表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機械仕掛けの殲滅少女  作者: サンボン
第五章 復讐その四 アルグレア王国と神の眷属 後編
108/146

三人で一つ

ご覧いただき、ありがとうございます!

いよいよ第五章、開幕です!

「ん……」


 いつの間にか眠ってしまっていた僕はゆっくりと目を開けると、窓から見える空が白みがかっていた。


「すう……すう……」


 隣には、僕の肩に顔を寄せ、寝息をたてているハンナさんがいる。


 ハンナさん……。


 僕はハンナさんの頬をそっと撫で、そして、その額に優しく口づけをした。


「んう……あ……」

「あ……すいません、起こしてしまいましたか……」


 瞳を開けたハンナさんに、僕は苦笑しながら謝る。


「うふふ……アデル様、おはようございます……」

「はい、おはようございます」


 朝の挨拶を交わすと、僕とハンナさんはコツン、とおでこを合わせた。


「アデル様……」

「何ですか?」

「その……愛しています……」

「はい……僕もです……」


 そう言うと、お互いがお互いの鼻をすり寄せ合い、そして……。


「ん……ちゅ……ちゅぷ……」


 少し、長めのキスをした。


「ん……ふふ……早く支度しないと、お嬢様とソフィア様が起きてしまわれますね……」

「そうですね……では、最後にもう一度だけ……」

「は……ちゅ……ちゅく……ぷは……」


 お互い名残惜しそうに唇を離すと。


「さあ、行きましょう」

「はい!」


 僕はハンナさんの手を取って厨房に向かい、朝食の準備に取りかかった。


 ◇


「アデル様! おはようございます!」

「おはようございます、ライラ様」


 食堂に降りてきたライラ様が、元気に挨拶をした。


 そんなライラ様を見て、今日の『天国への階段』の調査のことが頭をよぎる。

 そうなってしまうと、僕の中が不安で溢れた。


 この愛しいライラ様が大切で、絶対に失いたくなくて……。


「あ……アデル様……」

「ライラ様……」


 僕はライラ様の傍により、彼女を強く抱き締める。

 すると、ライラ様も下からそっと僕の顔を覗き込んでいた。


 だから。


「え……? ん……ちゅ……」


 僕は、驚くライラ様にそっとキスをした。


「……絶対、みんなで帰ってきましょう……」

「はい……」


 昨夜、ハンナさんに告げた言葉を、ライラ様にも同じように僕の想いを込めて伝える。

 ライラ様も、ギュ、と僕の服を握り締めると、その右の瞳から涙が零れた。


 その時。


「おはようございます、お嬢様」


 キッチンから焼きたてのパンを持って来たハンナさんが、微笑みながら挨拶した。


「ハンナ……」

「お嬢様……」


 ライラ様はそっと僕から離れると、ハンナさんと向き合い、お互いに頷き合う。


 そして。


「あなたも一緒、ですよ……?」

「はい……お嬢様も」


 二人が抱き締め合いながら、笑顔で涙を零した。


 そんな二人を、僕は包み込むように抱き締める。


「アデル様……愛しています……」

「私も、アデル様を愛しています……」

「僕も……お二人を、愛しています……」


 僕達は想いを告げた後、そっと離れると。


「ふふ……次は私の番、ですからね……?」

「ライラ様!?」

「お嬢様!?」


 揶揄(からか)うようにそう言うと、ライラ様は自分の席に着いた。

 昨夜のこと、ライラ様は知って……。


「おはようございます」


 すると、ソフィア様が食堂へと笑顔でやって来た。


「? アデル様、顔が真っ赤ですよ?」

「え、あ……そ、そうですか!?」


 ソフィア様に指摘され、僕は思わずしどろもどろになる。


「す、すぐに朝食をご用意いたします!」

「あ……」


 僕はソフィア様にこれ以上悟られないようにするため、大慌てで厨房へと逃げ込んだ。


「アデル様……お嬢様は知ってましたね……」

「は、はい……で、ですが、結局はすぐに分かってしまうことですから……」

「そ、そうですね……それに、私達は三人で一つ(・・・・・)、ですので……」

「はい……」


 頬を赤らめ、はにかむハンナさんの言葉に、僕は力強く頷いた。

 僕達は……三人で一つ(・・・・・)なんだから……。


 朝食をカーゴに乗せ、ライラ様とソフィア様に給仕をする。


「ソフィア様、どうぞ」

「アデル様、ありがとうございます」


 ニコリ、と微笑むソフィア様に、僕も笑顔で返した。

 そして、カーゴを押して次にライラ様の傍へと向かう。


「ライラ様」

「ふふ、ありがとうございます」


 僕は皿をテーブルに乗せる、その時に。


「……か、帰ったら、その時は……(ポツリ)」

「っ! …………………………はい(ボソッ)」


 耳元でそうささやくと、ライラ様が顔を真っ赤にして俯き、消え入るような声で受け入れてくれた。


「コホン」

「「ハッ!?」」


 ……ソフィア様が咳払いをしながらジト目で睨んでる……。


 僕はそんなソフィア様の視線から逃げるように、また厨房へと戻って行った。


 ◇


「さて……では、行きましょうか」

「「「はい」」」


 ソフィア様の号令に、僕達三人は頷く。


 とりあえずは街の北門でカルラや“黄金の旋風”の連中と合流し、水路の水をせき止めてから『天国への階段』へと向かう手筈になっている。


 で、支度を終えて僕達は北門へと来たんだけど……。


「いませんね……」

「ええ……」


 そこにはカルラも、“黄金の旋風”も、誰一人としていなかった。


「ま、まあ、しばらく待ってみましょう」

「はあ……」


 気を遣うようにソフィア様がそう言うと、僕は少し気の抜けた返事をしてしまった。


「で、ではカルラ達が来る前に、今のうちに水をせき止めてしまいますね」

「あ、お願いします」


 僕はそう言うと、昨日外れに作った水門へと向かう。


 すると。


「っ!? どういうことだ!?」


 ——既に水門が閉められ、水がせき止められていた。

お読みいただき、ありがとうございました!


次回はこの後更新!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ハンナの勝ちか… 最初辺りはライラが圧倒的だったのに…よくぞここまで…つおぃ …2人共トラウマに打ち勝ったか…愛とは素晴らしいなぁ… 3人で1つ…幸せになってほしいもんだ…
[一言] これは、前夜はキスだけでは済まなかったか/w 水門は、単に加工して盛り上げて作ったようなものでは無く、ちゃんと取っ手がついた様なあれ、を作り上げたんですね。加工に凝ったあまり、他人に使われ…
[良い点] あらあら、まぁまぁ。 ふふふ……朝から随分と甘〜いイチャイチャを見せつけてくれますね!笑 三人でひとつ、か……。 無事に帰って来れるといいなぁ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ