表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機械仕掛けの殲滅少女  作者: サンボン
第五章 復讐その四 アルグレア王国と神の眷属 後編
138/146

ア=ズライグ①

ご覧いただき、ありがとうございます!

 その“紅い竜”は異様だった。


 鼻の先に真っ直ぐに前へと伸びた角を持ち、大きな(あぎと)から覗く舌は、鋭利な槍のような形状をしていた。

 (あかがね)のような色をした鱗が全身を覆い、蝙蝠(こうもり)に似た大きな翼を羽ばたかせている。

 さらに、その巨体は港に停泊するどの舩よりも大きく、四本の手脚には何者をも切り裂くと思われる鋭い爪をあらわにしていた。


「こ……れが……“神の眷属”……」


 絶望したような声で、グロウスター公爵が呟く。

 だけど、この場にいる全ての者が、その圧倒的な姿に絶望しているだろう。


 だって……こんなの、どうしろっていうんだ……っ!


 そして。


「「「「「うわああああああああああああああああああ!?」」」」」


 港にいる全ての者が一斉に悲鳴を上げ、逃げ惑う。


 ある者は、海の中へと飛び込み。

 ある者は、建物の中へと隠れ。

 ある者は、船でこの場から離れようとし。

 ある者は、全身を震わせながらただ祈りを捧げる。


 ……そんなことをしても、無意味だというのに。


『ゴオオウウウアアアアアアアアアアッッッ!』


 “神の眷属”は、ブラムスの街全てに響き渡る程の咆哮を放つ。

 それを聞いた者達は、皆真っ青な表情でその場にへたり込んだ。


 ……それはもちろん、この僕も。


 そんな僕達の様子を(あざけ)るかのように、“ア=ズライグ”は大きな口を開けると、口の中から閃光が走った。


 ——ドオオオオオオオオオオオンンン……!


 その閃光は一本の光の筋となり、その先にあった船が激しい音と共に次々と破壊され、海に沈んでいく。


 このたった一度の【竜の息吹(ドラゴンブレス)】で、港にあった船の三分の一程度が海の藻屑と化した。


 次に“ア=ズライグ”は、逃げ惑う人々へと目を付ける。

 大きな翼を羽ばたかせたかと思うと、“ア=ズライグ”が急降下した。


「ヒイッ!?」

「ハガガガガ!?」


 地面すれすれの低空飛行で旋回し、“ア=ズライグ”は人々をその口の中へ次々と攫って行く。


 ——ぼり、ぐしゃ、ぺき。


 ア=ズライグが咀嚼(そしゃく)するたび、ニンゲンが壊れる音が響き、その口元から鮮やかな赤色の雫が垂れた。


「あ……ああ……こんな……!?」


 僕と同様、地面で腰を抜かしているグロウスター公爵が、“ア=ズライグ”を絶望の表情で見上げながら、ずり、ずり、と少しずつ後ずさる。


 ——ギロリ。


 ……どうやら、今度は僕達に目を付けたみたいだ。


「……アデル様」


 気づくと、ライラ様とハンナさんが僕のすぐ後ろに控えていた。


「……私とハンナで何とか隙を作ります。その間に、アデル様はどうかお逃げください」

「っ!? な、何を!?」


 ライラ様の口から零れた衝撃の言葉に、僕は思わず声を荒げた。


「……あは♪ 大丈夫ですよ。あんな蜥蜴(とかげ)一匹、私達で仕留めてみせます」

「……うふふ♪ 私のフギンとムニンで、ハチの巣にしてやります」


 二人が身体を震わせながら強気の発言を繰り返す。

 この僕に心配かけまいと、精一杯の強がりで。


 そんな二人を見て、僕は……震えが止まった。


「あはは……なら、蜥蜴(とかげ)退治といきましょうか。僕達三人で」

「「っ!? アデル様!?」」


 二人が驚きの声を上げた、その瞬間。


「——【加工(キャスト)】!【製作(クラフト)】!」


『ゴア!?』


 ——ドオッ!


 僕は[技術者(エンジニア)]の能力を全開にして、“ア=ズライグ”の真下から勢いよく地面で突き上げた(・・・・・・・・)


 突然のことに驚いた様子の“ア=ズライグ”は、そのまま上空へと押し上げられていく。


「おおおおおおおおお! 【加工(キャスト)】!【製作(クラフト)】!」


 叫び声と共に地面を石や鉄、様々な物質に変化させ、“ア=ズライグ”を何重にも覆い、拘束した。


 さらに僕は、同時並行で【設計(デザイン)】する。


 あの、“ア=ズライグ”を倒す手段を。


「ぐうううううううううううううっ!?」

「「アデル様っ!?」」


 “神の眷属”を倒すっていうんだ。

 何度も超えた限界をさらに超え、これ以上ない程の激痛を味わうことは分かっていた。


 なら……耐えろ!


 僕はガキン、と歯が割れる程食いしばり、なおも【設計(デザイン)】を続ける。

 拘束して“ア=ズライグ”が身動き取れない、ほんの僅かな時間で答えを見つけるんだ……!


「【神の癒し(キュア)】!」


 いつの間にか僕の傍まで近寄っていたソフィアが、【神の癒し(キュア)】で僕の身体を治していく。


 くそ……(しゃく)だけど、今のこの状況じゃ頼るしかない……。


 そして。


「っ! 見えた!」


 無数に浮かび上がる図面が導き出した。


 ——ア=ズライグを倒すための、二つの答え(・・・・・)を。

お読みいただき、ありがとうございました!


次回は明日の夜更新!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ここでバトル!! しかもアデルのエンジニア全開! 代償とか気にしてる場合じゃないですもんね〜。 さて、どうなるのやら……
[一言] ア=ズライグ戦、開戦! さて、ソフィアはナイスフォローでしたがあと一人は汚名挽回(誤字にあらずwww)出来るのか?
[一言] なんと、龍までスキルで退治しようとするか。 また限界超えるのか。そして何を作る。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ