魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep2姉弟Act42碧き瞳の砲手
「ミハル姉!敵の砲塔がこっちへ向けられるっ!」
ーえっ!?-
照準器に写った軽戦車の砲塔がゆっくりだが、此方へ向けられてくる。
「しまった!奴は停止中なら砲塔を旋回する事が出来たのか!」
リーンの叫びとミハルがもう一度軽戦車の側面下部へ射撃するのとが、同時だった。
<グオオムッ>
<グオーンッ>
マヘトと暗黒魔鋼騎が、同時に射撃する。
<バガンッ>
<ガッ ギュラララッ>
そして、同時に被弾した。
「くそっ!左舷のキャタピラを斬られた!」
車体が左舷へ振り回されて、キャタピラが壊された事が解った。
ーあと少しだったのに・・・。
暗黒魔鋼騎は、キャタピラを直して再び攻撃を加えてくるというのに・・・。
私達はまた、動けなくされてしまった・・・。-
ミハルは瞳を曇らせて、キャタピラを再び直しに掛かる敵を見て思った。
「ミハルっ!何をボーっとしているのっ!ここから撃てない?」
リーンの叫びで我に返り、薄赤い光点を見詰めるが、
倍率を最大に上げてもその位置は、はっきりと狙える程正確ではなかった。
「駄目っ、まだ正確な位置が解らない。
もっと近寄らなくては。」
キューポラに振り返り、ミハルが叫ぶ。
「そう!なら近寄りましょう。キャタピラを直して!」
リーンがミハルを見て呼びかける。
「えっ?直すって。今外に出るのは危険だよ。」
ミハルがリーンに答えると、
「ミハルっ!あなたの治癒魔法で、このマヘトを治せない?あいつみたいに直せない?」
リーンは戦車のキャタピラを、足回りを直せとミハルに迫る。
「私の魔法で・・・足回りを?
・・・・解った、やってみる!」
ミハルはリーンに求められたまま、母の髪飾りを握り締めて呪文を唱える。
ーお母さん・・・力を貸して。私にマモルを救う力を貸して!-
魔法の力はミハルの髪飾りを碧く輝かせる。
ゆらりと動き出す切られたキャタピラ。
繋がるキャタピラ。
その力はロナの力を上回る。
[なんだと!奴も直すというのか!?
直せるというのか!ロナの力と同じ魔法力を持っているというのか!]
マリーの魂が、驚きの声を挙げる。
左のキャタピラがみるみる繋がっていくのを見たマリーが、
口元を歪めて呟いた。
[くっくっくっ、オモシロい・・・実に面白い。
これこそ私が望んだ闘いだ。
古来の魔女の闘いと同じにナ。]
ほぼ同時に足回りを直し終わった2両が動き出す。
[さあ!パーティの時間だ!
とっておきのダンスを踊ろうか<双璧の魔女>よ!]
マリーの魂が闘いに心を躍らせる。
その魂は少しだけ闇を祓って赤く輝いていた。
「ミハルっ!奴に接近するぞ。出来るだけ射撃を加えてくれ!」
ラミルが接近を図る。
「はいっ!少しでも足を停めさせる様に射撃します。」
素早く立ち回る暗黒魔鋼騎もマヘトの隙を探り、
側面に廻り込もうと機動してくる。
「どちらも前回と違う。それは車両も戦法も・・・。」
リーンが呟く。
ー敵は私達を撃滅するのが最終目的。
私達は車両内に居るミハルの弟を救出する事が最終目標。それには・・・。-
リーンが決心する。
「ミハルっ!足回りじゃなくて、砲を狙いなさい。射撃出来なくして!」
「えっ!それじゃあ、いくらミコトさんが守ってくれていても・・・
マモルに当る危険が・・・。」
驚いたミハルがリーンを見る。
ミハルの瞳をじっと見たリーンが、
「ミハルの今迄の中で、最高の射撃を見せて。
奴の砲口を狙って撃って!
あなたになら出来る筈よ。
あなたにしか出来ない事よ!」
リーンが砲を狙えと言った意味は言葉通り、砲の破壊。
一時的に砲を撃てなくする事。
暗黒魔鋼騎の砲身は、90ミリ口径。
此方は127ミリ。
砲口に当っても砲身の中までは入らない。
そう。
まるで入り口に大きな石で蓋をする様な物。
そんな考えようも無い事をリーンはミハルに求めたのだ。
ー砲に蓋をしろと言うんだね。リーンは・・・。-
無理だとは言えなかった。
無茶だとは想いたくなかった。
ーやってみせよう。私の全集中力を注ぎ込んで。-
ミハルはリーンの瞳に応える。
大きく頷くと、照準器に向き直った。
「ミハル先輩!センパイなら出来ますっ!」
ミリアが後押しする。
「ミハル姉!大丈夫だからっ!」
ルマが指を立てて応援する。
「停車するか?それとも、このまま突っ込むのか?」
ラミルは射撃に必要なタイミングを訊く。
「ラミルさん。このまま接近して下さい。
私は、私の想う時に撃ちますから。」
冷静な声で、ミハルが答える。
「そうか。じゃあミハルに任せる。私は私の腕に賭けるからな。」
ラミルは操縦桿を握り直しアクセルを踏んだ。
ーミハル・・・これまで幾度と無くピンポイント射撃をしてきたよね。
何度も私達を救ってくれたよね。
さあ、今度はあなた自身の為に撃ちなさい。
あなたが守るべき想いを果たす為に。-
リーンは砲手席に座る[碧き瞳の砲手]に告げる。
「さあ!撃ちなさい。
[碧き瞳の砲手 ミハル]!
あなたの想いと願いを叶える為に!」
ミハルの指がトリガーを引き絞る!
魔法力を振り絞った一撃は奇跡を産む事が出来るのか?
次回 魂の回帰
君の力は奇跡を起こす。その魔法は魂へと届く





夏休みのオトモ企画 検索ページ