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隣の席の朝倉さんは、どうやら異世界帰りの聖女様。  作者: あざね
第1章

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2.危うい少女。





「ふーん……? アレが、さっきの話に出てきてた二人組、か」



 ――遅れて高校に到着した天音たち。

 彼らが校門を通る様子を屋上から、双眼鏡で眺めて笑う少女がいた。口にくわえていたキャンディを手に持ち替えてから、彼女は後方で中腰に構えていた男子学生に言う。



「どっちも興味がそそられるけど、危険かどうかでいえば――」



 双眼鏡を外しながら。

 少しばかり眉をひそめ、真剣な声色で。




「アタシからしたら、間違いなく男の方だね」――と。







「まったく、入学早々に面倒ごとに首を突っ込むとは。分かっているのか?」

「そうは言っても、先生! あの状況で無視なんか――」

「朝倉さん、落ち着いて……?」



 学校に到着すると、早々に職員室へと呼び出しを喰らってしまった。

 いま話している相手は生活指導の担当教師だ。警察の方から学校に事情は通達されているはずだけど、お叱りは避けられない様子。しかし朝倉さんは善行を咎められたと感じたらしく、思い切り反抗の意を示していた。

 僕は前のめりな彼女の肩に手を置いて、ひとまずなだめる。

 そして、



「先生、本当にすみません。次からは気を付けます」

「――天音くん!!」



 深々と頭を下げると、朝倉さんが困惑した声で自分の名前を叫んだ。

 そんな彼女の声は職員室内に響き、関係のない他の教員も何事かと振り返る。その状況を見て、彼女もようやく雰囲気を察したらしい。悔しそうに拳を握りしめて、引き下がってくれた。

 だけど、そこで意地悪く追撃したのは――。



「まったく、三年も家出していた奴には常識もナシ、か」

「………………っ!」



 ――指導教員の方だった。

 彼は朝倉さんを見下ろしながら、どこか嘲笑うようにそう口にする。

 おそらく他の教員の耳には届いていない。いまの発言を聞いたのは僕と、当事者である朝倉さんだけだった。だからいま、ここで自分がこの教員を殴れば、どうなるかは明白。

 それでも少女が息を呑むのを感じて、思わず頭に血が上りかけた。

 その瞬間だ。



「あー……そのくらいにしてやりなって、な?」

「……え?」



 後方からもう一人、別の女子の声が聞こえたのは。

 驚き振り返るとそこには、肩までの髪を赤と金に染めた派手な女学生の姿。耳にはピアスを開けて勝気な顔立ちと、態度を隠そうともせずにキャンディをくわえていた。

 制服はだらしなく着崩しており、一見して不良学生だと分かる。

 僕が思わず眉をひそめ、その少女の出方をうかがっていると――。



「芳澤……お前、どうして?」



 指導教員は、その女子をそう呼んだ。

 その声色には動揺の他にも、何か恐怖心のようなものが感じられる。そして職員室内にも先ほどより、あからさまな緊張感が広がっていた。

 いったい、この女子生徒は何者なのか。

 そう訝しんでいると、芳澤という少女は指導教員と僕らにだけ聞こえる声で言った。




「今回だけじゃなく、今後一切この子らには口出ししないでやってくれよ……先生? 報酬はそうだな、一本くらいでどうかな?」

「………………」




 そのやり取りには、明らかなきな臭さがあって。

 僕は一つの核心に至った。だけど、いまはあえて何も言わずに様子を見る。



「…………分かった。仕方ないな」

「ありがとよ、先生。いやー……話が分かる相手は、助かる」



 すると指導教員は完全に毒気を抜かれた表情で、額を押さえて首を左右に。

 対して芳澤は僕と朝倉さんを見て、キャンディをくわえたまま言った。




「あぁ、自己紹介がまだだったね。アタシは芳澤――」





 どこか意地悪な笑みを浮かべて。





「芳澤朱音、だよ」――と。





 僕はその名前に聞き覚えがあり、勝手に一人で納得していた。

 そして、思う。



 この少女は朝倉さんとは違う方向で『危うい存在』だ、と。



 


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