違ってない?」
けれど、それしか無かったの。
だから私は目隠しをして雑念を払い、その後は昔習った空手の正拳突きを思いっきり正面に向かって突いただけ。長年の習慣通りに、ただ拳を前に突き出すだけ。もし正面に紅鱗大蟒が間合いに入って来なければ当たらなかったかもしれない。
けど上手くいったようね?
疑心暗鬼だけど私は自分自身に自分の正拳の痛みが戻って来ない事に安堵する。
「これが私の当たるも発勁!当たらぬも発勁よ!」
と、完全に紅鱗大蟒のいる方向とは違う方向を指差して叫んだの。
「そんな馬鹿な・・こんな傷、直ぐに回復して」
「そうはさせるか!」
直後、赤龍王さんと白龍王さん、黒龍王さんが同時に攻撃を仕掛ける。回復の時間を取らせないための私達との連携。因みに目隠し外して紅鱗大蟒の姿を見た時に私が与えた傷痕を見た直後に暗示がかかる可能性があったから。
「正に奇策。だが手応えはあったぞ!」
赤龍王さん達は攻撃ではなく紅鱗大蟒を封印しようと仕掛ける。
紅鱗大蟒は堪らずに飛び上がったの。
そして宙に浮かぶと私達に叫ぶ!
「次は同じような失態はしないわ!私は蛇神城にてお前達を待つ事にするわ。その時こそお前達の腹ワタ喰らってあげる!アハハハ!」
すると紅鱗大蟒の姿が私達から消えたの。
うん。目隠し中の私には見えなかったけど聞こえた。
私は目隠しを外して呟く。
「次に会った時は同じ作戦は通用しないわね」
だけど紅鱗大蟒、いえ瑠美ちゃんはこの手を汚してでも私が倒さないといけないと心に誓ったの。
そんなこんな
次回予告
蛇神工場での戦いは終わった。
けれど本当の戦いは蛇神城で待ち構えていた。




