魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep2姉弟Act39後退セヨ
ルマが司令部を呼び出す。
「返答は出来ない。以上だ。」
相手の無線手が返事を返してくる。
ルマはキューポラのリーンを見上げて、困った顔を向ける。
「あなたでは話にならない。直属上官に代わりなさい。」
リーンがマイクロフォンを押して相手に直接命じた。
「誰だ、貴様は?」
相手の無線手が尋ねて来る。
「私は第97小隊、隊長リーン・フェアリアル中尉よ。
ドートル師団長は何と言っているか訊きたいんだけど。
代わってくれない?」
皇女名を名乗るリーンに、
「フェアリアル・・・だって!?あ・・・。」
無線手がつい、大声を出した時、
無線の向こうで何やら叫んだり暴れている様な音が聞き取れた。
そして・・・。
「もしもし、聴こえている?私は第97小隊のリーン・フェアリアル中尉。
作戦の意見具申をしたいの。上官に取次ぎなさい。」
リーンが再度無線に向って呼びかけると、
「申し訳ありませんでした、中尉。
私は情報士官のガーレン少尉であります。担当下士官を拘束しました。
私が代わって承ります。」
無線の先で何があったかは、その声に現れていた。
「どうやら気付いてくれた様ね。ドートル師団長は何と?」
「は。中尉が発せられた無電で直ちに作戦を再考されています。
間も無く作戦令が発せられるでしょう。
まさか中央軍の手先が無線係だったとは、思いもしませんでした。申し訳ありません。」
ガーレン少尉は無線でリーンに謝ってくる。
「あなたが謝る必要はないから。では、前線の件は師団長に伝わったのね。」
「はい、私からも詳細を伺いたいのです、中尉。敵の詳しい数は?」
ガーレンが情報士官らしく敵情を尋ねて来た。
「うん。敵は中戦車の奥に、約200両近い重戦車を配している。
我々第2師団の正面によ。左の第4師団方面は解らないけど。」
「重戦車が・・・200両も、ですか!」
明らかにガーレン少尉はショックを受けたようだった。
「そうよ。だからこちらから攻撃を掛けるのは無謀だと思ったの。
この事を直ちにドートル師団長に教えて。
作戦の練り直しと、もっと詳しい敵情を求めるようにって。」
「はい!了解しました。」
ガーレンの声にリーンは頷いてマイクロフォンから手を離した。
「リーン、これからどうなるのかな。」
ミハルがリーンに問い掛ける。
「さあ・・・。作戦を練り直す時間があれば善いけど。
そもそも情報部の見積もりが間違っていると思う。
敵戦力の過小評価が・・・ね。」
リーンは一時的に撤退もやむなし・・・と、考えて答えた。
「我々に増援を寄越してくれるでしょうか。」
ミリアも心配そうな顔で2人に訊く。
「この闘いが、この戦争の趨勢を決めると認識しているのなら・・・ね。」
リーンが遠くを見て答えた。
その瞳には未だに作戦を阻害している中央軍司令部に対する怒りが込められていた。
「うむ、我が師団前面だけでもこれだけの数を揃えていたのか。
・・・4師の方はどうだ?」
ドートルが地図を睨んで報告を待つ。
「現在交戦中の4師は既に相当の被害を被った模様です。
味方の被害は斯座50両を越え、戦力の約半数近くに上るとの事です。」
「半数近くの被害を受けただと?」
ドートルの脇に居た参謀が驚いて聞き返す。
「は。敵に与えた損害は不明。同数程度かと思われますが。」
情報士官が、手にした用紙を見て答えると、
「そんな事は訊いていない。
味方に50両もの損害がこの短時間で出ているというのに。
4師の司令部は何を考えているのだ。
約半数近い損害を出しているのだぞ、全滅したと変わらんと言うのに・・・。」
参謀は声を荒げて情報士官に怒鳴る。
「仕方ない。4師に向けて退がる様に伝えろ。
作戦を中止。<退却セヨ>と、な。」
ドートルが命令を下した。
「え?師団長閣下。それは一師団長の権限を超えておりますが。」
参謀長がドートルを諌めるが、
「構わん、4師が壊滅すれば我々も撃滅される事になるのだぞ。
それより前に後方へ退き、間を取るのだ。
その間に増援を求めるしかあるんまい。
・・・この作戦は失敗だ。」
ドートルの決断は早かった。
直ちに命令が発せられ、第2師団はほぼその戦力を維持したまま後方へ退がる事となる。
だが、前線で闘う者達はまだ戦闘中だった。
「ミハルっ、後退命令が届いたわ。退がりましょう。
ラミルっ、敵に正面を向けたまま後退。急いで!」
味方が続々と後退を始める中、その重装甲を盾にマヘトは殿に近い処で後退を始めた。
「ルマ!敵は突っ込んで来てる?何か無線で傍受出来ない?」
敵情を得ようとしてミハルは、ルマに無線の傍受を命じる。
「ミハル姉、敵の交信が激しくなってきた。傍受はさっきからしてるよ。訓練通りに。」
ルマはヘッドフォンを押えて返答する。
「うん、それで内容は解らない?交信の。」
「ちょっと待って・・・。どうやら・・・このマヘトの事を話してるみたい・・・。」
「ルマ。・・・どんな事?」
リーンが静かな口調で訊く。
ーリーン・・・覚悟を決めたんだね。奴と闘う事を。-
ミハルが気付いた。
リーンは暗黒魔鋼騎が重戦車の奥から出てくる事を知ったのを。
リーンの瞳が決戦を前に聖騎姫の輝きになった事を。
そして・・・。
いよいよ闘いは決戦の時を迎えるのか。
宿命の闘いの時が来るのか?
次回 死闘・・・再び
君は覚悟を決める。再び宿敵と闘う事を・・・。





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