魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep2伝説の魔女と皇女Act14ユーリの願い
古城の見張台で、2人だけの秘密話をするユーリとミハル。
ミハルの家族の秘密をユーリは知っていた。
それはミハルも知らなかった秘密、知りたくなかった力の遺伝。
ミハルは頷いて同意を示す。
「解りました。喋りませんリーン中尉にも」
咥えていたタバコを煙草盆に捨てると。
「シマダ兵長。
魔鋼騎士・・・つまり能力者は若い女性が持つだけだと思われてきたがそれは間違いだ。
能力は引き継がれる物なのだ。
お前の母、美雪からシマダ兵長が引き継がれた様に。
それは男子であっても変わらない。たった一つだが実例があるのだ・・・」
ユーリが真剣な目でミハルを見つめる。
「ヤポンで神官巫女を務めていた美雪が、能力者であった事は間違いない。
なぜならヤポン陸軍が開発した魔鋼騎で、美雪は多大なる戦果を残した。
エギレスの要塞を護る戦車隊に戦闘を挑み、撃破8両もの戦果を挙げたのだ。
我国の情報部が掴んだ美雪の秘密。
それはお前が持つ宝珠の紋章。
その紋章がシマダ兵長の父母を我国へ呼び寄せる原因となったのだ。
皇父様が信じる伝説の魔女と同じ紋章なのだよ、シマダ・ミハル」
ユーリはミハルの右手に填められている宝珠を見ながら一気に話した。
「この宝珠の紋章が・・・ですか?」
ミハルは左手で右手の宝珠をそっと触り、
「でも、これは母からお守りだとフェアリアに来た時に渡された物です。もう十年も前になります」
手渡された時期を話す。
「そう。我国へ来た美雪は秘密を隠す為に、お前へ渡していたのだ。
だが、いくら宝珠を隠しても能力が有る事を全て隠し通す事は出来なかった。
お前の父が魔鋼騎を我国で開発してしまったからな」
ユーリは続ける。
「美雪は宝珠を持たなくとも魔鋼騎が動かせる事を実証して見せた。
つまり魔法力があれば魔鋼騎を操る事が出来ると。
これにより魔法の触媒が無くとも魔鋼騎で闘う事の出来る機械が完成したのだ。
現在我々が使っている魔鋼騎は全てそうだ。
それにより魔法力を早期に見出された者は戦車兵に適用される事になった・・・」
その辺の事情はミハルでも知っていた。
ミハルはユーリが言いたい事が何であるのかが薄々感じ取れてきた。
「大尉。母と私の魔法力については認めます。
母の能力を引き継いだ事も解りました。
でも・・・マモルは男の子です。
魔法力を引き継いだとは断言できないのではありませんか?」
ミハルが弟の能力については誰も判らないと思って話すのだが。
「シマダ・ミハル、一つ聞きたい。
お前達家族の先祖は一体何者なのだ。
母は神官巫女、東の果てにある国から来た神官巫女。
伝説の魔女と同じ・・・紋章を持つ者だという事だけしか解ってはいない」
ユーリがミハルの肩を掴んで迫る。
瞳には真実を求める光が宿っていた。
「私には解りません。
私は只のヤポン人・・・それ以外の何者でもありませんから・・・」
ミハルがユーリの視線を避けて答える。
「シマダ・ミハル・・・教えよう。
お前の弟マモルは魔鋼騎士・・・いや、能力者だ。
お前と同じ能力を持つ魔法使いなんだよ。
たった一つの事例、ただ一人の男の子の魔法使い・・・それが弟マモルの事なのだ。
それが知られてしまったのだ中央軍司令部に」
ユーリの言葉は信じられなかった。
呆然とユーリを見る瞳から涙が溢れ流れ落ちる。
「な・・ん・・で。どうして?マモルが・・・魔法使いだと?」
呆然とユーリに訊く。
「学徒動員検査で、普通は女子だけが受ける筈の魔鋼騎適性検査を受けさせられたらしい。
学校側には知らされなかったが、軍中央部で全て内密に取り図られていたみたいだ。
私が知ったのは彼の、マモル君のファイルを偶然見たからだ」
ガクガクと体を震わせてミハルは呆然と立ち尽くし声を失う。
「弟君はまだ14歳だ。徴兵年齢に達していない。
後一年は軍隊に入らなくてもいい。
後一年、この一年で戦争を終わらせなくてはいけないのだ。
解るなシマダ兵長、私の言う意味が」」
ユーリがミハルの肩に置いた手を強く握ると。
「それに学校に居れば、軍とて手は出せない。
そう、ファブリット中将にも言い伝えてある。
彼も私と同じ同志だから、力を貸してくれている」
ユーリの言った名に気が付いた。
「ファブリット・・・師団長閣下が?」
「ああそうだ。
彼は今、師団長を辞めさせられて中央軍司令部付きになっている。
ヘスラー参謀長より先任にあたる彼が目を光らせてくれている限り、弟君に手は出せないだろう」
ユーリが安心しろとばかりにミハルの肩を強く掴んで諭した。
「ファブリット中将が、マモルの事を?」
ミハルの瞳に微かな希望が宿る。
「ああ。
だからシマダ兵長、この一年でこんな戦争を終わらせなくてはならない。解ったな!」
ユーリはミハルの肩から手を離すと、夜空を見上げる。
「私はこれから中央軍司令部内部で暗躍する者達を探り、証拠を掴む。
そしてそいつらを反逆罪で放擲する。
そうすれば皇父様が望んでおられる和平への道が開ける事になろう。
その時までシマダ兵長、この小隊をリーンを護ってやってくれ。
いいな、頼んだぞ!」
ユーリの瞳は澄んで迷いが無かった。
「はい。それが私の望んでいる事ですから」
その瞳にミハルは頷いて応えた。
「そうか、では宜しく頼むぞ!」
ユーリは右手を差し出し、握手を求める。
「はいっ、必ずリーンを、小隊を護りきってみせますから!」
堅い握手を交わしてミハルは誓った。
「伝説の魔女。
いや、聖女となれミハル。
強く優しく皆を導いてやってくれ。
それが第3皇女ユーリが願う只一つの願いだ・・・戦女神ミハル」
古来の血脈を継ぐ者同士が願いを込める。
聖王女と、神官巫女の末裔が新たな誓いを交わす。
それぞれの運命を背負い、それぞれの想いを心に秘めて・・・
ユーリは軍中央で暗躍している者達を探る為皇都に向う。
リーンは昨晩ミハルがユーリと話していたのを知っていて、何を話したのか訊いて来た。
ミハルはリーンに知らせる。
自分の気持ちを・・・
知って貰いたかった心の中に秘めている気持ちを。
次回 ああっ心の準備したのにっ!
君は本当に心に秘めた想いを打ち明けられますか
(作者・注)次回はラブコメかも・・・。ニヤリ





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