魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep4革命Act11心の微笑み 後編
「これが私の闘い方。」
ミハルがそう言ってルシファーを垣間見た。
・・・ミハルは弾が尽き、燃料が底を尽いたマチハで最期の闘いに挑んだ。
その結末を振り払い、願いを継げる為に・・・。
ーそんな・・・後少し・・・なのに。-
ミハルの想いとは関係なく、エンジンが息を付き始めた。
「見ろ、もうエンジンが暴れだした。
約束の刻だ。戻る術を掛けなければ。」
ー戻れなくなる・・・肉体へ。-
ミハルが、毛玉の言葉の後を思う。
「でも・・・後3両を攻撃して貰わないと。」
ミハルが考えていると、
「ミハルっ、もう時間切れだ。
奴等が迫って来た。
早くしなければ、戻るタイミングを失うぞ。」
毛玉の言う通り、残りの3両が反撃しないミハルに向って来ていた。
「奴等はミハルが弾切れか、砲が壊れていると認識した様だ。
3両でゼロ距離射撃を行う気だ。」
「うっ!」
最早、ミハルは風前の灯。
「ねぇ、ルシファー。
肉体へ戻れたとしても、あの3両の弾を受けたら。
・・・死んでしまう事にならない?
3両の弾で破壊された車内で・・・。」
「うっ・・・それは。」
毛玉も気付く。
「余が護る。・・・ミハルの身体を。」
毛玉がなんとかミハルを説得しようと試みるが。
「ありがとうルシファー。・・・優しいのね。」
毛玉は気付く、ミハルは最期まで闘う気なのだと。
「ガソリン運搬車が一両減った・・・後2両だ。
奴等が此方を撃つのが早いか、ミハルが目的を達せられるのが早いか。」
「うん・・・そうだね。でもねルシちゃん・・・・。」
毛玉にミハルが愛称で呼んだ。
「弾が無くても、動ければ闘えるから。」
そう言ったミハルが、近付く3両に振り向き。
「これが私の闘い方。弾が無くても闘う事が出来るって教えてあげる。」
最後の力を振り絞り、最期の燃料を使い果すまでミハルは闘う。
動き出したマチハに驚き、3両の動きが鈍る。
<グオン グオン グオン>
M4の75ミリ弾が前面装甲を撃つ。
瞬時に車体を傾け、装甲厚を有効に使い弾けさせる。
「うわああああっ!」
絶叫と共にミハルは突撃し、一番左端の一両目掛けて体当たりを喰らわす。
車体左前面装甲を使い、M4の側面キャタピラを潰す。
<ガガンッ>
ミハルに体当たりされたM4が震え、左転輪が壊れ、斯座した。
「くっ!次っ!」
ミハルが残り2両に振り返る。
「ローリー車破壊。後一両!」
毛玉が作戦の終了までの数を教える。
ミハルは斯座した車両を盾にして、2両の後方へ回り込んで行く。
「喰らえぇいぃぃっ!」
左足を引き摺りつつも、ミハルが一両の後部へ突っ込む。
<ガバッ ギギギィッ>
体当たりしても押し続けると、M4の後部装甲が破れ、
<バシュウッ>
エンジンから煙が上がった。
「よしっ、最期の一両・・・。」
後退し、M4から離れたミハルが、
残ったM4に突っ込もうとした時。
<ドクンッ>
「あ・・・そ・・・そんな・・・。」
波打つ心臓が息を吐く。
<ドクン・・・ドク・・・>
「う・・・あ・・・最期の・・・一両・・・なのに。」
ミハルの心臓が停まる様に、マチハのエンジンが止まった。
「ミハルっ!ローリー車全滅っ作戦終了だっ!」
毛玉が教えた時には。
「ミハルっ?まさか・・・停まってしまったのか!?」
毛玉の叫びに、身体を固まらせた魂が、心で話し掛けて来た。
「うん・・・エンジンが停まったの。
もう動く事が出来ない。
後はバッテリーが残っている間しか・・・魂を保てない。
・・・ルシちゃん・・・ありがとう。
私の我侭に付き合ってくれて・・・。」
毛玉は眼を剥く。
「馬鹿!ミハルっ、諦めるな!今から術を掛ける。
まだ・・・間に合うぞ!!」
叫ぶ毛玉に、ミハルが首を振った。
「駄目みたい・・・あのM4が、私の身体を噴き飛ばしてしまう・・・から。」
毛玉が振り返って見た先に、5メートルまで近付いたM4が、
その砲を車体側面下部に突きつけてきた。
「そこを狙われたら・・・ちょうど眠っている私の身体に当ってしまう。
いくらルシちゃんが護ってくれても、何発も撃ち込まれたら。
やっぱり噴き跳んでしまう・・・車体諸共。」
ミハルが、覚悟を決めたかの様に話す。
「くっ!でもミハルっ、諦めないのじゃなかったのか!?最後の最期まで!」
「諦めたくはない・・・けど・・・もう・・・。」
毛玉の言葉にミハルが願った。
「ねぇ・・・ルシファー。
最期に・・・観たい。
眼が見える内に、あなたの本当の姿をもう一度見させて・・・。」
ミハルの動かない身体が、ゆっくりと倒れていく。
「ミハル・・・。」
毛玉が声をかける。
「ごめん・・・ルシファー。私・・・もう・・・。」
バッテリーも限界が訪れた。
早くも電源が墜ち様としていた。
「眼が・・・見えなく・・・なって・・・きた。」
倒れながらミハルが呟く様に、消え入る魂の声を吐く。
<フワッ>
倒れるミハルを誰かが抱き留める。
「言っただろう・・・見せたい者があるって。」
抱き留められたミハルが霞む瞳で見上げる。
動かない筈の瞼を辛うじて開けて。
「ああ・・・良く見えない・・・折角ルシファーが・・・・。
私の前に姿を現してくれたのに・・・。
やっと私の事を認めてくれたと言うのに・・・。」
ミハルの瞳に涙が浮かぶ。
「お願いルシファー。私の手を持って・・・。
あなたの顔を・・・唇に手を当てさせて・・・。
あの時と同じ様に・・・。」
「ミハル・・・さあ・・・触れろ。」
ルシファーがミハルの手を自らの唇に当てる。
「ルシファー・・・闇の中であなたの求めを断わり、私は口付けを許さなかった。
それはあなたの事を完全に信じられていなかったから。
でも、今は違う。
・・・私はあなたの求めを受け入れます、ルシファー。」
ルシファーの瞳が大きく開かれる。
「ミハル・・・そなた・・・余の事を信じられると・・・。」
「ル・・・シ・・・ファ・・・ァ。も・・・う・・・私・・・。」
消え往く魂が、抱く者に求める。
M4の砲身が狙いを定めた。
そこはミハルの肉体が眠る処。
「ま・・・た・・・逢え・・・たら・・・い・・・い・・・な。」
ミハルの心が微笑みを伝えた。
「ミ ハ ル ・・・。」
そっとルシファーが、ミハルの微笑んだ瞳を見て呼びかけた。
<グワアアアンッ>
爆発音が戦車を震わせる。
最期の瞬間、ミハルは何を想い何を願ったのか・・・。
爆発音が車内に響き渡る・・・。
次回 報願前編
君の願いは天に聴き遂げられるその想いと共に・・・





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