第6章 終わる世界 Ep6 殲滅か希望か Part2
ミハリューはユピテルの前に連れ出す。
目覚めたリーンを・・・
遂に審判の記憶が渡されるのか?
全艦隊の半数を裂いて向かわせた筈だった。
だから確信があった。
だから勝利を疑いもしていなかった。
あの娘諸共、消滅させたと。
バリフィスが人間界に降りていたあの国も、消滅出来ると・・・だが。
「「ミハリューよ、そなたの失敗だったようだな」」
バリフィスを連れて来たミハリューにフォログラフィーが告げた。
「失敗・・・だって?
バリフィスを連れて来たのに何が失敗だというのよ?!」
フォログラフィーに向かってミハリューが怒りの声をあげる。
後ろに立つバリフィスの手を掴んだまま。
「「バリフィスの事もそうだが。
そなたが率いて向かわせた艦隊は敗走しようとしているぞ」」
ミハリューの前にあるフォログラフィー電影装置には、黒き影が映っている。
顔かたちは解らないが、両目だけははっきりと赤黒い色でミハリューの事を見詰めていた。
「なんですって?!そんな馬鹿な事が?!」
慌てたミハリューが手を翳すと、モニターが現れて映し出した。
「ばっ・・・馬鹿なっ?!」
叫んでしまった。
ミハリューの前で繰り広げられている戦場の光景を観て。
モニターに映し出されているのは、<神軍>の水上艦隊が次々と撃破されていく姿。
水柱が建つと巡洋艦クラスの艦艇が真っ二つに折れて沈んでいく。
砲火を喰らう戦艦が火の手をあげてのたうち回る。
最早、水上の艦隊には健在な艦は残されてはいないようだった。
「なっ?!何をしているのよっ!なぜ反撃しないのよ!」
一方的に打ちのめされる艦隊に苛立ちを募らせる。
水上の艦隊が打ちのめされている姿に我を忘れていたミハリューがやっと気が付いた。
「ちょっと待ちなさいよ!
アイツだけでどうやったらこんな多数の砲火が撃てるのよ?
確か二段構えの艦隊編成だった筈なのに・・・」
前衛艦隊と主力艦隊に2分した構えで向かわせていた事を思い出したミハリューが、
漸く目にしたモノとは・・・
「そんな・・・アイツ等どうやって・・・どこから?」
小型の水上艦が<神軍>の艦隊に攻撃している様子がモニターに入った。
小型に見える敵艦に有効な反撃を打てない味方水上艦隊に苛立ちを募らせていた時、
気が付いた・・・上空のゴリアテ改級の数が8隻しかない事に。
「18隻のゴリアテを送った筈・・・だったのに?」
前衛として6隻。
後衛の主力艦隊に12隻。
併せて18隻もの大艦隊を送り込んだ筈なのに、今見える残存は8隻までに減っている。
「馬鹿なっ?!人間如きに10隻も倒されたというの?!」
今迄無敵を誇っていた空中戦艦が艦隊を組んで向かった。
それだけでも勝利は間違いないと踏んでいられた。
だが、今目にしているのは・・・無残にも敗走する<無敵艦隊>の光景。
「そんな・・・馬鹿な事が?
あり得ない、こんなことって・・・あり得る筈が無い」
信じられない物を観るような虚ろな目で、ミハリューはモニターを見上げる。
「「ミハリューよ、これが現実というモノなのだ。
人に一度手の内を見せたのなら、同じ手を使うのは愚かな事と知るが良い。
追い詰められた人間がいつまでも同じ手を甘んじているなどとは思わぬ事だ」」
モニターを見上げるミハリューにユピテルが言い放った。
「「それに奴等は人間に味方する道を選んだ。
我等に同意せず、この世界を護る道を歩もうとしておる・・・
彼の堕ち神ルシファーと同じようにな」」
全能の神たるユピテルに反旗を翻す者が現れた事を教えた。
「なっ?!馬鹿なっ!
我らに反旗を翻すなど・・・正気の沙汰とは思えない。
それこそ無駄、そんな事をしても人間を消滅させる審判の時は訪れるというのに!」
ミハリューは神々の中で自分達に反抗する者の愚かさを口走る。
「このバリフィスが告げる人の業をユピテルに差し出せば、
何もかも終わってしまうというのに?
審判が最終兵器の発動を促すデバイスを渡してしまえば、
人は一瞬で滅び去るというのに?」
殲滅を司る女神ミハリューは反旗を翻した一部の神が、その事を知らぬ筈が無いといったのだが。
「「ミハリューよ、あの者達は承知で抗う事に決めたのだろう。
この世界の存続と、人たる者達が変わる事を信じて・・・
東の果てに息づく古来からの神々に望みを託し、
<希望>の女神が救済してくれると信じて・・・」」
ユピテルの影は現れた艦隊に宿った神が、抗う訳を知っているかのように話す。
それは全能の神ならではの言葉なのか。
全てを知る神の言葉だったのか?
「そのような迷い事を思うのなら・・・私が直接滅ぼさねばならない。
人に味方する事が如何に無益で無駄な事かを。
・・・この殲滅の女神ミハリューが消し去ってやらねばならない!」
ユピテルの言葉を遮り、ミハリューが嗤う。
「我等、審判を下す神に逆らう事の無意味さを身を以って知らしめねばならない。
いいわ、私が直接消滅させてやるから。
反乱を起こした報いを人間共と一緒に受けさせてやるわ!」
嘲笑うミハリューがユピテルに言った。
神を宿した艦隊を駆逐してやると。
「「それこそ無駄というモノ。
審判のデバイスを差し出させれば何もかもが終わる。
その娘を分解してでも取り出せば終わるのではないのか?ミハリューよ」」
ユピテルの影が言った。
リーンを破壊してでもデバイスを取り出せと。
「待ちなさいよユピテル。
そんな事をしたらバリフィスは二度と起動出来なくなってしまうわ。
それは最終手段として考えておけばいいのよ。
きっと差し出したくなるから・・・
仲間の消滅を知り、絶望してしまえば・・・ね」
ミハリューは拒んだ。
リーンをユピテルに渡す事を・・・破壊してしまう事に。
「「・・・ならば今一度チャンスを与えよう。
バリフィスからデバイスを強制的に取り出さなくても済むように。
そなたがバリフィスを壊さずとも差し出させられるようにすることだ。
最早時間は迫っておるぞ、よいな?」」
影はリーンに一瞥を投げかけるとミハリューに命じた。
「バリフィスは壊させたりしない!
私の大切な友だったこの娘を喪いたくない!
観てなさいっ、あいつ等を消し去ってみせるから!」
審判の女神を庇って、ユピテルの影に言い放った。
自分の手で殲滅を与えてやると。
逆らう者達を駆逐し、バリフィスのデバイスを取り出すと。
殲滅の女神として・・・友を護る者として。
ユピテルの影が消えた室内で。
「バリフィス・・・目覚めても渡そうとしないのは何故なの?
もう解っている筈よ、私の力には逆らえない事を。
グランでさえ倒せなかった私に・・・人如きが勝てる筈もない事を」
ミハリューはリーンの顔を撫でながら呟く。
「どうして?
あなたはそうまでして人を護ろうとするのよ?
私のバグに期待しても無駄よ。だってオリジナルに勝てる訳がないもの」
虚ろな瞳を向ける金髪の娘は聞いているのか、解っているのか。
唯黙ったまま、ミハリューを見ている。
「殻に閉じこもっていても無駄よ。
ユピテルが言った通り、壊されて取り出されてしまう事になるだけ。
あなたという肉体の中に隠された記憶装置を。
そうなる前に・・・出したらどうなの?バリフィス」
顔を撫でて妥協を求めてくるミハリューの耳に入ったのは。
「ミハル・・・助けて・・・」
呟くバリフィスの声が助けを求めたのは、自分の名では無かった。
ピクリと手を停めたミハリューの眼がバリフィスを睨む。
「そう・・・まだ他の誰かに助けを求めるというのね。
そのミハルとか云う娘に<希望>を託すというのね?
良いわバリフィス、あなたが望むのなら私は消し去ってあげるだけだから。
あなたの<希望>を・・・ミハルとかいう存在を消し去ってやるわ!」
バリフィスから離れたミハリューの手がデバイスロッドを取り出す。
「観ていなさいバリフィス!
あなたの<希望>とやらを粉々に砕いてやるから。
この殲滅の女神ミハリューの手で!」
紅き瞳を憎しみで滾らせた女神の足元に魔法陣が描かれる。
「指揮下のゴリアテに命じる!
私が直接叩きに行くから、転送装置をONにしなさい。
この殲滅のミハリューがそっちに行けるように・・・」
足元に描かれた魔法陣から薄赤い光が舞い上がる。
「バリフィス、あなたは此処で見ているのよ。
人間達が滅びる様を。あなたの<希望>が潰える処を!」
リーンに振り返る事もなく、ミハリューが宣言した。
「そうすればあなたも諦めるしかないわね!
<希望>を無くした後に残るのは・・・絶望だけだから!」
紅い光に包まれたミハリューの姿が消えて行く。
向かうはジェットランド沖の戦場。
有志連合軍艦隊と交戦中の<神軍>残存艦隊の元・・・
ミハリューが居なくなった神の神殿に残されたリーンの瞳がモニターに向けられる。
「ミハル・・・あなたに託してしまった。
あなたに渡した力・・・その中に・・・全てを終わらせてしまう記憶もあるの。
あなたにしか託せなかった審判のデバイスが含まれているの」
呟いたリーンの眼から涙が零れ落ちる。
「きっと・・・ミハリューは気が付く。
あなたを消滅させる事が出来ない事に。
そして・・・あなたこそが<希望>であることに・・・」
涙を零しながら、リーンは祈る。
<希望>が覚醒してくれることを・・・
ミハリューは往く。
それはリーンを護る為にか?
それとも殲滅の女神として人を滅ぼす為になのか?
殲滅の女神ミハリューの力が示されようとしていた・・・
次回 終わる世界 Ep6 殲滅か希望か Part3
君は本当の力を示す女神に畏怖する・・・
人類消滅まで ・・・ アト 61 日





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