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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第2章エレニア大戦車戦Ep2伝説の魔女と皇女Act13孤独な姉

パイ投げが済んで身体に付いたクリームを洗い流す搭乗員達とユーリ。

ミハルの為に馬鹿騒ぎをしていたと言うミリアに胸を熱くする・・・

湯気が周りを隠していた。


「はあ・・・全く、リーンは加減って物を覚えないとな」


ユーリがタオルを頭に載せてぼやく。


「ううー。姉様だって無茶苦茶だったじゃないですか。

 結局皆でお風呂に入り直さないといけなくなっちゃたんだから、もう!」


リーンが愚痴っている湯船の外で、搭乗員達は体中に付いたクリームを洗い流している。


ー  結局あのお2人さんが一番クリーム塗れになったんだけどな


2人を見詰めてミハルは呆れた。


ー  でも、パイ投げの時に見た2人の笑顔。

   さっき指揮官室で話している時と全然違って明るく、

   子供に返った様に喜んでいたっけ・・・


「ミハル先輩。ごめんなさい」


ミリアがしおらしく謝ってくる。


「んー。もういいって、ミリア」


半分涙目のミリアが頭を下げて謝るのを手を振って許してやると。


「本当にごめんなさい。

 あの時はミハル先輩が落ち込んで戻ってくるかと思って・・・

 転属させられちゃうと思い込んじゃって・・・」


ー  そうなんだ。

   皆が私が転属させられると思って、あんな馬鹿騒ぎしてたんだ・・・


胸がキュンと締め付けられる様で、それでいて熱くなる。


「大丈夫。どこへも行かないよ。

 私はこの小隊を護りますって誓ったんだから。

 例え転属命令が来って此処に残るから」


ミハルがミリアに微笑むと、


「ううっ、嬉し過ぎます。センパイっ!」


ぶわっと涙を溢れさせて抱き着いて来るミリアに、


「ほんと、ミリアは甘えん坊さんね」


胸に顔を埋めるミリアの髪を優しく撫でてやるミハルに横槍が。


「おいミリア。お前また役得してるだろ」


ラミルが冷めた目で2人を見て呆れた。


「ん?そうなのミリア?」


白い目になってミハルが訊くと。


「いえいえー。そーんな事ないでふぅ・・・(ニヤリんこ)」


ミリアがデレながら胸に顔を摺り寄せてくる。


((パッカーン))


ミハルの拳骨がミリアを吹っ飛ばした。


「油断した私が馬鹿でした」


ミハルがため息混ざりでラミルに嘆いた。


「はははっ、ミリアのミハルデレは直りそうにないな」


キャミーも呆れた様に笑って言った。




「いいもんだな。皆が仲良くしていられるこの小隊は。羨ましい位に」


ユーリがポツリと呟いて、寂しげな表情を浮かべる。


「ユーリ姉様」


リーンがそんな姉を気遣って声を掛ける。


「いいんだリーン気にするな。

 私の務めが終ったらきっとまた笑い合える時が来るから。それまで耐えてみせるさ」


気丈に笑い掛ける姉が不憫に思えて。


「ユーリ姉様、辛くなったらいつでも私の所へ、この小隊に来てください。

 きっと心が和むと思うから」・・・


リーンは慰めるのだった。


「はっはっはっ。そうだな、その時はまたパイ投げでもするか」


ユーリは天井に向って笑いながら冗談を言う。

その瞳に涙を溜めているのが、リーンには辛かった。


「さーて、もう上がるか。お前達はゆっくり入っていろ」


ユーリはさっさと湯船から上がり、脱衣所へ向う。

出て行く後姿を見送るミハルは、ユーリの背中に大きな傷跡があるのに気付いた。


ー  どうしたんだろ、あの傷は。まるで何かで斬られたみたい・・・


その事をリーンに聞こうか迷っていたが、心の中へ仕舞い込んでおく事にした。







風呂から上がり、搭乗員室へ戻ったミハル達にリーンが訊ねる。


「ねえ、みんな。ユーリ大尉を知らないかな?」


リーンが指揮官室へ戻ったと思っていたユーリが居ないので探しに来たようだ。


「え?大尉が居られないのですか?変ですね、

 大尉の車はまだ車庫にありましたが・・・」


ラミルが首を振って知らない事を返事する。


「じゃあ、私達が一緒に探しましょうか?」


ミリアがそう言って立ち上がったが。


「あ、いいのよ。帰って来るのを指揮官室で待つから」


別に慌てる事は無いと思ったリーンが、皆を止めて自室へ戻って行った。


ー  ユーリ大尉・・・一人で何処へ行ったんだろう?


ミハルはお風呂場で少し寂しそうな大尉の横顔を思い出して心配する。


ー  やっぱり、探しに行こう。私一人だけで・・・


ミハルは上着を掴むと立ち上がった。


「先輩、何処へ行かれるのですか?」


ミリアが訊くのを手で制しながら。


「うん、少し夜風に当たってくるね」


そう言い残して部屋を出る。


ー  そうだ、大尉は伝説の話をしている時、ずっと窓の外を見ていた。

   きっとあの方向が見える所に居られるんだ


ミハルは古城の見張台へと登って行った。

その途中で、見張り番だったルイス兵長と出会うと、


「あの、大尉を見かけませんでしたか?」


ミハルが訊ねると、ルイスが肩を竦めて。


「ああ。見張りを変わるから一人にしてくれと言われたよ。

 困った人だな、まったく・・・

 そうだ、ミハル。これを渡して貰えないかな?」


ルイスが手渡す外套を受け取り頷く。


「はい、渡してきますね。・・・じゃあ」


ペコリと頭を下げて階段を登って行くミハルに、ルイスが微笑んで見送った。




「ふぅー。私もヤキがまわったかな。寂しく感じるなんて・・・」


独り言を呟くユーリが、咥えたタバコの煙を吐く。


「冷えますよ、大尉」


大尉の背中に外套を羽織らせながらミハルが声を掛ける。


「シマダ兵長か。何の用だ?」


振り返りもせず、ユーリが訊く。


「いえ、中尉が捜しておられますので」・・・


ミハルが着せた外套を羽織ったまま、遠くを見続けるユーリに答えて傍に寄る。


「大尉、何をお考えですか?良ければ私にお聞かせ下さいませんか?」


ミハルは大尉の後姿に話し掛ける。


「シマダ兵長。お前には弟が居たな。可愛いか、弟が?」


突然の質問にミハルはどぎまぎと答える。


「え?マモルの事ですか?

 そうですね・・・可愛いって言うより、大切・・・ですね」


ミハルはどう言っていいのか判らず、思いついた事を言う。


「そうか、大切か。私もリーンが大切だ。

 姉として・・・第3皇女として。

 彼女の事を知る者として・・・な」


ユーリが消えたタバコを咥えたままそう言うと、思い返すように。


「その大切な弟の元へ帰るのが、シマダ兵長にとっての約束だったな」


「は・・・い。そうです」


ミハルは軍に入って最初の約束を思い出す。


ー  最初に約束したのがマモルとの別れの時。

   マモルに必ず帰るって約束したのが軍隊に入ったあの日に誓った約束だから・・・


「シマダ兵長。これから話す事はお前の胸の中に仕舞っておいて欲しい。

 決してリーン達には話さないでいて欲しい」


ユーリがミハルに向き直って、口外しない様に望んだ。


その瞳にはある真実を告げたがっているようにも見えた・・・


ユーリがミハルに話したのはユーリが知る秘密。

ミハルの弟マモルに迫る危機の事を。


次回 ユーリの願い

君は大切に想う人を気遣う

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