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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep3破談Act22闇の記憶

思わぬ展開に動揺する闇の者。

やけくそになってミハルの記憶を流し込む。

その時ミハルはどうなるのか?

オゾマシイ記憶に耐えられるのか?

「ふっふっふっ。どう?

 自分の意思通りに身体が動かない気分は!」


ビシッと指を差し、含み笑いを浮かべる。


「くっ、屈辱だ。この様な事になろうとは」


リーンの前で、左目を輝かせて犬のポーズを執っている邪な者が嘆いた。


「それもこれも、お前がミハルを苦しめたのが原因。

 さっさとミハルの中から出て、闇に帰りなさい」


リーンが勝ち誇って命じる。


「ううっ、こんな事になるとは思わなかった」


邪な者が、塞ぎ込む。


「さあ!早くミハルを解放して!」


リーンがぐいと迫って命令する。


「ううっ、こんな事で闇に勝ったと思うなよ。

 この娘に記憶を戻してやる。どれ程苦しむか見ものだ!」


やけっぱちになった邪な者が約束を反故にして、ミハルの中へ記憶を流し込む。


「あっ!やめてっ約束を守りなさいっ!」


リーンが血相を変えて止める。


「あーっはっはっはっ。どうだどうだ!これが闇の中でお前が受けた責め苦だ」


ミハルの中に、闇の記憶が流し込まれる。


「・・・・。・・・?」


別に何も反応が無い。


「・・・?・・・」


リーンも邪な者も、ミハルの反応が全く変わらない事に気付いて。


「ミハル・・・お手」

<ポテ>


「あ?」


リーンがミハルにお手をさせると普通にお手をする。


邪な者が術が失敗したかともう一度繰り返してみるが。


「ミハル・・・・ふせ」

「くぅーん」


普通に伏せのポーズをする。


「こっこれは一体?」


邪な者が混乱する。


「ふっふっふっ。あなたの術は失敗のようね。

 ミハルに記憶を送り込めなかった様ね」


リーンが勝ち誇るように指を差す。


「馬鹿な!?確かに送ってやったのに!?何故だっ?」


動揺する邪な者がミハルの束縛を外す。


「違うよ、リーン・・・記憶はずっとあるの。

 魂が身体へ戻った時から・・・ずっと・・・」


「え?」

「なに?」


リーンと邪な者が同時に驚く。


「ミ、ミハル?魂の記憶があるの?」


リーンが驚きの瞳でミハルに質す。

ミハルはゆっくりと起き上がってリーンを見る。


「ねえ、リーン。昨日の晩・・・憶えているよね・・・私が求めた事を。

 私の・・・私を奪って欲しいと願った事を」


顔を赤くしたミハルが訊く。


「え?う・・・うん」


リーンも思い出して顔を紅くする。


「確かめたかったから。

 自分の身体に自信がなかったから・・・。

 本当にあれは悪い夢の様な物だったんだって、調べたかったから」


リーンに左目を見せ、自分が求めていた理由を教える。


「ミハル?」


その瞳にリーンが求める、その心を。


「やっと解放されてリーンの元へ戻る時。

 あの石が私の中へと溶け込んでくるのが解ったんだ。

 あの人が私と一緒に居たいんだって・・・。

 その時、全ての記憶が戻ったんだ。

 マモルの身替りに闇へ入った時からの記憶が」


ーなっ、何だと?それではそなたは?-


右目の意思がミハルの心に届く。


「うん・・・あなたが私の中に居るのは気付いていた。

 でも、あなたは私を支配し続けようとはしていなかった。

 いえ。

 むしろ私と共に皆と話したり想ったりする事を楽しんでいるのが解った」


ーくっ!それはたまたまそなたの事をもっと知りたかっただけだ!-


邪な者が、ミハルの言葉に抗う。


「そうね、でも。

 昨晩あなたは私の言葉に耳をかしてくれたよね。

 リーンを抱きたいのは私の気持ち。

 リーンに今日だけでもいいからあまえさせて欲しいと言った事に同意してくれた。

 そして邪魔を一度もしてこなかった」


ーう・・・そ・・・それは。-


邪な者が言葉を濁し、ミハルの言った事に抗いはしなかった。

そしてミハルはリーンに教えた。

この邪な者が自分にした事を。


「リーン。この人は・・・私を穢した。

 確かに最初の頃は何度も魂を・・・身体をボロボロにされるまで穢された。

 でも・・・ある時から私を他の者から守ってくれる様になった。

 私が最期の力を振り絞り、マクドナード曹長達を護って闘った後、

 私の魂はもう自分を守るすべを持っていなかった。

 剥き出しになってしまった私の魂に、闇の者達が一斉に襲い掛かろうとした。

 ・・・魂が何の衣装も身に着けてないって意味が判る?

 それは触れられるだけで染められてしまう恐怖。

 まして何も守る術を持たない剥き出しの魂に闇を注ぎ込まれてしまう絶望感。

 そして・・・女の子としての・・・絶望感・・・」


顔を背けてミハルの肩が震える。


挿絵(By みてみん)


「ミハル・・・もういい。言わなくていいから」


リーンがそれ以上言わなくて善いと止めにかかるが、ミハルは続ける。


「あの時、この人が・・・私を抱かなかったら。

 私は本当に堕ちていたと思う。

 ・・・あんなに沢山の闇の者を相手にさせられていたら。

 狂い、堕ちて・・・絶望して、何も感じなくなっていたと思う。

 この人は他の者を一切寄せ付けなかった。

 私を味わう・・・そう言って。

 抗う私を強引に穢す訳でもなく、他の闇を寄せ付けず。

 まるで守るかの様に、私を抱いた。

 やがて私の力が尽き、抗う事も出来なくなった時。

 周りの闇が消え、私はこの人に委ねられた。

 まだ少し魂に心が残っている状態で。

 そして私はこの人に救われる事になった。

 あのまま闇の中に居れば、心が残っている私にどんな惨い事をしようとするかは・・・

 この人は知っていた。

 だから直ぐにタンクに連れて来られた。

 そして解放の時まで何とか<無>にならない様、私に一つだけ願いを残してくれた。

 それは私が居たと言う事を誰かに残したいと、願う事。

 <無>にはなれない願いを残してくれた。

 だから私は今、此処に居られるの。

 この人が居なければ私はもう誰の記憶にも残らない<無>になっていたと想うの・・・」


闇の中で受けた苦痛。

それを意図も簡単にリーンへ教えるミハルに、


「それで・・・ミハルは還る事が出来たの?」

「そう。

 そしてミサトさんの矢で解放された時に首輪に着けていた魔法石が、

 私の中へ入って来るのが解った。

 あの人が私にくれたお守りが、私の中へ入って来るのが・・・

 その時全てを思い出したの。

 その時私を求めているこの人を感じたの」


ミハルは自分の胸に手を押し当てて、リーンに教えた。

闇の中で何があったか、今、自分に憑いているこの邪な者が自分に対して想っている事を。


ーそなた気付いておったのか?何故余をそこまで信じる。

 余はそなたを穢した者なのだぞ -


「でも、私に好意を持ってくれた。<好き>になってくれたのでしょ。

 そしてリーンの事を一番大切に想う私からリーンを奪い去り独占しようと考えたのでしょ?」


ーうっ。そ・・・それは・・・。どうして解る?-


「だって本当の悪魔なら、リーンも私も交渉なんてしないで闇へ連れ込んでしまっている筈だもの。

 私を想うリーンを求めた理由。

 それは私とリーンの想いを確かめ、その絆を砕いて私を自分のモノにしたかったのでしょう?

 昨晩私がリーンに抱いて貰っている間、

 あなたはそれを確かめて嫉妬したの、リーンに。

 私の愛が全てリーンに向けられている事に」


ー自惚れるな。余はそなたと共に居たかっただけだ。

 強く美しいそなたの魂と共に居たいと願うただけだ。

 他の者に邪魔されず、そなたの魂を愛でていたいと願うただけだ -


「ねえ、味わうって言ってたよね。それは私とミハルが愛し合う事でも出来ない?

 あなたと一緒に3人で」


リーンが横からとんでもない事を言った。


「えっ?な、何を言うのリーン?」


慌ててミハルが止めに入る。


「ミハルは少し黙ってなさいっ!お座りっ!」

「くぅーーん」


術を使われているミハルが座り込んだ。


「邪な者。

 ミハルの魂を救ってくれた事は感謝する。

 だけどミハルは誰にも渡さない。

 それが例え恩人だとしても。

 私はミハルと約束したの、ずっと離れないと。

 ずっと一緒に居ると。

 ミハルが少しの間でも居なかった間。

 どれだけ寂しく辛かったか。

 もう、あんな想いはしたくない。

 ミハルを連れ去るというのなら、あなたと闘う。

 例え死んだとしても、私はミハルを守って闘う事を選ぶ」


リーンがネックレスを外し、ミハルの前に寄る。


「これは聖王女の想いでもない。フェアリア皇女リーンの想い。

 私は愛するミハルの為なら死をも恐れはしない。

 だからあなたと勝負するの。ミハルを賭けて」


リーンがミハルを抱き寄せて、邪な者に挑む。


「リーン・・・ありがとう」


嬉し涙を零すミハルに邪な者が告げた。


ーこの勝負、最早余に勝ち目は無い。

 この娘にはリーンの魂しか見えておらぬのだから・・・-


邪な者が、諦めた様に呟いた。


「では、私とリーンの事を認めてくれるのね。」


ミハルが胸の奥に居る者へ問い掛ける。


ー認めるも何も。この絆に入り込める余地などあるまい-


邪な者は遂に諦めた様だが。


「ん?ミハル。邪な者は何と?」


リーンが耳元で確かめようと呟く。


「リーン皇女。そなたの魂を愛でるのはやめにしよう。

 それに、この娘ミハルを独占しようとする事も」


ミハルの口を使って邪な者が言う。


「だが、余はミハルの事が<好き>なのだろう。

 どうしても眼が離せぬ。だから、傍に居させて欲しいのだ」


ミハルの口が願いを言った。

それは既に悪魔とは違う闇の者。


「な、何を言うの?邪な者がミハルと共に居るなんて」


リーンが戸惑って訊き咎める。

でも、当のミハルが言う。


「私をどうしたいの?

 私の事を本当はどう想ってくれているの?それを聴かせて」


ミハルが問う、闇の者に。その本心を。

闇の者に心があると言うのなら。


「余はそなたを・・・<好き>なのだろう。

 そして、そなたに害する者共から護りたいと願った。

 そなたを失う事が辛いと感じている」


リーンが耳を疑った。

最早、この邪な者は人と同じ。

つまりは、闇の住人ではない、闇の力を持つ者というだけ。


「では、もう邪な者とは呼べないわね。

 あなたは何と呼んで欲しいの?

 あなたの名は何て言うのかしら」


リーンが紅く輝く右目を見詰めて、その名を訊く。


「うん。私も他の人が呼んでいるのしか知らないけど。

 高位の悪魔なのは聴こえていたけど・・・。

 本人からは聞かせて貰ってなかったな。

 ねぇ、教えて。私を闇から救ってくれた、その名を」


ミハルが自分の中に居る者に尋ねた。

その者は、ミハルの口を使って、悪魔だった頃の名を告げる。



闇の者はその名を答える。

邪なるその名を。

魂を喰らう悪魔スピリットイーターとしての名を。

その名を聞いたミハルは・・・。

次回 ルシちゃん?

君は邪なる者をも友にする気なのか?

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