第6章 終わる世界 Ep6 殲滅か希望か Part10
ミハリューは後退る。
現れたのは女神。
現れたのは自分のバグと思っていた娘。
だが・・・
空を見上げる蒼髪の少女。
自分を指差す少女の瞳には光が宿って観えた。
「馬鹿な・・・そんな馬鹿な事が?
お前は私のバグにしか過ぎなかった・・・なのに・・・なぜ?
何故太陽神の魔法衣を着れているんだぁっ?!」
自分にさえも着る事が叶わなかった上位の魔法衣。
神々の中でも位が上だという事もあるが、
光と力の象徴でもある太陽を模った魔法フィンが胸元で輝きを放っている事にも驚く。
「あり得ない・・・こんな事が許される筈が無い。
私のバグが本当の女神より上位の神だなんて・・・赦される筈がなかろうがぁっ!」
ミハリューが龍の背に載ったままのミハルへ光弾を放つ。
怒りと困惑に手加減なしの魔砲を打ち放し、目の前の現実を覆そうとしたのだが。
((グワアアアゥンッ))
龍諸共砕け散るように放った光弾はミハルの指先から放たれた金色の魔砲によって炸裂した。
「うぐぐっ?!さっきのはマグレじゃないってことね。
デバイスなしで魔砲を放てるなんて・・・神の為せる技・・・はっ?!」
理解する事を拒んでいた頭が、漸く回り出した。
「そうか、お前は神に覚醒したというのね。
それなら話は分かるわ、だって宿っていたんだものね。
前に会った時にもバグが邪魔したから・・・そういう訳ね」
ミハリューは自己完結し、改めてミハルを見詰め直した。
自分のバグが宿った前回の闘いの時を思い出して。
前に会ったこの娘の女神モードを思い出し、あの程度なら今の装備で十分勝てると踏んだ。
だが、もう一つ気になる点がある事に気付く。
それは右目が自分同様紅かった筈なのに・・・
「今はマリンブルー・・・いいや、もっと色が澄んでいる。
両目とも蒼い・・・まさか・・・前とは違うというのか?」
見上げてくる顔を見返し、言い知れぬ畏怖を覚えて身震いした。
「なっ?!なんだこの感覚は?
私が怯えるだと・・・あり得ないっ、私は人を殲滅する女神なんだ!」
口ではそう言っても身に与えられてしまった畏怖の感情を停めれる筈も無かった。
ー そう・・・人には圧倒出来る。
だけど・・・相手が同じ神だとすれば・・・しかも上位の神だとすれば。
私の力なんかでは抗う事さえ・・・無駄だ・・・
冷や汗が殲滅の女神に流れ出す。
今の今迄圧倒してこれた・・・人が相手ならば。
今迄油断さえしなければ勝利を手中に収められてきた。
だが・・・
「ねぇ、あなた。
私のお願いを聴いてくれないかな?
もう意地悪をしないで?戦いをやめましょう?
私達は人を導くのが役目では無いの?」
指を差したまま、ミハルが話しかけてくる。
神の意志で。
頭に直接語り掛けてくる、ミハリューの頭の中に。
「うっ?!う・・・うるさいっ!黙れ黙れ黙れっ!
お前になんか指図されるゆわれはないっ!」
圧倒的な力の差を感じ、ミハリューはジレンマに陥る。
このまま闘ってもしも負ければ・・・消滅しなくても存在理由を失いかねない。
自分のバグに負けたとなるとオリジナルの意味がなくなるのだから。
前回とは違って、今の装備は殲滅の女神の装備。
殲滅を司るミハリューの完全魔法衣、デバイスだったのだから。
「このまま闘ってもしも負けちゃったら・・・・
逃げ帰っても居場所がなくなる・・・
下手をすればユピテルの親爺に消滅させられちゃうかも・・・ヤダ。
そんなの嫌だ!バリフィスと遊べなくなっちゃうなんてヤダ!」
ミハリューは闘う事に自信が消滅していた。
相手の力を思い知らされて。
「どうするの?
女神ミハリュー・・・聴き遂げてくれないかな?」
再び声が届いた。
「えっ?!うわぁっ?!」
今度は本当の耳に。
いつの間にか太陽神の魔法衣を纏ったミハルが傍に居た。
警戒していた筈なのに・・・
「キッ・・・貴様っ、いつの間に?!」
僅か数メートルにまで寄られていたとは気が付かなかった。
いや、その前にいつこの娘は空に浮かんだというのか?
どうやって警戒していた筈の女神に近寄れたのか?
「私は普通の女神なんかじゃないよミハリュー。
あなたには観える筈だよ、私が何者なのか・・・」
数メール先の蒼髪の少女が笑いかけてくる。
(追加挿絵 2020年秋挿入)
「な・・・ん・・・だと?!
お前は・・・人間だと・・・いうのか?馬鹿なっ?
あり得ない・・・女神ミハリューを凌ぐ魔砲使いだというのか?」
ミハリューの眼に写るのは、確かに女神の姿。
だが、手を翳し力の骨幹を確かめると人間だと知れる。
「そんな事があり得る筈が無い!
お前はまだ宿したままで闘ったというのか?
前回、私に屈辱を与えた女神を宿したままだというのだな?」
ミハリューの言葉にミハルは首を振った。
「違うよミハリュー。
私は目覚めたんだ、<希望>の力に。
デサイアさんは私となった・・・いいえ。
デサイアさんなんて始めから居なかった。
<希望>は私の分身だった・・・そして今。
私は人である事と神である事・・・その両方を託された。
そう・・・本当の女神として。
人を真理へと導く為に・・・」
ミハリューが絶句する。
目の前に居る娘は自分のバグなんかじゃない。
なぜなら・・・太陽神は自分よりも上位の神だから。
バグなら自分より上位に成れる筈が無いから。
「嘘だ・・・嘘だ嘘だぁっ!
お前なんかがっ、人間なんかが私よりも上位の女神に成れる筈が無いっ!」
狂ったように叫んだミハリューがゼロ距離攻撃を掛けた・・・
((バシュン))
ミハルの右手によってあっけなく打ち消されてしまった。
「あ・・・あああっ?!うわああああぁっ?!」
これでは勝負どころか、大人と子供の喧嘩にしかならない。
殲滅の女神ミハリューは、産まれて初めて。
恐怖というモノを知った・・・
ミハルの力はミハリューを超越していた!
上級女神の力に、殲滅を司るミハリューは畏怖する。
そして女神同志の闘いに決着が・・・
次回 終わる世界 Ep6 殲滅か希望か Part11
君は去り行く者を追わなかった、目的を果せたから・・・
人類消滅まで ・・・ アト 53日





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