第6章 終わる世界 Ep7 They Who Govern Reason <理を司る者> Part2
闘いを終えたのはミハル達だけでは無かった・・・
そう。
神の神殿にて・・・・
殲滅を託されたというのに・・・自分独りでは達成出来そうに思えない。
「こんな事になるなんて・・・
馬鹿にしてるわっ!冗談じゃないわよ!!」
神の神殿に転送させたミハリューがユピテルを呼び出そうと指令室まで乗り込んで来た。
「ユピテルっ!聞こえているんでしょ!出てきなさいよ!」
怒りが治まらないミハリューが魔法でモニターを引き出す。
「どうなってるのよ!私のバグになぜ太陽神の魔法衣を与えているのよ!」
まだモニター上にも表れていない全能の神ユピテルに対して問い質す。
有志連合軍との艦隊決戦に発展してしまい、
戦力の多数を失うという大敗北を喫しても、ミハリューには責任感が欠如しているのか。
「どこよユピテルの親爺!
サッサと答えたらどうなのよ!」
責任を転嫁する為なのか、それとも自分にも太陽神の魔法衣が欲しいと願う為か。
ミハリューは言葉も荒くユピテルを呼び続けるのだった。
「ミハリューよ、私はそなたに言っていた筈だぞ。
お前のバグを甘く見るなと。あの娘には我らの知らぬ力が存在しているのだと。
お前に与えられた魔法衣は戦女神に準じているのだ。
その力を以ってしても敵わぬというのか?ミハリューよ」
ユピテルはモニターに姿を現わさずに声だけで話しかけている。
「親爺!アイツの魔法衣は太陽神のモノだったわ!
あいつが何故あの魔法衣を着れたのよ?なぜ私じゃなくあいつなのよ?!」
怒りの矛先をユピテルに向けたミハリューが手を振りかざすと神殿の壁が崩壊する。
「ミハリューよ、一つ訊いておくぞ。
娘は太陽神の魔法衣を着ていたというのだな?
それは見間違いではあるまいな?嘘を吐いている訳ではないのだな?」
ユピテルの質問がミハリューの怒りを倍増させる。
「なんて事いうのよっ!私がなんで嘘を言わなきゃいけないのよ!
アイツは間違いなく現れたのよ、光の魔法衣を着て!」
叫びついでにまた壁が噴き跳んで行った。
「左様か・・・ならば、答えねばならんな。
アヤツがお前とは違うという事を・・・お前とは別の神という事を」
ユピテルは答えると言った。
しかし、ミハリューには最期の言葉が引っ掛かった。
「アイツが?私とは違うというの?・・・別の神って・・・何よ?」
聞き返したミハリューを無視して、全能の神ユピテルが告げるのは。
「ミハリューと現れ出た者とは違うのだ・・・そもそもな」
「どういう事よ親爺?」
映っていないモニターを睨んでミハリューが答えを待った。
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旗艦<金剛>は修理を終えたようだった。
「これからどうなっちまうんでしょーねぇ?」
整備班の野村2曹が、受け持ち騎のホマレ3尉に訊ねた。
「知らんわいな、そないな事」
そっけなく答えるホマレの靴を直しながら野村2曹が苦笑いを浮かべる。
「艦隊って言っても戦艦2杯に水雷戦隊が一組。
しかも損傷艦を含めて9杯だけですからねぇ・・・」
進撃する事も適わないなと思っているようであった。
「せやから・・・知らんがな・・・」
そっけない振りをするホマレだが、ミノリから告げられていた。
作戦詳細については口外不要なのだと。
次期作戦の目的が、ミハルの望む通りなのは知っていたのだが・・・
「まぁ、この艦隊が敵本陣に突っ込むなんて事にはならんだろーしな・・・」
作戦打ち合わせの為、旗艦<金剛>に赴いてる二人を想って適当にはぐらかせた。
「ご苦労様でした、源田2佐」
司令官が開口一番に労う。
「はっ!救援に感謝致します」
敬礼を贈り二人が謝意を述べる。
ミノリと連れ立って旗艦に表敬訪問したミハルの前に居る前衛艦隊司令官。
ー 嘘だぁ、こんな子が司令官だなんて・・・
旗艦に訪れたミハルの前に居るのは金ベタの襟章を着けた若い女の子。
ミハルと同い年位に見える司令官は白蒼髪を束ねた髪を軍帽から降ろしている。
こちらに向けて微笑む顔に輝くのは金色の瞳。
「そちらが・・・フェアリアの?」
司令官がミハルの事を訊ねてくる。
訊ねられたミノリがミハルを促し、申告させる。
「私は日の本からフェアリアへ赴いた島田誠の長女ミハルといいます。
訳があって有志連合軍に加盟致しました、以後お見知りおきを」
階級も加盟も正式ではない事を言っておこうと思ったミハルが次の言葉を選んでいると。
白蒼髪の司令官がミハルを制して手を差し伸べると。
「私は日の本に古くから居る祓狗を宿した娘。
あなたと同じ神を宿した魔砲使いなの。
司令官に抜擢されたのはこの<金剛>に必要だったから・・・ねぇイナリ?」
ミハルの手を握りながらミノリに宿る狐神に訊いて来る。
「うむ。久いのぅ大狗よ。健やかであったかのぅ?」
なぜだかイナリの声はびくびくと怯えた様な声色だった。
「ふふふっ、ええ勿論よイナリ。
あなたも若い娘に宿れて大層良い気分でしょう?」
ミハルの手を握ったまま司令官が嗤う。
「う・・・うむむっ、狛犬のくせに・・・ワシはもう年じゃ!
若い娘に宿ったとて、何かする訳でもないわいっ!」
ポンっと狐耳と二本の尻尾を出したイナリが司令官に言い募ったが。
「そんな事を言って・・・前の憑代には変な事してたじゃないの?」
「・・・・バレてーら」
イナリが尻尾を巻いて退散する。
司令官に手を握られたままのミハルが二人の神に小首を傾げていると。
「ああ、ややこしいのは逃げちゃったか。
それにしてもあなた・・・ミハルさんとか言ったわね。
大層強力な力があるようだけど・・・どんな神を宿しているの?」
ミハルに向かって訊ねて来た。
自分の力を推し量る為に手を握り続けていた司令官が軍帽を脱ぎ去る。
現れたのは銀髪にひょっこりと立ったケモミミ。
祓狗を宿した娘の本性を垣間見えさせた姿。
「・・・ケモミミ・・・
あははっ、私もリーンのペットにされる時に生えるからなぁ・・・」
いらぬ事を呟くミハル。
狗神には常人には聴こえる筈もない声でも十分聞こえるとは知らなかったミハルに。
「そう?あなたも獣耳が生えるんだ?ナカーマだね?」
あっさり聞き咎められ慌てて口を押えたミハルに笑い掛け、
「で?あなたの属性は?もしかして・・・猿?」
「な・・・訳がないでしょ?私は女神と人の半分づつを持つ者ですから」
獣属性を否定したミハルに眼を見開く司令官。
「女神ですってぇ?!じゃあ敵なの?あなたは?!」
見開いた眼で、ミハルの眼の中にある光を探る。
「でも、ミハルさんには光しか見えないけど?
どこにも邪な紅黒い光は見えない・・・澄んだ清やかな輝きしか見えない」
蒼き瞳に映るのは自分を観る澄んだ輝き。
そこには闇の属性は微塵も無かった。
「失礼しましたねミハルさん。
あなたには敵たる者の放つ邪なる気が感じられないというのに。
改めて自己紹介しますね、私は<金剛>の魔砲師 仁科 偉子。
有志連合軍日の本海軍第3艦隊司令を拝命しています・・・仁科少将です」
敬礼も無しに自己紹介した司令官へ、ミハルが緊張した面持ちで敬礼する。
「そんな堅苦しい事はしないで?
私もあなた同様この戦に巻き込まれただけだから。
あなたの事は日の本からフェアリアまで、全て知られているから。
我が国の情報収集力によって・・・って。建前上はね・・・」
そこで区切るとミノリに向かって目配せする。
「私の事を・・・ですか?」
ミノリと目配せする仁科司令官に訳を訊ねようとしたのだが。
「ミハル。それは後でだ。
今は次期作戦について指示を仰ぐのが先だろう?」
気勢を先次てミノリが止める。
<金剛>に来た目的を言われてミハルも思い留まった。
「そうですね、私がここへ来たのは艦隊がこの後どう行動するのかという事を訊きたかったから。
艦隊の目的と有志連合軍の方針を伺いたかったので・・・」
自分の事より艦隊の目的、そして今からどんな方法で神軍と闘おうというのかを。
仁科司令官に与えられている艦隊行動を知りたい為にここまで来たのだと告げるミハルに、
ミノリが捕捉するのはこの程度の艦隊では如何にしようが戦力不足だという事。
「前衛艦隊として敵を誘出せんと闘った事で、
神軍には警戒感が産まれたと思われます。
我が手の内を見せた事に因り、敵は更なる艦隊を編成するかもしれません」
空中戦艦を撃破出来る装備を備えている事を、
敵に知らしめてしまった事で起きる次期戦闘への憂いを告げた。
「うん、それは承知の上。
敵に時間を与えずに攻勢を掛けるのが戦争の掟だから。
それはあなたのお父様も十分ご承知の事だと思うのだけど?」
偉子の眼が、ミノリを見据える。
仁科司令官がミノリの父に期待している通りなら、次の闘いは本丸を突くような戦闘となろう。
「私にはこの後、どのような作戦が立てられているのか教えられてはおりませんので。
父・・・いいぇ、連合艦隊司令長官からは何も教わってはいないので・・・」
戦艦<薩摩>を託されたのは元々の艦長以下上級者の戦死に因る。
その前艦長から引き継いだ事はジェットランド沖に於いて果たされた。
敵艦隊を誘出する・・・それだけの命令でもあったのだが・・・
「源田2佐、<薩摩>は目的を果たせたの。
だからこれからは一つの目的に集中しなければいけないのよ。
私達、神を宿す者として・・・憑代としての務めを果たさねばならない。
この世界を護る為に・・・人を滅びから救う為に」
祓狗の言霊が狐神の憑代に向けられる。
「神軍の目的が人類の消滅だというのなら。
時間は限られている筈よ・・・あの光を放たれてしまえば手の下しようがない。
ギガントマキア―に発展する以前の問題なんだから・・・」
神々との決戦を意味する<ギガントマキア―>。
ミハルには青天の霹靂でもある言葉に込められた真意。
祓狗が教える次なる闘いとは?
そして語られた<あの光>とは、何を意味するというのか?
「神の中に君臨するユピテルが握らんとする鍵。
その鍵を手に入れられたら・・・最早、手の打ちようがないわよ?
その前に何としても鍵を保持しつつ敵の本拠を突かねばならない。
いや、システム自体を破壊しなければならないのよ・・・力づくででも!」
ヨリコが二人を前に、闘いの趨勢を決める狙いを教えた。
ミハルが新たな闘いを覚悟するのと同じ様に。
ミハリューもユピテルに因って知らされた・・・自分が何者なのかと言う事を!
遂にラスボスの影が・・・シリーズもいよいよクライマックスを迎えるのか?
・・・まだだ・・・よ!
次回 終わる世界 Ep7 They Who Govern Reason <理を司る者> Part3
君はいつの間にか・・・違う者と化していたのか?
人類消滅まで ・・・ アト 50 日 ?!





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