魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep3エレニア平原Act28砲手の2人は友情と共に
「ミハル先輩、お疲れ様でした!」
ミリアに労いの言葉を掛けられたミハルが。
「うん。ちょっと疲れた・・・かな」
そう言って、キューポラのリーンに振り返ると。
「リーン、リーン中尉はどうですか?
前のマチハの時よりずっと疲れてしまうのですけど・・・」
砲手席に座り込んで起き上がれないほど、
力を消耗している身体に驚きつつリーンの身を案じた。
「そうだね。この車体の特性なのかしら?
私はそうでもないけど、ミハルには負担が掛かり過ぎるのかしら」
逆にリーンが砲手席を覗き込んで心配そうな顔をミハルに向ける。
「そうなのかな。
私の力じゃこの車体の力を引き出せていないのかも・・・
ごめんねみんな。私、もっと強くならなきゃいけない・・・ね」
黒髪に戻ったミハルがすまなそうに皆に謝る。
「そんな、ミハル先輩は力の限り闘ってくれているじゃないですか。
謝る事なんてありませんよ!」
ミリアが砲尾越しに声を掛ける。
「そうだよミハル。お前の力だからこそ、この車体が耐えられたんだよ。
もし、ミハルやリーン中尉の力が無かったら、
さっきの敵重戦車の一撃でやられていたかも知れないんだからさ!」
ラミルの声がヘッドフォンから流れる。
「ありがとうラミルさん。
でも、私・・・もっと強くなりたいんです。
もっともっと強くなってみんなを護りたいんです」
右手の宝珠の紋章を見詰めるミハルが答える。
「そうか、ミハルはまだ強くなろうと願っているんだ?」
キャミーが砲手席に振り返り、ミハルの疲れた表情を見て、
「でも、今は少し休めよ・・・無理だけはすんな」
そう労いの言葉を掛ける。
「そうですよ先輩。砲弾の補給は私がしますから!」
いつの間にか砲手席の後ろに来たミリアが肩に手を掛けて、
キャミーと同じ様に身体を休めるように勧める。
「うん。ミリアありがとう。陣地へ戻ったら少し休ませて貰うね」
肩に乗せられたミリアの手に自分の手を重ねて、
その心使いに感謝するミハルが小さく微笑んだ。
「はい、任せておいて下さい。先輩・・・」
頷くミリアの微笑みがミハルに元気を授けた。
陣地へ戻ると先に還っていたバスクッチ車の搭乗員が負傷者の手当てと、
砲弾の積み込みに忙しく動き回っているのが見えた。
「ラミル、バスクッチ車の横につけて。各員、急いで補給を完了するのよ!」
キューポラからマイクロフォンとヘッドフォンを外したリーンが飛び出し、
停車と同時にバスクッチの元へ走る。
「少尉!無事?損傷具合はどう?」
リーンに気付いたバスクッチ少尉が振り返る。
「ああ中尉。かなり手酷くやられましたよ。
2両は完全に破壊。あそこまで牽引車は行けませんからね。放棄しました」
やや疲れた顔を見せるバスクッチに。
「それで乗員は?負傷者の具合はどうなの?」」
リーンの隣にキャミーが駆け付けた。
愛するバスクッチの顔を見て少し安心したのか他の乗員達の事を訊いてみると。
「ああ、幸い皆軽傷で済んだよ。キャミーの方はどうだ?」
元気そうなキャミーを見てほっとした顔をするバスクッチが、
リーン車両の乗員を気にして尋ねた。
「うん。ミハルが相当疲れているんだけど、他は皆大丈夫だから」
キャミーがやっとキューポラから出て来たミハルを見上げて答える。
「えっ?私。あははっ大丈夫ですよ、少尉。
キャミーさん大袈裟だから。ほら、このとおりっ!」
話を聞いていたミハルが車体から飛び降りて元気な所を見せようとした。
((ゴ・・・テン))
着地した足が縺れて、思いっきり転んでしまった。
「あいたた。ほ、ほら。元気ですよ!」
「・・・・・」
笑って誤魔化すミハルに全員が無言でシラッとした顔をする。
「ミハルぅ、誤魔化すなよ。やっぱり足にくる程疲れているんじゃないか!」
操縦席ハッチから半身を出していたラミルが呆れて言った。
「ほええぇっ、そんな事ないですぅ。たまたま転んだだけですから」
転んだまま実は立つ事が出来ないミハルが強がりを言うと、横から手が差し出される。
「お疲れ様、ミハル」
振り仰ぐと微笑むアルミーアの顔があった。
その額に絆創膏が張られてあるのに気付いたミハルが。
「アルミーア!怪我したんだね、大丈夫?」
心配したミハルが差し出された手を握って立ち上がり、アルミーアの傷に手を当てようとする。
「ああ、これ?照準器にぶつけちゃって。大した事ないよ」
アルミーアがミハルの手を止めて苦笑いした。
「ミハル。生きて還れたね。
さっきの勝負はミハルの勝ちだね。
私怪我しちゃったし、小隊の2両も護りきれなかったもの・・・」
俯いて苦笑いしながら気に病む様に話すアルミーアに首を振って言った。
「ううん。アルミーアは凄いよ。
だって私にも当てられなかった距離で軽戦車を撃破したんだから。
あんな凄い射撃術を出来るんだから。
それに勝負は引き分けだよ、私だって足に来る位力を使い果たしてしまったんだから」
両手でアルミーアの手を握りその技術の高さを褒めた。
褒められて嬉しかったのか、アルミーアは頬を赤くした。
「う、ミハル。やっぱり疲れているんだね、足に来る程。
じゃあ休んで。また出撃しなければいけないからね。私達・・・」
アルミーアはミハルの身体を案じて休息を執るように勧める。
「そう・・・だね。作戦中だもんね。戦車戦が続いているんだもんね」
アルミーアに答えて皆の邪魔にならない場所へ移動しようとした時。
「おーいアルミーア。ミハルと一緒に休んでおけよ。後一時間位で再出撃するぞ!」
バスクッチがリーンと話す間に2人を休息させる為に声を掛ける。
「そうよ、2人が頼りなんだから。少しでも力を回復させておいてね!」
リーンも気を使って二人の時間を持たせてくれる。
「あっ、はい。ありがとうございます!」
アルミーアが2人に礼を言ってからミハルの手を握って、
「じゃあ、遠慮なく休ませて頂きます!」
ミハルと共に皆から少し離れた所に、アルミーアは腰を降ろした。
「ミハル、少し寝たら?
疲れが取れるよ。時間になったら起してあげるから」
横に座ったアルミーアがミハルの横顔を見て勧める。
「う、うん。でも・・・アルミーアは?休まないと・・・」
疲れているのは同じなのにと気になる。
「一緒に休もうよ、アルミーア。少しだけでも」
そう言いながらもだんだん瞼が重くなってくるミハルに、
「うん、休むから・・・ミハル、ここどうぞ」
太ももをポンポン叩いて誘うアルミーアに顔を紅くしたミハルだが、
疲れと眠気には抗えず、アルミーアの誘いを断れなくなって。
「え?・・・そんな・・・いいの?
・・・ごめんアルミーア。少しだけ、少しだけだから・・・」
重い瞼に負けたミハルが、アルミーアの太ももに頭を載せる。
「ふふっ、いいんだよミハル。お休みなさい」
載せられたミハルの髪を優しく撫でて、眼を閉じたミハルの安らかな顔を見詰める。
ー ミハル。何時以来かな、こうして甘えてくれたのは。
本当に仲直りしてくれてありがとう。
暗い闇の中から救ってくれてありがとう。
闇の呪縛から解き放ってくれてありがとう・・・
すうすうと寝息を立てて眠っているミハルの顔に近付くと。
「ありがとう、ミハル」
自分を救ってくれた友に礼を呟き・・・
ー 絶対約束するからね。ミハルを護ってみせるって。
どんな事が遭ったって・・・
譬え私が死んでもミハルだけは護ってみせる・・・必ず!
新たな決意を胸に秘め、
自分を信じて安らかに眠っているミハルの額にキスを捧げた。
ひと時の安らぎの中ミハルはアルミーアに身を預けて眠っていた。
再出撃の時間が迫る。
アルミーアに起されたミハルは突然お願いを言う。
暗い未来を知ってしまったかのように・・・
次回 暗い運命に抗って
君は予言に惑わされる。暗い運命を知ってしまったから・・・





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