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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep2姉弟Act37風雲急を告ぐ

闘いの刻は来たれり。

古の魔法使い達は戦場で合い間見える。

闇が支配する空間。


形ある物が何もない暗闇。


それは只、悪意に満ちた無の空間。


人はそれを・・・悪魔という。




<我は間も無く復活のときを迎える。多くの魂を手に入れて。

       そう・・・間も無くだ・・・。>


暗闇くらやみが支配する空間で、何者カの声が呟く。


<我が下僕よ、早く成すのだ。

 一度に大量の魂を手に入れられる武具を使って・・・。>


悪魔の声が命じる。

邪な呪いを放ちつつ。




<我があるじよ。

 その刻はもう、そこまで近付いております。

 我が願いを・・・宿願を果す・・・その時が。

 ロッソアの軍を打ち砕き、多くの命を奪い。

 我が恨みを晴らす・・・その刻が・・・・>


フェアリア宮殿の第1皇女が住む部屋に掛けられてある古城の絵が妖しい気を放ち続けていた。


「ユーリ様。あの兵器を使うのですか?」


カスターが澱んだ瞳のユーリに問う。


「・・・。この闘いが失敗すれば・・・。

 もう、あれを使う以外に我が国を救う道はありません。」


皇女の椅子に深々と座ったユーリが答える。


「作戦が成功すれば使わないのですね。」


カスターが念を押す。


「ふんっ、作戦が成功したとしても使わぬ方法はありませんぞ。

 戦いの終結には欠かせぬ武器なのですぞ。あれは・・・。」


ヘスラー参謀長がメガネを光らせて言い放つ。


「カスター政務官。戦争の事は我々軍人に任せておいて貰いたいものですな。

 いよいよ我が軍がロッソアに対して有利となるのですからな。

 この戦争で失った物全てを取り戻すチャンスなのですぞ。」


ヘスラーは既に戦争に勝ったつもりでいる様だった。


「参謀長、戦いに油断は禁物です。

 敵がそう簡単に退くとは限りませんから。」


そしてカスターは再びユーリに問う。


「ユーリ皇女、あの兵器を使うには犠牲がいるのです。

 その事を承知でお認めになると言うのですか?」


厳しい瞳で問うカスターに、澱んだ瞳をしたユーリがはっきりと答えた。


「国を救う為には犠牲が出るのも止むを得ません。

 極大魔鋼弾に必要なのは強力な魔法力を持つ者。

 そう・・・あの娘が必要になるでしょうね。」


澱んだ瞳を遠く戦場へと向けたユーリを見て、カスターが想った人とは・・・。



_____________________


「中尉!師団命令です。<攻撃開始、前進セヨ>ですっ!」


ルマが振り返りつつ伝達する。


「よし、ラミルっ戦車前へ!」


リーンが時計を確認しながら命令を下した。



ロッソア国境の街へと向う野原・・・。

いや、村があった処は、既に彼我の戦闘で焼け野原と化していた。

フェアリアの戦車部隊を先頭に、歩兵達を載せたハーフトラックが続く。


周りはフェアリアの機甲部隊に埋め尽くされて、

この闘いにおける意気込みを物語っていた。


「味方偵察隊と、敵パックフロントが交戦を始めた模様っ!」


ルマが次々に情報を受け、逐次報告する。


ーいよいよか・・・。-


照準器を最大望遠にしたミハルが、彼我の撃ち合いを目にして想う。

車内はルマの外には誰も口を利かない。

いつもの戦闘前に起きる緊張感。


ー只、今日は違う。国の存亡を賭けた闘いなんだ。

 この闘いでロッソアを追い出す事が叶わなければ戦争は尚一層長引く・・・。

 しくは・・・。ー


暗い想いを振り払う様に頭を振る。


「味方軽戦車隊が突撃開始。続いて第4師団が突撃します。」


左舷方向で彼我の撃ち合いが激しくなった。

立ち上がる黒煙は、どちらかの車両が撃破された証。


「こちらにはどんな敵が待っているんだろう。」


ポツリと零す。


「私達の目標は、敵重戦車に限られている。

 軽戦車が出てきても相手をしないからね。」


リーンの声が、ヘッドフォンから流れた。

味方の前進に併せてマヘトは進む。


「敵の重砲に気をつけて。それに対戦車砲にも・・・ね。」


キューポラから観測するリーンが命じる。


「そうですね、敵から見れば、このマヘトは格好の目標ですからね。

 なるべく小刻みに動き回って照準されない様に務めます。」


ラミルが答える。

操縦桿を握り締めて。


「味方部隊が敵パックフロントを破りました。

 敵戦車部隊が出て来たようです。

 中戦車同士の小競り合いが始まりました。」


ルマがキューポラを振り仰いでリーンに伝える。


「よし、中戦車隊の後ろには必ず重戦車が控えている。

 いよいよ私達の真価が問われるわよ。全員対戦車戦用意!」


リーンが敵戦車の出現を予見して命じた。


「中尉!初弾は?徹甲弾ですか?」


ミリアが装填準備の為、問う。


「いきなり、敵魔鋼騎が現れるかもしれないから、今少し待って。」


リーンが初弾の選定を戸惑う。

そして・・・。


「ルマ、前方部隊に確認を急がせて。

 奥に控えている車両の種別と規模を。」

「了解!」


リーンの命令を受けてルマが無線機に取り付く。


「ミハル、どう?感じられる?」


リーンがミハルに訊く。


「いいえ、まだ。気配を感じられません。」


照準器を睨んだまま、リーンに返答する。


「そうね、私も感じられない。だったら・・・。」


リーンはレンズ越しに前方を見詰めて決断した。


「よしっ、初弾装填。徹甲弾!目標敵中戦車。

     味方の支援攻撃を行う!」


その時ルマが味方の報告を受けてリーンに伝えた。


「味方前方隊から報告!

 敵中戦車隊後方に重戦車隊が居るようです。此方へ向って来ます!」


ルマの報告に頷き、


「戦闘!対戦車戦。目標敵重戦車部隊!

 徹甲弾、距離4000で、射撃開始。攻撃始めっ!」


リーンが戦闘の開始を命じる。


「了ー解!目標此方へ向って来る重戦車。距離4000で射撃を開始します。」


ミハルが射撃諸元を整え、


「ミリア、初弾徹甲弾。装填始めっ!」


ミリアに10センチ砲弾を半自動装填装置に込めさせる。


「装填よし、ベンチレーター作動よし。射撃準備完了!」


即座に復唱するミリア。


「攻撃準備完了。射撃用意よろしっ!」


リーンに攻撃態勢が整った事を告げる。


全ての戦闘態勢が完了した事に頷き、キューポラから半身を出すリーン。

味方先方部隊の更に奥に眼を向ける。


中戦車隊の砲撃を縫って見えて来たのは・・・。


ーまさか・・・そんな。-


リーンは一度双眼鏡から目を離し、

もう一度善く見ようと倍率を最大にしてからレンズに目を当てた。

挿絵(By みてみん)


後書にて。今日はカラー挿絵が付けられませんでした。すみません。


作者注・)2019年バージョンですが・・・何か?


挿絵(By みてみん)


最初からお読み頂いている皆様。

ミハルの絵がこんなにも変わってしまいました。

どうでしょう?

でわっ!次回。

マヘトの前に現れたロッソアの戦車隊。

リーンは双眼鏡で観測を続けた。

次回 物量の差

君は迫り来る敵に何を想うのか・・・。

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