魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep4革命Act29狂騒の都 Part3
「ミハル・・・このまま王宮まで行こう。」
市街地に入って、中央政庁付近まで来た時、リーンがミハルに指示を下した。
「はい。王宮に向います。」
サイドカーに座ったリーンは何かを考えているのか、口数が少なかった。
ミハルはそんなリーンがもどかしく、辛くさえ想っていた。
「ねぇ、リーン。善かったね私達二人だけ先に来て。
皆と一緒に戦車で来ていたら、検問所の所為で大分遅くなったでしょうね。」
リーンに話題を振る。
少しでも気を紛わせようと。
「ねぇ、ミハル。
私はまた・・・判断を誤ったのかも知れない。
遅れても皆と一緒に来るべきだったのかも・・・
せめてマモル君も同道させるべきだったのかもしれない。」
ミハルの軽口に意外な返事が返ってきた。
「え?どう言う事なのリーン。」
リーンの口調が重かったのに気付き、弟を連れて来なかった事を後悔している訳を訊く。
「姉弟揃っていれば、何かと都合が良いって事もある筈だから。」
その返事は呟く様に、消え入るように小さく聞えた。
ー何を心配しているのリーン?-
二通目の極秘電を見てから、急にリーンの態度が目に見えて元気がなくなり、
一刻も早く皇都へと向おうと急ぎだしたのだった。
ーあの電報に何か・・・リーンが焦る様な事が伝えられていたっけ?
確か私が読んだのは・・・。-
ミハルが自分も目を通した電文を思い出す。
<発、皇王政務官カスター。宛、第97中隊指揮官フェアリアル・マーガネット。
本文。 皇族内で事後収拾を計りたし。大至急来宮される事を望む。>
ミハルが見た本文には、これといって危急を告げている訳にも思えなかったのだが。
ーなぜだろう。リーンがこの電文を読み終えた途端に顔色が変わった訳は。-
ふと思い出した。
暗号電の末尾に傍受された時の為に、
相手を混乱させる様に一文を加えてある(通例となっている)のだが、その文章は。
<古城の絵画よりも、危険なモノありし。>
変な文章ではあった。
ー古城の絵が危険?どう言う事なの・・・
それよりも危険なモノ・・・って?-
ミハルには解らなかった。
もし、その文をマモルが読んでいたのなら、
リーンの憂いの謎も少しは判ったのかも知れない。
そう。
リーンは気付いたのだ。
ちょうどミハルが闇の中へ堕ち魂を<無>へ堕とされようとしていた時。
ーそう・・・古城の絵画。
カスターもユーリ姉様も教えられたに違いないから。
千年前の物語に出て来た悪魔・・・ルキフェルの話を。
そして私とマモル君は見ていた。
ミコトさんとリイン王女の闘いを。
あの絵に纏わる戦いを。-
リーンの記憶にある悪魔ルキフェルとの闘い。
悪魔との闘いよりも危険なモノとは?
リーンが心ならずも先行しようと焦ったのは、王宮で一体何が起きているのかを知りたいが為。
「ミハル・・・もし・・・もしも王宮の中で何か起きているとしても。
あなたは手を出しては駄目よ。・・・いいわね。」
突然リーンがミハルに話した。
「え?何を言ってるのよ、リーン。
王宮の中で何かが起きるとでも言うの?」
驚いたミハルが問い直す。
「いいわね、ミハル。」
だが、リーンの答えは一方的な命令でしかなかった。
「リーン?ねぇリーン!?」
訳を求めるミハルの前に、王宮が聳え立っていた。
ミハルが運転するバイクが、衛兵達の前で停まった。
「リーンよ。
カスターか、ユーリ姉様に取次いで下さい。」
側車の中から胸のペンダントを出して見せ、自分が皇族である証を証明するリーンに対し、
衛兵が直ちに姿勢を正す。
「只今、お取次ぎ致します。」
衛兵の返事も持たずにリーンが、
「ミハル、正門まで行きましょう。」
有無を言わさずミハルに出させる。
リーンの求めにミハルはアクセルを開けて発進した。
ーリーン・・・どうして?
なぜ・・・教えてくれないの?
なぜ私を遠ざけ様とするの?-
悲しく、寂しい想いがミハルを締め付ける。
バイクを停め、正門に降り立った2人は、王宮殿の中へと向う。
「あっ、リーン皇女殿下。只今、ユーリ王女様がお迎えに参ると・・・。」
政務官秘書官が目ざとくリーンに近寄って来るのを手で止めて、
さっさと中へ歩み出す後を、ミハルは黙って付いてゆく。
階段上の大広間へと向うリーンに、男性が呼びかけた。
「リーン!帰って来てくれたか。
今、ちょうど帰った処なんだ、薬師が。」
その声はリーンを迎えて安堵している様にも聞えた。
「カスター、薬師ですって?何があったのよ?」
カスターを階段上に見付けたリーンが、訳を尋ねながら駆け上がる。
ミハルはその姿を階段下から見上げていた。
「リーン。
落ち着いて聴いてくれ。
いいかい、お父様が・・・皇父様の容態が急に悪化したんだ。
そう・・・終戦の決議を裁可された後に。
一時は絶望的な状態にまで・・・危篤状態にまでなられた程だ。」
カスターがリーンの瞳に訴えかける。
気を確かに持って・・・と。
「な!?何ですって!
どうしてそんな事に。
あれ程体調が善くなっておられたというのに。」
驚くリーンがカスターを掴んで問う。
「解らないんだ。
決議を裁可された瞬間に、突然倒れられたんだ。
何とか息を吹き返されて、今はユーリと共に奥で休まれておられる。
来てくれ、コッチだ。」
カスターがリーンの手を掴んで皇王の元へと、案内しようとする。
一瞬リーンはミハルに視線を移したが、カスターに曳かれたまま奥へと向った。
階段下で二人の姿を見送ったミハルは、敢てその場を動かなかった。
ー危険なモノ・・・か。-
黒い瞳で王宮を見渡すミハル。
ーリーンが何を考え、何を想って私を遠ざけ様としていたのか・・・。
それに手を出すなって言っていた訳が・・・少し解ったよ。-
右手のブレスレットが妖しく光る・・・紅く。
ー闇の波動・・・。
そうだね・・・ルシちゃん・・・。-
俯いたミハルが顔を挙げてリーンが居た大広間を見上げる。
その瞳は、闇を抱いた魔法使いの色。
闇の力を秘めた紅に・・・染まっていた。
カスターに連れられたリーンは我が目を疑う。
この間まで元気な姿を見せていた皇父の変貌ぶりに。
傍で看病しているユーリが告げる。
このまま国王制を存続できるのかと。
自らが継承すべき皇位に、国民が承認してくれるのかと・・・。
次回 狂騒の都 Part4
君も時代の波に翻弄される人間の一人なのだ。





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