表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
84/632

魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep3エレニア平原Act15理不尽な制裁

リーンとミハルの前に現れたアミー軍曹。

その彼女がミハルにまたしても突っ掛かって来る。

そして、彼女が起した行動にリーンは眼を吊り上げて怒る。

2人の背後にアミー軍曹が蔑むような瞳で見下ろしていた。


「ア、アミー軍曹!」


リーンが飛び起きて振り向きながら名を呼んだ。


「リーン中尉、いけませんわよ。

 野営地でそんないかがわしい事をなさるなんて。

 軍規違反も甚だしいですわ!」


アミー軍曹は慌てるリーンにそう言うと、地面に寝そべっているミハルに眼を移し。


「兵が士官を誘惑するなんて・・・罰が必要と思われますが、中尉殿?」


アミーがミハルを見据えて命じる。


「立ちなさいシマダ兵長。

 あなたは兵でありながら士官を誘惑し、戦地でいかがわしい行為を働いた。

 これは戦地勤務法第6条第2項に相当し、軍規違反になります。

 よって先任者であるこの私が罰を与えます。

 宜しいですね、中尉殿!」


有無を言わせぬ一方的な言葉でミハルの有罪を宣告する。


「付いて来なさい、シマダ兵長。体に解らせてあげるわ!」


リーンの許可も得ずにミハルを連れて行こうとする。


堪らずリーンがアミーを止めようと2人の間に割って入る。


「待ちなさい!

 誰が勝手に自分の部下を他部隊の下士官に渡すものですか!」


ミハルを庇う様にアミーの前に立ち塞がるリーンに向って軍曹が言いのける。


「他部隊だろうが上官は上官ですから。

 それに軍規を乱した兵の体罰は下士官が行う決まりですので、中尉殿に止める権利はありません。

 そこをお退きになって下さいませんかリーン中尉」


立ち塞がるリーンを睨んだアミーが軍規を盾にあくまで自分がミハルを罰すると言い張る。


「どうしても処罰するというなら私も同罪よ。

 軍法会議にでも連れて行きなさい。

 それが出来ないなら今後一切ミハルから手を引く事ね!」


リーンは両手を広げて立ち塞がる。

その姿を見たアミーは口を歪めて笑った。


「ふふふっ!部下を庇うにも程がありますよリーン中尉殿。

 それとも愛する者を奪われるのが恐いのかしらね?」


アミーがリーンにけし掛ける。


「なっ、何を言ってるのっ、あなたはっ!」


眼を吊り上げてアミーを睨むリーンを見詰め、眼を細めた。


「あらまあ。図星だったみたいですね。

 私がミハルを奪い去る事がそんなに恐いのですか?

 ミハルから中尉への想いを奪われる事が恐ろしいのですね」


口を歪めて笑うアミーが、リーンの癇に障ることを言った。


「誰があなたなんかにミハルを奪われるものですか。

 ミハルは絶対渡さない。ミハルは私だけのミハルなのだから!」


リーンがミハルに向って宣言した。


ー  リーン。ありがとう、嬉しいよ・・・


リーンの言葉にポロリと嬉し涙を零すミハルが決心する。


「アミー軍曹、リーン中尉は無実です。

 罰は私一人が受けますから、今ここで与えて下さい。お願いします!」


アミー軍曹の背中に向けて叫んだ。


「待ちなさいミハル!あなたはこんな女の言う事を・・・」


それ以上言わないで、と自分に首を振るミハルを見てリーンは声を呑んだ。


言葉を失ったリーンを尻目にアミーはミハルに近付くと。


「いい覚悟ね。

 解ったわ、中尉殿に見せる気は無かったけど、気が変わったわ!」


獲物を見据える獣のような瞳で見るアミーに必死に頼む。


「私だけが罰を受けます。リーン中尉には手を出さないで。

 リーンを軍法会議に、中央司令部に連れて行かないで。

 お願い、お願いしますアミー軍曹!」


自分が全ての責を背負うミハルの姿に、アミーの苛立ちは更に募る。


「どこまでお人好しなのよっ、何処まで優しいのよっ!嫌いっ、大っ嫌いっ!」


ミハルを睨み付けたアミーが苛立ちを隠そうともせずに叫んだ。


「足を開けっ!歯を食い縛れっ!」


そう言うと、右手を振り上げる。


軍隊に入隊して、何度か受けた事の有る制裁を思い出し、言われた通り両足を開いて歯を食い縛るミハル。

右手を振り上げたアミーは、自分を見詰めて歯を食い縛り殴られるのを待つミハルの前で動けなくなる。


ー  どうして?

   私はミハルを叩かなければならないの?

   ずっと後悔してきたのに?

   今だって2人の姿を見たから後を追って来てしまっただけなのに。

   中尉の邪魔をしたかっただけなのに、何故なの?


アミーはミハルの瞳を見て自分の愚かさを嘆く。


振り上げた手がブルブルと震えだす。


ー  本当はミハルに謝りたかった・・・

   ユーリ大尉の命令を受けてミハルを助けに行けると知った時、

   バスクッチ小隊長にあなたの名を聞いた時、どんなに嬉しかったか。

   またミハルに逢えると知った時きっと今迄の事を謝って、許して貰おうと思っていた筈なのに。

   なのに私は、私は・・・


アミーは自分の情けなさに涙が溢れてくるのを止められなかった。


ー  そう、私は素直になれない。

   リーン中尉に愛を捧げるミハルに。

   いっそこのまま憎まれ、恨まれた方が善いのかもしれない、

   もうミハルの心には私なんて存在しないのだから・・・


「シマダ兵長!思い知りなさいっ。自分の犯した罪を、自分の傲慢さを!」


アミーが口にした言葉は全てアミー自身に対して、自分を罵る言葉であった。


アミーの右手が振り下ろされ・・・


((バシッ))


ミハルの左頬を平手が打った。


ー  ああ。

   これでもう私はミハルに二度と会えなくなってしまった。

   もう二度とあの優しい笑顔を見れなくなってしまったんだ・・・・


叩き終わった右手が力無く垂れ下がる。

瞳の色を失い、呆然と立ち尽くすアミーの眼に左頬を赤くしたミハルが写る。


「どうしたのですか?罰はそんなものなのですか、軍曹?」


とうとうミハルの口から自分の名さえ呼ばれなくなった事に気付いたアミーが絶望感に体を震わせる。


ー  嫌、嫌だ。

   ミハルの口からとうとう私の名前が失われてしまった。

   それもこれも全部自分の所為なのに、こんな絶望感を受けるなんて。

   ああ、助けて、助けてよミハル。

   そんな眼で私を見ないで・・・


心とは裏腹に気が付くともう一度手を振り上げていた。


「何だその口の利き方は!まだ解らないの!」


ー  お願いっ止めて、止めてよ。

   もう叩きたくない。

   これ以上ミハルに嫌われたくない。

   もう謝っても許して貰えなくなる。

   お願い私を・・・私の事を嫌いにならないで!


((バシッ))


アミーの右手がミハルの顔を更に赤くする。


ー  もう・・・駄目・・・もう終わりだ。

   もうどう謝ったって赦してくれる訳が無い。

   ミハル・・・さようなら。

   本当の馬鹿は私。

   学生時代に気付いていた・・・やっぱりミハルの事が大好きだと。

   自分から離れてしまったから元へ戻りたくても言い出せず、

   変な意地を張って自分から謝る事も出来ず、

   折角会えたというのに酷い事ばかりしてしまう。

   こんな私を憎んで、恨んで、罵って。

   そして・・・忘れて。あなたの記憶から消し去って・・・


ミハルを叩き続けながらアルミーアは、アミーは涙を流し続ける。


ー  何故?どうして私の体は私の意思に反し続けるの?

   何時からこんな酷い事をする様になったんだろう。

   ミハルに対してだけ?ミハルだから?

   何故?解らない・・・

   確かあの時・・・もう一度検査官に会った時に何かをされた様な気がする。

   薄ら笑いを浮かべたあの検査官に・・・

   それからだ、ミハルに会えば必ず酷い事をする様になったのは。

   ・・・でも、もうそんな事はどうでもいい。

   もうミハルには許して貰える訳が無いのだから・・・


絶望感にさいなまれながらアルミーアはミハルを叩き続ける。


心の中では涙を溢しているというのに・・・


理不尽な制裁を甘んじて受けるミハル。

今ミハルの瞳に映るアミーの顔に涙が光っている事に気付く。

その彼女の涙の訳に気付き、アミーの気が済むのを待った。

次回 甦る想い

君はその涙の訳に気付いた時、手を差し伸べられますか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ