魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep2姉弟Act49闇の呪い
<カシュッ>
ハッチの内鍵が開いた音がする。
ミハルはノブを引いてハッチを開けて、
「マモルッ!」
中へ向って大きく呼びかけた。
「大丈夫っ?怪我はしていない?」
中を覗き込むと気を失っているマモルの姿が見えた。
「マっ、マモルっ!?」
中に飛び込みマモルを抱き寄せて、
「しっかりっ!目を開いて!」
呼びかけたミハルの心に聖巫女の声が流れ込んだ。
ーミハル・・・大丈夫だ。マモルは今、私の力で眠りについている。-
「えっ!?ミコトさん、それはどう言う訳で?どうしてっ?」
驚くミハルにミコトが続ける。
ーいいかミハル、善く聴け。
マモルは闇に魂を奪われているのだ。呪われてしまっているのだ。
マモルを闇から取り戻したいと思うか?-
「ミコトさん?言っている意味が解りません。」
ミハルがマモルの顔を見て首を振る。
「マモルが闇に奪われてるなんて信じられない。だってマモルは此処にいるもの。」
ーミハル。このままマモルを起こしてしまえば、
マモルはお前を殺そうとする。
リインを殺そうとするだろう。
そんな事をさせる訳にはいかんのだ。-
ミコトの魂がミハルを言い聞かせようと説明する。
ーいいか、ミハル。マモルの魂をこの呪から救う方法は唯一つ。
それはマモルの身替りを立てることしかないのだ。
マモルの力と同等の魔力を持つ者を身替りとして交替させるしか解く事は出来ない。
・・・私の言った意味が解るか?
私の求めている事がお前には解るだろう?-
ミハルはミコトの欲する答えが瞬時に解った。
「私がマモルの身替りとなれば・・・。
そうすればマモルは闇から解き放たれるのですね?」
ーしかり・・・。-
ミコトの魂がマモルの身体を抱くミハルに向けて告げた。
ー弟を救いたければ、お前が闇の中へ入らねばならぬ。
だが、マモルもそうだが奴等が何を考えてこの様な呪いを掛けたのかは解らぬ。
これが巧妙な罠とも限らぬ。
心して掛からねばお前もマモルも2人供還らぬ魂と成り果てる恐れがある。
それでも呪いを解いてやるか?ミハル。-
ミコトの警告にもミハルは屈せず即座に答えた。
「マモルが闇から救われるのであれば。
マモルが目を開いてくれるのであれば。
私は何も迷いません。
私が身替りとなればマモルを救う事が出来るのなら喜んでなります。
だって、私はマモルを救う為に此処まで来たのですから。」
身替りになる事で弟を救えるのならと、ミハルは覚悟を決めてミコトに言った。
ー我が継承者ミハル。闇に囚われれば2度と戻れぬかもしれん。
それでも身替りとなる覚悟が出来ると言うのか?
2度とリーンの元へ戻れぬ覚悟が出来ると言うのか、お前は・・・。-
ミコトが警告する。
魂を奪われた者がどんな事になるのかを知りつつ。
「いいえ、ミコトさん。私は必ずリーンの元へ帰ってみせます闇を打ち破って。
決して諦めたりしません。だって約束したのですからリーンと。
2人でこの国を守るって。2人で幸せな未来へ歩もうって・・・。
だから私は必ず帰ってきます。帰ってみせます。
マモルとリーンの元へと。」
ミハルの瞳は澄み切って迷いが無かった。
ーそうか・・・ならばもう何も言うまい。
我が継承者はこれよりマモルが引き継ぐ事となる。
私の全ての能力がこのマモルと共にリインを守り、この国を守る事となる。
それで善いのだな、ミハルよ。-
瞳を妖しく輝かせたミコトの姿が宝珠の中へ戻った。
「はい・・・。マモルの事、リーンの事、そしてフェアリアの事をお願いします。」
宝珠に決別の言葉を掛けたミハルが宝珠を外してマモルの右手に填める。
「マモル・・・お姉ちゃんが替りに闇へ囚われてあげるから。
きっと帰ってくるから・・・それまで待っててね。
私は諦めないから・・・諦めたりしないからね。」
そっと宝珠を譲り渡したミハルに、
ー<双璧の魔女>の継承者ミハル。覚悟はいいのだな。-
軽戦車から女性の声が直接ミハルの心に響く。
「その声は・・・この軽戦車の人。あなたは何処に居るのです?」
ミハルが車内を見回して訊く。
ーああ、君のおかげで間も無く天国へ旅立つ事が出来る。
一言礼が言いたかったのだ。私を闇から解放してくれて。
友と再び逢える様にしてくれて。・・・ありがとう、そして、頑張れ。-
マリーベルの魂がミハルに礼を言った。
ーあなたは私達の因果を断ってくれた。
闇から救ってくれた。その恩人に何もしてあげられないのが心苦しい。
・・・が、あなたなら必ず闇から抜け出せる筈だ。
諦めない限り・・・この聖巫女が力を取り戻せれば必ず闇自体を打ち破ってくれる。
その時まで魂を穢されない様に務めるのだ。
いいな、決して諦めない事だ。-
剣士マリーの魂が教える。
ミコトが狙った本当の訳を。
身替りを求めたその理由を。
「そうなのですね。
ミコトさんはマモルの中にある槍を取り戻す為に・・・
私を身替りになる事を求めたのですね。」
ーそうだ・・・。そうなのだろう、聖巫女。解っていたよ。
お前の瞳が妖しく輝いていたのを。
闇と闘う為には、お前の力を全て取り戻す必要があったのを。
聖王女と共に闇を打ち破る為にはどうしても槍が必要なのだろう?-
剣士マリーが、ミコトがどうしてミハルを危険に晒してでもマモルを解放させたかったのかを教えた。
ー剣士マリー。私は私の力を取り戻し、
私の愛する者と共に1000年前にやり残してしまった闘いに決着を着けるだけだ。
それがミハルを救う事になるとは限らない。
だが、この姉弟は私の継承者。見捨てるつもりは端から無い。-
ー口下手な聖巫女だな。相変わらず・・・。-
剣士マリーが苦笑いをし、ミハルに告げる。
ーミハルと申す者よ。闇に囚われたとしても屈せず抗え。決して諦めぬと誓え。-
これより天国へと向かう魂達がミハルに迫る。
闇に負けぬ魂となる事を。
自分達と同じ様に必ず闇から抜け出し、自らが居るべき処へ戻って来ると誓えと。
「はい。必ず帰ってきます。諦めたりしません。
どんなに辛くても苦しくても・・・闇になんか負けませんから。」
瞳は力強くそして輝きを増して、その場に居る全ての魂に誓った。
ーそれで良い。これは我々とだけではない。お前と弟との約束。
愛すべき者達全員との約束だと、心しておけ。-
「はい。」
大きく頷いたミハルに、
ー暫く待つ。その間に暇乞いをしておくことだ。
心にしっかりと焼き付けておけ。-
ミコトが別れの時間を与え、宝珠の中へ宿った。
「マモル・・・。」
瞳を閉じたままのマモルの顔を懐かしそうに見詰めたミハルがそっとその身体を抱締め、
「やっと逢えたのに・・・やっと話せると思ったのに。
・・・でもね、お姉ちゃんが助けてあげるから。
マモルを闇から救えるのなら、どんな辛さや苦しい事だって耐えてみせるよ。
だって今迄もずっと耐えてこれたんだから。
何度も死ぬ程辛い想いをしても耐えられたのだから。
だから、あの約束を守るからね。
あなたの元へ必ず還ってみせるから。
それまで待っててね、マモル。」
瞳から溢れる涙を拭こうともせず、ミハルはマモルを抱締める。
「マモル・・・私ね、大切な人が居るんだ。とても大切な人が。
愛してくれている人が。その人にお別れを言うね。」
ミハルはリーンに逢う事をせず、心の中で別れを告げるに留めた。
顔を見てしまえば、リーンに話してしまえばきっと無理矢理にでも止めるに決まっているから。
「リーン。私・・・暫く逢えなくなっちゃうの。ごめんなさい。
でもきっと還ってくるから。心配しないで・・・
あはは・・・無理かな。
リーンの事だから何とか私を連れ戻そうとしてくれるよね。
私の事でリーンに迷惑をかけちゃうけど許してね。
そして・・・また逢う事が出来る時まで・・・さようなら。
私の愛するリーン。」
頬を止めどなく涙が流れ落ちる。
ーいいのか・・・会わなくても。-
ミコトが最期の別れを勧めるが。
「はい。逢うと別れられなくなりそうで・・・。これでいいのです。」
漸く涙を拭いたミハルが答えた。
ーそうか・・・それもいいだろう。ミハルらしくて・・・。-
では、魂を入れ替える・・・いいな!-
宝珠の中でミコトが儀式を始めんとした。
「あっ、もう一つだけ。これをマモルに・・・。」
左の髪に着けていた母の形見を外し、
マモルの手に握らせたミハルがふっと息を吐く。
「これでもう大丈夫です。マモルの事を母さんが守ってくれますから。」
微笑んだミハルに何も言えずミコトは暫く術を放つのを忘れた。
ー・・・。-
その間ミハルは微笑んだままマモルを見詰め心に想った。
ーりーン。もし還れなかったとしたら。
私が私で無くなったとしたらリーンはどうするの?
ずっと私を待ち続けているの?
誰とも愛を交わすことも無く?
私はリーンを縛り付けてしまうの?
そんなの駄目。そんなのいけないよ。
だったら私はいっそ姿を変えてしまいたい。
今の姿のままではなく、何も知らなかった幼い日の姿に還って出会い直したい。
リーンに・・・みんなに・・・・マモルに。-
ミハルが心に願った求めは術となる。
まだ魔法力がある身体へと放った最期の術となる。
ーミハル!さらばだっ必ず救い出してやるからなっ!!-
ミコトが術を放つ瞬間、ミハルに叫んだ。
碧き輝きが闇の中へ入る。
闇の中より、一人の魂があるべき処へと戻る。
そして、ミハルの周りに赤黒く渦巻く霧が現れ、魂を束縛した。
邪な呪いはその魂の交換に同意した・・・。
弟を救う為、ミハルは自ら身替りとなって闇に囚われてしまう。
ミハルはこの後一体どうなるのか?
魂は闇に呑み込まれて穢されてしまうのか?
主人公が居ないだなんて・・・。
こうなれば・・・やるしかない!
「ミハル幼女化計画」始動!
次回 エピロローグ(Ep2姉弟最終回に添えて。)
君は自らに掛けた呪文に縛られるのか?





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