第6章 終わる世界 Ep7 They Who Govern Reason <理を司る者> Part4
世界は何者かの手で創られて来た。
滅びと再生を繰り返し・・・幾度も。
何者かの手で新たな文明を与えられ・・・
人は何者かの手で造り替えられてきたというのか?
人は何故幾度も滅びの道を歩んだというのか?
その答えは未だに見つけられてはいないというのか・・・
なぜ・・・そう。
なぜ?
何故に?
滅ばされねばならないというのか・・・どんな罪があるというのか?
その答えを未だ人間は見つけようともしていなかった・・・
艦隊は損傷艦を省いて二分された。
旗艦<金剛>に付き従うは<榛名>以下戦艦2隻、巡洋艦<神通>以下駆逐艦6隻の水雷戦隊。
それに航宙戦艦<薩摩>・・・それが前衛艦隊の総力だった。
「有志連合軍って言っても、日の本の艦隊と変わらないんじゃーないのか?」
飛空士達は波を蹴立てて進む艦隊を観た感想を言い合っていた。
「ホントだよなぁ、これじゃぁ日の本艦隊って言った方が良いよなぁ」
下士官達が話し合っている傍を大高2尉が通り過ぎる。
何かを思いつめた目をして。
「島田1尉、お話があります!」
キャンパス製の折椅子に腰かけていたミハルにジュンの声がかかる。
振り仰いだミハルに、鋼の魔砲師ジュンが言った事は・・・
「島田1尉、あなたは女神となられたそうですが。
魂を呼び戻す事が出来るでしょうか?
神なのだったら人を蘇らせる事も出来るでしょう?」
いきなりだった。
ジュンが求め続けて来た事を成し遂げようとしている・・・他人の手で。
「大高2尉、あなたの悲願だったね・・・私の事を神格化して願いを果たすのが」
ミハルがジュンに訊ねる。
蒼き瞳で何かを探る様に見詰めながら。
「ええ、そうです!
やっとこの時が来たんです、私の宿願が果たされる時が・・・ね」
ジュンが右手を後ろに回しながら答える。
「・・・鋼の魔砲師ジュン。
あなたは何かとんでもない思い違いをしているようね。
私が魂を蘇れせれると思ったら大間違い・・・思い違いをしているわ」
後ろポケットから拳銃を抜き放ったジュンに言い切った。
「それに、あなたの求める魂とは誰の事なの?
私が魂を蘇らせたとしても肉体はあるの?元の身体はどこにあるというの?
魂が黄泉の国に旅立ってしまった人を元に戻すには生きていた証が必要なのよ。
それが無ければ蘇る事なんて無理、どんな力を持つ神にだって無理なんだよ?」
拳銃を突き付けている大高2尉を観て、周りの者達がざわめいた。
「うるさいっ!おまえは女神になったんだろう?
だったら元どうりにできるだろう?!
私から奪い去った友を返せ!敵のくせに堂々とのさばりやがって!
さっさという事を訊くんだっ、私の言う通りにしろっ!」
拳銃を額に突き付けたジュンが女神に命じた・・・つもりだった。
「駄目だよジュン。
あなたは心が壊れかけているようね。
闇に堕ちかけているみたいに・・・邪な想いが増大しているわよ?」
銃を突きつけられても動ぜず、悲し気にジュンに話す。
2人の士官が言い争っているように感じた下士官達が止めに入る事も出来ず、
上官を呼びに艦内電話に執り付いた。
「艦橋!格納庫甲板まで士官を呼んでください!大高2尉が銃で島田分隊長を脅しています!」
中村2曹の叫びにレナ砲術長が艦長に判断を委ねると。
「ほっておけ!ホマレが居るだろうに・・・」
ミノリは魔砲師達に一任したようだった。
「そうじゃのぅ、まぁ・・・悪いようにはならんじゃろぅ」
身体に宿る狐の神もミノリの判断に同意していた。
「なんやて?!あの阿保がミハルに絡んどるやとぉ?」
野村整備2曹がホマレを呼びに行くと、忽ち頭から湯気を噴き出し立ち上がった。
騎付き整備員でもある野村2曹が心配そうに観ているのに気付いたホマレが、咳ばらいをして言い直す。
「分かった野村、ウチが止めたるさかいにな。心配せんでええ!」
飲みかけのコーヒーをそのままに、野村2曹を伴って格納庫甲板へと足を向けた。
「で?どうしても判って貰えないのかな、ジュン?」
拳銃を突き付けられたままでミハルが訊いた。
「分かるも判らないもない!私のいう事を訊くんだ、反論は許さない!」
拳銃の安全装置を解除して脅しをかけるジュンに。
「そっか・・・仕方ないね。
それじゃあ女神モードになるから・・・」
悲し気な顔のまま、ミハルがキャンバス製の椅子から立ち上がる。
<いいの?ミハル。簡単に言っちゃって?>
宿ったままのリィ君が心配そうに訊いて来る。
<うん、きっとジュンも判る筈だから。無くしたモノの大きさを・・・>
宿るリィ君にそう答えたミハルが魔砲力を放つ。
リーンのネックレスと右手に填めたルシファーの授けた魔法石が光を放つ。
足元に金色の魔法陣が現れ、
有志連合軍魔砲師ユニホームが女神の魔法衣へと変わる。
<リィ君、手出しは無用だからね?>
龍の子に断ってから女神の力を表わす。
そう、<理を司る者>としての力を。
「さぁ、あなたの欲するのは<希望>かしら?
それとも<粛罪>なのかしら・・・どっちなの?」
太陽神ミハルの左手に現れたのは審判の天秤。
そこに載せられるのは・・・
「うわぁっ?!」
ジュンが断末魔の叫びをあげる。
手にした銃を取り落として。
眼を開けたまま、立ち竦んだ顔には驚愕と畏怖の表情が見て取れた。
「大高ジュン・・・あなたには魂の重みを知って貰わねばいけないの。
あなたの心とあなたの求めるモノ、それと魂の重み・・・どちらが重いのかを」
神の天秤に二つの物が載せられる。
左に載ったのはジュン自身の心。
右に載せられたのはジュンが求めた魂達の塊。
「さぁ、あなたは知らねばならない。
魂達があなたをどう思っているのかを。
友の魂達があなたに何を求めるのかを・・・」
天秤は傾ぐ。
<理>の通りに・・・
人の魂が如何に重いのかという事を知らしめる為に。
ジュンの想いはそれでも抗おうとした。
手に出来ると思いたいかのように、闇を募らせようとした。
「駄目よジュン、想いを澱ませては。
気が付いたかしら?あなたの求める魂達の声を。
聴こえるでしょう?あなたにも・・・」
天秤は傾ぐ、魂達の声に。
裁きを受ける者を救わんとして。
ジュンの耳に懐かしい友達の声が届いた。
自分達が護ったその訳を。
友を護って散った桜のように・・・いつかまた、逢えると言って。
<私は・・・間違っていたの?
みんなを取り戻す事がそれ程の罪だというの?
死んだら二度とは還らないと知っている・・・でも、取り返したかったの。
どんな事をしても、私の為に死んだ人を取り戻したかったの・・・>
天秤は純真な心を評価する。
しかし・・・それだけでは重みが足りはしなかった。
「いいかしらジュン。
あなたに一度だけチャンスをあげる。
死者を蘇らせるのか、死者を弔うのか・・・それともあなた自身が死者となるか。
自分でよく考えるの、この人達に逢って・・・」
太陽神ミハルが魂達を呼び出す。
ジュンの魂を黄泉の門へと連れ出す。
それは光の力ではない。闇の力・・・邪なる力ではない、冥界の神力。
黄泉の国に入る為にはこの門を潜らねばならない。
その門を守護し、罪人を地獄へと送る役目のアヌビスが聳え立っている。
「娘よ、そなたはまだ生ける者。
この門を潜れば則ち死。この門を潜るのか?この門で留まるのか?」
死者の番人でもあるコヨーテの神が訊ねる。
「アヌビス・・・少しだけ時間を頂戴?」
門番の頭上から太陽神ミハルが頼んで来た。
「おおっ?!そなた・・・覚醒を遂げられたか!
見違えるような光を放っておる・・・よくぞ成し遂げられた!」
一度は訪れた冥界の門。
そこで再会したアヌビスによってミハルは救われる事になった。
死者から生者へと・・・それが今は女神となった。
ジュンの魂をアヌビスが誰何せず門へと誘う。
「アヌビス、ちょっとだけ。見て観ぬふりしてて?」
ミハルの声に冥界の番人は困ったような、苦笑いを浮かべるだけだった。
「さぁ、魂達よ。
今少しの間語り合いなさい・・・教えを与えてあげて?」
呼び出されたのはジュンの求めるもの。
語られるのは生在る者と魂と成りし者の心。
ジュンの心は懐かしき魂に包まれる・・・感謝と感激に震えながら。
<ミハルぅ、もうこの位で許してやったら?
じゃぁないと・・・ホマホマが怒るから・・・さ>
リィ君が引き攣った声で警告して来た。
「ほぇ?」
神としては間抜けな声でミハルが目を向ける。
立ち尽くしたジュンの後ろで腕を組んだまま自分を睨んでいるホマレの姿が映った。
「あ・・・マジ怖っ?!」
ジトーッと睨んでいるのはジュンではなく自分なのだと気が付いたミハルが慌てる。
ー だってぇ・・・私。女神になったんだもん・・・
ちゃんと<理>を教えないといけないんだからぁ・・・
ジュンの魂が逢いたかった魂達と抱き合い、別れを惜しむ間。
ミハルはホマレに睨まれ続ける・・・損な娘だから。
ー そっか・・・私もこんな場面あったよね?
懐かしい人達に囲まれて・・・涙を零していた事があったよね?
自分に秘められていた女神の力。
今にして思えば不思議な体験であったのだが、
この世界で魂に逢えるのは自分ぐらいなモノだろうなと思えた。
ー <理>を司る者として。
女神として・・・そして人間として。
導けるのなら、助けてあげたい・・・罪を赦して
漸くジュンの魂が戻って来た。
天秤には清やかになったジュンの魂が左に。
右に載るべき求めるモノは・・・粛罪。
ジュンが求めているのは自分が冒してきた罪への罰。
ー ジュン・・・善かったわね。あなたの罪はあなた自身が償った。
懐かしい人達の魂によって・・・祓われたの・・・
女神の天秤は水平だった。
「これでお終い。
大高2尉、どうかな?少しは落ち着きましたか?」
女神モードのミハルが銃を落として立ち尽くしているジュンに訊いた。
「はっ?!あ・・・あれ?私・・・どうなって?」
我に返ったジュンが女神モードになっているミハルを見詰める。
「あ・・・ミハル分隊長?
それが女神の魔法衣なんですね、凄いですねぇ」
何も覚えていないのか、ジュンがぼけっと見詰めるのを微笑んで頷くミハルに・・・
「そやろ?これが太陽神ミハルっちゅー奴や!」
いつの間にか後ろに回り込んだホマレが。
((むにっ))
「・・・・・・」
女神の魔法衣を?
「ホマホマ・・・罰が当たるよ?」
飛び出した龍の子が逃げ出す。
「ホーさんっ?!」
瞬間に女神モードを解除したミハルが震える声で訊ねるのは。
「いやぁーなに。どんだけ成長したのかの確認や!」
なにがだ、ホマレよ?
((ボグッ))
ジュンが眼を丸くする。
周りの者がホマレに同情する。
噴き跳んだホマレは何事も無かったかのような・・・顔をしていない。
「普通・・・死にますよ?1尉?」
ジュンが吹っ飛ばされてのびているホマレを指差す。
「大丈夫!ホマホマは生きてるよ・・・たぶん」
ホマレの上を羽ばたきながらリィ君が笑う。
「まったく・・・油断も隙もないんだから!ぷんすか!」
ホマレの悪戯に怒りながらも、ミハルは気分が良かった。
自分が太陽神ミハルである事に感謝して。
闇に心を染めた者を救えたという事が、<理を司る者>の力だと思って。
自分を貶めてでも想いを遂げようとした罪人を赦せたことにも。
そう・・・これから闘う者に対しても、許せると思って・・・・
ミハルを狙い続けてきたジュンの心は思い出と共に癒された。
太陽神の力で・・・
一つの闇が消え去り新たな希望が宿る。
しかし・・・
巨悪は潰えはしていない。
この世界の成立ちが・・・造ったかのような闇は・・・
次回 終わる世界 Ep7 They Who Govern Reason <理を司る者> Part5
君の中で蠢くのは・・・新たな闇だというのか?
人類消滅まで ・・・ アト 48 日 !





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