第7章 永遠に紡がれる物語 Together Forever EP3 sister and brother<姉弟> Part4
声が聴こえた。
自分を呼ぶ声が・・・蒼き珠から
思わず声が出てしまっていた。
呼びかけられた声に、戸惑いを隠せずに。
「誰なの?私に話しかけるのは?!」
今、此処に居るのは弟である男の子だけ・・・なのに。
「どこかで訊いた事がある声・・・確か。
確かにどこかで聴いた事がある・・・ま、まさか?!ターム?!」
思い出していた、暗い過去を。
初めて戦場に出た頃の事を。
懐かしい友人の声の事を・・・
「ターム?!タームなの?!」
金色の髪。
蒼き瞳・・・優しい顔。
自分を庇って死んで逝った友の顔。
その懐かしい女の声と同じように聞こえた。
「ターム?!あなたがどうして?」
もう、操られる真似などしてはいられなかった。
輝く魔法石から語り掛けてくる人の声に。
<お久しぶり・・・でもねミハル。
私はタームさんではないのよ、その子に似ているとは思っていたけどね>
魔法石から語り掛けてくるのはタームではないという。
<あの子には私の力を使わせた事があったけどねミハル。
何度もあなたを救う為に力を授けたわ、宿りし者達にも・・・>
語り掛けて来る者はミハルの事を知っているようだった。
<ミユキさんにも、マモル君にも。
ずっとこの時を待つ為に・・・力を授けて来た。
あなたがこの世界を救う・・・女神になるのを待ち望んで・・・>
魔法石からの声が心に語り掛ける。
「あなたは誰なの?
私が女神になるのを待っていた?
私が世界を救う?それを知っているのは?」
光はミハルを包み隠す。
光の中に居る者がミハルに告げる。
<ミハル・・・あなたは私。私はあなた・・・
女神の力を纏いし魔法使い・・・そして、あなたは人間。
神でも悪魔でもない・・・人の子、ミハル>
光は意志となり姿を表す。
金色の髪、碧き瞳。
それはターム。その顔はリーン。
ミハルにとって掛け買いのない人の姿となって、語り掛けてくる。
<漸く目覚めたのね、ミハルとして。
私もミハル<MIHARU>、あなたと同じ名を与えられた者。
そして大魔王を破り、この地球を取り戻す為に目覚めた娘なの>
金髪を靡かせる少女が語るのは、人類全ての希望。
<この世界も、本当の世界も。
私達に懸かっている・・・破滅兵器を停めれるか次第に。
MIHARUプログラムを起動出来るかどうかに、全ての運命が懸かっているの>
教えられたのは誰かからも話された絵空事のような運命。
人類を救うのは唯独り、自分なのだと。
それが女神として覚醒した自分の宿命なのだと。
<私もMIHARU。あなたもミハル。
二人だけど今は一人となる宿命の娘。
目覚めし女神の力を纏い、大魔王を停めねばならない。
私という、アンインストールフォルダを叩き込まねばならないの>
それは聞いた事があった。
どうしてなのかは知らない。
なぜ自分なのかも知ったことではない。
唯、思うのは・・・
「あなたを叩き込むというのなら、私はどうなるの?
世界を救う代償として、私も一緒に滅んでしまうの?
私はいいとしてもリーンやマモル達はどうなるというの?」
光の人に訊いてみた。
MIHARUが消えてしまえば自分も消えてしまうのかと。
そうなれば、やっと出逢えたリーンにも、父母弟にも逢えなくなってしまうのでは・・・と。
<あなたは私。私が消える事になれば、当然あなたも消える事になる。
そう・・・それが始りの時から決められていた{誓約}なの>
心が痛んだ・・・聴いてしまったから。
<でも、私は滅ぶとは言ってはいないわよ?
消えるだけ・・・この世界が本当の世界に戻れば。魔法の力なんて存在しないのだから>
心に希望が宿った・・・答えられたから。
<ミハル、私の事を知っているかしら?
MIHARUと名付けられたのは本当の私の名から取られたの。
月に住む私の身体に名付けられた名だから。
今は月の裏で眠りについたままのミハルなのだから>
月の住人、ミハルが教える。
この世界とは異なる場所からやって来たという、もう一人のミハルが。
<それと・・・もう一つ。
私にもマモル君と同じように弟が居るの。
その子の事を心配していたの、行方が知れなくて。
でも、今あなたとこうして再び話せて解ったわ。
あなた・・・弟と会っていたのね?
あなたの中にあの子の声が残っていた・・・<衛>の声が。
今あなたは<衛>を連れていない・・・どこに居るの?>
MIHARUがミハルに訊いた。
弟はどうしたのかと。
しかし、身に覚えが無かった。
名前は同じでも、弟と呼ばれる存在に接した覚えはなかったから。
「知らない・・・と、言うより。
あなたの弟君はどんな姿をしているの?
もしかしてMIHARUと同じ髪色、瞳の色をしていた・・・はっ?!」
思い当たる男の子が記憶に過った。
リヴァイアサンに包まれた時に一度だけ観た事があった。
龍の子として記憶を失い、自分探しを願っていた男の子。
金髪で蒼き瞳を輝かせた・・・リィ君の姿を。
<気が付いた?
その子は今どこに居るの?
私はマモルを助ける為にこの世界へと舞い降りた。
マモルを救う為にもあなたに希望を託して来た。
蒼き珠に宿って・・・弟に逢える時を待ち続けて来たの>
MIHARUが願うのは無理もない。
自分がその立場であれば、絶対に探すであろう何年懸ろうとも。
「あなたの探している子は今、大魔王に捕らえられたままなの。
私がお願いしたから、リィ君は護ってくれているんだ。
大切な記憶を、大切な人の祈りと共に・・・」
探しているのは姉。探し出そうと願うのは弟だという。
フェアリアで少しの間でも別れ離れにされた記憶がある。
大切な肉親と離れ離れにされた事もある。
たった独りで、希望に縋って耐えていた事も・・・
「龍の中に閉じ込められた弟君を取り戻すのなら私にも手伝わせて!
大魔王に囚われた今、獲り返せるチャンスは少ないと思うから!」
それが今の自分に出来る事の一つだと考えた。
世界を救う・・・それ以前に。
<ありがとうミハル。
そしてお願いするわ、もう一人の私。
この蒼き魔法石を<ケラウノス>に放り込んで。
そうすればこの世界は造り替えられる。
悪魔や邪なる者など存在しない・・・魔砲力もない。
人が魔法に頼らず、己の力のみで生きていける・・・世界へと>
MIHARUが言った。
世界の終わりと始まりを。
「あなたを破壊兵器に投げ込めば・・・世界を取り戻せるの?
人が悪魔に怯えて暮らす世界から?
辛い思いをする人々へ<希望>を与えられるの?」
願い・・・それは<希望>の光と共に在り続けられること。
ミハルはリーンと共に誓い合った。
希望を抱いて歩み続けられる、自分達の願いを。
<それが・・・ミハルの願いなのよね。
あなたの様に考えられるのなら・・・
これからの人類に希望を与えられるということなのよね?>
人類を造り替える・・・月の住人達が思い描いた<希望>。
それは消滅させてしまった人類の生き残りが、
自らの想い上がった<願い>を形にした世界を終わらせるという事。
人が人として暮らす世界の再構築を意味していた。
機械文明に頼り過ぎず、人が人として暮らす・・・元の世界へと。
「私には分かりようがないけど。
月に住んでいる人達も、この世界に生き続ける人達も。
同じ人なら、一緒に暮らせれば良いと思うんだ。
同じ人間なら、きっと巧くいくと思うんだ・・・
だって、話し合えばきっといつかは分かり合えるから。
話し合う事さえ出来れば、闘う事の愚かさを分かり合えると思うから」
ミハルは本心からそう思った。
今迄闘い続けて来た思い出を振り返って。
<ミハルの様な人達ばかりが居れば・・・戦争なんて起きないのにね。
ミハルみたいな人類になれれば世界は変われるのにね>
MIHARUの言葉が、光に刻まれて行った。
ミハルの声が光に包まれて行った。
<ミハル姉、どうしたのさ。黙っちゃって?>
目の前が碧くなった。
光が消えた空の元、弟マモルに身を任せるまま・・・
<マモル・・・お願いがあるんだ。
お姉ちゃんと一緒に来てくれるかな?>
ミハルの心が決心を固めて訊いた。
<えっ?!どこに行くの?>
突然話を変更した姉に、弟は小首を傾げてしまう。
<リーンの元に。
大魔王に囚われた人達を救い出す為だよ、マモル>
心で教えたミハルが振り返った。
槍を突き付けていたマモルの顔へと。
「マモル!私と一緒に闘って!
大魔王から皆を救う為に力を貸して!」
マモルへとはっきりした口調で願った。
もう、操られる真似を終いにして。
唯一つの願いを果たす為・・・
蒼き珠に宿る者が告げた・・・
MIHARUと呼ばれる少女が答えた。
自分は彼女と同じなのだと。
その意味が分かる時。
ミハルは決意を漏らす・・・弟へと
次回 EP3 sister and brother<姉弟> Part5
君は自ら進むべき道を悟った・・・心を同じくする者と。
人類に残された時間は少ない・・・残された時間は後170時間!





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