第20話
………
……
順平が病室の片隅で冬の青空を見上げている頃――。
「It's unbelievable!」
(信じられない!!)
アメリカ、ロサンゼルスの最新鋭の病院のど真ん中では、甲高い声がこだましていた。
その耳をつんざく声に、白衣を着た背の高い黒人の女性医師と、白人の男性看護師の二人は思わず耳を塞いでいる。
すると高い声の持ち主は、まるでマシンガンのようにたたみかけたのだった。
「The weather today is fine.The temperature is also calm.A white beach in front of me.But I should not go out of here a bit……. That's impossible!」
(今日の天気は快晴。気温も穏やか。目の前には真っ白なビーチ。それなのにここから一歩も出ちゃいけないなんて……。ありえないわ!)
大げさな仕草で天を仰ぎ、顔を両手で覆いながら嘆く少女に、医師と看護師の二人は困ったように首を横に振っている。
すると少女は頬を桃色に染めて叫んだのだった。
「Beautiful "now" is right there!」
(キレイな『今』はすぐそこにあるのだよ!)
医師と看護師の二人が顔を見合わせた直後。
「すきあり!!」
薄い青色した病衣を身にまとった華奢な体がひらりと飛び跳ねると、ウェーブがかかった髪がふわりと揺れる。
次の瞬間には疾風のように病院をかけていく天真爛漫な妖精……。
新田芽衣だ――。
「Hey! May!!Where are you going!?」
(おい、メイ! どこへ行くんだ!?)
「Do not let go! Capture May!」
(行かせたらダメだ! メイを捕まえろ!!)
にわかに病院内が騒がしくなる。
ピカピカに光った廊下に、タンタンと高い足音をこだませながら芽衣は駆け抜けていった。
そうして病院を抜けて、ビーチに足跡をつけていく。
波打ち際に立った彼女は、両手を大きく広げて叫んだ。
「ジュンペーーイ!!」
大きな瞳は海を照らす太陽の光を受けてキラキラと輝く。
彼女は満面の笑みで続けた。
「わたし、ぜぇぇぇったいに諦めない!! 自分の命も……」
そこで一度言葉を切った彼女は、大きく息を吸い込むと、雲一つない大空に瞳を向けた。
「君との恋も!!」
澄み切った声が空に吸い込まれていく。
届けよ、わたしの想い。
彼女はそう祈りながら締めくくったのだった。
「ねえ、ジュンペイ。恋をしよ。恋をして自分たちの手で未来を作ろう!」




