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旅する不死者は昼も歩く  作者: 真野真名


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4/42

4、ご乗車の方は後ろからお願いします




「Miだ sa シin tえd ?」


 ……何言ってるのか、まったくわからない。

 あれ? 異世界転生って、言葉は自動でわかる設定じゃなかったっけ?

 スキルとか翻訳魔法とか。え、わたし、初期スキル0?


 固まっているわたしに、金髪のお姉さんがさらに何か話しかけてくる。


「Kアs さ olえd ウきsi ? Iseギ くi sa けdァgi ooたd, on うkシ oleミネ おゥtliキ」


 ……詩でも朗読してんのかな。

 わたしは日本語で、できるだけ愛想よく言ってみた。

「ごめんなさい、ナンテ言ッテルノカワカリマセン」

 通じる気配ゼロ。空気だけが行き交う。


「Miス けel シe on? すりideド oン ハrjuまtud…」

 うん、わかんない。単語どころか音の区切りすら謎。

 翻訳機能、はよ。


「えっと、マチヘハ、ドッチニ、イキマスカ?」

 日本語で言っても仕方ない気がしたけど、ジェスチャー込みで試す。

 道の両端を指さし、凸型を描く。図形コミュニケーション。


 お姉さんは首をかしげつつ、同じように手で凸を作って返してきた。

 ……いや、そこまではマネしなくていいのよ。

 凸談義、世界共通かもしれない。


 お互いに「?」を頭に浮かべたまま見つめ合っていたら、

 馬車本体が近づいてきた。砂煙の主、登場。


「セee ei tunドぅ vaレste ヴァritすse もぉオdi」

 別の男が、お姉さんを呼んでいるようだ。

「ま arゔぁn くll」

「Miクs しis laぷs シin ぉli?」

 ……会話が交わされているが、何ひとつ理解できない。

 今のわたしの脳は、テレビの電波をアンテナで拾っても砂嵐しか映らない状態だ。


 でも、悪意は感じない。少なくとも「食われる前の笑顔」ではない。

 つまり逃げなくていい。たぶん。


 話し合いが終わると、お姉さんが再びこちらへ。

「かs sウl on ぴisaヴァlt ヴぃtt? カs sウl on かht とゥhi?」


 ……うん、今度はジェスチャー付き。

 口を開けて何かを食べる真似、水袋を指す。

 なるほど、「喉乾いてる?」とか「お腹空いてる?」ね。

 ちょっとだけ感動。人間ってすごい。


 「ウォーター、スコシ、ワケテクダサイ。ヨユーガアレバデイイデスヨ」

 ジェスチャーと笑顔を添えて伝えてみる。

 「?? Kアs sa タはd vぃtt?」

 と首を傾げながら水袋を差し出してくれた。

 ……え、今飲めってこと? それとも譲るの?

 異世界マナー講座が欲しい。


 カバンからウォーターボトルを取り出し、

「ココニ スコシ イレテモ イイデスカ?」

 振ってチャプチャプ音を立てる。

 ……無言。困り顔。お姉さん、困惑。馬の人と相談。


 いや、こういう時は勢いだ。

 おずおずするより、熱意で押す! 海外ロケ芸人がそう言ってた。


「あのー、今は喉渇いてないんですけど、ボトルの水が心配でして! もし良ければ、ちょっと分けてもらえますか!?」

 勢いだけは満点。内容は9割伝わらない気がするけど。


 お姉さんは「えっ」と目を丸くして、それから「ちょっと待ってね」という仕草をして仲間と話し合う。

 そしてまた戻ってきて、

「Kアs sa taはクsid seらe ヤンkriが セrgミsse linな すiタa?」

 ……なんか、馬車を指してる。

 乗れってこと? まさかの拉致展開?


「ポle ふる. メil on リッせnts…」

 いや、落ち着いた声だ。たぶん大丈夫。

 声のトーン的に「危なくないから乗って」みたいな感じ。


「お金ないよ? 日本円ならちょっとあるけど……」

 もちろん通じない。

 「ぱは? Poレ pロぶleeんミ…」

 あ、笑った。たぶん「お金はいらない」ってこと。

 じゃ、ありがたくお言葉に甘えます。


「とsta リhtさlt タガntぽolt かtus うレs ja ミne…」

 後ろを指して何か言っている。

 ──あ、なるほど、そこから乗れってことね。


「ありがとう」

 そう言って、わたしは馬車の後ろへ回り込み、手をかけた。

 思ったより高い。ちょっとしたボルタリング。


 振動とともに、馬車がゆっくりと動き出す。

 窓のない幌の隙間から、二つの太陽がのぞいていた。


 ──さあ、どうなるわたしの異世界馬車の旅。

 まさか最初の乗り物がUberじゃなくて馬車になるとはね。




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