無念無想の仮面!
阿修羅は法子達を先に逃がして、
パワーアップした黄風との一騎打ちを挑む。
私は法子
私達を先に逃した阿修羅は単身、更に力を増していく黄風を相手にしようとしてたの。
「残ったのは君だけかい?けれど逃したところで、いずれ世界から人間も化け物も僕の手で駆逐させてもらう。時間の問題だよ?」
「そうはさせない。僕が法子を守る」
「ブレないね、君は?君は僕と同じ側だと思ったけれど違ったようだ」
「法子は僕が守る」
黄風の姿は鋼の身体に紫と緑の紋様が浮かび上がる姿だった。
特に腕が増えたり異業の姿をした恐ろしい化け物には見えないけれど、その発する力は桁違いにアップしていた。しかも全身からは呪毒が障気となって発し広がっながら広がっている。恐らくこの場にいるだけで猛毒に侵されてしまうに違いないわ。
「僕の呪毒はこの城を覆い、国を覆い、やがて世界を覆い尽くす。この世界から生きとし生ける者全てが朽ち果てる」
「その前にお前を消す。この僕が」
「出来るかい?君に?」
「法子は僕が守る!」
けれど、黄風が視界から消えると阿修羅でも反応出来ない速さで間合いに入り、蹴りと拳が数発入れられて膝を付いたところを踵落としで後頭部を蹴り落とされたの。阿修羅は床に顔面を直撃させて額から血を垂れ流す。それでも立ち上がる阿修羅に黄風は首を切り落とそうと手刀を突き落ろす。
「!!」
寸前で躱した阿修羅は転げながら立ち上がり構えるけれど、黄風の姿を見失い、背後から再び打撃をくらい倒れ込む。
「もう相手にならないね。僕は生きているだけで世界を終わらせる。君など僕の前に転がる小石に過ぎない」
「かもね。けど法子は小石でよく転ぶよ?小石を甘くみていると大怪我をする。この前も法子は膝を擦りむいて怪我をしてヒヤヒヤものだった」
「あはは。冗談を言わないような顔をして面白い事を言うね?君は」
「えっ?冗談?何が?しかも鼻を擦ってしまって悲鳴をあげて孫悟空や八戒、沙悟浄の頭を八つ当たり的に殴ってた」
「・・・」
うん。ちょっと止めて?
私の話題が情けない方向の話になってるけど?
けど阿修羅と黄風の今の力の差は圧倒的だったの。
阿修羅の見様見真似のニワカな格闘技も身体能力と潜在能力で補えたかに思えたのに、それも戦士達が使っていた呪憎剣を自らに取り入れた事で桁違いのパワーアップをした黄風は身体能力が桁違いにアップした。また差が広がって打つ手無しなの。
「覚悟してください。大丈夫。直ぐに皆、君と同じ場所へ逝くから。わざわざ粘り長く苦しむ必要はない。諦めれば直ぐに楽になれるから」
黄風の言葉に阿修羅は静かに呟く。
「諦めない」
そして答えたの。
「僕は数百年、数千年・・・待った。気が遠くなる中、法子と再び廻り会える事だけを信じて探し求め生きて来た。そして廻り逢えた。だからもう二度と法子を失わない。僕が法子を守る!」
阿修羅の目には迷いがなかった。
けど、今のはどういう意味なのかしら?
少なくとも私、そんなに生きてないし?
まだ十六歳よ?華の女子高生よ?
誰かと勘違いしてたりする?
「時間稼ぎは無駄な事。諦める事で楽になりな?」
黄風の提案に阿修羅の様子が変わる?
「時間稼ぎ?面白い事を言うね?君は?」
今度は阿修羅が黄風に対して威圧する。
「どういう意味だい?」
「時間稼ぎなんて意図はない」
阿修羅は今までとは違う違和感を発する。
「僕が法子を先に行かせたのは巻き添えにしたくなかったから・・・」
「それは僕を倒す手段があると?」
「倒す手段?違うよ」
それは阿修羅の持つ別の顔だった。
「殺すための手段さ」
その殺意に満ちた悪鬼の如き殺気は今の今まで感情が気薄で優位に立っていたはずの黄風に冷や汗を流させたの。
「驚いた。僕は今恐怖を感じたのか?まだ僕にもこんな気持ちが残っていたなんて驚きだ」
「直ぐに味わう事になる。本当の恐怖はこれからね!」
すると阿修羅の片手に黒い炎が燈して凝縮していくと、それはまるで黒い仮面のようになっていく。
そしてゆっくりと顔に被せる。
「何をするつもりかは知らないけれど力の差は埋まらない。それとも打開出来る奥義かい?」
「これは僕の持つ唯一の奥義。ただこれは奥義と呼ぶには余りにも虚しい力。この虚無の仮面を被ったら最後、僕は君を滅するまで止まらない。例え僕が全てを失っても・・・」
それはどういう意味?
「無念無想の仮面」
虚無の仮面を被った阿修羅はパワーアップするどころか身体中から発する気が消えていく?
「?」
黄風は阿修羅に起きている状況に不可解を感じていたの。
てっきり自分自身と同じように凄まじい力を解放させて攻撃してくると思っていたから。
それでも黄風にはまだ力の半分しか見せていなかったから余裕があったの。
それでも目の前に立つ戦士に油断もしなければ警戒も解いてなかった。
「もしかして失敗かい?何をするのか多少は興味があったけれど終わりにしよう」
黄風は一呼吸と同時に姿が消えて阿修羅の間合いに入ると、その毒手を心臓目掛けて突き出したの。
この動きはもう躱しきれない速度!
半人半妖にして神速と呼ばれる動きだったの。
「!!」
けれどその手刀は突き出された状態で止まっていた。違う止まっていたのじゃなくて、その場にいたはずの阿修羅が消えていたの??
「消えた?」
阿修羅は背後に立っていた。
「いつの間に?けど次は外さない」
黄風は再び間合いに入ると手刀を振り払う。
しかし手刀は阿修羅の身体を擦り抜ける?
まるで陽炎のように?
次々に繰り出す手刀も、蹴りも全て擦り抜ける。
まるで存在しない空気を切っているように。
「!!」
気付くと阿修羅はその場から消えていた。
黄風は阿修羅の気配を探すけれど、何処にも阿修羅の姿はなかったの。
まさか今の一瞬で黄風にも悟られずに何処かへと瞬間移動して逃げたとか?
けど、その考えは次の一瞬で誤りだと気付く。
「あっ・!?」
黄風の胸に傷跡が残っていた。
更に左右を見回す黄風の身体に新たな傷跡が増えていく。
阿修羅は間違いなくこの場にいる!
しかも猛速度で移動している?
まさか透明になったの?
それも違う?
足跡どころか動いた後の形跡が何一つない。
この一帯は黄風の障気が漂っている中で素早い動きで移動をすれば何かしら異変があるはずだから。
これは夜霧の使う闇に潜んで気配を消して暗殺するのとは全く違う。
気配が全く感じないだけでなく攻撃に伴う殺気すら感じなかったの。
それでも新たな傷跡が黄風の身体に次々と刻まれていく。
まだ阿修羅はこの場にいる。
「姿どころか気配も感じない?存在すら感じないというのか?」
黄風は迫る阿修羅に四方八方に攻撃を繰り出すけれど全て空を切る。
本当に阿修羅はこの場にいるの?
黄風の身体に刻まれる傷跡がより深くなっていき、それは黄風には焦りを与えたの。
「うおぉおおお!」
黄風は己の覇気を一気に爆発させた。
覇気で阿修羅を吹き飛ばし、その居場所を探るためだった。
しかし覇気がおさまる中で阿修羅の姿はなく、覇気を放った後の黄風の右腕がへし折られたの。
更に左膝から切断されて倒れ込む。
「な、何が?」
黄風は自分の状況が阿修羅による攻撃だと気付くも何をされたのか分からないままだったの。
「それでも僕は倒せないよ」
黄風の鋼の身体が再生していく。
それでも互いに倒しきれない状況。
けれど黄風の身体は再び傷付いてく。
再生と傷跡が繰り返す中で、次第に黄風に焦りが始まる。
この間に本来なら致命傷になるべく攻撃が数度とあったの。
「僕は何度君に殺されたのだろう?」
その問いに返答はなかった。
けれど自分自身に迫る死の予感は深まる。
「これは恐怖というものなのか?そうか、人は死ぬ瞬間にこのような感情がわくのだな」
それは恐怖?
じわじわと迫り己を傷付け、それは間違いなく自分を殺すための攻撃。
今の今まで恐怖など感じた事はなかった黄風は目的を見付けられずにいたから。
それが目的こそ過激だけど、夢を持ったの。
夢を持つ事は生きる目的、自分自身の存在理由を見付けたから。
それが今、失うとしている。
「そうか、僕は今初めて生きたのか・・・」
けれど黄風は背中から突き上げる衝撃に一瞬驚き、そして笑みを見せて瞼を綴る。
それは背後から現れた阿修羅の突き出した手刀が黄風の心臓を貫き握っていたの。
そして無慈悲に目の前で潰した。例え強固な身体を手に入れた黄風でも
耐えられるものでなかったの。
そして足下から粉になって崩れ始める。
下半身から上半身、胸元から頭へと・・・
「阿修羅と言ったね?どうやら僕は君との戦いで生を感じる事が出来たみたいだ。けど君はこの戦いで大切なものを失ってしまったようだね」
背後に立ち、黄風に手刀を突き出したままの阿修羅の仮面が黒い炎となって消える。
それはあたかも目的を果たしたかのように消えたの。
そして阿修羅は無言のまま・・・
その場に動かずに立っていたの。
場所は変わって私達は崩れる城から黄風の障気が消えて、二人の戦いが終着した事を察知して急いで城へと引き返したの。
黄風の妖気も、阿修羅の気さえ感じ取れなかった。
私達は不安を胸に崩れかけの城の屋上へと辿り着き、その場の状況に驚愕したの。
「阿修羅ぁあああ!」
阿修羅は動かず、生気を全く感じない。
沙悟浄が鼓動を確かめるも何も答えない。
もしかして?
もしかして本当に死・・・
一体、阿修羅の身に何が起きたの?
私達はその場で動けないまま目の前の現実を飲み込めないでいた。
そんなこんな。
次回予告
阿修羅と孫悟空を襲う呪毒
まだ何も終わらない。




