魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep2姉弟Act36継承者達の想い
「闘うのか、継承者よ。」
リーンの姿でリインが覚悟を訊く。
「はい、リインさん。例え敵がどうあろうとも。
私はその為にここへ来たのですから。」
ミハルが聖王女に答える。
「違うぞ、ミコトの継承者ミハルよ。
あなたはあなただけの力で闘う事が出来るのか・・・と、訊いたのよ。」
優しい声でミハルは問われる。
<双璧の魔女>たる聖王女の魂に。
「はい、闘います。闘わねばならないのですから。」
ミハルは力を込めて決意を告げる。
「闘う事は出来る・・・確かに。
だが、闘う限りは勝たねばならない。この娘を守る為にも・・・。」
リインは自らを指し、リーンの身を示す。
「解っています。私はリーンを守る約束を忘れた訳ではありません。
必ずリーンを守り抜き、勝ってみせます。」
リイン・・・リーンの姿に魂を乗り移した伝説の聖王女に答えた。
「ふうっ、あなたも善く承知したものね。ミコトの我侭を。」
リインがため息を吐いてから微笑んだ。
「はい、それが良いと思ったからです。
ミコトさんの提案を受け入れたのは・・・。」
ミハルは宝珠の中に居た聖巫女が、既にどこかへ向った事を感じていた。
「ミコトもミコトよ。邪な呪いに穢された者を信じるなんて。
いくら先の闘いで呪いが解けたからって敵の中へ向うなんて。
・・・無茶な事を・・・。」
リインは見張るの宝珠を見て、額に手を添えてため息を吐いた。
「リインさん。ミコトさんは弟を、マモルの身を案じてくれたのです。
私が誤って殺してしまわない為に。
私もミコトさんが向かってくれた事に感謝しているのです。」
そう、暗黒魔鋼騎との決戦を前に、ミコトはミハルの想いに応えた。
ミハルが願い続けてきた、たった一つの想いに。
「私はリーンに逢う前からずっと願い続けて来ました。
たった一人の弟に必ず生きて逢いに行くと。
必ず生きて戻ってくると。
その願いと約束を果す為だけに生き残ってきたのです。」
ミハルはリインを見詰めてそう言った。
「そうね。それがあなたの願い。
あなたが生き続けてこれた理由。」
「はい。それが今やっと果せられる時を迎えられたのです。
暗黒魔鋼騎を打ち負かし、邪な者から弟を取り戻すのが私の勤め。
そしてリーンを守るのが、私の約束なのですから。」
青く澄んだ瞳は聖王女を見詰める。
ーふっ、この娘には何の迷いも感じられない。
負けるなんて、これっぽっちも思っていないのね。-
ミハルの瞳にその想いを感じたリインが言った。
「ならば、今はもう何も言うまい。あなたが想うその未来へ向けて歩みなさい。
あなたの力で敵を打ち負かし、その想いを願いを果しなさい。
私はこの娘と共にある。私の継承者の中に居る。」
リインの瞳が閉じられた。
「ミハル・・・。」
再び開かれた瞳は、リーンの輝きだった。
「リーン、行こう。・・・闘いの場へ。」
ミハルが手を差し出して言った。
「ええ、行こう。私達の願いを果す場所へ。必ず取り戻してみせよう。」
その手を強く握り、リーンが答えた。
「うん、マモルを取り戻して還って来よう。
私達の未来へ・・・平和を愛するリーンと共に。」
ミハルとリーンは硬く握手を交わし、決意を新たにした。
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ーマリーベルよ、<大蛇の紋章>を受け継ぐ者よ。
闘いの時は来た。
邪な魂と決別し、古来から続く闘いに終止符を打つのだ。-
マリーが持つ赤黒い魔法石から意識が流れ込む。
「私の紋章・・・古来の魂よ。
解った、これが最期の闘いにしてみせよう。
私が勝つか<双璧の魔女>が勝つか。決戦の刻だ。」
マリーベル・・・マリーが右手を開く。
「ロナ・・・今度こそ最期にしてみせる。
そして勝っても負けても・・・逢いに行けそうな気がする。」
右手・・・いや。
もう身体は存在しないマリーの魂が、右手を見詰める。
マリーの魂には、その優しい輝きが見えていた。
青く輝く魔法の力・・・。
ロナが命を代償にして与えてくれたその力を握り締め、決意を秘めた。
「私が私で居られる内に、闘いを終えねばならない。
邪な者に、乗っ取られる前に・・・。」
マリーは自分の中で眠る少年を見る。
「この子を助ける為に来る姉に、返してやりたいが・・・。
ルメル・・・お前はこんな姉さんの事をどう思っているんだ?」
マリーは亡き弟の魂に尋ねかける。
車内で眠る黒髪の少年を見て、マリーは心を傷つけ苦しむ。
ーそれがお前の本心だからだ。-
マリーの元に碧き輝きが訪れる。
「お前は・・・<双璧の魔女>!」
ーミコトと、名乗る。
古来の剣士マリーよ。
いよいよ、約束を果す時が来たようだな。-
碧き輝きが剣士マリーに訴えかけた。
「剣士マリー・・・。成程そう言う事か。
お前が私の魂を救ってくれたのだな。」
マリーが過去の闘いを思い出して答えを求める。
ー若き剣士よ。そなたの心に宿る邪な魂は依然として残っている。
いつその魂が穢されるかは、そなた次第。
私はこの少年を守りに来た。
この少年の姉・・・ミハルとの約束を果たす為に・・・な。-
ミコトの魂が答える。
「私の魂はまだ穢れたままなのか?」
ーそうだ・・・その機械に魂が宿る限り、そなたは救われはしないだろう。-
ミコトの一言はマリーの考える答えと同じ・・・魂の粛罪。
それ以外に救われる手立てが無い事を告げていた。
「ならば教えてくれ。私は何時まで私でいられる?
邪な魂に堕ちるまでに、決着を着けられるのかどうかを!」
マリーの魂が救罪の時間があるのかを訊く。
だが・・・。
ー私にも解らない。今言った様に、それはそなた次第。
そなたが堕ちる時、魂は闇に飲み込まれ、救罪は求められなくなる。-
それは限られた時間。
それは何時爆発するか解らない時限爆弾と、同じ様な物だった。
「そう・・・か。その時はこの子はどうなるのだ?
一緒に闇へと堕ちる事になるのか?」
ーしかり・・・。-
ミコトが同意する。
「それだけは防げないのか?<双璧の魔女>よ。
この子だけでも助けられないのか?」
マリーは何とかしてマモルを救いたかった。
自分の弟を救えなかった替りに、この少年だけは救いたかった。
ー剣士マリーの継承者よ。
それが運命というのならば、抗ってみせるがいい。
そなたの想いが天に通ずるかもしれない。-
「ああ、限られた時に託してみよう。
この子を救うにはたった一つしか方法がない。
呪いを打ち消すしかないのだから。」
マリーが答える。
ー剣士マリーの継承者よ。その呪いを解く方法とは?-
マリーの魂が苦笑いを浮かべ答えた。
「マモルの呪いを解くには・・・。
マモルと同じ力を持つ者を、身替りにするしかないのだから・・・。」
ーなんだと?つまり・・・。-
ミコトの魂が叫ぶ。
その答えに絶望を覚えて。
<<そう・・・。マモルの呪いを解くには、お前の継承者を闇へ堕とす事だ、ミコトよ!>>
マリーとは別の声が車内に響いた。
そして・・・。
いよいよ戦場に闘いの嵐が吹き荒れる時が来る。
闇に支配されるその戦場に、ミハル達は何を想うのか・・・。
次回 風雲急を告ぐ
君はその瞳に何を見るのか。





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