表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
69/632

魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep2伝説の魔女と皇女 最終話Act16諦める者、諦めぬ者 

リーンとミハルは岩場の影から偵察任務を遂行中だった。

そこに現れたのは敵の偵察隊だった。

またしても意図しない闘いが始まる・・・


Ep2伝説の魔女と皇女 ラストはバトール!!

((サアアァーッ))


枯葉を風が吹きぬける音に2人は漸く気付いた。


「ありがとうございます、中尉。これで心のつかえが無くなりました」


そう言って微笑むミハル。


「おほん。では、偵察任務に戻ろうか!」


咳払いをしたリーンが双眼鏡を構える。


((ヒュウウウ・ザッザザッ))


寒風が2人の間を吹きぬけていく。


「・・・中尉」


ミハルがリーンに訊く。


「何?ミハル」


双眼鏡を見詰めたままのリーンが返事を待つ。


「・・・何か・・・何か聞こえませんでしたか?」


ミハルの問い掛けに暫く耳を澄ませるが、


「いや、何も。何か聞こえたの?」


耳を澄ませても聞こえないのでその事を訊くと、


「うん。耳から聞こえたのか判らないけど、誰かが話し掛けて来た様な気がして」


ミハルが小首を傾げて不思議な声の事を教える。


「何て話し掛けてきたの?」


リーンの双眼鏡が一点に止まる。


「えっとね。その声が言うの、<来るよ>って。<リインを護れ>って・・・」


ミハルが苦笑いしながら応える。


「そう。声が聞こえたんだ。神の声が聞こえたんだね」


リーンが双眼鏡で一点を見続けている事に気付いたミハルが慌ててその方向にレンズを向ける。


ー  !あれはっ!!


ミハルの双眼鏡に3つの砂煙が写る。


「ミハルに聞こえた声はきっと神の声なんだわ。

  あれはロッソアの偵察隊。・・・敵戦車!」


此方に向って来る砂煙を見詰めてリーンが呟く。



徐々に近付く車両を確認したミハルが双眼鏡から目を外し、呟く様にリーンに言った。


「奴等、もう勝ったつもりなんですかね?」


薄く笑い掛けてリーンを見るミハルが言った。


「そうみたいねミハル。よし、奴等に戦争を教育してやろう!」


挿絵(By みてみん)


リーンも双眼鏡から目を離してミハルに微笑んだ。



「おっ!2人が駆け戻ってきたぞ!」


ラミルが操縦席ハッチから半身を出したままキャミーに伝える。


「そうっすか。では・・・やりますかね?」


キャミーが砲搭上で双眼鏡を持って赤い顔をしたミリアを呼ぶ。


「おいっミリア!何時まで泣いているんだっ!中へ入れっ、配置に着けっ!」


喉頭マイクロフォンを押して怒鳴った。


「ふぇぇーん。ひゃいっ!」


半泣き声を出してミリアが側面ハッチから飛び込んで来た。

リーンはキューポラへ、ミハルは側面ハッチから砲手席へ駆け込む。


ヘッドフォンを被り、マイクロフォンを着けたリーンが命じる。


「戦闘!対戦車戦!

 敵はM3軽戦車3両。

 第1目標は一番前を進む車両。

 順次2番3番目標とする。

 対戦車戦闘に備えっ!ミリアっ第1弾徹甲弾装填っ!」


リーンがきびきびと命じたが。


「ふぁいっ、徹甲弾装填・・・」


半泣き声のミリアが復唱する。


ー  なんで泣いてるんだろ?


徹甲弾を装填する半泣きのミリアを見て不思議に思うミハルだったが。


「砲撃準備よし!」


砲塔旋回レバーを倒して照準器を覗く。

砂煙の下にM3型軽戦車を捉えて右手で倍率を上げる。


「徹甲弾装填完了。射撃準備よし!」


何とか何時ものミリアに戻って47ミリ砲弾を装填し終わり、

換気ファンの作動を確認して報告する。


「よし、攻撃始め。目標こちらに向って来る一番。

 距離1800、敵速40、5シュトリッヒ前方を狙え。

 撃ち方始めっ、撃てぇっ!」


リーンの命令で十字線上に捉えたM3に照準を絞る。


っ!」


ミハルの指がトリガーを引いた。


((ボムッ))


くぐもった音と、煙を吐いて砲弾が狙ったM3に飛ぶ。


「命中!敵軽戦車斯座。炎上中!」


キャミーが目測を続けて報告する。


「よし!敵2番目標っ、射撃続行!」


リーンが右へ逃げ始めた第2目標へ射撃命令を下す。


「センパイ!装填完了っ!」


ミリアの声に被弾回避運動を始めた第2目標に照準を合わせる。


ー  慌てるな。敵の動きを読むんだ


ミハルは射撃に集中する。

回避するM3の動きを見詰める。

右へ10度曲がり、次に左へ10度。

そして・・・


「撃っ!」


トリガーを引き絞る。


((ボムッ ガシャンッ))


射撃音と排出音が車内で響く。


((ガボッ!))


ミハルの射撃でM3の側面前方に穴が開く。

つんのめる様に停止したM3の車体後部から炎が噴き上がり、よろよろと乗員が脱出する。


「よし、2番目標も撃破!」


キャミーが2発で2両を撃破した事に頷く。

だが・・・


「敵3番目標っ、紫色に発光っ!」


ラミルが早口で報告する。


「あれはっ!」


ラミルの声より早くリーンとミハルは気付いていた。


「敵の魔鋼騎ですっ!」


ラミルとキャミーが同時に声をあげた。



前面装甲板に紫色の紋章を浮き立たせたそのM3が、

速力を大幅に増して挑みかかって来た。


「いくぞっ!ラミルこっちも全速だっ!」


リーンがマチハを走らせる。


「戦車前進!格闘戦に備えっ!」


胸のネックレスを取り出す。

マチハがダグイン状態から出撃し、M3に向って速力を増していく。


「距離1000、敵発砲!」


キャミーがM3の動きを追って観測を続ける。


((ギンッ))


砲塔側面のシェルツェンをもぎ取って敵弾があらぬ方へ飛び去る。


「ミリア!魔鋼弾装填!」


リーンが決戦を覚悟する。


「ミハル!やるわよっ!」


胸のネックレスを握り締めたリーンがミハルに叫ぶ。


「了解!」


右手の宝珠を砲に翳して力を込める。

魔鋼の力を!


リーンの身体から碧き光が放たれ、ネックレスの輝きが更に強くなる。


「先輩!車長っ!魔鋼機械発動!」


ミリアが左手で赤いボタンを叩き込む。


ー  いくよ!リーン、みんなっ!


ミハルの瞳が碧く輝き髪が碧く染まり風も無いのになびく。


ー  胸から熱い力が湧いてくる。

   新しい呪文が湧き上がる。これが古の魔女の力なの?


ミハルは新しき力を解き放つ!


「戦神よ力をっ!

 我と共に仇名す敵を打ち破り、我と共に歩む者の盾となれっ!聖召還っ!」


ミハルの新たな力が解放される。

蒼き魔法衣姿となって、魔砲力を翳す。


挿絵(By みてみん)


光は碧き<双璧の魔女>の紋章へと注がれ、マチハを変える。


青い光の中で3号J型が、VK30-02Mへ姿を変える。

その長大な75ミリ砲、傾斜した前面装甲。


紋章と共に姿を変えたマチハに敵はたじろぎ慌てだす。

ミハルが見詰める照準器の中で、敵魔鋼騎M3は慌てて回避運動を始める。


((ギュイイイィーン))


厚くなった装甲板に敵弾が命中したが、37ミリ特殊(APCR)弾でも傷しか付けられない。


ー  まだ、戦闘に慣れていないんだな。

   私達も少し前までそうだった。

   がむしゃらに闘うだけでは生き残れない・・・


リーンは敵の動きを見ながらそう思った。


ー  私達もそうだった。

   ちょっと前までは・・・ごめんね、これが私の使命。私の役割だから・・・


ミハルは照準器の中で、左舷に回り込もうと必死の回避運動をするM3に併せて。


「ラミルさん、左舷にターンっ。突っ込んでっ!」


砲塔を予め左側に廻してミハルが叫ぶ。


「了解!いくぞっミハル!」


ラミルは左フットブレーキを踏み、右ハンドルを押し込む。


((ギャッギャッギャッ))


キャタピラが砂を噛み、急角度でターンする。

照準器の中に、M3が飛び込んで来た。


ー  ごめんね・・・


心優しいミハルが心で謝る。


((チッ))


トリガーを指が引く。


((ズボオオオォムッ))


長砲身75ミリ砲が火を吐き、近距離に迫っていたM3の側面を貫いた。


((グワッ ガガーン))


哀れ・・・M3軽戦車は魔鋼弾を喰らって砲塔を吹飛ばされ撃破された。

紫色の紋章と共に。


「敵全車両撃破!」


キャミーの報告を受けるまでもなく、リーンとミハルは撃破された敵魔鋼騎に敬礼を送る。

栄誉の礼を。


「よし。合戦準備用具納め。長居は無用ね。還りましょうか」


リーンがネックレスを胸へ戻して戦闘の終了を告げる。


「了解。基地へ戻ります!」


ラミルが復唱して、進路をエンカウンターへ向けようとハンドルに力を入れた。







__________________________



エピロローグ



「中尉、少しだけ待って貰えますか?」


「ミハル?どうかしたの?」


ミハルが碧き輝きを納めてリーンに頼んだ。


「あの子達に会って行きたいのです。脱出できた敵戦車兵に」


照準器を通して炎上するM3を見詰めるミハルがお願いする。


「あの子達?」


リーンがキューポラから半身を乗り出して双眼鏡でM3を確認すると、傍に3名の生存者が見えた。


「お願いします中尉。あの子達と話させてください」


挿絵(By みてみん)


ミハルはキューポラを見上げて頼んだ。


「捕虜は捕らないからね・・・」


ポツリとリーンはため息を吐きながら認めた。


「はい、解っています。ありがとう、リーン」


ミハルはリーンに微笑んで礼を言った。


((キュラキュラキュラ))


マチハは炎上中のM3に近付くと、少し離れた場所に停車した。


ロッソアの戦車兵3名はマチハが近付いても逃げ様としなかった。


「誰か怪我をしているの?」


ミハルがマチハから降りて大声で訊く。


「おいっミハル!不用意に近付くな!」


キャミーが無線手ハッチから半身を乗り出して止めるのだが、ミハルはどんどんとM3に歩いていく。


リーンはキューポラからそんなミハルを見て思うのだった。


ー  ミハル、あなたは優しい。そして強くなった。

   私よりもずっと辛く苦しい壁を乗り越えて・・・


そう思って眩しそうに眼を瞬かせた。


「ねえ、誰か負傷しているの?返事をして」


ミハルが近付くと一人の少年兵が仲間の前へ出て、庇うような仕草をする。


ミハルに目に足に傷を負った車長らしき女性が息も絶え絶えに車輪にもたれ掛かっていた。

もう一人の少年兵も右腕に傷を追っている。

二人を庇う少年だけが無傷で居る様に見えた。


ー  ああ、私の撃った弾でまた傷を負わせてしまった。

   もう誰も傷付かせたくないのに


「君!言葉は解る?

 私はこれ以上君達に危害は加えないから安心して。

 そこの2人にもね。

 だから、欲しい物があったら教えてくれないかな。

 薬はどう?痛み止めはいらない?」


ミハルは重傷者用の麻酔薬を取り出して少年兵に見せる。

だが、少年兵はミハルを睨み付けて首を振って拒んだ。


「そう・・・じゃあ水は?喉が渇いたでしょう?」


あらかじめ用意しておいた水筒を差し出して見せる。


その時、少年兵の後ろに居た女車長がボソボソとロッソア語で少年兵に何かを頼んだみたいだった。

すると、少年兵が頷いてミハルに手を差し出した。

ミハルは手の届く所まで近付くと水筒を手渡す。


少年兵が水筒を受け取り女車長の口元に宛がう。

ごくごくと水を飲んだ女車長が満足そうな笑みを零しミハルを見たが、

その笑みを浮かべたまま静かに目を瞑り、力なく首が垂れる。


少年兵は女車長の肩を揺さ振り目を開けようとしたが、女車長はバタリと倒れてしまった。


ミハルは目の前で女車長が息を引き取る姿に身体を硬くして見守っていたが、

もう一人の少年兵が何の動きもしない事に不思議に思い。


「君は?薬をあげましょうか。腕の傷が痛くないの?」


そう声を掛けてやっと気付いた。


ー  死んで・・・いる。どうして?


ミハルがもう一人の少年兵を見つめている事に気付いた少年兵がその男の子を横たえる。

横たえ終わった少年兵の手にベットリと、血が付いているのが解った。


ー  背中を・・・背中に傷があったんだ。死に到るくらいの傷が・・・


ミハルの記憶が蘇る。

装甲の薄い軽戦車が敵弾を喰らうと車内がどうなるのかと言う事を。


ー  生存者は彼一人。私の時と同じ。たった独り・・・



「君!歩ける?歩けるのなら自軍の元へ還りなさい。

 決して諦めるんじゃあないよ。生き残るんだよ、解った?!」


ミハルはそう言って後退る。

少年兵は何事かを呟きながら女車長の懐をまさぐっている。


「必ず帰りなさい、味方の元へ。生き続けるんだよ!」


ミハルはその少年に背を向けてマチハの方へ歩き出した。


((チャキッ))


ミハルの背中へ拳銃を向ける少年兵がブルブル震えながら叫んだ。


「鬼め!悪魔め!車長を、無線手を返せっ!」


ミハルはロッソア語は少ししか解らなかったが怒りに震えるその声が自分に向けられている事は解った。


一瞬だけ歩を止めたミハルは、少年兵に振り返る事もせずにまた歩き出した。


マチハの乗員達が全員見詰める中、辿り着いた時・・・


((パンッ))


一発の銃声が、乾いた音と共にミハルの耳を打った。


車体に辿り着いたミハルを待っていたみんなが何も言わず車内へ潜り込んだ。

その行動が全てを物語っている。


キューポラに半身を出してM3の方へ敬礼しているリーンの姿を見ながら、

シェルツェンを乗り越え側面ハッチに入る時、

M3に目を向けると3人の乗員が横たわっているのが目に入った。


ー  生きる事を諦めてしまったんだね。

   どうして強くなろうとしないの?

   どうして生き続ける事を諦めてしまったの?

   あなたには大切な人が居なかったの?


悲しい想いしか沸いてこないミハルは、その時涙が出て来ない事を知った。


ー  私は変わってゆく。どんどん戦争に慣れていく。

   人の死にも特別な感情を持たなくなっていく。

   これが強くなるって事?そんなのおかしいよ。

   そんなの嫌だよ。そんなの変だよ・・・


ミハルは自分がどんどん人の死に慣れていく事に不安になっていく。


「ミハル、帰ろう」


リーンがまだM3を見詰め続けているミハルに声を掛ける。


「あ、はい。帰りましょう」


挿絵(By みてみん)



リーンに心配を掛けまいと務めて明るい口調でおどけるように答える。


「はあ。魔鋼力を使うと、お腹が減りますね!」


古来の魔女の様に、リーンに笑ってお腹を押えた。


今回にて Ep2伝説の魔女と皇女 のお話は御終いです。

次回から Ep3 エレニア平原  が、スタートします。


第2章のメインストーリーになります。

当然戦車戦が始まりますが、ラブも、シリアスも、何でも来い状態です。

それでは、次回からも応援宜しくお願いします。


君は激動の戦場から生きて還る事が出来るのか?!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ