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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep3エレニア平原Act30バレンからの暗号

ユーリ大尉の直属部下であるバレン中尉からバスクッチ少尉に暗号電が届く。

その内容とは?


車内からマークが出て来た。


「小隊長!暗号電です。バレン中尉からです」


無線手ハッチから半身を乗り出したマーク兵長が通信欄を差し出す。


「暗号電だと?そこで読め」


バレン中尉からと聞いたバスクッチがマークに促す。


「は、はぁ。でも・・・」


マークは隣の車両に居るリーンと、アルミーアの横に居るミハルを見て、読むのを躊躇う。


「おい、マーク。寄こせ」


マークの態度を感じ取ったアルミーアがその通信欄を取り上げて一瞥すると、さっと顔色が変わった。


<<発、機種開発部付バレン中尉。宛、特務小隊バスクッチ少尉。

 本文、闇に捕われし姫。もう一人の継承者を失う。事は誠に深刻なり>>


文面だけを読んでも他者には何の事だか解らないが、

アルミーアを始め、ユーリ大尉が姫だと知っている者にはその意味が解った。


ー  ユーリ大尉が捕われた?もう一人の継承者・・・

   それはきっとミハルの弟を指しているんだ。

   その子が失われた・・・

   失われたと言う事は何者かに略奪されたか・・・死んだ?


通信欄を読んだアルミーアの顔色が変わったのを見たバスクッチが黙ってその手から取り上げて読んだ。

一瞬強張った顔をしたバスクッチがその通信欄を握り潰し、リーンとミハルに目を向ける。

その瞳には悲しみと苦しみに似た曇りが表われる。


「何かあったの?アルミーア」


ずっと固まったままのアルミーアがミハルに声を掛けられると。


「えっ、あ・・・あの・・・」


口篭もりバスクッチに助けを求める様に顔を向けた。


「いや、な。

 ユーリ大尉の部下の方から連絡があってな。早く皇都へ戻れって言われたんだ」


バスクッチがアルミーアに口を合わせろとでも言うように目配せして、ミハルに答えた。


「そ、そうなんだよミハル。

 折角仲直りしたのに、もう帰って来いって言われてね。寂しく想ってね」


アルミーアがバスクッチの口裏合わせに乗って言う。


「そう・・・なんだ?じゃあ今直ぐ戻るんだよね」


ミハルは二人の言葉を信じてしまい、これで2人が闘いに出なくて済むと思った。


「良かった。運命が変わったんだ。これでもう2人を失わなくて済むんだ!」


何も知らないミハルは2人が自分を庇って死ぬ事が無くなったと思い込んで喜んでいる。


ー  ミハル、ごめんね。私の口からは言えない。

   闘いに向おうとしている今、この電報の内容を教えてあげられない。

   バスクッチ小隊長もきっとそう考えたんだろうから・・・


心苦しく思うアルミーアは言い繕う。


「待ってミハル。帰るって言っても作戦中なのよ。

 直ぐって言われてもはいそうですねって戻れる訳無いじゃない」


この作戦を終えてから還ると言ってバスクッチ少尉の顔色を伺う。


「アルミーアの言う通りだぞミハル。

 いくら直属の上官が戻れって言ってきても、現在我々は戦闘中なんだ。

 仲間をほっぽっておいて帰る事は出来ん」


バスクッチも同様に、今この場から皇都へ戻るとは言わなかった。


「でも・・・命令なんですよね、戻れって言う。

 だったら直ぐに戻るべきではないのですか。戻ってください、お願いです!」


ミハルは命令に従うべきだと食い下がる。


そんなミハルに困った様にバスクッチが、


「ミハル、もう出撃時間を過ぎているんだぞ。

 前線では一両でも多く必要とされている今、オレ達は仲間を見捨てる訳には行かない。

 それはお前が一番解っている事なのではないのか?」


優しく諭すバスクッチの言葉に抗う事が出来なくなるミハルが、

それでも何とか前線へ向わない方法を考える。


「じゃあ、少尉。約束して下さい。

 さっき言った通り私より前へは絶対出ないと。次の任務もあるのですから」


バスクッチに向けてミハルは妥協案を言った。


「解った解った。遠距離射撃に徹するよ。それでいいだろ、ミハル」


バスクッチは何とかミハルを宥めようと了解したと頷くと。


「なあ、ミハル。

 オレ達が居なくなっても小隊を護ってやれよ。お前のその魔鋼力で・・・な」


ミハルの髪に手を載せてワサワサと撫でながら頼んだ。


「少尉、そんな言い方は嫌です。まるで何処か手の届かない所へ行くみたいで」


撫でてくれている手を握って、嫌だと首を振るミハルに・・・


「ん?そうか?まあ、皇都へ戻って人探しをするだけなんだが・・・」


うっかり口を滑らせたバスクッチが慌てて口を閉じた。


「人探し・・・ですか?」


怪訝そうな顔でミハルに見詰められたバスクッチが口篭もってしまう。


「い、いや、ちょっと知人の事を探さなくてはならんのでな」


困ってしまうバスクッチに。


「誰なんです、少尉。その知人って?」


ミハルが問い詰めた時、


「小隊長!師団司令部から出撃要請です。師団正面の敵を討って欲しいそうです!」


マーク兵長がレシーバーに手を当てて大声を掛けてくる。


「よし、解った。出撃する」


マークに返答したバスクッチが、


「ミハル、話は後だ。戻ったら話すからな」


そう言ったバスクッチは自車へ駆け寄り車体を登り、ミハルに振り返った。

その姿を身動ぎもせず見詰めるミハルに、


「ミハル頼んだぞ。小隊を、姫を護ってくれよ。キャミーの事もな」


そう告げて笑うバスクッチの顔を、ミハルは眼に焼き付けて頷いた。




「ねえ、ミハル。バスクッチから何を聞いたの?」


砲手席へ座ったミハルに、リーンが訊いて来た。


「はい。この闘いが終ったら新しい任務の為、皇都へ戻るそうです」


キューポラに居るリーンに振り返って答えたミハルは、暗い表情のリーンに気付いた。

そのリーンはメモを片手に持って心なしか身体が震えている。


「バスクッチ少尉が何か?」


不審に思ったミハルが逆にリーンに訊く。


「ううん。バスクッチはミハルに何も言わなかったの?」


リーンが重い唇を開いてミハルに念を押す。


「え?今言ったことしか?何かあったのですか?」


ミハルは訳を知りたがって訊くが、


「う、ううん。そうか、バスクッチは言わなかったのね。

 ・・・そうだよね、今は戦闘に集中するべきなんだよね」


リーンは自分の中に仕舞い込んでしまった。

その手に握ったメモと共に。


「おい、ミハル。ウォーリアに言い寄るんじゃないぞ。あたしの旦那様なんだから」


キャミーがリーンとの話に割って入って来た。


「ええっ、そんな。

 私、少尉に言い寄ってなんかいませんから。

 そんな事したらキャミーさんに殴られちゃうでしょ」


キャミーの茶々にミハルが応じる。


「はははっ、キャミーに掛かればミハルはまだまだお子様だな」


ラミルも2人の話に入って来た。


「そ、そうですよ。ミハル先輩って身体に似合わず、意外とお子様な処がありますからねぇ」


ミリアがラミルのあとを継いで笑いを作ろうとしている。


ー  ・・・何か変だな。

   リーンの表情といい、みんなが話を誤魔化して居る様な雰囲気だなぁ


「ねえ、みんな。何か私に隠してない?」


ミハルが全員を見渡して訊くと、みんなが一斉に受け持ち場所のチェックをしだした。


ー  絶対何か隠しているな!


そう思ったミハルが一番口が軽そうなミリアに的を絞って、


「ねぇ、ミリア。リーン中尉の表情が暗いんだけど何故なの?」


自分の事を避けて、あえてリーンの事に話を振った。


「え?中尉ですか。それは・・・」


うっかり口を滑らせそうになるミリアを、リーンもラミルもキャミーも一斉に睨む。


「ひっ、ひいっ!・・・な、何も無いですぅ」


気付いたミリアが怯えて仰け反った。


ー  くう。もう少しだったのに。

   皆が皆、内緒にするなんて。気になる・・・


「ねえ、リーン。教えてよ、何があったの?気になって戦闘どころじゃなくなるから・・・」


ミハルは本丸を狙って訊いてみたのだが。


「それは戻ってからにするわ、ミハル。

 もうバスクッチ車が発進したから。もう目の前の戦闘に集中しなさい」


そうリーンに言われては仕方なく頷く。


「解った。じゃあ、戦闘が終ったら教えてね」


しょうがないと諦めたミハルが苦笑いを浮かべて答えた。



バレン中尉からの暗号電を教えられず、

今はただ目の前の戦いへと意識を集中させる事にしたミハル。


バスクッチ車の後に続いて再出撃を開始したMMT-6。

未だ戦車戦は続き、勝利の行方はどちらとも云い難かった。


ミハルは非情の戦場へと再び踏み入れていく・・・・


次回 再出撃 待ち構える影

君は再び彷徨い込む無慈悲な戦場へと・・・

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