魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep2姉弟Act47走り回れ!撃て!すっころべ!?
宿敵との闘いは最終局面を迎えた。
ミハルの作戦は上手くいくのか?
その前に・・・大丈夫なの?
[突っ込んで来たと思ったら急に回り込もうとするのか?何か企んでやがるな]
マリーがロナに目配せする。
[そうは問屋が卸しません。スピードは此方が上です。後を取るチャンスです]
ロナがマヘトの後を取る為に追いかけ始めた。
「撃つか?マリー」
マモルが射撃の許可を求めてくる。
[いや、砲手。私が撃てと言うまで発砲するな]
「解った」
マリーは射撃を命じず、待機するように言った。
[以外とすばしっこいですね。重戦車のくせに]
ロナがなかなか追いつけないマヘトを睨んで、
[この距離なら後部を撃ち抜けないですか?
エンジンにダメージを負わせられたら、
いくら修復魔法を使っても間に合わないと思うのですが?]
マリーに射撃する事を勧めた。
[うん、ロナ。私もそう思ったんだが・・・
奴の狙いが何なのか解らんのでな。
少し追いかけっこに付き合ってやろうと思ったんだ]
[ふむ。これが奴の罠だと?]
マリーもロナも見張るの考えが解らず暫く様子を見る事にした。
「おいおい。あいつら何鬼ゴッコしてるんだ?」
「さっきまでは、撃ち合っていたのに。今度は走り回るだけかよ?!」
両軍のギャラリーが、2両の闘いに文句を言う。
「奴等には奴等なりの考えがあるんだろう」
その中の一人、ドートル師団長は2両のダンスを見て、
先程までの殺伐とした闘いと全く違う事に、感づいていた。
「殺し合うだけが決闘ではない・・・そう教えてくれているのかもナ。彼女達は・・・」
ドートルはこの闘いの結末がどうあれ、これこそが古来からの因果の終末点である事が解っていた。
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ぐるぐるぐる・・・・
追いかけっこは続く。
半径50メートル程の円を描いて2両はお互いの後部を狙おうと走り続けている。
「おい、まだかミハル。もう10分位はこうしているぞ?」
ラミルがいい加減痺れを切らして訊いて来る。
「ラミルさんがそう思う位なのですから、彼女もきっとそう考えているのでしょうね」
ミハルは照準器の中で側面を向けて走り続けている軽戦車を見ながら返事する。
ー いい場所を見つけたんだから。もう少し、焦らしてみよう!
照準器の中に写る軽戦車。
撃とうと思えば撃つ事は出来る。
だが、タイミングをずらすと、
「ねえミハル。どうしてこんな場所に来たのよ。
これではあの岩が邪魔になって側面を狙いにくいでしょう?」
ぐるぐる回る2両の真ん中には、少し小高い岩が転がっていた。
ちょうど車体を狙って撃つには邪魔になる位の高さで、射撃の邪魔になる事は間違いない。
「んー、あの岩の事?あれがあるからこそ、此処へ来たんだよリーン」
ミハルがワザとこの場所を選んだと教える。
「まあ、ちょうど真ん中にあるから奴も射撃出来ないだろうけど、あの岩が重要なの?」
リーンがキューポラから岩を見て訊く。
「うん。その内解るから!」
相変わらず、その岩を中心にしてマヘトと軽戦車は、走り続けている。
「もうそろそろ痺れを切らすかな・・・」
ミハルは、軽戦車がスピードを上げたのに気付いて呟いた。
[いつまでこうしているつもりだ・・・。
おいっロナ、もう勝負に出よう。スピードを上げて後を取ろう!]
遂にマリーが痺れを切らしてロナに命じた。
[そうですね、もう10分位こうしているだけなのですから。スピードを上げます!]
ロナも合点し、スピードを増した。
こちらがスピードを上げたというのに重戦車は相変わらずの速さで走っている。
[うーん、スピードを上げる事もせず、只、砲塔を此方に向け続けているだけか。
何を考えてたがるんだ?]
マリーの眼に徐々に近寄って来る重戦車の後部が写った。
[よしっ、射撃用意!目標後部エンジンルーム!]
マリーがマモルに射撃目標を伝える。
[マリー、距離20メートル!]
ぐんぐん近寄った軽戦車の砲身がマヘトの後部を捉えていた。
「今です、右反転90度!岩に向って突撃!」
ミハルの叫びにラミルが応じる。
<ガオオンッ ギュイイィンッ>
ほぼゼロ距離射撃を受けたが、急反転を行った為に、弾が角度の着いた側面装甲に弾かれてしまった。
「よしっ、ギリギリセーフ。弾きました。
そのまま全速で岩に体当たりしてください!」
「いっ、岩に体当たり?正気かミハル?」
ラミルが驚いて訊き返してくる。
「はい。左でも右でもいいですから転輪をぶつけるつもりで体当たりしてください。
全速力で岩に乗り上げてください!」
ミハルが指示を飛ばす。
「乗り上げるって言ったって・・・そうか!それじゃあ左をぶつけるからな!」
振り返ったラミルがミハルを見ると、照準器を睨みトリガーに指を掛けたミハルの姿があった。
[くそっ!なんてタイミングで方向転換しやがるんだ!]
第1射を弾かれたマリーが慌てる。
[マリーベル、追いかけますっ!]
ロナが逃げるマヘトに追い縋ろうとする。
[ああ、ロナ。追っかけろ!]
こちらも急ターンを掛けて引き離された重戦車へ迫る。
[こうなりゃ撃っても外れようがない距離まで詰めろ!]
[はい。マリーベル!]
2人の魂はその時笑っていたのかもしれない。
生きていた時に味わった事もない戦い方に。
命のやり取りではない闘いに。
そして・・・
[もう目の前です!撃ちますか?]
ロナが叫ぶ。
[よしっ。撃て!]
マリーがマモルに命じた時!
「ラミルさんっ、そのまま突っ込んで!」
「了解!」
砲身を限界ギリギリ迄下げたミハルの瞳に岩が写る。
ー よしっ、今だっ!
((チッ))
指が狙い澄ました一撃を放つ。
((グワラランッ))
発砲と同時に着弾、そして。
(( ガッ ガガッガーンッ ))
左転輪がミハルの打ち砕いた岩に乗り上げる。
((フワッ))
スピードの乗っている車体が勢いで大きく傾き、
まるで片輪走行を行っているかのように、左側が宙に浮いた。
((ビュッ))
その傾いた車体下を砲弾が擦り抜けて行った。
片側に浮いた車体は大きくスピードを殺した。
その後方を追従して来た軽戦車が追突するのを回避する為、
前方で急に車体を浮かした重戦車の下を通り抜けようとした。
((バッガーーンッ))
その瞬間、今度は上空高く仰角を着けたマヘトが発砲した。
マモルが発射する瞬間、それは起きた。
((グワララランッ))
直前を走る重戦車が発砲したのだ。
此方にではなく、進行方向へ向って。
[なっ?なにっ!?]
理解不能の射撃音を聴いた直後。
((ガオオオムッ))
マモルが撃った。
何も無い空間へ・・・
[馬鹿な・・・うそだろ・・・おい]
[こんな事って・・・]
マリーもロナも共に信じ難い光景を目にして呆けてしまう。
目の前で一瞬前まで平衡を保って走っていた重戦車の姿が瞬間に斜めになった。
外し様がないと思った一撃は何もない空間を抜け、在らぬ所へ着弾する。
そして、
[ロナ!危ないっぶつかるぞ!]
[間に合わないっ!このまま擦り抜けますっ!]
目の前にある重戦車に追突するのを避けようとしたが、
とても間に合わないと判断したマリーとロナが、逆にスピードを上げる。
その速力を維持したまま重戦車の下を擦り抜け様とした時。
((バッガーーンッ))
重戦車の発砲音が頭上から響き渡った。
マリー達の乗る軽戦車はマヘトを擦り抜けようと試みるが・・・。
結末は如何に?
次回 宿命の終わりと新たな始まり
君はその結末を微笑みと共に迎えられるのか?





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