魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep3エレニア平原Act9懐かしい人
リーン以下誰もが無口で敬礼をしていると、
キューポラから立ち上がり半身を乗り出した車長もマチハに敬礼を贈ってくれる。
「MMT-3は残念でしたが間に合って良かったです、リーン姫。
搭乗員のみんな、無事で何よりだな!」
帽子とヘッドフォンを外した車長が、背中を向けたまま皆の無事を喜んでくれる。
ー えっ?この声は、もしかして・・・
ミハルが気付くより先にキャミーが走る。
「お前も元気そうで良かったよ、キャミー!」
振り向いた精悍な男にキャミーは飛びついた。
「ウォーリア!ウォーリアァァ!!」
涙を流して抱き付いたキャミーに。
「はははっ、よせキャミー。みんなが見ている前だぞ」
そう拒んで言ったバスクッチ少尉も、嬉しそうに笑ってキャミーを抱いている。
「曹長?どうしてここに?」
「バスクッチ班長っ!良く来てくれました。助かりましたっ」
「曹長・・・あっ、少尉。ありがとうございます」
「バスクッチ・・・あなただったのね?」
ラミルがミリアがミハルがリーンが次々に懐かしい顔に声を掛ける。
「はっはっはっ。そんな一遍に話し掛けるな。
オレが来たんだから安心しろ。もう大丈夫だからな!」
バスクッチが皆に答える。
その手はキャミーを離してはいない。
むしろキャミーを強く抱き寄せ、先程自分が拒んだのとは反対に皆に仲をみせびらかす様に笑った。
「あ、あのさ・・・ウォーリア。さすがに恥ずかしい・・・」
顔を赤くしてキャミーが照れている姿をみんなが見て微笑む。
「おっそうか。すまんすまん」
バスクッチの襟章がきらりと光る。
「あ、ウォーリア。昇進したんだ、おめでとう!」
気付いたキャミーが頭を下げて祝う。
「ああ、一応な。
ユーリ姫の命令で特別小隊の指揮を執っているんだ。これでも・・・な」
バスクッチがキャミーに説明すると、皇女の名を訊いた妹姫が訊ねる。
「ユーリ姉様の?特別小隊?」
バスクッチが頷き、訳を教える。
「ええ、リーン姫。いや、中尉。
オレの小隊は新車両の実験小隊なのです。この車体のような魔鋼騎のね!」
指を差してこの大きな車体を示す。
「さっき4000メートル付近から射撃しているのを見ましたが。
あの距離で正確に命中させられるなんて驚きました。この砲は一体?」
ミハルが長く突き出た砲身に注目して訊くと。
「おっ、砲術屋。成長したか?約束通りまた会えたなミハル」
バスクッチがじっとミハルの瞳を探る様に見てから。
「はははっ、どうやら腕立て伏せはさせなくてもいいみたいだな。
見違えたぞ、いい面構えになったじゃないか!」
どっと笑う少尉に眼を見開いて思い出した。
別れる時に約束した言葉を。
「あの、それ・・・男の人に言うセリフじゃあ?」
ミハルがもじもじして少尉に言い返す。
「この車体と砲は、オレの連れの力なんだ。
魔鋼騎状態での性能は、アハトアハト。つまり88ミリ71口径砲。
2000メートル先の220ミリの装甲を撃ち抜ける最新最強の対戦車砲だよ」
ミハルの返事を無視して砲の性能を教える。
「は、88ミリ?しかも71砲身長?!し、信じられない!」
ミハルよりミリアが驚く。
「そ、そんな砲が我が軍にあるなんて。
この砲が全軍に行き渡ればどんな強敵にも遅れは取らないです!」
ミリアが興奮して顔を赤くする。
「はっはっはっ、ミリア。今言っただろう。
この砲は連れの力で出現した砲だと。
これから漸く試作が始まる所なんだよ。実車に搭載出来るには一年位掛かるだろう」
少尉の言葉にミリアは落胆した。
「しょんぼり・・・」
ミリアの肩をポンポン叩いて慰めたミハルが。
「それでも凄いですね、こんな砲を出現出来るなんて。
魔鋼力も相当強い方なんでしょうね。
どなたなのです、その連れの方って?」
ミハルが少尉に教えて貰おうと訊くと、砲手ハッチが再び開いて銀髪の少女が姿を現した。
ー えっ?
ミハルの前に現れた青い瞳の少女が髪を掻揚げて顔を向けると。
「ホーッホッホッホ。
お久しぶりね、どんくさミハル。元気にしていたみたいね」
手を口に当てて見下した様に笑う少女が、先程までの冷静な口調をやめて高飛車にミハルに言った。
ー う、嘘っ。何でっどうしてっ?
目の前に姿を現した少女を見て混乱し、声を詰まらせるミハル。
「あーら、久しぶりに会ったのに、ご挨拶も無しなの。相変わらずどんね、ミハルは!」
更に高飛車に言われても、言い返すことも出来ずに、
「あ、あ、あの。どうして?」
しどろもどろになったミハルがアミー軍曹を見て冷や汗を垂らす。
「ふんっ、どうしてですって?
私が魔鋼騎士になって、試験車両に乗って此処に居る事を聞きたいのかしら。
それとも少尉の砲手となってあなた達を救った事をかしら?」
車体に両手を付いて見下す瞳は格好の獲物を見つけた獣の様にミハルを見据えている。
「あ、あの、その。どちらもです、アルミーアさん・・・」
アミー軍曹の視線を避けて答えたミハルに甲高い大声が返って来る。
「その名を呼ぶのはヤメロって言ってるんだ糞ミハル。
私の事はアミー軍曹って呼べっ!」
右手で車体をドンッと、叩いてミハルを睨むアミー軍曹に、身体をちじこませて。
「ご、ごめんなさい。あの、アミー軍曹」
ミハルはビクッと身体を震わせ声を詰まらせる。
そんなミハルの姿にピーンときたリーンが庇った。
「軍曹。私の砲手になにか落ち度でも?」
リーンが鋭い視線を軍曹に向けると、さすがに歳若い軍曹は体を強張らせると。
「え、いえ中尉殿。兵長と軍曹の階級の違いを教えてたんですよ、ミハル兵長に」
引きつった笑みでリーンに答えた。
「同級生だったからって、さん付けで呼ばれていたのでは軍人としてどうかと思っただけです」
そう言ってまたミハルに睨みを利かせる。
ー ははーあん。ミハルとこの軍曹は同級生だったのか。
その間に何かあったみたいね。
ミハルの態度を見ていると、どうもミハルに過剰な想いがある様だけど・・・
リーンはミハルとアミー軍曹を見比べて考えた。
「もう、それ位にしておけ。アミー」
バスクッチが見ておけなくなって釘を差した。
アミーは注意されミハルから視線を外して、
今度はバスクッチが抱いているキャミーに視線を移すと。
「ふふん。あなたが小隊長の・・・そう」
キャミーの姿を下から上まで眺め回して鼻で笑う様に言ってから。
「釣合わないわね・・・」
一言呟いてから車内へ戻った。
「・・・何なの?あの人?」
キャミーがバスクッチに訊くと。
「いや、普段はあんなじゃないんだけどな。
オレとお前にヤキモチ焼いてんだろ、多分・・・」
バスクッチが困った様にキャミーに教えたが。
「・・・ウォーリア。信じてるからね」
ジト目で少尉の浮気を疑っているキャミーが居た。
ー あーあっ何なの、この展開は?!
ミリアはボケッとラミルと2人でエンジンルームの上で立ち尽くしていた。
激しい前哨戦を終えた搭乗員達は新車両の受領に赴く。
新車両の説明を女軍曹から受けていたリーンは、軍曹にミハルとの仲を訊くが・・・
次回 女軍曹アミー
君は親友の過去を知りたいと思いますか?





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