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機械仕掛けの殲滅少女  作者: サンボン
第五章 復讐その四 アルグレア王国と神の眷属 後編
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ア=ズライグ②

ご覧いただき、ありがとうございます!

『ゴオオウウウアアアアアアアアアアッッッ!』


 幾重に覆われている岩や鉱物の中から、“ア=スライグ”が咆哮する。

 まるで、“神の眷属”への不敬な仕打ちに(いか)りを示すように。


「クッ!? 【加工(キャスト)】!【製作(クラフト)】!」


 脱出させまいと、僕は“ア=ズライグ”を覆う岩や鉱物の塊に、さらに重ねていく。


 何としても、時間を稼ぐんだ……っ!


「ライラ様! ハンナさん! 馬車を……馬車を僕の元へ!」

「「っ! はいっ!」」


 僕はそう叫んで指示すると、二人は馬車へ向かって飛び出した。

 馬達はア=ズライグの咆哮で使い物にならないけど、ライラ様の白銀の手脚とクロウ=システムなら、あの鋼鉄の馬車を引くことは可能な筈。


 何とか……僕が抑え込んでいる間に……っ!?


 だけど、そんな願いもむなしく、ア=ズライグは覆っている岩や鉱物を砕き、右前脚を(あら)わにした。


 ——ギロリ。


 そしてその開いた穴から、巨大な眼球と(あぎと)を覗かせると、閃光が走る。


 っ!? ま、まさか!?


「くそおおおおおお! 【加工(キャスト)】オオオオオオ!」


 ——ブシュウウウウウウウウ。


 僕は限界を超えて顔中から血を吹き出しながら、目の前に強固な壁を形成した。

 これで耐えられる保証はどこにもないけど、やらないよりはましだ!


「私が……私が、アデル様をお護りします! 【加護(プロテクション)】!」


 こんな状況なのに、何故か逃げようともせずに僕に寄り添いながら、ソフィアが[聖女(セイント)]の力で、僕の作った壁に重ね合わせるように光の壁を展開した。


「ソ、フィ……ア……どう、して……?」

「どうして……? 当然です! あなたは私の光! 私の希望なのです! あなたがいない世界を、どうして[聖女(セイント)]の私が受け入れられましょうか!」


 ソフィアが涙を零しながら、必死で叫ぶ。

 その声に、その瞳に、嘘偽りは感じられなかった。


「私は……私は! アデル様と共に!」


 くそ……ありがとう……。


 ——ドオオオオオオオオオオオンンン……!


 轟音が響き渡り、僕が作った壁が消失する。


 だけど……ソフィアの【加護(プロテクション)】もあって、僕達は【|竜の息吹《

 ドラゴンブレス》】を耐え抜いた。


「「アデル様あああああああああ!」」


 ライラ様とハンナさんが、涙で顔をくしゃくしゃにしながら、鋼鉄の馬車と共にやって来た。


 これで……あの“ア=ズライグ”を……倒せる……!


「ソフィ……ア……」

「っ! はい!」

「僕、を……」

「はいっ! 【神の癒し(キュア)】!」


 僕の意図を汲み取ったソフィアが、【神の癒し(キュア)】で治療を施す。

 お陰で、身体の激痛もなくなり、回復していくのが分かる。


 僕が[技術者(エンジニア)]の力を使うのは……あと、二回。


「「アデル様! アデル様あ!」」


 ライラ様とハンナさんが僕の傍に着くなり、この身体を強く抱き締めた。


「さあ……今こそ……僕の……“役立たず”だった、僕の力を……!」


 二人に抱えられながら馬車に乗り込むと、積まれている鉄、ミスリル、魔石、炭、灰色の岩石、魔法陣……それら全てに向けて手をかざすと。


「——【設計(デザイン)】!【加工(キャスト)】!【製作(クラフト)】!」


 僕は最後の力を振り絞った。


 これが……僕の……アデルの、集大成だ……!


 鉄は【加工】して玉鋼に作り変えると共に、ミスリルを螺旋状にしたものを形成する

 炭と岩石は、灰がかった白の素材へと変化させた。


 この辺りは、ライラ様の白銀の手脚やクロウ=システム、フギンとムニンで慣れており、スムーズに【加工】、【製作】していく。


 問題は、ここからだ。


 玉鋼は三本の長細い四角形の筒に形成し、それを並列に接続したものを二つ作成する。

 そこに灰がかった白の素材を筒状にし、圧縮した円盤状の魔石に、光属性、炎属性、雷属性の魔法陣を重ね合わせ……っ!?


 ——ブシュウウウウウウウウ。


「ア、アデル様!?」

「ソ、ソフィア様! 早く! 早くアデル様に【神の癒し(キュア)】を!」


 ライラ様とハンナさんが慌てながらソフィアに【神の癒し(キュア)】を促す。


 だけど。


「も、もうとっくに使っています! ですが……ですが! アデル様に効かないのです!」

「そ、そんな!? どうして!?」


 三人の狼狽する声が僕の耳に響く。

 でも、こうなることは分かっていた。


 だって……僕は限界の、さらに限界を超えているんだから。


 ソフィアの【神の癒し(キュア)】がなかったら、もうとっくに僕の身体は壊れ、息絶えていたと思う。


「あ、はは……ソ、フィア……あり、がとう……」

「っ! アデル様あっ!」


 僕は血まみれの顔でソフィアに微笑みかけると、また作業に集中する。


 灰色の素材の筒に、魔法陣を重ね合わせて組み込んだ魔石を取りつける。

 これを合計六つ【製作】した。


「あと、は……これ、に……」


 筒状の容器を接続して作った一対の翼に、灰色の素材の筒を取りつける。

 そして、玉鋼で作った可動式の装置の箱にその一対の“翼”を接続したら……。


「ラ……ライラ、様……」

「は、はい!」


 僕はライラ様の名を呼ぶと、彼女はすぐ僕の前に来てくれた。


「これ……を……」


 ライラ様の背中にそっと手を回し、できあがったばかりの装置をその背中に取り付けた。


「こ、これは……?」

「ライラ、様、の……“翼”、です……」

「“翼”……」

「あとは……その、左眼が教えてくれる筈、です……」


 そう言うと、僕はライラ様にニコリ、と微笑んだ。


「最後、まで……ライラ、様に……頼……ってしまい、本当、に……不甲斐なく……」

「っ! 不甲斐なくなんかありません! それは、このライラ=カートレットが一番理解しています! あなたは……あなたは、私の世界でたった一人の……愛しい、人です……!」


 ライラ様は大粒の涙をぽろぽろと零しながら、僕の頬を撫でてくれた。


 そして。


「アデル様……行って、まいります……!」


 ライラ様はぐい、とその涙を白銀の腕で拭うと、馬車から飛び出していった。

お読みいただき、ありがとうございました!


次回は明日の夜更新!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] ソフィア、根っこが歪められていなければいい子だよなあ そして、ライラの翼と引き換えにアデルから失われるものは(´;ω;`)ウッ…
[良い点] アデルが壊れちゃう……(泣) 新装備かぁ、お嬢様はどうやって戦うんだろう そしてまた重くな( そういえばカルラどこ行ったんや……?笑
[一言] さらに限界を超えたか… それでも、聖女が役には立った。 二つ作ったというから、空を飛ぶ翼と、攻撃する武器? なんか、テレビの番組でワニは噛む力は強いけれど、開く力は強くないとやっていたけど…
感想一覧
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