表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機械仕掛けの殲滅少女  作者: サンボン
第四章 復讐その四 アルグレア王国と神の眷属 前編
90/146

書斎探索②

ご覧いただき、ありがとうございます!

「うふふ、ではあの二人のお手伝いに行きましょうか」

「そうですね」


 後片づけを終えた僕とハンナさんは、ライラ様とソフィア様をお手伝いするために書斎へと向かう。


「ですけど……『天国への階段』って何なんでしょうかね……」

「さあ……私もお館様から一切伺ったことはないですし……」


 家族同然のように扱われていたハンナさんでも知らないんだから、ますますもって見つかる気がしない。

 ライラ様もご存じないようだし、どうするかなあ……。


 そうやって頭を悩ませながら、扉を開けて書斎へと入ると……な、何だコレ!?


「「あ! アデル様!」」


 書斎に入った瞬間、ソフィア様が顔を綻ばせ、ライラ様が尻尾の幻影をブンブンと振り回す。

 だけど……書斎の中は本や書類などが床に散乱し、見るも無残な状況になっていた。


「……お二人共、これはどういうことですか?」


 ハンナさんが眼鏡をクイ、と持ち上げ、二人を冷たい視線で見つめる。


「そ、そのー……い、一度見たものは戻さないほうが、分かりやすいかなー……と思いまして……」

「わ、私はカートレット卿に整理したほうが良いのでは、とご忠言したのですよ!?」

「あ! ソフィア様裏切るのですか!?」


 ハンナさんの視線に耐え切れなくなったソフィア様に売られてしまい、ライラ様が抗議した。


「……今すぐ片づけてください」

「「はい……」」


 ハンナさんにピシャリ、と(たしな)められ、二人はすごすごと片づけに入る。


「あ、整理するのであれば、一旦部屋の外に出されてはいかがですか? そうすれば分類も楽ですし、既に確認したものが混ざることもないですので」

「「! そ、そうですね!」」


 僕の提案に、今気づいたとばかりに二人がポン、と手を打つ。


「はあ……」


 そして、ハンナさんはそんな二人を見てヤレヤレとばかりに額を押さえてかぶりを振った。


「ま、まあ、ライラ様もソフィア様も、そういうことはご自身でしたりしないから、しょうがないですよ……」


 二人が少し可哀想になった僕は、擁護するためにそんなことを言ってみる。


「「そ、そうですよね! し、仕方ないと思います!」」


 すると二人も僕の言葉にここぞとばかりに相乗りしてくる。


 だけど。


「……アデル様、あまり甘やかさないでください」

「はい……」


 ハンナさんにジト目で睨まれてしまい、僕は思わず俯いてしまった。


 ◇


「ですが……本当に見つかりませんね……」


 書斎を洗いざらい探した僕達だけど、『天国への階段』に関する資料は何一つ見つからない。

 肉体的にというより、見つからないことへの徒労感が強いんだろう。僕やハンナさんよりも長く探していたライラ様とソフィア様は、少しグッタリしている。


 だけど……そうなると、この書斎以外の場所にあるってことなのかなあ……。


「……次は、お館様の寝室を探してみますか?」

「そうですね……」


 ハンナさんの問い掛けに僕は頷きつつも、もう一度書斎の中を見回す。

 ここにあった本や書類、その他諸々は外に出しているため、今は書斎の中は執務用の机と本棚といった家具類が置いてあるだけだ。


「後は、万が一考えられるとしたら隠し部屋があったりするというのが定番ですけど……」

「一応探してみますか?」


 僕の呟きにハンナさんが反応を示す。


「そうですね……可能性は薄そうですが、やらないよりはいいでしょうから」

「分かりました」


 ハンナさんは頷くと、書斎の中をウロウロと歩き、コツ、コツ、とつま先で叩く。

 ヘイドンの街で人(さら)いのアジトでした時と同じように、床の下に空洞がないか調べるためだ。


 あ……まてよ。


「ハンナさん、もっと手っ取り早く確認できる方法があるかもです」

「え? それはどういうことですか?」


 そう伝えると、ハンナさんは不思議そうな表情を浮かべた。


 僕はその場でしゃがんで床に触れると。


「まあ見ていてください。【設計(デザイン)】」


 すると、僕の頭の中に数枚の図面が浮かび上がる。

 それを一つ一つ確認していくと……ああ、そういうことか。


「「アデル様?」」


 疲れた様子でジッと見ていたライラ様とソフィア様が僕に声を掛ける。


「ああ……やっぱりこの部屋の中に隠し通路がありました」

「「「ええ!?」」」


 僕の言葉に、三人が驚きの声を上げた。


「い、今のでどうしてそれが分かったのですか!?」


 僕の能力を知らないソフィア様が、理解できない様子で僕に詰め寄る。


「はい。僕の[技術者(エンジニア)]の能力の一つ、【設計(デザイン)】で考えてみたのです。仮にこの部屋に隠された部屋や通路があったとして、その入口を改良する装置を」

「は、はい?」


 ソフィア様が思わず呆けた表情になる。

 ライラ様とハンナさんは理解したみたいだけど、ソフィア様にはこの説明でも無理かあ。


「ええと……僕の職業(ジョブ)は[技術者(エンジニア)]と言いまして、ライラ様が応接室でソフィア様にご説明した通り、僕の能力は何かを作ることができます。具体的には、作ろうと思うものを【設計】し、用意された材料を【加工】し、【製作】するといったものなのです」

「そ、それで!?」

「うわ!?」


 僕が前提を理解してもらうために[技術者(エンジニア)]の能力を説明すると、何故かソフィア様の鼻息は荒く、瞳をキラキラさせながらグイ、と顔を近づけてきた!?


「ソフィア様! は・な・れ・て・く・だ・さ・い————————っ!」


 見かねたライラ様が、ソフィア様を僕から引き()がしてくれた。

 あ、ありがとうございます……。


「そ、それで、後は先程ご説明した通り、その能力の一つである【設計(デザイン)】を使って場所を特定した、ということです」

「す、すごい……!」


 僕の説明を聞き終えたソフィア様が、感嘆の声を漏らすと共に羨望の眼差しで僕を見つめてくる……。

 し、視線がつらい……。


「と、という訳で立証してみせますね。【加工(キャスト)】」


 僕はソフィア様の視線から逃げるように本棚に近づくと、両手をかざして本棚をバラバラに分解してしまう。


 すると。


「「「あ……!」」」


 本棚があったその裏に、小さな鉄の扉が現れた。


「この向こうに、私達の探す『天国への階段』が……」


 ソフィア様がゴクリ、と唾を飲み込む音が聞こえる。


「では……行きましょう」


 ライラ様が鉄の扉に手を掛けた。

お読みいただき、ありがとうございました!


次回は明日の夜更新!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] アデルつよつよー!! 探索も防衛も武器制作もできる万能じゃないですか! これがなぁ……黄金の扇風機達が理解していれば…… とは思ったけどそうしたらライラ様達とも出会えなかったし、あれで良…
[一言] おおっと。まさか直接「階段」に繋がっているわけではないでしょうが… 何が出てくるんでしょう。
[一言] 探索&わちゃわちゃ回(*´▽`*) アデル君はソフィアちゃんを警戒してた割に手の内を晒しすぎでは?まだ自己評価の低い癖が抜けてないのかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ