魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep4革命Act2意見具申
小隊の基地から北方に行った農村で、とある部隊を救った。
そこからこの闘いが始まった。
ミハルが伝説となる戦いが。
第2師団の生き残りと、散りじりになった各部隊が集結を終えた。
長々と続くロッソアの攻撃は、最初の勢いを急激に喪いつつあった。
それはあたかも補給が続かなくなった証でもあるかの様に、
戦車の前進は停まり、歩兵も戦意を失っていくかの様に見えた。
「敵の補給線を断ち切る?出来るのですか?そんな事が。」
リーンが地図を見詰めながら訊く。
「うむ。断ち切るとは言っても、
一度きりの攻撃でロッソアの補給路を遮断出来るとは考えにくいが。」
「やってみなければ解らないと?ドートル中将。」
ミハルが師団長に訊く。
「ああ、少尉。我々の戦力ではヒットアンドアウェイ。
一撃離脱戦法しか執る訳にはいかんのでな。」
ドートルがやつれた顔を顰めた。
エンカウンター北方の寂れた農村。
ここで第97小隊は、味方部隊を救った。
敗残兵を集めた部隊の中に、このドートルが生き残っていたのだ。
「しかし、善くここまで後退出来たものねドートル叔父さん。
あの時、直撃弾を喰らったからてっきりやられたものだとばかり・・・良かった。」
リーンが少しやつれたドートルに微笑む。
「うむ。ワシもてっきり死んだと思ったが。
こうして悪運強く生きておる。そして撤退してきた部隊を集めたのだ。」
ドートルが農村の内外に集まった部隊を教える。
「中将閣下。戦力はどうなっているのですか?
見たところ、ほぼ戦車は壊滅状態なのでは?」
「うむ。少尉の言う通り戦車はあるにはあるが、補給が無い為砲弾が足らん。
最も重要な燃料が底をついておる。
稼働出来るのは数両だけだろう。」
ドートルがミハルに教えた。
とても戦車戦は闘えないと。
「では、叔父さん。兵員数は?何個大隊居ますか?」
「・・・いや、リーン。ほぼ一個大隊も居ないだろう。
善く見繕っても2個中隊あれば良い方だ。」
「・・・そんな人員数で攻撃を掛けるなんて、自殺行為です。」
リーンが最初に聞いた補給線の遮断作戦の事を言う。
「解っておる・・・だが、このチャンスを逃せば何時奴等が補給を済ませ、
攻撃を開始するか解らん。攻撃するには今しかあるまい。」
ドートルが地図を叩いて力説した。
「ですが閣下。戦車も兵員も足りない現状では・・・成功の見込みは?」
「良くて7分3分。勿論成功は3分の方だがね。」
「・・・。敵部隊の規模は?攻撃を掛けて撃退出来るのですか?」
ミハルが訊くと、
「やってみれば解るさ。」
ドートルが肩を竦めて答えた。
ドートルの言葉に、ミハルもリーンも顔を見合わせてため息を吐いた。
「では、どうあっても攻撃を掛けると?」
リーンが結論を求める。
「千載一隅のチャンスなのだ。
ここで補給路を叩いておけば、ロッソアは早々に進撃を停めざるを得ないだろう。
もしかすれば撤退のやむなきを得る。そこが我が国のチャンスになる。」
「チャンス?まだ闘う気なのですか?それより和平の道を・・・。」
リーンが戦争を打ち切るべきだと言う。
だが、ドートルは知っていた。
「リーンよ。お前には言ってなかったが、ロッソアの皇帝は和平には応じないぞ。」
「えっ?それはどう言う事なの?」
「我々の無条件降伏にしか応じないと言う事だ。
それは捕虜を取った時に尋問に答えた者達全てが言っている。」
「そ・・・そんな・・・降伏しなければ和平への道は無いと?」
「それが和平と呼べるのならな。リーンよ。」
ドートルは知っている、全面降伏しかフェアリアには選択技が無いと言う事を。
その道がこの国をどんな過酷な運命を辿らせるかは、リーンもミハルも知っていた。
「最後の最期まで闘うしか残されていないの?
ロッソアはなぜそこまでこの国を破滅に導こうとするの?」
リーンがうな垂れて呟く。
「リーン・・・守ろう。絶対に、このフェアリアを。」
ミハルがそっと肩を掴んで諦めない事を伝える。
「ミハル・・・そうね。それが私達の約束だものね。」
ミハルに頷きそう答え、瞳に力を宿すリーンが、
「3割の成功率を100パーセントにしてみせる。
ミハルと共に闘うのなら、どんな敵にだって負けはしない。」
拳を握り締めて誓った。
2人の魔法騎士を見詰めていたドートルが、眦を決して告げた。
「では魔鋼騎士よ。君達が思う通りに闘ってくれ。
リーン君が指揮を執れ。君が今からこの作戦の指揮官だ。」
ドートルがこの補給路破壊作戦をリーンに委ねる事を命じる。
「解ったわ、ドートル叔父さん。
私の・・・私達の力で作戦を行います。力を貸してください。」
「いいとも、誓おう。リーンの思う通りにすればいい。
魔鋼騎士の力を信じている。」
ドートルは手を差し出し、約束する。
その手を力一杯握り返してリーンも誓う。
「必ず成し遂げてみせるわ。
この国を滅亡から救うって。ミハルと共に私は誓ったのだから。」
リーンがミハルを見てドートルに教えた。
「ああ・・・<双璧の魔女>なのだからな。
頼むこのドートルの願い、この国の民の願いを守ってくれ。」
一師団長の願いは、この国に住む人の願いでもあった。
「はいっ!」
リーンとミハルはその願いを胸に秘め、心を新たに闘いの場へと向かう。
______________
「作戦は・・・無いわ。敵の状況がはっきり掴めない今、
攻撃は場当たり的に変わる。
我々の2両が道を開き、その後に味方を突っ込ませるしかないもの。」
リーンが皆の前で計画を練る。
「そうですね。敵の戦力が掴めていないのに突っ込むのはどうかとは思いますが。」
ラミルが顎に手を添えて考える。
「まあ、知った処でどうにもならない気もしますし。
それに奇襲作戦ですから、場当たり的にもなりますものね。」
ルマもリーンの考えに同意する。
「補給部隊の護衛がそんなに戦力を持っているとは考えにくいし・・・。
いいのではないですか?」
マモルも攻撃に反対しない。
「少し、申し述べていいでしょうか?」
2号車の先任軍曹ミリアが手を挙げて訊いた。
「大尉。かかる作戦において、目標は何ですか?
補給部隊の壊滅を目標にするのでしたら、我々だけでは成し得ません。
歩兵部隊との連携も必要となります。」
そこまで話したミリアが皆を見回して、
「ですが目標を補給物資だけに絞るのであれば話は別です。
誰かが目標を指示する事さえ出来れば、砲撃によってだけで目的は遂げる事が出来るのです。
大尉、聞かせてください。目標はどちらですか?」
真剣な瞳でミリアが訊く。
皆がその瞳に吊られてリーンを見る。
「リーン・・・大尉。
敵部隊の殲滅より、補給物資を失わせる方が戦略的だと思います。
燃料や砲弾がなければ戦闘不能に追い込んだのと同じですから。」
2号車の車長、分隊士のミハルもミリアと同じ意見だった。
「ミリア、ミハル。本作戦の意味はあなた達の言った通りよ。
目標は敵物資の破壊。それが狙い、そこが敵の弱点なのだから。」
リーンが2人の意見を認めた。
「では、突撃計画を見直して頂けますか?」
ミリアがリーンに質す。
「でも、誰が敵の物資の場所を調べるというのよ?
大雑把な位置では砲弾が幾ら有っても足りないわよ?」
そこまで言ったリーンが気付く。
「まさか?ミハル、ミリア。あなた達!?」
その2人はリーンを見て頷いた。
そして2人は姿勢を正し、敬礼を送り、
「2号車車長、ミハル少尉が意見具申します。
我々2号車が敵陣地へ突入。目標を破壊しつつ攻撃目標を指示、
本隊の攻撃を誘導します。」
ミハルとミリアが意を決してリーンに告げる。
「ま、待ちなさいっ!
そんな事をすればいくらミハルが魔鋼騎士だからって、無事で済む訳がない。
それはもう、特攻でしかないわ。認める訳にはいかない。」
リーンが反対する。
「小隊長・・・いえ、リーン指揮官。
私達の他に誰が出来ると思うのです。
徒歩で出向いてもその時その時で変わる位置を走り回って広範囲に調べる事なんて出来ません。
どうしても動き回る必要があるのです。
これはミハル少尉との話し合いで決めた事です。」
ミリアがその訳を話す。
「リーン・・・大尉。
私達は勝たねばなりません。作戦を成功させる為にも。
そしてこの国を護る為にも。」
ミハルが見詰める、指揮官としてのリーンを。
2人の瞳に迫られて、リーンは考える。
ー私は・・・私は今程2両を受け持った事を後悔した事は無い。
ミハルに車長を託した事を悔やむ事は無い。-
リーンは考える。
苦しい選択を強いられて。
「どうして私は少尉のままでいられなかったのだろう。
どうして作戦を引き受けてしまったのだろう。」
ポツリと、リーンが零す。・・・涙を・・・。
「大尉・・・。決断して下さい。」
ミハルが求める。
涙の先にある事を。
「ミハルがどうして一両だけで突っ込む気なのか・・・皆、解っているよね。」
リーンが皆に問い掛ける。
「ミハルは私を・・・私達1号車を守る為に自らを犠牲にしようとしている。
そうなのでしょう?最初から決めていたんでしょう?」
「・・・・。」
ミハルは答えなかった。
「指揮官、お願いします。
車長の、私達の意見を認めてください。
先任搭乗員としてお願いします。」
ミリアがミハルの代弁を言う。
「ミリア・・・あなたまで・・・。」
リーンは更に大きく目を見開き2人を見詰めて口を噤んだ。
ーこれが指揮官と言う物か。
私は指揮を執る者となった。決断を下さなければならない。-
リーンの口がゆっくりと開く。
「必ず・・・いいわね。
必ず生きて戻ると誓いなさい。
絶対に死なないと約束して。
でなければ認めないっ!」
自分の決断に戸惑い、叫んでしまうリーンに、ミハルは微笑んで答えた。
「うん。約束するよ。必ず還って来るからね。」
その微笑の下に、決意を秘めてミハルが教えているのは。
「リーン大尉。全体の指揮をお願いします。
私達が必ず目標を伝えますから。」
「マモル君、砲撃をお願いします。必ず命中させてね。
必ず作戦を成功させてね。」
ミハルとミリアが揃ってお願いする。
「ミハルっ!ミリアっ!」
「少尉っ、軍曹っ!」
「ミハル姉っ、ミリアさんっ!」
「ミハル姉さんっ、約束だよ。必ず還って来て!」
ラミル、パロン、ルマ、マモル。
それぞれが想う事は唯一つ。
「生きて還れっ!」
ミハルの意見を採用したリーン。
その想いは唯一つの願いを生む。
還ってこれるのか、それとも還らぬ人となってしまうのか?
戦場は悲劇を生む。
次回 特攻
君は還らぬ決意の元、諦めない力を欲する者。





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