魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep3エレニア平原Act16甦る想い
アミー軍曹に制裁として殴られ続けるミハル。
理不尽な制裁を受けてもその瞳に映った彼女の涙の訳に気付いた。
窪地での制裁の音が止む。
「はあ、はあ、はあ・・・」
アミーが叩くのを止めて唇を切って血を流しているミハルの顔を呆然と見上げ、
そして・・・瞳を見開いた。
涙で曇るその瞳に映っているのは・・・
「ねえ、アルミーア。もう気が済んだの?」
赤く腫れた頬、唇の端から血を流しているのに自分を見詰めて微笑むミハルの顔があった。
ー あ、ああっ?!
夢にまで見たミハルの微笑み。
私に対して見せてくれたのは1年半ぶり。
もう二度と見る事が出来ないと思っていたミハルの微笑み?!
「あ、ああ。あああっ、ミ・・ハ・・・ル・・・」
両手をその微笑を求めるかの様におずおずと差し伸ばして、アミーはその微笑に救いを求める。
涙が後から後から溢れ出し頬を伝って堕ちてゆく。
「ごめんねアルミーア。
気付いてあげられなくて・・・あなたの心を解ってあげられなくて」
ー あ。私、今死んでもいい。今生まれ変われる。
ミハルが助けて助けてくれている、こんな私を赦してくれている!
アミーの心の闇は、ミハルの言葉に打ち砕かれて光に包まれる。
「アルミーア。
もういいんだよ苦しまなくても。
私達、友達でしょ?
今も昔も、あなたは私の大切な友達だよ」
アルミーアはミハルの声を聴いた瞬間、弾かれる様にミハルに縋り付いて謝った。
「うわあああっ、ごめんっごめんなさいっミハルっ!
私は大馬鹿者なのっ!自分の想い通りにならない事に苛立って、
恨み憎んで何もかも失ってしまったと思い込んで謝る事さえ出来なくて、
どんどん酷い事ばかりミハルにして。
それなのに、それなのにっ!」
腫れた頬に両手を宛がい唇の血を拭いその優しい瞳に救われた気持ちになる。
その気持ちに足の力が抜け、縋り付いたまま膝を地に着けてしまう。
泣いて謝るアルミーアの銀髪を撫でながら答えた。
「ううん。アルミーアは悪くないよ。
私だって離れて行ったアルミーアを取り戻そうとしなかったんだから。
あの頃の私達ってホント馬鹿で意気地無しだったよね」
優しい声で許すミハルに縋り付いて泣き続けるアルミーアが。
「ミハル。ミハルはどうしてそんなに優しいの?
どうしたらそんな優しい心で居られるの?
教えて、私にも・・・そうなれるように」
涙で暮れた顔を上げて答えを求める。
ふうっと息を吐いたミハルが教えた。
「それはね。信じてあげる事だよ。愛してあげる事だよ。
そうすればきっと答えてくれる、きっと信じ合える様になる。
自分を信じて相手の事も信じてあげられれば、きっと優しい心になれるから」
アルミーアの瞳が大きく見開かれて、新たな涙が溢れる。
「・・・信じあえる心が優しさの元」
ミハルの言葉にアルミーアが呟いた。
「それがミハルの優しさ、強さの元なのよ!」
二人の後ろからリーンが声を掛ける。
近付くリーンの瞳を見たミハルが気付いた。
リーンの瞳が怒りに狂い、青く澄んでいた筈の色がドス黒く闇に支配されているのを。
「ミハルが許しても私は許す事なんて出来ない。
よくも私のミハルを叩いたわね、傷付けたわね。許せない!」
怒りに狂ったリーンが、闇に堕ちた瞳でアミーを睨む。
恐ろしい瞳の色で睨みつけられたアミーが我に返ってミハルから離れる。
「中尉殿・・・」
涙で霞む瞳を見開き、怒りに狂うリーンに声を詰まらせる。
「許さない!例え軍の規律の為とはいえ、私のミハルを理不尽な体罰で傷付けた・・・お前をっ!」
リーンの胸のネックレスが黒く澱み、紋章が闇に堕ちかけていた。
その形相はいつかミハルの身にも起きた悪鬼にも似た鬼の形相。
怒りに心を落とした闇の住人。
「立てっ!ミハルに与えた苦痛を何倍にもして貴様にくれてやるっ!」
胸倉を掴み、右手を振り上げて殴り掛かろうとするリーンに、アミーは抵抗しなかった。
ただ涙を滲ませた瞳でリーンを見るだけだった。
((ガシッ))
振り下ろした拳骨が音を立てて相手に当たる。
「うっ!何故っ!?」
叩き付けた右手の先にミハルの肩がある。
リーンは、体を張ってアミーを庇うミハルに動揺する。
ー 何故この女を庇うの?何故私を止めるの?
そう叫ぼうとミハルを見た時。
((ガバッ))
「ん!?んんっ!?」
飛びついて来たミハルがリーンの唇へと重なった。
リーンの瞳には、目を瞑り必死に何かを取り戻そうと唇に吸い付いてくるミハルの顔が映る。
ー ミハル・・・あなたは何を求めているの?
何故そんなに必死に私を止めるの。
何故この女を庇うの?この女がそんなに大切なの?
リーンの心にアミーに対する憎しみと妬みが増大する。
ー この女にミハルを渡すものか、奪われて堪るものですか。
ミハルを奪われる位なら・・・殺してやる。
それが敵わないならミハルを殺して私も死んでやる!
リーンの瞳が赤黒く澱み、ネックレスから闇の波動が流れ出る。
((キイイイイィーンッ))
闇に堕ちたリーンの心とネックレスに光が呼び掛けた。
「リイン。どうしたんだよ、何をそんなに苦しんでいるんだい?」
リーンの脳裏に見知らぬ声が語り掛けて来る。
「誰?私は別に苦しんでなんかいない。
私の愛を邪魔する者からミハルを取り戻したいだけよ!」
聞きなれぬ声に向って否定する。
「そっか。リインは心配なんだ。
私が他の誰かを愛する事が、他の誰かに愛される事が心配なんだね?」
声の主は親しげにリーンに訊いて来る。
「あなたなんて知らない。私が欲しいのはミハルだけ。
ミハルの愛だけが欲しいの、あなたじゃない!」
リーンが誰か解らない声の主に拒絶する。
「そう。私はあなたが求めるミハルじゃない。
リイン、もう気付きなさい。目を醒ましなさい。
私の声が聞こえるのなら、その子の心を闇から解き放ちなさい」
闇に覆われたネックレスの紋章の中にその声が流れ込み光が灯る。
「・・・ミ・・・コ・・・ト?」
ネックレスの紋章が闇の中から浮き上がる。
「ああ、帰って来たよリイン。千年の眠りから」
リーンの胸のネックレスにミハルの宝珠が触れる。
黒く澱んだネックレスに碧く輝く宝珠から光が移り、少しづつ優しき光が戻り始める。
「この優しい光・・・この輝き。本当にミコトなんだね?」
「うん。そうだよリイン。私だよ、神官巫女ミコト。
約束を果しに来たよ。リインが呼んだから戻って来たんだ」
二つの碧き石が呼び合い、ネックレスに輝きが戻る。
「私が?ミコトを呼んだ?
・・・解らない。記憶がないの。長い間眠り続けてきたから」
「私だってそうさ。でも、この娘達に目覚めさせて貰ったんだ。やっと・・・」
声の主が紋章の中で姿を現した。
「!ミコトっ!本当にミコトなのね!」
ネックレスの紋章が震え出す。
「あははっ。言っただろ、リインの元へ必ず戻るって。
この国を想うリインが呼んだら必ず戻るって!」
忘れもしない銀髪の少女。
リインの魂は歓喜に打ち震える。
「さあリイン目覚める時が来たんだ千年の眠りから。
私と共にこの国を護るんだ。邪な奴からこの国を取り戻すんだ!」
銀髪の少女が手を差し出して紋章の元へと伸びる。
「うん、ミコト!私のミコト!」
紋章の中でミコトの手をリインが掴む。
((パアアアッ))
リーンの胸のネックレスとミハルの宝珠が輝く。
二つの聖宝石の中でミコトの前に立つ聖王女リイン。
「おはよう、リイン。やっとお目覚めね」
「ありがとうミコト。助けてくれて!」
リインがお礼を言うと首を振ったミコトが眼下に映る二人を指す。
「いいや、違うよ。礼はこの娘に言ってくれ。私が目覚めたのもこの娘のおかげだから」
リインとミコトの魂が抱き合う2人を見詰める。
「そうか。この娘達が・・・私達の意思を継ぐ者。私とミコトの継承者なんだね」
そう言ったリインがミコトを見て気付いた。
ミコトの力を表すあの槍を持っていないことに。
「ミコト?聖槍は、どうしたの?」
リインに訊かれたミコトが、
「リイン。私はまだ完全に力を取り戻していないんだ。槍はもう一人の継承者が持っているんだ」
ミコトが少し心配そうな顔になって告げた。
「もう一人?それは誰なの?」
「うん、それはこの娘の弟。マモルの中にあるんだ。
その子に闇が迫っている。なんとか護ってやりたいんだけど駄目なんだ」
「それは、何故?」
リインが真剣な瞳でミコトに訊く。
「それは・・・ね。ミハルとマモルの親が呼んでいるからだよ」
ミコトがリインに答えた。
リーンとミハルが抱き合う姿を見詰めるアルミーアは、2人の間から起きた碧い光に気付いた。
闇に堕ちかけたリーンを救った不思議な光は、2人の少女を再び結びつける。
次回 笑顔の魔法
君は本当の笑顔に救われる。そして本当の魔法を知る!





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