魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep3破談Act13神の矢
古来からの因縁を祓った<双璧の魔女>。
助けるべき魂の前に、少女の声が響いた。
<グワアアァンッ>
猛烈な音と煙。
そして、破片。
「うわっ!何事だっ!?」
ミコトが破壊された壁を見る。
「あっ、来たみたいね。」
リインが、ポンと手を打つ。
「ったく。相変わらず・・・滅茶苦茶だな。」
ミコトがため息を一つ吐いてから、
「良く来たな、ミサト。」
自分の妹巫女の名を呼んだ。
二人の前には、6輪装甲車が停まっていた。
「ユーリ皇女を闇から解き放て、その娘の力で!
ユーリが求める友の力で!」
槍を突き当てて、ミコトが命じた。
「はい!姉巫女様。
我が友マジカの力でユーリ皇女を闇から解き放ってみせます!」
少女の声が車内から響いた。
<ボウッ>
6輪装甲車の紋章が輝きを放つ。
砲塔から長い蒼髪を靡かせて、少女が飛び出して来た。
凛々しい顔の少女が言い放つ。
「我が名は美里。帝を護りし、北面の戦巫女にして、闇を討つ者なり!」
ユーリにビシッと指を差して叫ぶ少女の瞳は、
片方が深い緑色、もう片方が金色に輝いていた。
「ほう、ミサト。僅かひと月にも満たないうちに、力を取り戻したのか。」
少女の姿にミコトが感心した。
「はい、姉巫女様。
この寄り代が大した魔法使いなモノでして。助かりました。」
「ふむ。では、そなたの力と、その機械に居る娘とでユーリ皇女の魂を呼び戻せ。」
「御意!」
ミサトは一礼すると、
「マジカ!友を救おう。あなたの恩人を闇から取り戻そう!」
左手をユーリに突き出して叫んだ。
「ええ!リン。ミサトさん!さあ、破魔矢を受け取って。」
車内からマジカの手が伸びる。
「解った!」
ミサトの左手が開かれる。
<パアッ>
その手に光が溢れ、弓が現れる。
「おおっ!ミサトっ、それはっ!」
ミコトが光の弓に驚く。
左手に現れた弓を握り、伸びてきたマジカの手を右手に掴むと、
<ポウッ>
その手が矢と変わる。
「そっ、それは!どうしてミサトがもっているんだ!?」
ミコトが思わず叫んだ。
今、6輪装甲車の上で一人の戦巫女が構えるのは・・・。
「それは御仏様の弓、神の矢。
まさか・・・ミサト、お前はっ!」
ミコトは信じられないモノを見る目で、凛々しい少女を見上げる。
「姉巫女様、今言ったでしょう。
この娘が大した魔法使いだと。
そうなのです、私はこの娘と旅をして逆に力を貰ったのです。
御仏様に・・・神様に。尊い犠牲を払って。」
<ビシャアアァァッ>
ミサトの上に魔法陣が現れる。
「う・・・嘘だろ・・・おい・・・。」
ミコトの腰が退ける。
「ミコト!?あれは何?」
リインも驚いて訊いて来る。
「あ・・・あれは・・・御仏様の弓、神の矢・・・。」
震える声で、ミコトが呟く。
「御仏の弓?神の矢?」
リインが拡大してゆく魔法陣を見上げて訊く。
「そう・・・リイン。あれは・・・・。」
2人の聖魔女の前で極大魔法陣が完成する。
凛々しく構えた少女が矢を放つ。
「破邪の矢だっ!」
ユーリに光の矢が飛ぶ。
「私もこの眼で見るのは初めてだ。
・・あのミサトが天から授かったとは・・・。」
驚愕の力。
それは闇を砕く破魔矢。
<バシュッ>
光の弓が、ユーリを撃ち抜く。
<ボッ>
身体から黒い闇だけが噴き飛んだ。
ミサトは弓を放ったままの格好で、車上に佇んでいる。
「マジカ・・・出番だよ。
ユーリ皇女を救うのは、あなたの役目。
私は闇を祓う事しか出来ないのだから。」
ミサトは弓を消し、車内に教える。
最早、ユーリから闇は取り除いたと。
「ええ、リン。ありがとう、私が行くわ。」
その声と共に、キューポラからドレスを着たマジカが、ユーリの元へ跳んだ。
そう、飛んだのだ、足を伸ばして。
「ユーリ、聴こえる?ユーリ!?」
マジカが眼を見開き、立ち尽くしているユーリに呼びかける。
「ユーリ!私だよ!マジカだよ!」
ユーリを抱き寄せ、必死に気付かせようとする。
「ユーリ!どうして戻らないの?
あなたの魂はこの身体に居なくては駄目なのよ!
私が死んでも護ろうとした魂は、ここに居なければいけないのっ!」
マジカが叫ぶ。
大切な人を想う魂と共に。
そして、
「ユーリ、待ってて。今、連れ戻してあげる。」
マジカの身体が消えてゆく。
「なっ!何だと?この娘は一体?」
ミコトがミサトに訊く。
「魂・・・そう。マジカは元々魂だけの存在。
この戦車がマジカの身体。彼女はやっと身体を実体化する技を身に着けた。」
「な・・・なんだと?ミサト・・・お前達は一体何を見てきたのだ?
何を行おうとしているのだ?」
驚くミコトに妹巫女が言った。
「ミコト姉様。私もこの娘もマジカも・・・。そしてランネも。
願いは一つ、あるべき姿に戻りたいだけ・・・。」
悲しそうに顔を伏せてミサトが教えた。
「ユーリ!?どうしたのよ?私よ、マジカよ。迎えに来たの。」
魂が、魂に呼びかける。
そこは暗くは無い。
むしろ光が溢れている。
「マジカ・・・来てくれてありがとう。でも、戻れない・・・とても戻れない。」
ユーリの魂は迷い苦しんでいた。
「何故?闇は祓われたのに?何を苦しんでいるの?」
優しいマジカが、そっと寄り添う。
「私・・・大変な事をしてしまった。
私は友を苦しめた。妹を守ってくれている苦しめ堕とし、穢してしまった。
そしてなにより闇へ堕ちてしまった事が・・・自分が許せない。」
ユーリの魂が塞ぎ込む。
「ねぇユーリ。どうして闇に堕ちてしまったの?
どうして穢されてしまったの?」
マジカはユーリの背中に自分の背を付けて訊く。
「堕ちた理由?それはこの国がロッソアに負けてしまうと想ったから。
あの古城の絵を見ていると、何もかもが絶望に包まれていく気がして・・・。」
ユーリが膝を抱えて知らせる。
「そう、ユーリはこの国が滅ぶと思っているの?」
「思いたくない・・・。
だけど、観る物全てが絶望を呼んでくる。
どうあがいてもロッソアには勝てっこない・・・そう思ってしまうの。」
「ふうん。ユーリは昔っから心配性だもんね。」
マジカがため息を吐いて言った。
「え?」
ピクンと身体を震わせてユーリが振り向くと。
「この傷・・・私がユーリを庇い切れずに受けた傷だよね。
あの時もそうだった。
私なんてほっとけばいいのに、血だらけの背中なんて気にも掛けず・・・
私を呼んでいたもの・・・。」
「そう・・・だったっけ?」
ユーリがポツリと呟く。
「そうだよ。
ユーリはいつも自分の事より他人の事を想うんだから。
どうしてもっと自分の事を大事にしないの?
どうして大切な事を忘れてしまうの?」
マジカが振り返りユーリの肩を抱く。
「ユーリは忘れンボさんだよ。
皆の想いを忘れるなんて。
皆の願いを忘れるなんて!」
「皆・・・それは?」
ユーリが呟く。
「私。そして妹姫、カスター、皇王様・・・。」
マジカが連ね続ける。
「そうだねマジカ。
私は忘れんぼで、弱虫で・・・どうしようもない臆病者。」
ユーリが下を向いたまま答える。
「違う!ユーリは臆病者なんかじゃないっ!
ユーリは優し過ぎるだけ!他人の事ばかりに気苦労しているだけなのっ!」
マジカがユーリを自分に向けて、
「いい加減、目を醒ましてユーリ!
あなたは大切な人達に守られてきた事を忘れているだけ。
その大切な人を守る為にも戻らなければいけないの!」
魂の叫びがユーリの魂を呼び覚ます。
「マジカ・・・私は・・・。」
「ユーリ、あなたは誰に気付かされたの?
闇の中でたった一人、私の事を思い出してくれた。
だから私は入ってこれたんだよ。
闇の中で私の事を教えてくれたのは誰?」
マジカの声が、ユーリを気付かせる。
「あああっ、私・・・私は・・・。」
身体を震わせたユーリをマジカが抱締める。
「大丈夫。大丈夫よユーリ。
その人は今、何処に居るの?一緒に助けに行こう?」
「あああっマジカ!大変だわ。
きっと現実世界で私はとんでもない事を許してしまっている。
止めなければ!」
「そうよユーリ。行こう助けに。」
マジカがユーリを立ち上がらせる。
「うん、マジカ。友の元へ。
私を闇から救おうとしてくれた娘の元へ。
ミハルの魂の元へ!」
2人の白き穢れ無き魂が、あるべき姿へ戻って行った。
ユーリの魂は救われた。
漸く闇から解放されたユーリの元に、マジカが求める。
友を救う為、その魂を闇から救わんが為。
さあ!急ぐのだ!友のピンチに間に合わす為!
神の矢で、闇を斬り祓え!
次回 帰還(前編)
闇の中から友の魂を救い出せ!間に合うのか!いや、間に合わせろっ!
行けっ戦巫女ミサト!救いを求める魂の元へ!





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