魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep2伝説の魔女と皇女Act15ああっ心の準備したのにっ!
ユーリが去った後。
リーンに呼び止められたミハルは
心配する心優しいリーンに思いの丈を告白するのだった・・・
古城にエンジン音が響いていた。
「それじゃあ、リーン。元気でやれよ!」
ユーリ大尉が各員の敬礼に応えて。
「また来るからな。その時はまた笑って会おう。皆も達者でな!」
笑顔で車に乗ろうとドアを開けて振り返る先に。
「ユーリ姉様も御達者で。
いつでも来てくださいね、お待ち申しております」
リーンが微笑みながら別れを告げる。
ユーリはリーンの後ろで自分を見詰めるミハルに気付く。
「頼んだぞ、みんな。小隊を、リーンを護ってくれ!」
皆に向けて言った様に聞こえた言葉は、ミハルに向けて頼んだ願いだった。
ミハルが静かにそして強く頷くのを見たユーリも頷き返す。
ー 頼んだぞ、魔鋼騎士!
お願いします神託の巫女。
リーンを、どうか妹の事を護ってやって下さい。私の愛する妹とそして・・・
車に乗り込みリーン達が別離の敬礼をする間も、ユーリはミハルを見詰め続けていた。
ー 解っています大尉。必ず護り抜いてみせます。この紋章に誓って!
ミハルは敬礼を続けながらユーリの心に誓った。
ユーリを乗せた車が行ってしまうと、
リーンは解散を命じミハルと連れ立って歩き出した。
「ねえ、ミハル。昨晩姉様と何を話していたの?」
誰も居ない角まで来ると、リーンが話し掛けた。
「え?いや別に。他愛の無い話ですよ」
ミハルはユーリが口止めした事を思い出して答えた。
「・・・本当に?姉様と違ってミハルの顔色が厳しいから。
また何か背負わされてたんじゃないかと思って・・・」
リーンの心配顔が辛くてミハルは言い訳を考えた。
「本当です。今迄通り、リーンを護ってくれと頼まれただけですから」
リーンに無用な心配を掛けたくないミハルは弟マモルの事を話さなかった。
「そう?それならいいけど・・・」
リーンがそれでも心配そうに瞳の色から何かを探ろうとして見詰めてくるので。
「中尉、私の顔がそんなに変に見えますか?」
あえて関係のない事を問い質す。
「うん、確かに変ね。まるで何かを必死に耐えているみたい。
辛い事を心に秘めているみたいに見えるわ。
・・・私に心配を掛けまいとして」
((ドクン))
リーンの一言はミハルの心臓を締め付ける。
ー リーンには解って貰えている。
話さなくても私の心が通じている。
だから余計に心配を掛けたくない。
そう、私の為に余計な心使いをして欲しくない・・・
ミハルは心の中でリーンに謝った。
「中尉、私の顔は元々こんな顔なんです。
リーンと小隊を護るって決意を固めた時から。強くなろうって決めた時からです」
ミハルは気丈に瞳を見開きリーンに答えた。
ー 私の心を知ってくれているのなら、受け入れてくれるかな。
私の本当の気持ちを。
今迄ずっと抱き続けて来たリーンへの憧れ。
ずっと秘めて来たリーンへの・・・愛を
「でも、リーンにだけは知っていて欲しい事があるんです」
ミハルが口調を変えて名前を呼んだ事に気付いたリーンが。
「知っていて欲しい事?」
優しく聞き返す。
「うん、あのね。伝説の魔女と皇女が誓った事と同じ。
私はリーンを護りたい。
どんなに離れたとしても、どんなに苦しくても。
強く優しい心のままで、リーンと共に歩んで行きたい。
平和で幸せな未来へと向って。
愛するリーンと一緒に!」
ミハルが微笑み掛けて告白した。
愛していますと・・・
((ファサッ))
リーンはミハルを抱締めた。
「うん、うん!」
何度もコクコクと頷いて、リーンはミハルを抱く。
「中尉?リーン?」
ミハルの頬にリーンの涙が落ちて来る。
「ごめん、ごめんね、ミハル!」
リーンが突然謝ってくるので不思議に思って顔を上げると・・・
「!んんっ!?」
ミハルの唇をリーンが奪う。
抱締められたままミハルはリーンに身体を預ける。
ー ミハル。私のミハル。
やっと言ってくれた。
私の心を判ってくれたのね、嬉しい!嬉しいよ!
リーンの心は嬉しさに溢れていた。
身体が自然とミハルを求めてしまい、歯止めが効かなかった。
ー この感覚は一体何?
何年も何十年も待ちわびていた様な開放感。
それに高鳴る心臓の音。
まるで何かをあたえられたかの様な力の充実感。
・・・これは一体・・・何なの?
リーンもミハルも気付いていなかったが、胸のネックレスが碧き光を放っていた。
何かに目覚めた様に。
ミハルはリーンの唇付けを受け入れ、目を瞑り身を任せている。
ハッと我に返ったリーンがそっとミハルの唇から離れると、
息を止めてリーンを受け入れていたミハルが頬を染めていた。
「はあ、はあ。ずるいよリーン。いきなりキスするなんて・・・」
赤く紅潮した頬でリーンを見るミハルが、そっと唇に手を添えてはにかむ様に微笑んだ。
ー か、かわいいっ!!
リーンが胸を更に高鳴らせてミハルを見詰める。
ー 駄目。もうこれ以上求めてはいけない。
これ以上奪ってはいけない。これ以上・・・
リーンは目をグルグル廻して混乱する。
目の前に微笑む愛する人が居る。
その人がじっと自分を見て頬を赤く染めて何かを待っている。
「あ、ああ・・・あああっミハル。わっ私っ、私っ!」
リーンが更に混乱して眼を廻す。
そして・・・ミハルの一言がリーンを狂わした。
はにかむ様に微笑んだミハルが細い声で教えた。
「リーン。いいんだよ、リーンになら何をされても・・・」
ー あ・・・あ・・・あ・・・・・・
((プチンッ))
リーンの頭の中で何かが途切れた。
「え?きゃっ!
ちょっとリーン?大丈夫?リーン、リーン中尉?」
ミハルの声が遠くで聞こえた様な気がする。
そう。
リーンは失神してしまったのだ。
「もう!リーンの馬鹿っ!折角心の準備をしたのにっ!」
更に遠のく意識の中で、ミハルが責める声を聞いた気がするリーンであった。
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「ミハルセンパーイ。何をそんなに怒ってるんですかぁ?」
ミリアが恐る恐る訊いて来る。
「別にっ、怒ってなんていませんっ!」
「ひいっ!」
ミハルの吊りあがった瞳にドン引きするミリア。
「触らぬ神に祟り無し」
キャミーまでもが、畏れて近寄らない。
「全く。何があったのか・・・おお怖っ!」
ラミルも怯えて操縦に専念する。
マチハは偵察任務の為に、草原を走っていた。
ここはエンカウンター北西50km。
アラカンの村へ向う街道を少し離れた草原帯。
「こらこら。私語は慎むべし。偵察任務中なんだから」
リーンが皆に注意しつつ双眼鏡で辺りを見張る。
「はい、すみません中尉」
そう言って謝るミリアが開いている側面ハッチから見張りに戻る。
「うーん。でも、これのせいで見張辛くなったなあ。先輩はどうです?」
ミリアが新しく装備されたシェルツェンを指してぼやく。
(作者注・シェルツェン・対戦車近接兵器防御壁の意。
または乗員保護の為に着けられた防弾板)
「うん。こっちも同じだよ。全く見えない。
ハッチから身体を伸ばして見ない事には観測も出来ないね・・・」
ミハルも困った顔をしてミリアに同意する。
マチハの修理期間に合わせて装備された外面を覆う新装備シェルツェン。
敵の歩兵からの攻撃を防いでくれるみたいだが、その裏腹にこんな欠点があった。
「ほんと、重量がかさむ割にはあまり充てに出来ない装甲厚だからなあ」
キャミーがぼやくのも当然で、厚さ僅かに8ミリでしかない装甲では小銃弾位しか防ぐ事が出来ない。
「確かに。エンジンも足回りも同じなのに、また1トン近く重くなってしまったんだから。
動きも鈍くなるよ・・・全くもう・・・」」
ラミルも浮かない顔で応える。。
「まあまあ。折角整備班が付けてくれたんだから。
そう文句ばかり言ってちゃバチが当たるわよ」
リーンが取り成して言うと。
「何でも付けりゃあいいってもんじゃないですよ。
砲手も、装填手もこれじゃあ戦闘中は見張りが出来ませんから!」
ミリアが珍しくまともな意見を言うと、
「うーむ、ミリアにしてはまともね」
リーンが笑って言った。
「・・・中尉、酷いです」
涙目のミリアが抗議した。
2人が笑っている蚊帳の外でミハルはブツブツと呟いていた。
ー リーン。
私は言って欲しかっただけなのに< 私も愛している>って。
只一言だけ、その言葉が欲しかっただけなのに・・・
ブツブツと文句を呟いて愚痴ているミハルに、リーンの命令が聞こえる。
「目標点到着。
これよりダグインして敵の情勢を探ります。各員持ち場のチェック!」
リーンがマチハを適当な場所へ隠れさせて偵察を開始する様に命じた。
「ここからだと、見張辛いな」
リーンがキューポラからもっと見晴らしの利きそうな場所を探すと、前方に岩場があるのが見えた。
「うん。あそこがいい。あの場所からなら10キロは見張れそうね」
リーンは車外へ出て偵察する事にした。
キューポラから砲手席を覗くと、ブツブツ何か呟きながら砲のチェックをしているミハルに眼が止まる。
ー もう、まだ怒っているの?
・・・この際だからちゃんと話さなくっちゃ。ちょうどいい機会だわ・・・
リーンがそう思って誘う様に命じる。
「ミハル一緒に偵察に来て。双眼鏡を忘れずにね」
それだけ言うと、キューポラから車外へ飛び出した。
その後を双眼鏡を首から下げたミハルが付いていく。
岩場に着いて早速見張りに入ったリーンが早速訊ねた。
「まだ怒っているの?」
双眼鏡から目を離さず訊くリーンに。
「怒ってなんかいません!」
強い口調で言い返すミハル。
ー 怒っているじゃないの・・・全くもう!
「私が途中で倒れてしまったから?」
尚も双眼鏡で観測を続けながら訊く。
「いいえ。そんなんじゃあありません!」
ミハルも双眼鏡で偵察しながら答える。
「じゃあ、何について怒っているのよ?」
リーンは双眼鏡から目を離してミハルを見る。
「・・・言って・・くれてないから・・・」
ポツリとミハルが呟く。
「言ってくれてない?」
リーンが小首を傾げて訊くと、ミハルも双眼鏡から目を離して。
「だって!
私しか言っていないじゃないですかぁ、愛してるって。
キスされただけでちゃんと言ってくれてないじゃないですか。
私も欲しいんです、その一言が。だからっ!」
瞳に涙を湛えたミハルが真剣な顔で求めていた。
ー そっか。
それで怒ってたんだ。
・・・やっぱりミハルは可愛いな。
本当に優しくてかわいいんだな
「愛してるわ。ずっと前から・・・」
ポツリと呟くリーン。
「え?今、なんて?」
ミハルの瞳が大きく見開かれて聞き返してくる。
そのミハルの手を掴んで引き寄せたリーンが、心の丈を打ち明けた。
「ミハル良く聞いてね。一度しか言わないから。
・・・私はあなたの事が好き!
あなたが私を姉として接してくれるようになった時よりずっと前から好きだった。
そして今は違うの、もっと深く、もっと強く・・・愛しているわ。
これからも、きっとずっと・・・永遠に」
リーンの瞳は愛する人を見詰める真剣さを帯びて輝いていた。
ー あ。
ああ、本当に・・・こんな真剣な瞳で言ってくれた・・・
「「目覚めさせてくれた。千年の眠りから。やっと、やっと・・・」」
ミハルの右手に光る宝珠の中で何かが目覚めの時を迎える。
ー リーン。本当に言ってくれたんだね。嬉しい。
私はもう迷わなくていい。
あなたを護る為ならなんでもする。あなたが求めるなら何でもする!
ミハルは歓喜の涙を溢すと・・・
「うん、うん!私も、私もずっと傍に居たい。
ずっと愛していたい。これからもずっと、永遠に!」
リーンに飛びついて嬉し涙を零した。
「そう、この戦争が終わったとしてもミハルを離したくないの。ヤポンに帰したくない!」
リーンの言葉にミハルは心の底から答える。
「私も日の本へ帰るとしたらリーンも一緒に連れて行くから。
例え帰ったとしても直ぐ戻る、リーンの元へ。
伝説の魔女の様に別れたままになんてなりたくない。
きっときっとリーンと一緒に居るから!」
ミハルの言葉にリーンは喜んだ。
「ありがとうミハル。
その言葉忘れない。決して忘れないからね!」
リーンはミハルを抱締めて歓喜する。
リーンのネックレスとミハルの宝珠が、二人の気持ちを表す様に輝きを放ち続けた。
その聖なる紋章を強く浮かばせて。
伝説の魔女と皇女の魂を継ぐ二人は結ばれ永遠の誓いを復活させた。
二人の前に敵の偵察部隊が現れる。
次回 諦める者、諦めぬ者
君は闘い続ける運命を背負いし者!





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